■今日の1枚…Twins 1&2
■Twins 1&2/Jaco Pastorius Big Band(1982)エレベの魔術師、ジャコ・パストリアス…今も信奉する人は多い。その存在は、伝説になる暇がないように思う。その生の終わりと頂点で見せた音楽のギャップがなんともいえず悲しい。最晩年の彼にまつわるエピソードは『ジャコはもうだめだ』的なものばかりが海を渡って聞こえてきた。そしてそのとおり、だめだった。35歳、駆け足で過ぎていってしまった。歌うようにメロディアスなベース、今日ではコンピュータで簡単にできるかもしれないが、人間がナマで弾いてるとは、信じられないようなフレーズ。かと思えば、ウッドベースのような柔軟な音を出す。柔軟でいてきれのいい、重厚な音を。今はなき『オーレックスジャズフェスティバル』で来日した折の演奏だ。当時ナマで聴きにいけなかったことが悔やまれる。20年もの時が流れても古さを感じさせない。20人あまりのビッグバンド゛ワードオブマウス゛(彼のソロデビューアルバムと同名)を率いて重量感のある音を聞かせる。このバンドも個性のあるリーダー格のメンバーが揃っているが、それもジャコのカリスマ性のなせる技か。「Invitation」でのランディ・ブレッカーのトランペットもいい。疾走感が心地よい。定番「The Chicken」の重厚感ある音の作り、浮遊感のある「Continuum」ベースソロからブラスセクションと重なるあたりの音が好きだ。ジャコ自身のおもいでがいろいろと詰まっているという「Liberty City」を経て、「Three Views Of A Secret」へ。この世で一番美しい部類に入るバラードだ。村上ポンタ秀一さんのレーベル名もスリービューズというがここから取ったのだろう。トゥーツ・シールマンスのハーモニカがいい。もともとは自身のソロ第1作『Word Of Mouth』に入れようと作った曲だが、初収録はウェザー・リポートの『ナイト・パッセージ』だ。バラードとはただスローなだけではいけない。ジョー・ザビヌルの『ジャコの最高傑作だ』とのセリフに激しく同意。デューク・エリントンの名曲「Sophisticated Lady」でのトゥーツもいい。トゥーツのハープに皆が合流してくる最後の1分40秒が好きだ。「Okonkole’ Y Trompa」でのジャコ、ドン・アライアス、ピーター・ゴードンの3人が出す音の広がりは、この人数で出しているものとは思えない。トレーンの「ジャイアント・ステップス」を間にはさんでいる「Reza」も面白い。最後の「Eleven」はギル・エバンスとマイルスの作品だ。この曲を好んで取り上げたのはジャコがギルを敬愛していたからだろうか。いまだにジャコの未発表音源はどんどん出てくる。最晩年の演奏は聴けたものじゃないし、聴く気はしないが。やはり彼の死を一番悲しんだのは、ピーター・アースキンじゃないかとこの作品を聴き終えた時思った。ジャコの生演奏のビデオ、どこに行ったかなあ・…明日探そう♪