『満島ひかり×江戸川乱歩 第3弾』を観た
満島ひかり主演で江戸川乱歩の短編集をドラマ化する企画の第3弾を観た。ーーーーーーーーーーー〈深読み読書会〉で江戸川乱歩の「孤島の鬼」を扱っていたが,その直後にこのドラマが放映されていた。NHKも実にあざといマーケティングをする。でもそのおかげで僕もこのシリーズを知り,観ることになった。満島ひかりは,前々から注目している女優で主演ドラマはなるべく観るようにしている。意図的に作りあげているのだと思うが,整った顔立ちと,演技派の暗い境遇の配役で,今回の企画に選ばれるにはぴったりのレトロな空気が漂う女優となっていると思う。ーーーーーーーーーーー各編について簡単に感想を述べる。『お勢登場』:格太郎の妻・おせいは,公然と不倫相手に会いに行く。それを苦々しく思いつつも,おせいに惚れている格太郎は離縁することは出来ない。おせいが出掛けている間に,息子・正一たちとかくれんぼをした格太郎は,長持だんすの中に隠れるがその蓋は金具が掛かってしまう。数時間後帰宅したおせいは,物音から長持の蓋を開けるのだが・・・白塗りのおせいこと満島ひかりが美しく,夫を演じる宮藤官九郎のルックスとの対比が実に鮮やかだ。まあ,こうした状況ならば,事件が起きても不思議では無いかな,と読者に思わせるのが見事だ。『算盤が恋を語る話』:ある会社の会計部のTは,女性とは話をすることが出来ない。けれども部下の美しいS子に惚れていて,自分の気持ちをソロバンに託して述べる。そしてついに彼の想いが通じ・・・これはキモイと思わせつつ,かなりリアルの恋心を描写していると思う。今の時代で言えば,SNSを監視していて,思わせぶりなメッセージをいくつも送り付ける,と変換してみると,今でも十分通用する短編だと思う。『人でなしの恋』:京子は町の名士で美男子の角野と結婚する。彼女はこの結婚に有頂天だったが,半年ほどすると,夫が自分との関係にどこか上の空であることに気付く。そして彼が夜に土蔵に行くことがることを知り,それを尾行し聞き耳を立てる。京子に聞こえてきたのは角野と別の女性の睦言だった。そして・・・映像的には素人くさくてふざけ過ぎだと強く感じたが,原作のチカラは間違いなく強い。ある謎解きを思いついたのだけれど,あっさりともっと単純でおどろおどろしい展開となっていた。映像はともかく,京子の行動はあり得るかも知れない。それにしても高良健吾はピッタリの配役だった。