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テーマ:洋楽(3396)
カテゴリ:70年代洋楽
直訳すると、そういうコトだ。 素晴らしい表現である。 破壊力あるR&Rと"やらせ"たっぷりのプロモーションでムーヴメントを作り出し、そしてあっという間に消えたこのバンドにぴったりではないか。 そうともさ。ロックなんてそもそも高尚なものでもなんでもないし、僕らが信じているものの大半はデッチ上げであり幻想なのだ。 音楽はもちろん、セックス・ピストルズの言動やエピソードについては、あらためてここで触れるまでもないだろう。 彼らの音楽は本物だったが、それだけで売れるほど世間は簡単じゃない。 ピストルズの仕掛人であり、かつてニューヨーク・ドールズのマネージャーも務めていたマルコム・マクラーレンはそれを分かっていたし、流行は"作られるもの"であることも知っていた。 マルコムの二枚舌と巧妙な戦略は、バンドの個性や当時の世間的(あるいは音楽的)状況と有機的に結びつく。 結果、ピストルズはセンセーションを巻き起こし、そして頂点に達した所で自爆した。 アルバム『Never Mind The Bollocks』が日本で発売されたのは'78年の1月だ。 だがその時には、ジョニー・ロットン(Vo)の脱退によりバンドの実質的な生命は既に尽きていたのである。 にも関わらず、商魂たくましいマルコムはさらにピストルズを利用しようとする。 '79年、ジュリアン・テンプルを監督とした映画『The Great Rock'n Roll Swindle』が公開された。 マルコムを語り手とした「ピストルズのドキュメンタリー」とされる内容で、後にマユツバ(全てではないが)であることが判明するまでもなく、インチキ臭さが全篇に漂うバカバカしくておかしい作品となっていた。 「The Great Rock'n Roll Swindle」はそのタイトル曲だ。 同名のサウンドトラック・アルバムに収録。 クレジットはスティーヴ・ジョーンズとポール・クック、そしてジュリアン・テンプルとなっている。歌詞はともかく楽曲面で中心となっているのはおそらくスティーヴだろう。 「Anarchy In The UK」、「God Save The Queen」といった有名曲を作ったのはグレン・マトロック('77年2月に脱退)だったが、スティーヴのポップ・センスもなかなかのもの。そのことがよく分かる一曲だ。 反面、演奏こそスティーヴ、ポール、シド・ヴィシャス(※)の三人が担当しているものの、ヴォーカルは、テキトーに集められたガキ共に代わるがわるとらせるというフザケたものでもある。 映画では「誰でもピストルズになれる」というフレーズのもと、オープニングで小気味よく流れていた。 曲はスティーヴのギターを軸として、ストレートに演奏される。 ジョニー・ロットンのいないピストルズ。当然ここには緊張感もオーラもない。 ヴォーカルも、テンポール・チューダー他そこらへんのガキ共に歌わせただけあって、本来ならとても聴けたものではないのだが、コミック・ソングだと思えばこれもアリだし、このいい加減ぶりが楽しさを醸し出していることも事実だ。 何よりメロディは親しみやすいし、演奏にも躍動感がある。 特にタイトル・フレーズを連呼するラスト部分はキャッチーさと賑やかさにあふれており、思わず一緒になって歌いたくなってしまう。 曲自体はいいと思うだけに、企画モノとして片付けられてしまったのが残念。 しかし、このアホらしさもまたピストルズだ。 '79年10月にはシングル発売もされ、全英21位まで上がる中ヒットとなった。 '94年に発刊された『ロック・オルタネイティヴ』という本の中で、ライターのひとりである北中正和氏は「往年のパンク・バンドの再結成が相次いでいるが、ピストルズだけはそんな事をしないでほしい」と書かれている。 おそらく多くの人が同じことを思っていただろう。 だが、彼らはそれをやってしまった。 1996年、ピストルズはオリジナル・メンバーで再結成し、"集金ツアー"と釘打って来日までしてしまった。 彼らは"伝説"であり続けることよりも、「ジジイになって帰ってくる」ことを選んだのだった。 新曲は作らず、言い訳めいたことやキレイゴトを一切言わない姿勢もいさぎよかった。 ロックの歴史をひっくり返し、多くの人間に幻想を抱かせ、そしてそれを自らブチ壊したセックス・ピストルズ。 まさに偉大なるロックンロールの詐欺師。 そういえばジョニー・ロットンが脱退前日のステージで、観客に向かって最後に言った言葉は 「アーハハハハ、ダマされた気分はどうだい?」 だった。 んでもって、死にかけたロックを蘇生させた張本人のひとりにも関わらず、脱退時のコメントは 「ロックは死んだ」 だったっけか。 メンバーの歳が五十を過ぎた2007年、ピストルズは二度目の再結成を果たす。 そして今年の八月には「サマーソニック・フェスティバル」の参加バンドとして、彼らはふたたび日本の地を踏む。 もう「勝手にしやがれ」ですな。アーハハハハ ステージの幕開けにはぜひ「Great Rock'n'Roll Swindle」を演奏してほしいと思うワタシでした(ありえないだろうけど)。 つーコトで「The Great Rock'n Roll Swindle」を聴くにはここをクリック。 クソジジィ共に乾杯! ※ シドは実際には演奏してない可能性もある お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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