先週の土曜日は手術室の新人歓迎会でした。head&neckの病院には11の手術室がありますが、今年は看護師、技師さん併せて10名の新入職員を迎えました。医師の方も手術室に出入りするので、ニューフェイスは総勢30名ほどです。初期研修医を含めるともっと大勢になりますが、とりあえずは現時点で手術室に係わる人たちで会を開くとおよそ120名となり、大宴会になりました。
古今東西、こういう飲み会では新人はなぜか集団で芸を披露することが多く、われわれのところでもご多分にもれず演し物は恒例行事です。今年は皆さん、モー娘のまねで盛り上げてくれました。年毎に新人のカラーがあり、おとなしめの年もあればはじける年もあります。本年は中の上といったところですが、最初の演し物が彼らの初の共同作業であるので、同期の絆が生まれるきっかけになることは間違いないようです。
宴会を彩った芸も上手く終わり、一次会が終了すると有志で二次会になだれ込みます。head&neckも同僚と、新人医師数人をさそい二次会に行きました。彼らは医師になって2ヶ月、いろんな壁に突き当たる時期です。点滴が上手くとれなかった、検査のオーダーを間違えた、CTの読み方が判らない等等・・新人ならではの悩みは尽きません。実地臨床と学生の頃の知識との乖離に唖然としている時期なのです。head&neckにも覚えがありますが、医師になって数ヶ月は萎縮してしまい、自己嫌悪の塊でした。たった1年先輩はなんでも出来るのに、自分には何もできないもどかしさと苛立ちでどうしようも無いのです。そんな時、先輩医師に気分転換に飲みに連れて行ってもらい悩みを聞いてもらって、「おれもそうだったよ」といわれたことがどんなに慰めになったことかは痛いほど脳裏に焼きついているので、ついつい悩める新人医師には優しい言葉をかけてしまうのです。
年代による差はあります。昨今の厳しい医療事情のなか、昔はどんどん実践あるのみだったのが、現在は研修医1年目はここまで、2年目はここまでと厳しくマニュアルで定められています。十数年前、我々が「馬鹿ヤロウ、こんなことも出来ないならやめちまえ!」なんて叱られて教わった教育法はいまでは「パワーハラスメント」と呼ばれ、「うん、良く頑張ったけどそれよりこうした方がいいね」と言わなければならないといったように、教える側にも忍耐力が求められます。新人医師に自分の昔の経験を話すと、目を丸くして驚いています。なかには、厳しく言われたほうが良くわかるのでどんどん叱ってくださいという強者もいますし、少しのことで立ち直れないナイーブな医師もいますが、結局現場では個人の資質に合わせてある程度の濃淡をつけながら教育していくしかありませんが、若い医師自身も失敗した時は身体で感じているようで、失敗すれば落ち込むことは昔と変わりません。言葉が優しくても厳しくても事実は一つなのです。
かれらと話をしていて、ふと新人の頃の悩んだ時期の苦しさを懐かしく感じたのでした。
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