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花競べー最も優れた名花名木に与えられる称号・玄妙を目指し、江戸中の花師が育種の技を競い合う三年に一度の“祭”。 恩ある人に懇願されて出品した「なずな屋」の新次は、そこでかつて共に修業した理世と再会する。 江戸市井の春夏秋冬をいきいきと描く傑作「職人小説」。 小説現代長編新人賞奨励賞受賞作。 内容紹介(出版社より) 第一章 春の見つけかた 第二章 空の青で染めよ 第三章 実さえ花さえ、その葉さえ 第四章 いつか、野となれ山となれ 終 章 語り草の、のち ■類■、■すかたん■と最近、朝井まかての小説が続いている。 この「花競べ 向島なずな屋繫盛記」も朝井まかて。 朝井まかては、植物が好きだというが、この本は、「花師」という植物を育てる職業をえがいたものだ。 しかも、これが作者のデビュー作というからビックリ。 朝井まかてという名前は、ペンネームで沖縄県出身の祖母・新里マカテの名に由来する。 田辺聖子も学んだ、大阪文学学校で学ぶ。 出てくる人が魅力的。 ★なずな屋新次 向嶋の花師、新次が主人公。 妻のおりんと、「なづな屋」という植木屋を営んでいる。 新次は高い育種の力を持ち、大変な美丈夫だが、職人気質で客あしらいがよくない。 女性にチヤホヤされるのを嫌がる。 ★おりん 商売人の娘だったが、まま母に邪魔者にされ、一人暮らしをするようになる。 おりんは元寺子屋のお師匠として自活してきた女性。 そんな中で、新次と知り合い、結婚。 ところで、江戸時代に自活する若い女性っていたのだろうが、よっぽどでないと一人暮らしはしないのではないか。 ★雀 知り合いの息子で、わけあって、信次夫婦が育てている。 俊吉という名だが、鼻がつまって「ちゅんきち」というところから、雀となった。 他に、裕福な太物商の隠居とその孫の男前の青年。 などなど、魅力的な人が配してある。 初めて聞いた言葉などもあるので、ここに●メモしておく。 ◎は、私のコメント。 ●火鉢にかけていた鉄瓶の湯で熱い番茶を淹れ、猫板の上にそっと置いて差し出した。 ◎猫板とは、長火鉢の端の引き出し部分にのせる板。そこに猫がうずくまるところからいう。 ●わっちは宿(亭主)と縁を切らせてもらうから、新さんも承知しておくれ。 ◎亭主のことを「宿」と言った。 それで、「宿六」という言葉ができたのか!!! (「宿のろくでなし」の意) 一家の主人を卑しめたり、または親愛の意をこめたりしていう語。 ●新次はよく、草肥(くさこえ)を作った。 抜いた草を捨ててしまわずに蕨(わらび)や蓬、杉菜などを選り分け、木箱に入れて、寝かせておく。 そこに桑や槿(むくげ)の若葉、海藻や貝を砕いたものを加えるなどさまざまな調合を試し、 その種類は百ほどにもなっていた。 ◎江戸時代は、雑草も無駄にしない循環社会。 ●酒を灘から江戸まで運ぶのに下り船を使うでしょう。 蔵元で樽に詰められた酒は波に揉まれて海路を下ってくる。 その船の揺れが、いい加減に酒を醸成するんだそうですよ。 ◎海底に2年間寝かせた珍しいワインを売るお店が■クロアチア■にあった。 最近、テレビのCMでも酒を海で寝かし、発酵を促すというのを見た。 ●近勝(ちかまさり) ◎遠くから見るよりも近くで見るほうが勝って見えること。 ●自生種の系統では、 山桜に大山桜、丁子(ちょうじ)桜、峯(みね)桜、豆桜、大島桜に霞桜、深山桜。 里桜系では紅枝垂れに菊枝垂れ、普賢象(ふげんぞう)、御衣黄(ぎょいこう)まである。 ●「腹を立てながら縫物をすると大針になる。 愚痴を言いながら着物を解いたら生地が裂ける。 おりんちゃん、お針仕事は厭なことの一つや二つあった日でも、なるったけ心持を明るく持って笑いながらするもんだよ。」 そうして縫った着物は、着心地がいい。 伯母さんはそう教えてくれた。 ●近くの森の古木に住んでいるのだろうか、冷たい闇夜の中で「襤褸(ぼろ)着て奉公、襤褸着て奉公」と梟が鳴いた。 にほんブログ村 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022.07.02 00:08:36
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