|
カテゴリ:鑑賞 etc
作家たちの素顔と真実が見えてきた――。 昨年、テレビで放送していたこのドラマ。人さまのところで知ってから、気になっていたのでした。文豪たちの短編の傑作をドラマにするとはおもしろそう! 梶井基次郎『檸檬』、森鴎外『高瀬舟』、芥川龍之介『魔術』、谷崎潤一郎『富美子の足』、太宰治『黄金風景』『グッド・バイ』。『檸檬』以外見事に読んでいないのだけれど、とりあえずシリーズ6作目の『グッド・バイ』だけ観た。大好きな山崎まさよし出演、監督は『月とキャベツ』『Jam Films』でタッグを組んできた篠原哲雄。 都会に暮らす田島(山崎)には10人の愛人がいる。妻子を田舎から呼び寄せ、静かに暮らしたくなった田島はある作戦を思いつく。普段は浅ましいが絶世の美女である「キヌ子」(水川)に妻役を演じてもらい、愛人たちの前に現れて自分を諦めてもらおうというのだ――。 この期に及んで、女たちを傷つけずきれいに別れようとする田島が滑稽で可笑しい。頼みの「キヌ子」は手ごわくて、大食いで、強欲で・・・言うことを聞かせるために、金ばかりかかって、まったく苦労は絶えないのだった。 さっそく、ふたりはひとりめの愛人が働く美容室を訪れる。美しいキヌ子を「妻」と紹介する田島。それを受けて、敗北感に打ちのめされる愛人。別れ際、田島が耳元で囁く言葉。それが 「グッド・バイ」 「キヌ子」に振り回されながらも口の減らない田島と、田島をいいように操るキヌ子の、台詞の掛け合いがとても楽しかった。 文芸作品特有の台詞回しが、いい塩梅に古風さを保ち笑いを誘う。 しょうもない田島は、性懲りもなく酔ったふりしてキヌ子に迫ったりするのだけれど、彼女の方が何枚も上手で、部屋から叩き出される件など相当おもしろかった。 男優としての山崎まさよしはミュージシャンと思えないほどいい味出しているのでおすすめ。これまでも映画やドラマに出演してきたけれど、とくにこの篠原哲雄監督との相性がバッチシ。関西人の血で普段から喋りのおもしろいまさやんは、田島というよく喋る男を見事に演じていた。 新聞連載だった『グッド・バイ』は、太宰の死により未完のまま終わってしまった。続いていたら、このあと残り9人の愛人の元も訪ねたのだろうか。キヌ子と田島の関係はどうなるはずだったんだろう。そう思うと、自殺ばかり繰り返し、ついにはあの世へ行ってしまった太宰治の早い死が悔やまれた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.05.21 11:01:16
コメント(0) | コメントを書く
[鑑賞 etc] カテゴリの最新記事
|