日本人の災害に対する真摯な態度に賞賛を贈るメディアも多い中で、実際には被災地での窃盗が後を立たないのも事実。

　「生きるか死ぬかの瀬戸際なんだから致し方ない・・・」と見て見ぬ振りする社員の前で堂々と持ち去る人が乗った車の荷台には大量の物品・・・・。彼等が避難所で配布していると思いたいとは社員の弁。気持ちはわかる。しかし寂しい。

　直視すべき悲惨な現実からは目を背け、耳ざわりの良い海外メディアの賞賛にいい気になって「日本は一つだ！」などと言い、被災地から遠く離れた空の下でちょっとの募金と節約だけで、被災者から見れば何不自由ない生活を送る我が身を顧みれば何も言う資格は無いのかもしれない。火事場泥棒の非道を見て相対的に自分の微々たる支援に善行感を増幅させることの無意味さを判っていながら、コソ泥に必要以上の嫌悪を抱くのは矢張り被災を免れた者の心の余裕に所以するものなのだろうか。

　崩れかけた自分の会社の倉庫から黙々と物品を運び出す見知らぬ人々をただ見守る従業員の気持ちを察すると、ああ、自分は現場の状況を全く判っていないのだなという事実を痛感する。

　半ば周囲の勢いに乗って幾許かの募金をしてきたが・・・その金にどんな想いが乗っていようが金銭的価値に違いは無いのは承知の上だが。

　命を懸けて原発の暴走を抑止しようと懸命になっている人、被災し全てを失いながらも立ち上がろうとする人、遠くで応援の声だけあげる自分。自分の無知と無力さを改めて実感する。