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テーマ:洋楽(3396)
カテゴリ:90年代以降の洋楽
「Race For The Prize」。'99年のアルバム『Soft Bulletin』の冒頭を飾るリリカルなナンバーで、このバンドの代名詞といえる名曲である。 その年に出会った曲の中では、個人的ベスト5に入る一曲でもある。 フレイミング・リップスはウェイン・コイン(ギター、ヴォーカル)とマイケル・アイヴァンス(ベース)を中心に1983年米はオクラホマにて結成。1984年に自ら立ち上げたレーベルからEPでデビューしている。 80年代はインディを通して活動し、4枚のアルバムを発表。'92年にワーナーと契約し、メジャー・デビューを果たす。 自分が初めて聴いたリップスの曲は、'93年のシングル「She Don't Use Jerry」である。 簡単に言うと、「ポップ寄りのヘタウマ系ガレージ・バンドだな」という印象だった。時代が時代だっただけにオルタナ/グランジの香りもあった。 アルバム『Transmissions from the Satellite Heart』('93年)も評価が高く、自分も「悪くない」とは思ったが、だからといってさほど興味をひかれるほどでもなく、リップスのことはそれっきり忘れていた。 自分がリップスと再会することになるのは、それから六年後だ。 先述のアルバム『Soft Bulletin』がそれだ。メジャーからの5枚目、インディ時代から数えて通算9枚目のオリジナル・アルバムである。 当時レッチリやベック、ジャミロクワイなどの新譜を聴いていた自分は、リップスについては「ふーん、まだ頑張ってるんだ」くらいにしか思わなかったのだが、そのアルバムはやたらと評判になっているので聴いてみることにした。 で、アルバムの冒頭を飾る「Race For The Prize」である。 相変わらずの、ゆるゆる系オルタナ・ロックなのかな、と思ったらみごとに違った。 カウントする声に続いて流れてくるのは、硬質で力強いドラムと、あふれ出るようなストリングスだった。 聴いた瞬間、「おお!」と思いましたね。こいつら化けやがったな、と。 この曲の印象を一言で表すなら、それは「美しい」である。 メロディがよく出来ている。もちろんそれもある。 が、ソフトでクネクネしたシンセ・ストリングスと、ヘタウマをひきずったガレージ・サウンドの組み合わせは白昼夢のようだ。 そこにウェイン・コインの頼りない歌声が重なった時、なんともストレンジで愛おしいリップス・ワールドが完成する。 それでいて全体の印象はスケール感があり、とてもキャッチーなのだ。 無垢でキラキラとしていて、どこか哀しい響き。 「ポップ・シンフォニー」と呼んでもいい趣はビーチ・ボーイズの『Pet Sounds』に通じるものがある……かも。 胸を揺さぶられる、極上のリップス・ナンバーです。 アルバムには他にも「A Spoonful Weighs A Ton」、「Gash」、「Feeling Yourself Disintegrate」など、哀しくて美しい佳曲がてんこ盛り。 試聴をしてみて気に入ったら、聴いてみそ。 リップスはもちろん今でも元気に活動中さ つーコトで「Race For Prize」を聴くにはここをクリック。 ええ曲や~ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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