ノスタルジー
隔週コラム KUNIノスタルジーヒマラヤのナガルコットより、一人旅をしている友達からからメールが届いた。かれこれ、10年前にその地に自分もいたのだと思うと不思議な感覚に包まれる。シンとしたお寺でお茶をだされ、ふと縁側でリラックスしてあたりを見渡す瞬間にもやってくるあの感覚。陽気で穏やかな空気が拡がる、アウトドアカフェで現地のビールを飲みながら迎えるサンセットタイム。雨の夜、旧式の車から流れる当時の彼女とよく聞いた音楽。生まれ育った街の商店街の変らない路地やさびれた居酒屋、無くなってしまった惣菜屋。その感覚が訪れる度に、時が経った事を肌で感じ、年を重ねるのも悪くないと思うのだ。高価な時計やアクセサリーを身につけても、さほど、人生は変らないと思うが、たった一冊の本や一曲が、人の人生を大きく左右することのように、どんなに小さい過ぎ去った体験や出会いも、胸に残る記憶はふとした瞬間に音や匂いとともに甦り、再び、自分をその世界へ酔わせてくれ、熱くなりすぎた気分を冷ますチル的な瞬間をくれる。