「今日も怒ってしまいました」 益田ミリ
益田ミリさんのイラストは、おとなしくて不器用で、その割には心の核心をついてきますねえ。この人の絵と初めて出会ったのがいつかってことが、よくわからない。いつのまにかよく知っていて、なんか久しぶりね、元気~?って言いたくなる友達気分であったりします。この本も、偶然図書館で手に取って、なんか旧友に会ったみたいなうれしい気持ちになりました。「怒り」についての経験を書いた小さいエッセイ集です。その「怒り」も、だれでもちらっと経験したことあるような身近なものばかりです。ところで、「怒る」ってことを、この頃全然やってないような気がします。子育てもとっくに終わった50代主婦の私は、うちでも職場でもあまり怒らない。職場の若い同僚たちには、ぱぐらさんは優しい人だって誤解されているみたい。それはもちろん、大きな誤解です。学生の頃や結婚前の会社員だったころは、腹の立つことがたくさんあったし、同級生とか上司とか先輩とか、怒る対象に事欠かなかったような気がします。子育て中だってそう。子どもや姑に対しても、そんなに腹を立てなくても・・・と今なら思えることもたくさんありました。つまり年を取って、怒るだけの体力がなくなったんですね。年を取って人間が丸くなるっていうのは、こういうことなのかもしれません。とはいえ、今の私は腹の立つことが皆無かというと、そんなことはありません。今の職場にも感じの悪い同僚ってのもちゃんといて、彼女には不快な思いを、たくさんさせられました。彼女の失敗がいつのまにか私のせいにされていたり、私の工夫したことがいつのまにか彼女の手柄になっていたり・・・彼女は要するに、ものすごく口がうまいんです。そして、そのちょっと可愛い容姿とよく回る口に、周囲の人はすっかりだまされるんです。そんなとき怒ったかというと、私は怒らなかったんですよね。腹は立つけれど、怒るのはめんどくさい。それよりも、私は彼女と距離をおいて、仕事上必要最小限の接触だけすることにしました。毎日、挨拶だけは普通に交わしますが、それ以外はよほどの用事がない限り声をかけません。話がそれてしまいましたね。益田ミリさんの「怒り」のエッセイは、本気で怒るというほどの大きいものでもなく、でも素通りできるほど小さいものでもない。あーそうそう、そんなときあるよねえ、腹が立つよねえ と同感しながら読めるエッセイでした。そして、益田さんは若いなあ~と、怒れる彼女に一抹のうらやましさも感じたりしたのでした。