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BARで描く絵日記

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2010年03月26日
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 東フィルの定期公演の感想です。

 3月は11日のオペラシティに行けなかったので、昨夜のサントリーホールに振り替えて、若手指揮者の川瀬賢太郎が振るベートーヴェンを聞きました。



【1曲目 シュレーカーのオペラ「烙印を押された人々」序曲】

 20世紀前半のドイツで活躍したオペラの作曲家だそうです。初めて聞きました。シャンパンが噴き出してこぼれて流れていくような音楽でした。この1曲だけではとらえどころがないので、また機会があれば他の曲も聞いてみたいです。でも、オペラは値段が高いからなあ。



【2曲目 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番】

 「エンペラー」というあだ名がつけられたアレです。ラフマニノフの第3番やラベルのそれと並んで、僕の大好きなピアノ協奏曲のひとつ。なんといってもこの背筋がピンとなる気高さがいいんですよね~。

 ピアノは日本ピアノ界の至宝・中村紘子。クラシックのクの字も知らない人でも名前くらい聞いたことがあるだろうと、かみさんに聞いてみたけど「誰、それ?」と言ってました。

 ど素人が言うのもなんだけど、印象はいまひとつかな。ピアノもオケもまだ余力を残しているといった感じがします。この曲って、崇高で華やかで激しく誇り高いじゃないですかあ。だからもっとこう、ロマンチシズムとは無縁な非人間的なターミネーター的な力強さが欲しいんですよ。

 その点で、中村紘子はとても人間らしくて物足りない。オケだってもっとピアノを突き放すくらいの自尊心と輝きが欲しい。特に第3楽章では、もっとガツーンっと鳴らして欲しかったなあ。うまくまとめちゃってなんかつまんない。

 視覚的には、若君と老練なお局の組み合わせは、官能小説によくあるテーマの一つ「義母との情事」っぽくて、見てはならないものを見ているような背徳な香りがほんのりと漂っておりました。

「こ、こ、ここで激しく、一気にイキタイんですけど、いいですか?」
「ああケンちゃん、あなたの好きにしていいのよん、でもここはもっとじらすように・・・」
「わ、わ、わかりました、おばさま」
「いやっ、ヒロコって呼んで」

って感じ。

 音楽であれだけ濃厚なコミュニケーションをするのだから、もっと他の形でのコミュニケーションもできなくはないはずだよなあ、うん。


img010mini.jpg


【3曲目 ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」】

 皇帝のあとに運命かよっ。その正統過ぎる組み合わせに違和感もありましたが、こっちの方がなかなか良かったです。有名曲だけにミュージシャン達はわかっているし、指揮者もおばさまの女性上位から解放されて存分に振ってました。

 オケもつられて元気いっぱい生き生きと鳴らしていて、脊髄で感じられるような快感。若いんだから、もう一回できるよね、みたいな。

 あの「じゃじゃじゃじゃーん」のところはどう振るのであろうかという素人的な興味もありますよね。「ぞぞぞ~っ」ってゾンビが這い出す感じの振りつけでした。わかるかなあ、わかんねえだろうなあ。

 ただ、バーンっと一気に鳴らす直前に、毎回のようにシューッって音立てて息を吸うの、やめて欲しいですね。蛇語なんですかね、あれ。っていうかそれが聞こえてる僕も蛇語が使えるってことなんですかね。つい気になっちゃうので、せめてもっと短めにシュッくらいにしてください。

 もうひとつ、2階のちょうど須田ッチを正面から見下ろす席だったので、ピアノの障害もなくなったおかげで彼女の姿をたっぷり観察できました。

 いつものようにシャーマン・須田ッチ(ビオラの須田さん)は髪を振り乱して踊り狂っていました。演奏前には髪も整っており教育ママ的な理知的な風貌なのですが、曲が始まった途端に人格が変貌し獣性が露わとなります。肉を引きちぎる勢いで激しく頭を揺らすので、たった1分後にはもう髪はバラバラ。あれじゃ、髪が邪魔で楽譜なんて見えないでしょう。

 正面から見てるのに、なぜかときどき彼女の背中さえ見えます。椅子の上には半ケツしか乗っておらず、興奮する場面になるとその半分すら浮いていて、勢い余って立ち上がってしまうのではないかと、ドキドキハラハラしてしまいます。

 いや~、彼女ってば、ほんと最高っ。若手指揮者もけっこう踊るポンポコリンタイプだったので、ぜひまた共演して欲しいですね。





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最終更新日  2010年03月26日 20時15分46秒
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