木星の4つの衛星
アーサー・C・クラーク原作で、スタンリー・キューブリックが1968年に監督したSF映画の金字塔「2001年宇宙の旅」は、米国議会図書館によって「文化的、歴史的、美学的に重要」とみなされ、最も偉大で最も影響力のある映画作品の1つとして知られてますね。この作品のクライマックスでは、宇宙船ディスカバリー号が木星探査に赴きますが、船長のボーマンは最後に光に包まれた胎児に変貌し、人類を超越した存在「スター・チャイルド」へと進化を遂げます。映画「2001年宇宙の旅」の続編「2010年宇宙の旅」は1985年に公開されました。2010年宇宙の旅では木星が大爆発して、第2の太陽になり、木星の衛星「エウロパ」の氷の下に水棲生物が生息し始め、約1万8千年後の20,001年には別の人類が生活し始めるのです。エウロパの大きさはお月さまよりまだ小さいです。しかし比較的明るい衛星で、地球からは双眼鏡でも観察できます。エウロパを含む木星の大型衛星は他にイオ、ガニメデ、カリストの合計4個ですが、もっと小型のも含むと木星には全部で80個もの衛星が見つかってます。4つの大型衛星は、1610年にガリレオ・ガリレイによって発見されので、ガリレオ衛星とも呼ばれてますね。ガリレオ衛星のうち、一番木星に近いイオはわずか2日弱で木星の周りを一周します。そのガリレオ衛星のうちエウロパには、100万人が呼吸できる酸素を生成していると先日報じられました。エウロパの地表面を覆う氷の下に液体の水があり、二酸化炭素の存在までこれまで明らかにされてきました。そして、NASAの木星探査機「Juno(ジュノー)」がこのほど送ってきたデータによって、毎日1,000トンもの酸素が生成されてることが判明したのです。明らかになったのは、木星周囲の荷電粒子がエウロパの地表面の氷に衝突すると、水素と酸素が生成されているという事実。酸素生成量24時間ごとに1,000トンは、単純計算で100万人が呼吸するのに足る量だとか。この生成量だけを聞くと、ものすごい酸素がエウロパにあるのでは?と、思いがちですが、科学者たちはもっと多くの酸素がエウロパで生成されていると考えていました。当初の推定量では毎秒1,000トンの酸素がエウロパで生成されていると期待がかけられてたんです。日に1,000トンの酸素というと、毎秒約11.8kg の生成量になります。もし、この酸素が氷の下にある液体の水にも存在していれば...映画「2010年宇宙の旅」に描かれた世界が現実のものになるかも知れません。巨大ガス惑星「ガニメデ」は、太陽系にある衛星の中で半径、質量ともに最大です。直径は約5,300km 、惑星の水星より8%大きいですが、質量は水星の45%にとどまります。木星探査機Juno は、ガニメデの極と赤道の間に広がる煌めくオーロラを発見しました。木星の第1衛星「イオ」は、太陽系の衛星の中で4番目に大きく、また最も高密度の衛星です。それとともに太陽系の中で最も水を含む割合が少ない天体でもあるんですね。ところが、イオには400を超える火山があり、太陽系内で最も地質学的に活発な天体なんです。それは木星とエウロパ、ガニメデとの重力相互作用に伴うイオ内部での潮汐加熱が原因してます。いくつかの火山は硫黄と二酸化硫黄の噴煙を発生させており、その高さはイオ表面から500km にも達してます。火山とは別に100以上の山も見られ、これらのうちいくつかはエベレストよりも高いのです。イオの表面の大部分は、硫黄と二酸化硫黄の霜で覆われた広い平原でできてます。そのイオで最も強力な火山が爆発寸前と報じられたのは2019年のことです。ロキと名付けられたこの火山は、ハワイにあるNASAの赤外線望遠鏡を使用して観測されました。ロキは差し渡し約200km 、広さ2万平方km 以上にも及ぶ火山噴火口エリアです。初めてイオの明るさの変化が発見されたのは1970年代で、1979年に探査機「ボイジャー1号」「2号」による探査から、明るさの変化の理由は火山活動であることがわかりました。ロキの一端から別の端に向かって、表面温度が徐々に高くなっていくことが赤外線望遠鏡の観測で分かりました。これは、1日あたり1km ほどの速さで西から東へと動く2つの溶岩の波が、このエリアの溶岩湖を転覆させている(表面と地下とが入れ替わる)結果らしい。しかし、今の時点でもロキの大噴火は観測されてないのですね。イオから流出する火口からの噴出物や、火山噴出物が降り積もってできた硫黄酸化物の霜が太陽光や溶岩によって昇華した物質が宇宙に飛び散る量は毎秒1トンに及び、木星磁気圏内のプラズマの質量の9割を担うプラズマ源となってます。ガニメデに次いで2番目に大きい木星の衛星「カリスト」は、太陽系の衛星の中ではガニメデと土星最大の衛星タイタンに次ぐ3番目の大きさです。直径は4,821km と水星とほぼ同じ大きさですが、質量は水星の1/3しかありません。比較的明るい星で、時期さえあえば双眼鏡でも観察できます。カリストは岩石と氷がほぼ同量でできてます。地表の化合物は、水氷、二酸化炭素、珪酸塩、有機化合物です。ガリレオ探査機による探査では、カリストは小さい岩石の核を持つ可能性があり、深さ100km 以上に水の内部海を持っている可能性があるとされました。カリスト内部に海が存在するかも知れないと云うことは、生命が誕生してる可能性があると云うことですが、その可能性はエウロパに比べると低いと考えられています。ただパイオニア10号からガリレオやカッシーニに至るまで、多数の探査機の観測で、カリストの放射線強度は低いため、人類が将来木星系の探査を行う際に基地を建設する場所として最も適していると考えられてます。