To each his own (十人十色)
イギリスは、というよりロンドンはメトロポリタン。人口の半数以上が、もはや「イギリス人ではない」ロンドンだ。過去の大英帝国の名残もあって、多くの国や地域から来た「さまざまな人」がひしめき合っている。人々がそれぞれの文化や歴史を踏襲しながら、共存している街・・・・私にとってのロンドンは、そんな街だった。でも、アメリカは違う。アメリカに来て思ったこと・・・・アメリカは「人が混ざる」という現象と同時に「文化も混ざって」いるような気がする。最も、この国の短い歴史においては、「文化を混ぜる」ことによって、独自の「価値観」を形成してきたともいえるのだろう。混ざることによって、生み出される「強さ」なのだ。アメリカは移民の国。原住民アメリカ・インディアン以外は、みんな移民。だからこそ、みんなゼロから始まったのだ。故郷を遠く離れて、歯を食いしばり、己の運と力を信じた第一歩からこの国の歴史は始まったはずである。だからこそ、自分の意思を明確に持ち、生き方に責任をもつ、そんなアメリカ人の心意気。好き嫌いもはっきりしている。個性を尊重する。「他人と違うこと」に意義を持つ。本当に「十人十色」を実感する世界。アイデンティティ先進国だ。ところで、この「十人十色」という「ことわざ」。英語の世界では、それほど「ことわざ」が使われているとは思えないが、「ことわざ」好きな日本人には、「So many men, so many minds」と紹介されている。これは「多くの人がいて、多くの心がある」、ということ。確かにそう、ごもっとも。でもこれ、実際にアメリカで使われるのは、「To each his own」。ただ、人がいてそれぞれの心がある、というよりも、「個人」がより明確に言い表されているこの言葉。「人はその人自身による」・・・・喜びも悲しみも、その人の人生すべては「その人のもの」。移民の国、歴史の浅い国家、混ざり合っている文化・・・・その中で、本当に見つめるべきは「己自身」であり、他に誰でもない「自分自身の価値観」を認めるこの言葉。どんなことがあっても見失ってはいけないもの、自由を謳歌する精神をうたったアメリカ合衆国憲法の精神が、ここにあるような気がする。人間は、誰に束縛されることなく、己の価値観で自由に生きることができるべき・・・・To each his own・・・・好きだな、この言葉。