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2024.09.23
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テーマ:読書備忘録(1394)
カテゴリ:読書
■東慶寺花だより■

■内容紹介(出版社より)■
女たちの「駆け込み寺」を描く、涙と笑いの人情譚

離婚を望み、寺に駆け込む女たちーー。
夫婦の揉め事を解きほぐすと見えてくるのは、人の切なさ温かさ。
十年をかけて紡がれた連作集。

寺の境内に身につけているものを投げ込めば、駆け込みは成立するー離婚を望み、寺に駆け込む女たち。
夫婦のもめ事を解きほぐすと現れるのは、経済事情、まさかの思惑、そして人情の切なさ、温かさ。
鎌倉の四季を背景にふっくらと描かれる、笑いと涙の傑作時代連作集。
著者自身による特別講義を巻末収録。

■目次(「BOOK」データベースより)■
梅の章ーおせん/桜の章ーおぎん/花菖蒲の章ーおきん/岩莨の章ーおみつ/花槐の章ー惣右衛門/柳の章ーおせつ/蛍袋の章ーおけい/鬼五加の章ーおこう/白萩の章ーおはま/竹の章ー菊次/石蕗の章ーおゆう/落陽の章ー珠江/黄蘗の章ーおゆき/蓼の章ーおそめ/薮椿の章ーおゆう

 夫婦の形は様々。
離縁の形も様々。
相思相愛なのに、自分の持参金を使ってもらいたいがために離縁を望む妻もいれば、道場破りをしてそのまま居付いた押し掛け亭主への仇討を果たす女性もいる。
 ●東慶寺掟●
●一、寺の境内に身に着けているものを投げ込めば、駆け込みは成立する。


日本橋から鎌倉までの距離は約50km。
ちょっと買い物を装い、そのまま鎌倉を目指した女性が約3,000人いたという推計があるそうです。
気が付いた縁者が追い駆けてくるかもしれないので、わき目もふらず鎌倉を目指す。
あと少しで東慶寺というところで、親類に追いつかれてしまうことが多かったのでしょうか、かんざしでも草履でも身に着けているものを境内に投げ込めば駆け込みは成立。
 ●一、夫婦は寺の前にある柏屋、松本屋、仙台屋の三軒の「御用宿」に分宿して「相対熟談」を受ける。

でも、直ちに入山できる訳ではない。
まずは御用宿で事情聴取がある。
次に夫を始めとする縁者を招集して、相対塾談が行われる。
宿が三軒あるのは、夫と妻を同じ宿に泊めないことから。

関係者を書状で集めるために、三軒の宿が六人の飛脚を「常雇い」している。
 ●一、妻は二十四か月、寺で過ごすと、離婚が成立し、再婚も認めらられる。

まずは示談をさせようとする。
示談が不調に終わり、夫が離縁を承認しない場合は妻は東慶寺に入山する。
2年間東慶寺に籠ると、離婚が成立する。
東慶寺は男子禁制で、入寺金と生活費の扶持料が必要。
入寺金が払えない時は東慶寺が貸付けて、下山後に返済させる。
扶持料に応じて寺内での暮しに3段階の待遇があったそうです。
お寺での暮しも金次第。

●一、寺は男子禁制で、男の駆け込みは認められない(が、時には例外も・・・)

東慶寺は鎌倉で円覚寺に次ぐ第二の寺格で、駆け込み寺の運営のため金貸し業も行っていたそうです。
御用宿の柏屋を舞台に様々な駆け込み人が来ることで物語は展開しますが、様々な駆け込み人やその縁者と接することで、主人公の信次郎は人を見る目を肥やして行きます。

●読書メモ●
●この本の語り手は、若く、「物書き」、「医者見習い」、「柏屋」の見習い番頭をしている。
●丸髷は富裕の度合いを測る物差し。
丸髷が大きければ富裕層。

●東慶寺の駆け込みは、朝方と相場が決まっている。
午後遅く江戸を出て、夜通し鎌倉を目指すと朝方に着く。

●本が売れて千部以上刷ると「千部振舞(せんぶぶるまい)」といって、版元が作者を吉原へ招いて、どんちゃん騒ぎをしてくれます。

●乳母日唐傘(おんばひからかさ)
*私は乳母日傘(おんばひがさ)という言い方しか知らない。

●親子は一世、夫婦は二世、主従は三世、間男は四世、そして男と男の契りは五世の仲といいます。

献残屋(けんざんや)は、世間にあまり知られていない商売で(略)。
この献残とは「献上品の残り物」という意味。

御大名、御旗本、御家人衆にはそれぞれ官位叙任やお目見えや家督相続といっためでたい節目がある。
町方でもお中元やお歳暮という儀礼がある。
その際には、熨斗鮑(のしあわび)、干魚(ひもの)、昆布、葛粉、片栗粉、唐墨(からすみ)、海鼠腸(このわた)、雲丹(うに)、
墨、硯、筆といった贈答品が江戸の町町を飛び交い、貰った方はどなたも持て余す。
そこで不要な贈答品ををこっそり献残屋に持ち込み金に換える。
●髪を短く切って断髪にさせ、生臭さものは、むろんのこと、にんにく、ねぎ、にら、あさつき、らっきょの五辛を断つ。

●東慶寺に入山する時には、三つに格付けされる。
入山時に十両、二十両を納め、さらに寺に三十両の扶持米を納めた上臈(じょうろう)。
上臈ほどの金はないが、いくばくかの金を積んだもの。
一銭も納めないもの。
寺での暮らしが違う。
●大根の卸し金を並べた屋台がが多いのは、初午が新しい卸し金の使い初めの日ときまっているから(略)。

●駆け込み人は髪を切り下ろすのがきまり、その髪を買いとるのが、かもじ屋の仕事である。

神奈川県鎌倉市東慶寺
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Last updated  2024.09.23 00:20:47
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