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テーマ:洋楽(3394)
カテゴリ:70年代洋楽
誉めているのかケナしているのか、書いている自分もよく分からないのだが、とりあえずこれは事実だと思う。 実際、アレックスという人は、好きな人にとっては"神レベル"なアーティストかもしれないが、そうでない人には「誰それ?」な存在ではないかと。 それくらい、落差のある才人なのだ。 パワポオタである自分にとっては、当然、前者なワケだが。。。 メンフィス生まれのアレックス・チルトンが世に出たのは'67年、16歳の時である。 ブルー・アイド・ソウル系グループ、ボックス・トップスのヴォーカリストとしてだった。 代表作として知られる「The Letter(あの娘のレター)」は、'67年9月に全米1位を記録。 ジョー・コッカーにも歌われたこの曲は、60年代ヒット・ポップスのファンなら知っている人も多いだろう。 しかし、チルトンの本領はボックス・トップスを脱退した時からはじまる。 地元メンフィスに戻ったチルトンは'71年、高校時代の級友であるクリス・ベルと、そのバンド仲間だったアンディ・ハメル(b)、ジョディ・スティーヴンス(Dr)とともにビッグ・スターを結成する。 バンド名は、彼らが見たスーパーマーケットの店名から取られたという。 エルヴィス・プレスリーの故郷でもあるメンフィスは、黒人音楽のメッカとして知られていたが、チルトンやベルの指向していたものはそれとは全く違っていた。 二人が作ろうとしたのは、"60年代ブリティッシュ・ビート"風のギター・ロックだった。 それは、ビートルズやキンクスなど、彼らが少年時代に親しんだ音楽へのオマージュでもあった。 チルトンとベルの共作を大半とした12曲は、ビッグ・スターの1stアルバム『No.1 Record』('72年、上ジャケット)としてまとめられた。 そこにおさめられた音楽は、「ビートルズのコーラスと、キンクスやThe Byrdsのギター・サウンドを合体させた」という形容がふさわしいものとなっている。 のちに"パワーポップのルーツ"とも言われるこのサウンドは、今聴いてもシンプルで強く、美しい響きをたたえていると思う。 「Ballad of el Goodo」はアルバムの二曲目に配された、アコースティック風味の名曲。 クレジットはアレックス・チルトンとクリス・ベルの共作となっているが、楽曲およびアレンジはベルの個性が色濃く出ている。 あたたかな感触を持つギター・サウンド、センシティヴなメロディは、素晴らしいの一言。サビ部分の広がるような美しさは特筆ものだ。 計算されたコーラス・ワークにも注目したい。独特かつ清涼感あるハーモニーが曲の完成度を高めている。 演奏はタイトに引き締まっており、そのせいか、バラードでありながら湿っぽくならない絶妙の仕上がりとなった。 ちなみに、アレックス・チルトンの唱法はボックス・トップス時代のものとはまったく異なっており、言われなければ「The Letter(あの娘のレター)」と同じ歌い手だとは誰も気づかないだろう。 それほどまでにこの曲は美しく、そして繊細だ。 アルバム自体も素晴らしい出来で、一部の評論家からは高い評価を受けたという。 だが、事実上のインディ扱いだったこともあり、何のプロモーションもされなかったこの作品は、当時まったく売れなかった。 そのうえ、チルトンと音楽的に対立したクリス・ベルは程なくバンドを脱退。 ビッグ・スターは、チルトンを中心としてさらにアルバムを二枚出すがやはり売れず、そのまま消滅してしまう。 クリス・ベルは、正式な音源を発表することも出来ないまま、'78年に交通事故で死去。 チルトンはその後もソロ活動を続け、ロカビリー・バンドで演奏したりもするが、一時はレストランで皿洗いをするまでになってしまったという。 才能に恵まれながらも、時代の中で居場所を見つけられなかった男達の悲劇だった。 だが、ビッグ・スターおよびチルトンの名は、アンダーグラウンド・シーンの中で生き続け、次世代のミュージシャン達によって再びスポットを当てられる。 '86年にメジャー・デビューしたバングルズは、1stアルバムの中で「September Gurls」をカバーしていた。 リプレイスメンツは、'87年のアルバムで「Alex Chilton」というその名もズバリの曲を収録している。 その後もR.E.M、プライマル・スクリーム、ティーネイジ・ファンクラブといったバンドの後押しにより、チルトンの評価はウナギ昇りとなる。 '93年には、ポウジーズのメンバーを加えた編成でビッグ・スターは再結成された。 '94年には、幻とされていた1stと2ndがCD化され、その素晴らしさが若い世代にあらためて知られることとなった。 '05年には27年ぶりのオリジナル・アルバム『In Space』も発表され、'06年にはトリビュート・アルバムも出ている。 そういえばチープ・トリックも近年のライヴで、ビッグ・スターの曲をカバーしていたっけなぁ。 ポップで美しく、だけどコマーシャリズムに媚びない鋭さを持ったビッグ・スターの音楽は孤高であり、これからも輝きを失わないと思う。 愚直でガンコ親父面で、本能のままに、だけどいーかげんに現在も音楽活動を続けるアレックス・チルトン。 優れたメロディ・メイカーでありながら時々トチ狂ったようなこともするこの男には、カルト・スターの称号がふさわしい。 クリス・ベルも草葉の陰でほくそ笑んでいることだろう。 ビッグ・スター名義でのアルバムはすべてが必聴! つーコトで「Ballad of El Goodo」を聴くにはここをクリック。 元祖パワーポップともいえる名曲「September Gurls」(2ndアルバム収録)はこちら。 ※ポム・スフレのメインHPではクリス・ベルのソロ・アルバムについて取り上げられています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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