上野〈ゴッホ展〉に行った
今年最初の美術展として〈ゴッホ展〉に出かけた。ーーーーーーーーー〔Part I ハーグ派に導かれて〕独学からの一歩:板や紙の上にスケッチされたゴッホの最初期作品が並ぶ。技術的には稚拙で,色合いも少なく,ゴッホの手によるものでなければ美術館に展示されることが無さそうだ。ただそれを観ることが出来たのは貴重だ。ハーグ派の画家たち:ゴッホの習作に元となったと思われるハーグ派の作品が並ぶ。ミレーの『晩鐘』によく似た貧しい農民たちの姿が並ぶ。ゴッホの最初の師匠となったマリス3兄弟の作品も並ぶ。農民画家としての夢:さすがに技術的に向上した『農婦の頭部』『ジャガイモを食べる人々』などが並ぶ。なんだか風刺イラスト風だ。ーーーーーーーーー〔Part II 印象派に学ぶ〕パリでの出会い:印象派の洗礼を受けたゴッホだが,来たばかりの彼は『パリの屋根』『ブリュット・ファンの風車』など,まだまだ暗い作品を描いている。印象派の画家たち:ピサロ,セザンヌ,シスレー,モネ,ルノワール,ゴーギャンと印象派の小品が並ぶ。アルルでの開花:美術品というものは部屋の空気を一気に変えるチカラがある。それをまざまざと感じさせてくれるのがこうしたゴッホ作品だろう。オランダの暗い空気,印象派のあるがままの世界,そこから一気に強い光の中に歩み出したような画風だ。デッサンが歪んでいても『男の肖像』,変わったモチーフの『ぼさぼさ頭の娘』,そして南欧を感じさせる青紫の色合いの『サント・マリー・ド・ラ・メールの風景』。実に良い。さらなる探求:これこそゴッホという作品が続く。『サン・レミの療養院の庭』の緑色は美しいし,『薔薇』の淡い色合いも珍しい,そして『糸杉』は昼なのか夜なのか惹き込まれるような力作だ。ーーーーーーーーー入館に時間がかかったけれど,その価値はあった。上野の森美術館は驚くほど集客性の高い企画展を打つなあ。展示も混雑を見越して見やすい場所にプレートを表示する,部屋の入隅に作品を展示しないなど,よく練られている。新年最初の美術展は満足行くものだった。