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2021.12.30
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テーマ:読書(8612)
カテゴリ:読書
■銀二貫■
舞台は商人の町・大坂天満。
仇討ちで父を目の前で亡くし、あわや自分も討たれるかというところを、偶然居合わせた寒天問屋・井川屋の主人・和助によって銀二貫と引き換えに救われた松吉。
生きるために武士の身分を捨てて井川屋の丁稚となった松吉だが、商人の道を歩むことに心が揺れていた。
大火で焼けた天満宮再建のためにかき集めた銀二貫で松吉を救った和助や、信心深いが故に松吉に辛くあたる番頭の善次郎から、商人としての厳しい修行と躾を受ける。
そして、井川屋の暖簾をめぐる数々の事件を乗り越え、松吉は商人として成長していく。
得意先の料理屋の娘・真帆との淡い恋あり、涙あり笑いありのなにわ商人の人情劇。
 商人の街大坂・天満を舞台に■「みをつくし料理帖シリーズ」■の高田郁が描く人情時代劇。

 本も読んだことがあるし、テレビドラマでも見た。
今回再読したのは、先日、伊豆に行った時に、黄金崎で■ところてんを買った。
その時、「銀二貫」の中に、寒天の元、天草を求めて伊豆に行ったという話が載っていたのを思い出して、確認したかったからだ。
 以下、寒天に関する箇所。◎は私の注釈。

●「伊豆の天草で作った寒天、いうのがあるそうだすな。
何でも、伊豆の海で採れる天草は味も濃うて、腰の強いええ寒天がでける、とか。」

●彼は伊豆をつぶさに回り、中でも南伊豆の天草が際立って上質なのを知ると、それを買い入れる手はずを整えた。
下田から紀伊半島を巡って大坂に入る廻船の手配、港から大川に乗り入れる上荷船など煩雑な手続きを終えて戻ったのだった。
輸送の重量を減らすべく、現地で天草の選別をし乾燥させる
のだ、という半兵衛の話に、和助も善次郎も舌を巻いた。

◎丹後の天草を使って、寒天発祥の地、京都・伏見で作っていたが、丹後の天草が手に入らなくなくなったために、伊豆に行く。

●淀屋、住友、鴻池、それに三井。
この大坂で財をなした大店には、すべて武家の地が流れている。
◎★淀屋
徳川の天下統一後、■家康は常安を召し出し、冬の陣、夏の陣への功によって苗字帯刀と岡本三郎右衛門と名乗ることを許した。
そのうえ山城八幡の山林300石を与え、八幡の侍格に取り立てた。

★鴻池
遠祖は尼子氏家臣の山中鹿之助と言われる。
鹿之助の死後、子息の新六直文が武士を捨て摂津国鴻池村(現伊丹市鴻池)において酒造を始め、鴻池流という清酒を開発した。

●「あれが天満の青物市場や。
見てみ、大根を仰山積んだ船が行くやろ?
天満の大根、天王寺の蕪(かぶら)、難波の干瓢(かんぴょう)、吹田の慈姑(くわい)・・・
大坂中の美味い食材が集まる場所なんやで。」

◎■東横堀川に農人橋(のうにんばし)■という橋があるくらいだから、大坂の町も野菜が沢山作られていたのだろう。

●(略)天満橋を渡りきったところには東町奉行所が控える。
そこから東側に広がるのは大阪城。
自然、天満橋には武士の往来も多い。
淀屋の闕所(けっしょ)以後、侍と関わるとろくなことはない、例えば井川屋の番頭の善次郎なども、そうした理由で天満橋を避けるひとりだった。

◎井川屋は、京都からの船便を使った時は、天満橋を使った方が便利なのだが、わざわざ遠回りして、天神橋を使う。
黒羽二重の一張羅を着こんだ和助と、同じく一張羅の黒縮緬を羽織った善次郎とが、いそいそと高麗橋を通りゆく。
和助の黒羽二重は松葉屋の大旦那の形見分けの品、善次郎の黒縮緬に至っては、山城屋の旦那に借りた古着である。

何度も何度も涙で文字が見えなくなるほど感動した。
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Last updated  2021.12.30 00:20:41
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