2019文楽11月公演第一部心中天網島その4死んだ男の残したものは
心中天網島大和屋の段結局、おさんの着物も質に入れて金にすることができなくなって、小春を身請けすることができなくなった治兵衛は、小春を大和屋という茶屋へ呼び出した。おさんは離縁で小春は他人に身請けされどうすることもできない状態で、二人で心中するしかないということになった。しかし見とがめられてはいけないので、治兵衛は帰るということにし、外に出て物陰で身を潜めている。小春は大和屋で泊まるということにする。その間に兄の孫右衛門が治兵衛の子ども勘太郎の手を引いて、治兵衛を探しに来る(男の子なので父方の治兵衛宅に残されていたが、父がいないので一人で放置されていたことになる)大和屋では治兵衛は帰って、小春はうちで泊まるという話をするので、孫右衛門は安心して帰っていく。その様子を物陰から見て治兵衛は手を合わせるのだった。夜も更けて、大和屋の人たちが寝静まったところを見計らって、小春がそっと忍び出てくる。道行名残の橋づくし治兵衛と小春は死に場所を求めていくつもの橋を渡り、網島の大長寺というところにたどり着く。小春は、治兵衛を死なせないとおさんと交わした約束が守れないことが心残りだ。心中はしないという約束だったのにと、一緒の場所では死なないというのがせめてのも小春の志ということで、治兵衛に刺殺されて命を絶った。治兵衛は境内の別の場所で首をつって命を絶った。(おしまい)