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テーマ:洋楽(3357)
カテゴリ:70年代洋楽
地味だけど滋味。 英国音楽史の片隅で、ひっそりと輝くやさしい歌。 2002年にCD化されたアルバム『Ernie Graham』(上ジャケット)は僕の宝物のひとつだ。 アーニーは北アイルランドのベルファスト出身。 ヘンリー・マッカロック(※)と組んだエアラ・アパレントというグループで'69年にデビューしている。 エアラ・アパレントの解散後、アーニーは当時ブリンズレー・シュウォーツ(過去ログ参照)を手掛けていたデイヴ・ロビンソンに見出され、ソロ・アルバムを制作することになった。 そうして生まれたのが、自らの名をタイトルに冠した『Ernie Graham』である。 '71年に発表されたこのアルバムは、パブ・ロックあるいはシンガー・ソングライター系の名盤として、昔からマニアに人気の高い一枚だ。 「Sebastian」はその冒頭を飾る"いぶし銀"の名曲。 アーニーの作詞、作曲によるこのナンバーは、ボブ・ディランを穏やかにしたようなフォーク・ソングで、じんわりと心にしみる仕上がりとなっている。 コード・ストロークによるアコースティック・ギターの音色がなんともいえない情緒と哀感を漂わす。 浮かんでくるのは、秋枯れの葉がしげる英国の田園風景だ。 アーニーの涸れた歌声は、素朴であたたかな味わいに満ちている。 メロディは地味だがとても美しい。 シンプルな演奏も奥深く響いてくるこの曲は、思わずホロリとくる英国音楽の佳品です。 アルバム『Ernie Graham』は、これの他にも素晴らしい曲がいっぱいの名盤(くわしくはこちらを参照)。 だが、今でこそ高い人気を得る本盤も当時は全く売れなかった。 アーニーはその後、ヘルプ・ユアセルフをはじめとしていくつかのセッションやバンドを渡り歩くが、成功とはまったく無縁。 ソロとしても、シングルを一枚リリース(シン・リジィのカバーだった)したほかは、作品発表の機会にめぐまれることはなく、'01年にこの世を去ったという。 生涯、貧困にあえぎ、晩年はアル中だったという悲しい男アーニー。 だが、アーティストはいなくなっても作品は残る。 アルバム『Ernie Graham』は、これからもひっそりと聴き継がれていくに違いない。 彼の歌声を聴くたびに、僕はそう思う。 「Sebastian」を聴くにはここをクリック! ※ グリース・バンド→ポール・マッカートニー&ウィングスのメンバー お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.09.24 06:15:11
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