|
カテゴリ:教授の追悼記
フランス文学者で詩人、さらに宮沢賢治研究家としても知られる天沢退二郎さんが亡くなられました。享年86。
天沢さんというと、私にとって一番印象深いのは『謎とき・風の又三郎』という本。 これこれ! ↓ 【中古】謎解き・風の又三郎 天沢退二郎 丸善ライブラリー新書版 『謎とき・・・』というタイトル通り、宮沢賢治の『風の又三郎』にひそむ不思議な矛盾点に着目し、そこに本作の本質的な意味を見抜くという内容で、読んでいると何だか背筋がぞわぞわするようなところがある。この本を読む前と後では、間違いなく『風の又三郎』の読み方が変わってくるという点で、一般向けの本であると同時に非常に優れた研究書でもありました。 ちなみにこの本には『風の又三郎』の冒頭に出てくる「どっどど」の歌についての説明があるのですが、その部分を読んだ時も、私は非常にビックリした覚えがあります。 本作の冒頭に「どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹きとばせ すっぱいかりんも吹きとばせ」という一節が出てくるのですが、普通、あれは どっどど どどうど どどうど どどう と読むのだろうと人は思っているわけですよ。だってそう書いてあるんだから。ところが、あれは本当は、 どっ! どどどどう! どどどどう! どどう と読むべきものである、というのですな、天沢さんによると。 なぜ天沢さんがそういう説を唱えたかというと、宮沢賢治自身がそのように朗読していたから。しかも、ここは絶叫するように読むべきだと。 実際、「どっ! どどどどう! どどどどう! どどう」という風に読んでみると分かるのですが、こういう風に読むと、本当に嵐の感じが出るんですよね。確かに嵐の時の風って、わーーーっと吹いてきたかと思うと、急に収まったりする。その感じが、このように読むと本当によく伝わってくる。 なるほど! と思いません? だから天沢さんというと、私はすぐこの「どどどどう!」を思い出してしまうの。このことを教えてくれたすごい人、という意味で。 私も自分の書くものの中で、一つでもいいから読者の記憶に残る一節を書きたいと思うのですが、その意味では天沢退二郎さんは私の目標の一人でもある。 そんな天沢さんのご冥福をお祈りしたいと思います。合掌。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 28, 2023 09:13:35 PM
コメント(0) | コメントを書く
[教授の追悼記] カテゴリの最新記事
|
|