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2023.11.14
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テーマ:読書備忘録(1394)
カテゴリ:読書
「塞王(さいおう)の盾(たて)」

幼い頃、落城によって家族を喪った石工の匡介。
彼は「絶対に破られない石垣」を造れば、世から戦を無くせると考えていた。
一方、戦で父を喪った鉄砲職人の彦九郎は「どんな城も落とす砲」で人を殺し、その恐怖を天下に知らしめれば、戦をする者はいなくなると考えていた。

秀吉が死に、戦乱の気配が近づく中、琵琶湖畔にある大津城の城主・京極高次は、匡介に石垣造りを頼む。
攻め手の石田三成は、彦九郎に鉄砲作りを依頼した。
大軍に囲まれ絶体絶命の大津城を舞台に、信念をかけた職人の対決が幕を開ける。
ぶつかり合う、矛楯した想い。

答えは戦火の果てにー。
「最強の楯」と「至高の矛」の対決を描く、圧倒的戦国小説!

琵琶湖の面積は滋賀県の実は6分の1である、とは「滋賀県あるある」のひとつ。
とはいえ琵琶湖ぬきにこの県は語れない。
戦国武将がここで権力闘争をくり広げたのも、琵琶湖を、あるいは近江を制する者が天下を制するとされたからだ。
そんな歴史・時代小説の中でも最近の話題作は今村翔吾の直木賞受賞作「塞王の盾」(2021年集英社)だろう。
かたや比叡山麓の坂本(大津市)に拠点をおく石垣技能集団・穴太衆(あのうしゅう)。
かたや湖北の国友(長浜市)で鉄砲鍛冶の技を磨く国友衆。
究極の盾(石垣)と矛(鉄砲)。

名だたる武将を後背に押しやり、戦を憎む若き職人によりそう物語は、新しい時代小説の誕生を感じさせる。
ブームは当分続きそうだ。
~旅する文学・滋賀編~朝日新聞2023.1.7

★秀吉亡き後の戦乱の時代。
★主人公は城の石垣を造る職人・匡介。
落とされない石垣を造れば戦は無くなるという信念の持ち主だ。
★他方、鉄砲職人の彦九郎は、この武器の恐怖を知らしめれば戦は無くなると考えている。
つまり矛と盾。
この二人が琵琶の湖畔にある大津城で対決する。
★いわゆる戦国の小説だと武将同士の戦いだが、本作は、戦を陰で支える職人にスポットを当てた。
●読書メモ●  ◎は私のコメント
●「名は」
「匡介(きょうすけ)」
「きょうすけ・・・どのような字だ」
(略)
「きょうはコの字の反対に王。
介は介添えの・・・」
(略)
「良い名だ」(略)「王を守っている」
●穴太衆の技と聞いて世間は石を積むことだけを連想する。
しかし実際はそうではなく、大きく三つの技によって成り立っている。


まず山方。
これは石垣の材となる石を切り出すことを担っている。

(略)

二つ目は荷方。
切り出した石を石積みの現場まで運ぶ役目である。

●穴太衆は紙に一切の記録を残さない。
穴太衆は石積みだけでなく、依頼主から*縄張り*の相談に乗る。
(略)
城の縄張りは重要機密であるため、穴太衆は紙に一切の記録を残さず、全て頭の中に図面を引いて行う。
(略)
積み方の技術も同様である。
一子相伝(いっしそうでん)、しかも全て口伝(くでん)である。
こうして穴太衆は技術の漏洩を防ぎ、依頼主の信用を勝ち取ってきた。

◎城用語で「縄張」とは、城の設計のことを指します。
本丸をどこに置くか、二の丸・三の丸などの曲輪はどう配置するか、防御のための堀や土塁はどうめぐらせるかなど、城の全体像の設計(=グランドプラン)が「縄張」です。
モノや範囲ではなく、城を設計すること、そして城の構造そのものを意味しているわけです。
●人には乗り越えようという高さと、諦める高さが存在するという。
その境界こそ八尺から九尺だと源斎は長年の経験により弾き出している。
●石積みの現場において(略)実際に積むの者はその時々に雇う百姓たちである。
中でも分家しても、猫の額ほどの田畑しかない次男三男が主であった。
彼らにとっても日銭を稼ぐことは、暮らしの助けになる。
(略)
また百姓らが石積みを覚えることは、自らの本業にも役立つ。
山の斜面など田を作るには向かない土地に、石を積み上げて棚田を作り上げるのだ。
故に城が一つ建つと、その周辺で飛躍的に棚田が増えるということが起きる。

◎これは目からウロコだった・・・。
●鉄砲の巨大産地であった根来が、秀吉に攻められ壊滅して以降、この国の鉄砲の生産量は
三位に日野、二位に堺、一位に国友となっている。

●石積みの技が全国遍く(あまねく)広がり、庶民の暮らしを守る盾となればよいというのが穴太衆の共通の考えである。

◎そのための二つの条件。
*五年に一度は必ず穴太を訪れ師匠や後輩に技を見せる。
*紙に書き残さない。
●湖賊とは、読んで字の如く湖で船を襲う賊のこと。
古くから琵琶の湖には湖賊がいたのだ。

 ◎「湖賊」という言葉を聞いたのは初めて。
「湖賊の風」という小説がある。

都への入口となる琵琶湖は室町中期、膨大な水運利権を巡る闘いの舞台であった。
中でも堅田関の船道衆は「湖賊」と呼ばれ人々に恐れられていた。
天才的な操船術で関を破る青年魚鱗は、一人、湖国の王を目指す。
蓮如をして「地獄へ落ちても他力にすがらぬ」と言わしめ、湖に自由を求め闘い続けた男の壮烈な生涯。


◎気持ちのよい終わり方でほっとした。
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Last updated  2023.11.21 00:21:09
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