小説家の森村誠一氏が本日亡くなられた。享年90歳。
どうも私はちょっとやりきれない気持ちだ。わずか5日前の7月19日のこのブログに、私は、731部隊に関する重要資料が国立公文書館で発見されたという報道をめぐって、わずかばかりの記事を書いた。そして追記として、森村誠一氏が1980年代初頭にこの部隊について取材し、著書を刊行されたことを述べた。しかし森村氏は自己の主張を逸まるあまり、証拠写真を誤認し、公式に謝罪するはめになった。歴史検証には往往にしてある主義主張による逸脱を、森村誠一氏は起こしてしまった。私は申し訳ないと思いながらも、森村誠一氏が優れた小説家ゆえに、あえて例にとった。
じつはただ一度、私は森村氏を実際にお見かけしていた。ずいぶん昔だ。たしか新宿・紀伊国屋書店においてだった。森村氏は新著を出版し、そのサイン会のために来店されたのではなかっただろうか。私はあわただしく何かの本をさがしていたので、サイン会の列に並びはしなかったが、初めてお見かけした森村氏がずいぶん小柄な方だなという印象をもった。
『高層の視覚』『腐食の構造』『空洞の怨恨』『人間の証明』『野生の証明』『悪魔の飽食』など著書多数。
護憲作家であった。またひとり残念な方が亡くなった。
森村誠一氏を追悼いたします。