テーマ:読書備忘録(1394)
カテゴリ:読書
恋する男に身請けされることが決まった吉原の女が、真実を知って選んだ道とは…。 表題作ほか、ワンマン社長とガード下の靴磨きの老人の生き様を描いた傑作「シューシャインボーイ」など、市井に生きる人々の優しさ、矜持を描いた珠玉の短篇集。 著者自身が創作秘話を語った貴重な「自作解説」も収録。 ■目次(「BOOK」データベースより)■ 月島慕情/供物/雪鰻/インセクト/冬の星座/めぐりあい/シューシャインボーイ ■著者情報(「BOOK」データベースより)■ 浅田次郎(アサダジロウ) 1951(昭和26)年、東京生まれ。 著書に「地下鉄(メトロ)に乗って」(第16回吉川英治文学新人賞) 「鉄道員(ぽっぽや)」(第117回直木賞)「壬生義士伝」(第13回紫田錬三郎賞) 「お腹召しませ」(第1回中央公論文芸賞、第10回司馬遼太郎賞) 「中原の虹」(第42回吉川英治文学賞)などがある。 浅田次郎の作品を読むのははじめて。 齢三十を越えてようやく「人間になれた」と泣くミノ「月島慕情」。 六十年胸に抱いてきた言葉を涙とともに零したワンマン社長、「シューシャインボーイ」。 悲しいとも嬉しいとも言い難い万感の涙がつまっている「平成の泣かせ屋」の異名をとる著者の面目躍如の1冊。 ●読書メモ● ■月島慕情■ ★「まがいものの幸せはいらない。 ばかやろうでいいです。」 「あたし、あんたのおかげで、やっとこさ人間になれらよ。」 ★親からもらったミノという名は、好きではなかった。 明治二十六年の巳(み)年生まれだからミノと名付けられた。 ふるさとの村には同い齢のミノが何人もいたが、一回り上にも大勢いたはずの同じ名前の娘たちは、ミノが物心ついたときにはみんな姿を消していた。 ひとつ齢上のタツも、ふたつ齢上のウノの場合もそれは同様だから、世代を超えた同じなの娘はいなかった。 雪がとけること何人もの人絵画やってきて、小学校をおえた娘たちをつれてゆくのだった。 行先のほとんどは上州か諏訪の製糸工場だったが、とりわけ器量の良い娘は東京へ買われていった。 そういう娘たちは値がちがうから、果報だと噂された。 ★「はい、よござんしょう。 おかめひょっとこ金銀小判、夫婦円満、商売繁盛、ガキも産れりゃ蔵も建つってえ代物だ。 三円と五十銭!」 *酉の市の熊手売りの口上。 ★「(略)あすこはね、あたしが子供の時分には影も形もなかったんだよ。 海を埋め立てて、大きな島をこしらえたのが明治二十五年。 だから最初は、築地のツキの築島だった。」 *この時、大正10年を過ぎていた頃 ★蒸気船は器用に舳先(へさき)を回して、佃島と月島に挟まれた掘割に滑りこんだ。 *2020年、東京に行った時の写真。 ■佃島■ ★商店街の中ほどの辻に、洒落た石造りの交番があった。 ■月島■ *これも月島にて。☝ *「月島慕情」ドラマにならないかな・・・。 ■雪鰻■ ★「もし。こちら裏門分哨長、〇〇三曹。(略) ・・・あー、了解、もし」 *受話器を持ったこのやりとりだが、「もしもし」ではなく「もし」。 「もし」という電話の受け答えがあったのかと探したが分からなかった。 *浅田次郎は、昭和40年代に自衛隊にいたが、その頃の話だと作者自身が語っている。 ■インセクト■ ★差し出された手拭と葉書の意味がわからなかった。 *同じアパートに越してきた人が手拭と葉書を配ったというが、この習慣は初めて知った。 ■シューシャインボーイ■ この作品は、ちょっとミステリーぽかった。 *「シューシャインボーイ」は、主人公・塚田の勤める社長の馬の名前だけれどなぜその名になったのか? *持ち馬が勝ったその足で、靴を磨きに行った社長。 *靴磨き名人の老人の正体は? どんどん謎が解明して、そして最後が泣かせる。 2010年にドラマ化されていた。 ■シューシャインボーイ■ ■解説■ ★浅田:大芸術家には、ヒエラルキーの高いところで生まれ育った人が圧倒的に多いんですよ。 志賀直哉、太宰、谷崎、芥川、三島・・・みんないいとこの子だ、早い話が(笑)。 この人たちの審美眼にはかなわないし、そしてやっぱり文章は美しい。 *志賀直哉:学習院に通う。 *武者小路実篤:華族出身。 (志賀直哉は、学習院中等科時代)落第の結果、2歳年下の武者小路実篤と2度目の6年時に同級となる。 途中、文学上の言い争いから直哉が武者小路に絶縁状をたたきつける事件はあったものの、 直哉と武者小路は生涯にわたって親交を結ぶことになる。 *太宰治:青森県下有数の大地主である父津島源右衛門と母たね(夕子)の六男として生まれた。 *谷崎潤一郎:祖父の代で没落。 学費未納により東大中退。 *三島由紀夫:家には女中6人書生や下男がいた。 にほんブログ村 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2024.02.12 00:01:29
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