りぶらりだいあり

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• 『エイプリルフールズ』を観た

  4月1日に合わせて放映された1年前の映画を観た。○ストーリーある4月1日に語られた嘘。それはある人を傷付け，けれども別のある人を勇気付ける。そうして歯車は回り人々は・・・－－－－－－－－－－－－－フジテレビと東宝の資本の映画で，『リーガル・ハイ』のスタッフが製作していることも話題になった。そちらは全く知らないが，『キサラギ』の脚本の古沢良太と聞くと，なるほど，と思う。2015年では，わざわざ4月1日に公開したらしい。なにしろ”4月1日，エイプリルフール”をテーマにした，嘘が嘘を呼ぶ群像劇だからだ。－－－－－－－－－－－－－物語は，複数のエピソードに分かれていて，それが並行して語られていく。「42年ぶり涙の生還」：42年間行方不明になっていた男が発見された。それは幼馴染の女性が捜索を続けていたからだった。だが・・・「僕は宇宙人」：いじめで不登校になっていた中学生の少年が，「やり残したこと」をするために登校する。彼はいじめていた同級生を殴り倒し，好きだった同級生にキスをする。そして・・・「ある大学生の行く末」：ルームシェアをしていた2人の男子大学生。1人がエイプリルフールのギャグで相手に告白をする。すると・・・「不器用な誘拐犯」：小学生の女の子が誘拐される。一度は警察が子供の家に詰め，誘拐対策本部を設立するが，誘拐犯の似顔絵から，犯人が離婚した実の父親のヤクザ者であることが分かると解散となる。父親が誘拐に踏み切ったワケは・・・「占い老婆の真実」：不吉な占いをして，除霊のお札を売りつける商法の老婆を，刑事が取り調べる。だが，その老婆の能力の真相は？・・・「ロイヤル夫妻の休日」：庶民の生活を体験しようとタクシーで都内を観光する櫻小路夫妻。だが彼らは逆に騒動を起こしてしまい。さらに・・・「イタリアンレストランでの大惨事」：ハンサムな医師と美人のCAが食事をしているところに，パジャマを着た妊婦が現れ，子供を認知しろと迫る。医師が断ったので，妊婦は拳銃を取り出して乱射を始める。そしてついに・・・－－－－－－－－－－－－－さて僕が『リーガル・ハイ』を観ていなかったからだろうか？キャストに有名俳優が驚くほど起用されているのは分かるけれど，だから？？？という印象で，盛り上がりに付いていけない。そして『キサラギ』でも気になった，過剰な演技。まあ，特に両方に出演している俳優さんだけれど，その漫才のような演技にゲッソリしてしまった。いつもは平気なんだけど，あまりにもくどかった。群像劇と言うから，きっとそれぞれのエピソードが密接に関わっていて，ドミノ倒し，バタフライエフェクトのように，最後に衝撃の事実がーーーっ，と期待したのだけれど，実はそれぞれがあまり関わらない。たぶん豪華キャストを起用した反動で，スケジュール調整が難しくて，それぞれのパートを別々に撮っているんだろうなあ。悲しいほどぶつ切りだった。観終えると，やはりそこが不満だ。最後にきゅっとまとめてもらいたかったのに，全く別のオチに逃げている，という印象ばかり残った。－－－－－－－－－－－－－勝手な感想ばかり述べたが，ちゃんと小学生に見える子役を起用したら，〈ロイヤル夫妻〉をここだけ浮いたエピソードにしなければ，〈イタリアンレストラン〉をもうちょっと落ち着いた物語にしたら，そしてそれ以外をばっさりと切り捨ててスリム化したら，けっこういい映画になった気がする。うーん，まだまだ三谷幸喜には勝てないね。

  2016.04.04

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• 『バットマン vs スーパーマン』を観た

  DCコミックスの2大ヒーローが激突するという大作映画を観た。○ストーリーゾッド将軍が地球を改造しようとし，それをスーパーマンは阻止した。だがその際にいくつものビルが倒壊し，甚大な被害が生じていた。その中に，ブルース・ウェインの会社もあった。幼い頃，街角で両親を暴漢に目の前で射殺された過去を持つウェインは，ウェイン財閥を経営する一方で，バットマンとして犯罪と戦っていた。彼は，スーパーマンの神のようなチカラは，いつか人類にとって脅威となると考えていた。天才科学者・レックス・ルーサーは，さまざまな謀略を巡らせ，2大ヒーローの対立を煽る，さらに切り札として？！－－－－－－－－－－－－－前作となるスーパーマン映画『マン・オブ・スチール』も重たい映画だったが，それにダークナイトことバットマンの世界観を加えるのだから，ますます暗く重たい内容になっている。輝ける救世主のはずのスーパーマンでさえ，都市の破壊，テロリストの殺害を罪に問われ，公聴会へと呼び出されてしまう。さらに怪物を宇宙に飛ばそうと飛んでいると，一緒に核ミサイルで迎撃されるという始末。これでは眉間のしわが深くなってしまうわけだ。一方のバットマンは，最初からスーパーマンを危険視して，「奴を倒す」と息巻いている。こうして決め付けるメンタリティには，ちょっと付いていけなかった。チカラを持つものが危険って，他から見れば自分自身だってかなり不気味な存在だろうに。不安定となっている2人の対決をプロデュースするのが，天才レックス・ルーサーだ。なかなかの存在感で，説得力があった。－－－－－－－－－－－－－この映画は2時間半と長尺だが，最初の1時間半は2大ヒーローの対決に向けて，否応なく盛り上がっていく。ルーサーの謀略に絡め取られ，孤独と対立を深める2人の姿は偏執狂じみていてかなり怖い。スーパーマンはバットマンのことを私刑めいたことをする危険な男，バットマンはスーパーマンのことを神として人類を支配しかねない存在，と思っている。あるいは思わされている。ルーサーが天才的な頭脳を持っているとは言え，すんなりと対決が実現したのは，やはり2大ヒーローが相手に対して最初からそれに近い考えを持っていたからだろう。スーパーマンは”世界の警察”としての表のアメリカを象徴しており，一方でバットマンは闇に隠れて犯罪者やテロリストを撲滅するCIA的な裏のアメリカを象徴している。その2つが相容れるはずがない。神のチカラに対抗するために，バットマンはアイ○○マンみたいな（汗）パワードスーツに身を包み，スーパーマンを弱体化する複数の手段を準備して戦う。この辺りの展開はひじょうに盛り上がる。最後にあることが起きて，決着は○○○○となる。その後の更なる展開は，前作以上の迫力で，しかも分かりやすいアクションで，進化を感じた。スピーディなのに，まとまりがあり，各キャラクターの活躍がきちんと描かれている。素晴らしい。－－－－－－－－－－－－－前作から引き続きスーパーマン，ことクラーク・ケントを演じているのは，ヘンリー・カヴィルだ。相変わらず太ももに筋肉が付いてしまっていて，スラリとした感じが薄いのが残念。今回からバットマン，ことブルース・ウェインを演じているのは，ベン・アフレックだ。かなり年配のウェインなのに，心に余裕がない。でも好きな俳優なのでうれしかった。突然の助っ人外人を演じているのは，ガル・ガドットだ。うーん，世の中にはきれいな人っていっぱいいるんだなあ。見とれた。この映画の立役者とも言えるレックス・ルーサーを演じているのは，ジェシー・アイゼンバーグだ。ザッカーバーグの演技そのままじゃん，とも言われているが，現代の経営者としての新しい悪役像を演じて見せた。最後どうなったんだろう？－－－－－－－－－－－－－この映画を基点としてDCコミックス版の〈アベンジャーズ〉である，〈ジャスティス・リーグ〉を映画化するらしい。マーベル・コミックの映画戦略に完全に出遅れたのは明白なのに，今から追いつけ追い越せ，って絶対無理なような気がする。同じ路線で攻めてもダメだろう。いっそ『vsシリーズ』として，世界観をクロスオーバーしたイロモノ系の方に逃げてはどうだろう？手始めに，『バットマン vs 仮面ライダー1号』はどうだろう？なんだか体型が似ているし。

  2016.04.02

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• 『ハンガー・ゲームFINAL：レジスタンス』を観た

  ヤング向け人気SF小説〈ハンガー・ゲーム・シリーズ〉の映画化第3作目を観た。－－－－－－－－－－－○ストーリー首都政府が残りの12の地区を厳しく支配する世界〈パネム〉で，人々の娯楽は地区対抗の〈ハンガー・ゲーム〉だけだった。この殺し合いゲームを生き延び，勝者となった第12地区の少女・カットニスは，翌年もゲームに召還されるが，その最中にレジスタンスに拉致される。目覚めたカットニスは，滅んだはずの第13地区の地下深くにレジスタンスの人々の国家があることを知る。壊滅した第12地区を目にし，彼女は彼らの海賊放送を通じ，首都への反抗の象徴となる。だが首都からの放送で，カットニスや人々に冷静な自粛を求めてきたのは，かつてのパートナー・ピータだった！！－－－－－－－－－－－2年前に前作を観た感想で，「第3作目に〈ゲーム〉は登場するか？」という疑問を呈した。それは首都政府の支配システムが崩壊していく中で，もう〈ハンガー・ゲーム〉を開催している場合じゃないだろう，という意味があった。確かに，予想以上に反乱の機運は各地で高まっており，首都は物資の補給や，電気の供給が不安定になっている状況だ。オリンピックゲーム的なものをのんびりと開催というワケには行かないみたいだ。ただそれ以上に，物語は地味だ。主人公はゲームどころか，戦闘も狩りも行わない。空爆で破壊された跡地に行って，涙ながらに”歌ってみた”を撮影して，それを放送しているばかりだ。やたらと地味な展開が続き，かなり退屈する。－－－－－－－－－－－どうやら第13地区は資源が不足していて，贅沢は禁止で，服装も工場作業に着るようなツナギ，ペットも禁止，やたらと時間と生産性に厳しいという制度らしい。ぶっちゃけ，それって首都政府と変わらないじゃない，と思うけれど，その疑問は誰も感じないらしい。とにかく，その関係で，画面も地味，物語も地味，アクションも薄い，という苦行が続く。－－－－－－－－－－－行動が伴わないと，主人公・カットニスを演じるジェニファー・ローレンスは，頬骨が高く，田舎っぽい顔立ちなので，物語を引っ張る器には見えなくなる。金髪を黒髪に染めているのもマイナスだ。カットニスとの悲恋ということになっているピータを演じるジョシュ・ハッチャーソンだが，きれいな顔が邪魔をしていて，もうひとつ親近感が湧かない。（嫉妬か？）むしろカットニスの幼馴染のゲイルを演じるリアム・ヘムズワース（ソー，ことクリム・ヘムズワースの弟）の方が，ワイルドでお似合いだと思うなあ。－－－－－－－－－－－カットニスが出向いた先の病院は爆撃されてしまうし，猫を飼い始めたから妹はシェルターに入り損ねるところだったし，ピータは裏切り者扱いとなるし，なんだか主人公って逆に貧乏神じゃないの？という物語では，盛り上がらないよね。で，そのまま終わって，「続く」となる。いわゆるクライマックスに向けての雌伏期間なんだろうけれど，それを映画1本使ってやっちゃう，という自信がすごい。さすがは大人気シリーズだ。驕りとも言うけどね。まあ最終4作目を観てから，いろいろ判断をしたいと思う。

  2016.03.21

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• 『オデッセイ (The Martian)』を観た

  リドリー・スコット監督，マット・デイモン主演のSF映画を観た。○ストーリー火星に到着し30日間だけ滞在する予定だった〈アレス3〉計画は，突然の砂嵐で退避となった。その過程で事故死したと思われていたマークは生きており，誰かが気付き，助けてくれるまで，たった1人で火星で暮らすことになった。燃料も水も食料も不足する中，彼はどうやって暮らすのか？そしてそれを知ったNASAや，〈アレス3〉のミッションクルーたちは？－－－－－－－－－－－－－火星版〈ダッシュ村〉とも呼ばれている映画で，サバイバルのためにいかに自給自足生活を成立するか，というのが大きなテーマとなっている。主人公のマークは，宇宙飛行士というだけでなく植物学者なので，不足している食料をどうやって調達するのか？が前半の山場だ。でもその結果は，ひじょうにガッカリだった。さすがはアメリカ人の書いたSFだ。たった1種類の作物を育てて，それにケチャップを付けて食べることで満足している。日本人だったら，これはないよね？絶対複数の作物を育てて，しかもそれを毎日異なる調理法で仕立てて，初めてそれが人間の最低ラインの生活だと判断すると思う。「次に何を作るのかな？」と期待しつつ観ていたので，そこがちょっと残念だった。－－－－－－－－－－－－－と，最初に批判をしてしまったが，それ以外はとても真面目に製作してあると思った。『ゼログラビティ (Gravity)』や『宇宙兄弟』を研究したと思われる状況設定の中で，巨匠リドリー・スコットが「俺ならもっと上手く撮れる」と言って作ったんだろうと思う。なにしろNASAの全面協力だろ，とか，いろいろと予定調和的な部分があって，あまりハラハラしないのだけれど，ちょっとずつコネタで危機感をあおるあたり，もう上手いなあ，と感じた。皆が賢くて真面目で，それでも事故は起きてしまって，その中でどう問題を解決するか頑張る・・・って，書いているとウザいんだけど，映画としてはコネタで盛り上がるから大丈夫。－－－－－－－－－－－－－一番の違和感は，突然の中国の協力だ。しかも中国の宇宙開発局（？）は，ロマンスグレーの博士と美人補佐官だけで運営されているらしい。ハリウッドの白人礼賛主義も困るけれど，ここ3年くらいの突然の中国マンセーも露骨過ぎて呆れてしまう。製作に中国マネーが入っている，あるいはマーケットとして中国が見過ごせない，というのは分かるけれど，もうちょっとさりげなく出来ないのかなあ？－－－－－－－－－－－－－火星に置き去りにされる主人公・マークを演じるのは，マット・デイモンだ。説明は要らないと思う。そのミッションの隊長・ルイスを演じるのは，ジェシカ・チャステインだ。驚くほど多くの演技賞を受賞している女優だが，僕自身は『インターステラー』（これもSFだけど）の娘役・マーフしか観たことが無い。パイロット役のマルティネスを演じるのは，マイケル・ペーニャだ。『アントマン』『フューリー』などにも出ていた。スペイン系として売れている俳優だ。それ以外に印象的だったのは，NASA内部から，ミッションクルーを支援するオッサンのカプーアで，キウェテル・イジョフォーという嘘のような名前の俳優が演じていた。いろいろと政治的に大変なのは伝わった。－－－－－－－－－－－－－さすがはリドリー・スコット監督，NASA監修の映画で，エンターテイメントでありながら，美しいし，教育的だ。言うまでもなく冒険的要素も多いし，さりげなくユーモアも散りばめられている。それなのに，どこか毒が不足していて物足りない，と感じてしまうのは贅沢だろうか？どこか，優等生的過ぎるのが，その原因かなあ？

  2016.03.08

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• 『臨床犯罪学者 火村英生の推理』を観た

  本格ミステリー小説作家のリーダー・有栖川有栖が原作のミステリードラマを観た。○ストーリー若い女性を狙う連続通り魔事件が起きていた。被害者の口の中には，ホラーゲームを模して，あるものが入れられていた。京都府警の依頼を受けて，この事件に協力するのは犯罪学者の火村准教授と相棒の有栖川だった。彼らの目の前で新しい事件が起きるのだが？－－－－－－－－－－－－－正月明けの2016年冬シーズンは，仕事に追われてほとんどテレビを視聴していない。大河ドラマ以外で観ているのは，この1本だけだ。それもしばらく録画をするばかりで観るチャンスがなく，どんどん遅れている状況だったが，最近になりようやく追い付いてきた。－－－－－－－－－－－－－原作の有栖川有栖は，新本格ミステリーのエースとも言われ，品のあるミステリーをコンスタントに送り出している。このドラマは，有栖川有栖のメインシリーズである〈犯罪学者・火村英生シリーズ〉のドラマ化だ。新本格ミステリーの人気も，一時期のブームからは落ち着き，ミステリージャンルはまたまた混沌としている。このドラマも，その頃制作されればずっと話題になっただろうに。あの頃は”腐女子”という言葉は無かったが，島田荘司の〈御手洗潔シリーズ〉の探偵・御手洗潔と作家・石岡和己のコンビ，そして〈火村英生シリーズ〉の火村英生と作家・有栖川有栖のコンビなどは，一部の女性が妄想をたくましくして喜んでいた。このドラマでも若干，コンビを新婚夫婦っぽく描くなど，そうしたファンに媚びたところがある。まあ仕方ないけど。－－－－－－－－－－－－－主人公のキャスティングが，火村英生が人気俳優の斎藤工，有栖川有栖が人気急上昇の窪田正孝と，話題性が高い。2人ともハンサム，2人とも若い，という時点で，もう原作通りじゃないのだけれど，それは連続ドラマ化する段階の改善と前向きの捉えている。反面，設定はかなり原作に忠実で，火村は京都の私大で准教授をしており，京都で下宿住まい，一方の有栖川は大阪のマンションに住んでいる。火村の下宿のおばちゃんを演じるのは夏木マリだ。警察側は，原作では大阪府警が多かったのだが，なぜか京都府警に統一されている。真面目な鍋島刑事を生瀬勝久が，小町さんと呼ばれる小野刑事を優香が演じている。－－－－－－－－－－－－－ドラマオリジナルとして，火村の教え子の女子大生・貴島朱美を山本美月が，宗教団体〈シャングリラ十字軍〉の指導者・諸星沙奈江を長谷川京子が演じており，準レギュラーとして毎回登場している。〈火村英生シリーズ〉は女っ気が少ないので，謎の美女を出さないといけないのだろう。－－－－－－－－－－－－－気になるのは，主人公・火村がカッコ悪いことだ。髪がボサボサ，白いジャケット，黒い手袋などは原作通りなのに，変に膨らんだコート，ずり下ろしたようなパンツのために，シルエットがぱっとしない。せっかく身長のある斎藤工をキャスティングしているのに台無しだ。どうしてなんだろう？いろいろ原作無視の割には，火村のスマートさが消えてしまっている。けっこう致命的な欠点だと思うな。－－－－－－－－－－－－－有栖川有栖の作品も，ドラマ化してみるとどうも華がない。全作品を読破しているファンなのに，このドラマを応援したくても躊躇してしまっている自分がいる。

  2016.03.06

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• 『キングスマン』を観た

  『キック・アス』のマシュー・ヴォーン監督のスパイアクション映画を観た。○ストーリーロンドンの郊外で暮らす青年・エグジーは，チンピラとのケンカで逮捕されるが，そこを助けてくれたのが謎の紳士ハリーだった。ハリーが言うには，彼は〈キングスマン〉という秘密諜報組織に属しており，世界平和の維持のために働いているというのだ。かつてエグジーの父親もこの組織におり，ハリーを救うために殉職をしたらしい。ハリーの推薦で，エグジーは〈キングスマン〉の候補生となるが，そこには上流階級出身の者が多く，小さいいじめとあざけりの対象となる。だがかつて海兵隊にいたエグジーは，選抜試験を次々にくぐり抜け，ついに最終候補の2人に残る。一方で，ハリーは世界人口を激減させようと企むIT企業の経営者・ヴァレンタインを追うが，罠にかけられてしまう。彼の危機にエグジーは？－－－－－－－－－－－－最新の『ミッション：インポッシブル』を観た1週間後に，またまたスパイ映画を観た。あちらが世界を股にかけた大冒険で，アクションもスケールが大きいのに比べ，『キングスマン』はまるで60年代，70年代のスパイ映画のようなとぼけた味わいがあり，まったく逆の方向性だった。－－－－－－－－－－－－主人公が候補生としてリクルートされる組織は，影から世界平和を守る紳士の団体で，本部はセビル・ロウの紳士服店の地下にある。正式メンバーたちは当然に仕立てた背広をびしっと着こなす紳士たちで，互いにアーサー王と円卓の騎士のコードネームで呼び合う。父親が若くして死んだため，主人公の育ちはあまり良くなく，服装もしゃべり方もチンピラのようだ。それが育ちが良くて性格が悪そうな候補生グループに入れられる。21世紀型の主人公を，レトロな空気の組織に放り込むことで，彼の視点や驚きが観客のそれと重なる。いつの間にか，作り物っぽいレトロな設定に納得してしまうし，またあまり魅力を感じなかった主人公を応援するようになっている。この辺りの構成や脚本は実に上手いと思う。－－－－－－－－－－－－〈キングスマン〉のリーダー・アーサーは，『ダークナイト』などでバットマンの執事を演じていたマイケル・ケインだ。主人公を推薦してくれたハリーことガラハッドは，『英国王のスピーチ』でイギリス国王を演じたコリン・ファースだ。どちらも背広が似合う紳士を以前から演じているので，役柄がすっと入ってくる。ただこのキャラクターや俳優たちだけでは気取っただけの映画になってしまうので，そこにチンピラ風の主人公がミックスされている。－－－－－－－－－－－－大富豪ヴァレンタインを演じるのは，黒人俳優のサミュエル・L・ジャクソンだ。ずっとラッパーみたいな服装で，〈キングスマン〉と対照的な存在感を出している。しかし，この人は出演作を選ばないなあ。ヴァレンタインの部下で，驚異的な身体能力を持つのが両足がステンレスのブレードの義足の女性・ガゼルだ。ソフィア・ブテラという人が演じているが，義足のおかげで新しいアクションが説得力を持って生まれている。－－－－－－－－－－－－さて『キック・アス』でも，〈ヒット・ガール〉のアクションシーンが音楽に合わせてあることが話題となったが，この作品でも印象的なアクションシーンを作り出している。まずはアメリカの田舎の教会での大殺戮シーンだ。100人ほどの人々が突然暴徒と化して互いに殺しあうのだが，その中でハリーが同じ狂気にとらわれつつ，華麗で容赦のない戦闘能力を見せて圧倒する。これが長い長いカットで，いったいどうやって撮影したんだろう？と不思議になってしまう。そして終盤の主人公・エグジーのピンチを一発逆転したシーンは，残酷なのに音楽と映像処理のおかげで何やら牧歌的になっているという，ものすごいブラックユーモアだった。これは必見だ。－－－－－－－－－－－－続編も企画されているらしいけれど，やはり若いエグジーよりもコリン・ファレル演じるハリーの方がはるかに魅力的だったので，あまり観たいと感じられない。大作の隙間にふっとこういう作品が来るからヒットするんだよね。

  2016.02.18

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• 『ミッション：インポッシブル／ローグ・ネイション』を観た

  トム・クルーズ版〈M:i・シリーズ〉の第5作目を観た。○ストーリー諜報組織〈IMF〉は，いくつもの数々の危機を防いできたが，一方で多大な損害を出してきたことが問題となり，CIAに吸収合併されてしまう。出頭命令に従わず，単独で謎の組織〈シンジケート〉を調査を継続していたイーサン・ハントは，CIAと〈シンジケート〉の両方に追われることとなる。ある場所で〈シンジケート〉の手に落ち，拷問に遇うところだったイーサンは，謎の美女に救われる。再会した彼らは，組織を壊滅させることのできるデータを求めて，水中にあるデータセンターに潜入することになるのだが？－－－－－－－－－－－－－〈007シリーズ〉は1人で戦うが，イーサン・ハントは〈IMF〉のチームで戦う。とは言え，この作品の冒頭で〈IMF〉はCIAに吸収される形で消滅してしまい，イーサンは地下へ潜り，たった1人で〈シンジケート〉へと迫る。前作から仲間となった分析官・ブラントは，CIAでも長官補佐的な仕事で活躍している。秘密兵器開発担当だったベンジーは，CIAでは閑職に追いやられ，不遇を嘆く毎日だ。そして黒人マッチョ・ハッカーだったルーサーは，引退してしまった。このように〈IMF〉チームは解散状態で，イーサンと共に戦うのは，敵か味方か？その行動が謎だらけのイギリス人美女・イルサだ。ホント，007っぽいね。－－－－－－－－－－－－－〈M:i・シリーズ〉と言えば，事前に綿密な計画を立て，視聴者にもそれを理解させておいて，けれども現場で不測の事態が起き，それを主人公たちがいかに切り抜けるか？とハラハラさせる，というパターンが多い。けれどもこの作品では，冒頭から飛行機に飛び乗るアクションが始まるし，次はベンジーが主役っぽいウィーンのシーンは状況が見えないし，先が読めない状態が続く。水中のデータセンターへの侵入のシーンは，事前にいろいろシミュレーションをしてから始まる。これは〈M:i〉っぽくて，ほっとした。－－－－－－－－－－－－－とは言え，このシリーズは，トム・クルーズのイーサン・ハントが1人で活躍する映画となり過ぎていて，伝統的な〈スパイ大作戦〉からは遠ざかっていると思う。秘密兵器担当のベンジー，ハッカーのルーサー，分析官・ブラントという設定も，全員現場で活躍するので，キャラクターの役割分担があまり上手くいっていない。俳優はいいんだけどね。イーサンと，その他大勢，という感じなんだなあ。ま，ぶっちゃけ，製作者だからだけど。－－－－－－－－－－－－－データセンターのシーンから，そのまま怒涛のカーアクション，バイクアクションが続く。イーサン・ハント不死身だ。バイクのシーンではサングラスにジーンズという軽装で，高速道路，山道をガンガン走るトム・クルーズにハラハラさせられた。飛行機のシーンより危険な気がして，気が気じゃなかった。役者魂だなあ。〈M:i2〉でもバイクシーンはあったけれど，あちらがダンス風な華麗な動きがあったの比べて，ゴツゴツとチカラで勝負という印象だった。－－－－－－－－－－－－－最後は，正義とは何か？，守るとは何か？という大きなテーマを考えさせつつ，少しビターな大団円を迎える。横綱相撲だね。ハードルが高過ぎて，続編どうやって製作するのか想像が出来ないけれど。

  2016.02.11

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• 『創聖のアクエリオン』を観た

  パ○ンコのCMで最初に知ったSFファンタジーアニメを観た。○ストーリー人類は太古の時代から復活をした堕天使族に滅ぼされつつある。堕天使を倒すために，人類は〈エレメント能力〉を持つ子供たちを集め，ベクターマシン，そして合体したアクエリオンを用いて反撃に出る。だがさまざまな出自の子供たちは，互いにぶつかり合い，思うように心を通わせない。だが，人々に危機が迫っていた際に，－－－－－－－－－－－－－－〈不幸ばかり呼び込んでしまう女〉とか，〈爆発を引き起こしてしまう女〉など，あまり説明はつかないけれど，結構強引に物語は進む。堕天使がかつて人類に大きな戦いを挑んだのが，1万年と8千年前，という設定になっている。その頃の歴史的な資料は残っていないのだろうか？いろいろ疑問をはらみつつも，ストーリーは先へ進み，9巻で完結した。－－－－－－－－－－－－－－ロボット〈アクエリオン〉は，〈ゲッターロボ〉と同じように3機の飛行マシンが合体し，またどのマシンが上半身になるかどうかで，異なるタイプのロボットに変形する。その際に搭乗者たちが少しトロンとなって，『あなたと合体したいはあと』となっているのが，はっきりとナニを想起させるシーンだ。これはパ○ンコのCMにも使用され，この作品の重要なテーマとなっている。けれども山のようにアニメが製作され，消費される中で，きちんと個性を出して認められる，という難しいことをきちんとこなしていて驚いた。－－－－－－－－－－－－－－登場人物たちが，セオリー通り，予想通りの動きをすることが多い。複雑な感情表現は避ける方向だったのだと思う。けれども青春群像として成立しているし，大げさな設定ゆえに登場人物は覚えやすい。まあ，これが重要かな？－－－－－－－－－－－－－－それでも最終回は驚いたよ。まあ，暇人じゃないと全話は観ないよなあ。

  2016.02.08

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• 『快獣ブースカ』を観た

  仕事が立て込んでいて，あまり録画したドラマや番組を観ることが出来ていない。おまけにテレビ用に使っていたモニターに，PCを繋いだものだから，これまでのように〈ながら見〉が出来ておらず，ますますテレビ離れが進んでいる。若者じゃないけど。きちんと観ているのは30分番組だ。たいがい深夜に放送されていて，特撮だったりアニメだったり，少し飛ばせば20分程度で終わるし，ちょっと目を離していても，あまり問題はない。今シーズンは新番組も3本ほど観てみたけれど，第2話くらいですべて脱落。結局，『ルパン3世』『牙狼』『攻殻機動隊』そして『ブースカ』と，再放送だったり，親しみがある作品ばかりが残ってしまった。新しいものを受け付けられないのだろうか？・・・年だね。－－－－－－－－－－－－－－－『快獣ブースカ』は，1960年代の特撮番組だ。ブースカは屯田家で暮らし，息子で発明マニアの大作と友達たちと遊び，様々な冒険やドラマに巻き込まれる。単純に子供同士のケンカの回もあれば，犯罪に巻き込まれる回，そしてファンタジーのような回もあり，バラエティに富んでいる。ブースカは〈怪獣〉ではなく，ぬいぐるみのような姿をしている〈快獣〉だ。怪力，空を飛べる，姿を消せる，など様々な能力があり，大作たちを助ける。一方で，お人好しで，大食いで，騙されて悪人の犯罪に加担してしまったりもする。ブースカのパートナーの屯田大作は発明マニアだけあって，それなりに機転が利く。一方のブースカは頼りになることもあれば，トラブルのタネとなってしまうこともある。不思議な能力のある謎の生き物が，フツーの家で暮らしている，という設定は，『ドラえもん』にも似ているが，ドラえもん・のび太の，保護者・甘えん坊という関係よりも，ブースカ・大作の関係はずっと対等だ。－－－－－－－－－－－－－－－さすがの僕も知らない1960年代のコメディドラマは，時代背景がひじょうに面白い。後の〈ウルトラシリーズ〉ほど，気取っておらず，街，家，人などまだまだ豊かさが少ないのが，そのまま描写されている。子供たちは仲が良くて，学校が終わっても，日曜日でも一緒に遊んでいる。主人公・大作グループと，ライバル・メチャ太郎のグループは，しょっちゅういざこざを起こすが，それでもつかず離れずの関係だ。面白いのは，子供の遊び場を奪ってしまう存在として，空き地や野山をブルドーザーで工事をしている大人たちが現れることだ。作品の中では，子供たちに邪魔をされ，ブースカにこらしめられて，逃げていく，というパターンなのだけれど，まず間違いなく普通にまじめに仕事をしようとしているのがこの大人で，子供たちが犯罪者だ。子供がいっぱいいて一緒に遊んでいて，高度成長期が始まっていてあちこちでインフラ整備や団地の建設が進んでいて，という時代背景でこうしたシーンが生まれているはずだ。子供vs大人，というスタンスも時代を感じる。－－－－－－－－－－－－－－－ブースカはキャラクターとしても今でも一定の人気があるので，その姿を知っている人も多いと思う。また「しおしおのパー」という〈ブースカ語〉を知っている人もいると思う。いくつかの〈ブースカ語〉があり，なかなかキャッチーだ。しおしおのパー：困ったとき，参ったときの口癖。「ぱー」を伸ばして下げるとより良い。肩を落とす。ないないのパ！：ブースカが姿を消す時の呪文。「パ！」は短く言い切る。ぷりぷりのキリリンコ，カッカッカ！：怒ったときの口癖。なぜかこれだけ長くて，腕を同時にぐるぐる回す。バラサバラサ！：うれしいときの口癖。歌うように。50年前でこのクオリティと魅力。パワフルだなあ。

  2016.02.04

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• 『アバウト・タイム』を観た

  タイムトラベルをスパイスにした恋愛映画を観た。○ストーリーイギリス南西のコーンウォール地方に住む青年・ティムは，弁護士になるためにロンドンへ出ることになる。その前に，父親から一家の秘密を明かされる。この家では男性はタイムトラベルをする能力があるというのだ。ロンドンで暮らし始めたティムは，素敵な女性・メアリーと出会い，恋に落ちる。だが大家の脚本家を救うためにタイムトラベルで過去を改変したため，ティムとメアリーの出会いが存在せず，彼女は他の男性と親しくなってしまったのだ。ティムはどうしたらメアリーと出会い直し，そして幸せになれるのか？そして本当の幸せとは？－－－－－－－－－－－－メアリーを演じるレイチェル・マクアダムスが可愛い。このキャスティングの時点で恋愛映画としては成功なのだろうけれど，一方でティムを演じるドーナル・グリーソンとのバランスはあまり取れていなくて，リアリティはあまりない。ロバート・ダウニー・Jrがホームズを，ジュード・ロウがワトソンを演じた『シャーロック・ホームズ』で，女スパイのアイリーン・アドラーを演じていたのもこの女優だ。あの時は，可愛らしいけれど，女スパイとしての魅力に欠けると思ったが，今回は適役だ。－－－－－－－－－－－－映画の冒頭は，海岸沿いの邸宅に住むティムの一家を描写している。一風変わった一家で，このままウェス・アンダーソン監督作品風な様式美が続くのかと思ったけれど，それは最初だけで，あとは普通の「いろいろトラブルはあるけれども，仲の良い家族」になってしまう。さらにはタイムトラベルの設定がひじょうにズブズブで，アバウトだ。タイムトラベルはぐっと手を握りしめて念じれば可能で，過去の自分に”飛び移れる”。過去を改変して，気が済めば，ぴったり元の時間に記憶とともに戻れる。自分の身の回りで出産があるまでは，何回でもやり直しが効く，という設定がすでに曖昧だ。出産より前の妊娠期間で赤ん坊の性別は決まっているはずなのに，それは無視で，出産の時間がキー。－－－－－－－－－－－－まあ，カバー写真や邦題に「愛」が付いていることから予想が付くように，結局は小市民的な幸せでムンムンの恋愛映画だ。期待していた知的な興奮を味わうことはできなかった。「タイムトラベルで変えた過去よりも，今の君との時間が幸せだよ」的なテーマになっている。主人公は，タイムトラベルを使ってヒロインと仲良くなっているんだけどね。

  2016.01.15

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• 『真田丸』を観た

  今年の大河ドラマの第1回を観た。○ストーリー織田信長による侵攻が進んでいる中，武田勝頼の臣下・真田昌幸は岩櫃城に赴く。だが後から行くはずの本隊が別方面へ転ずることを知り，昌幸は見捨てられてしまった。それを知った息子・信幸と信繁は，父を助けに岩櫃へと向かうことにする。－－－－－－－－－－－－－－言わずと知れた三谷幸喜が脚本のNHK大河ドラマだ。「女性が主人公」「幕末が背景」と，大河ドラマとしては弱い要素で勝負をしていた『花燃ゆ』は，予想通り視聴率としては振るわなかった。その起死回生を賭けて，「有名な武将が主人公」「戦国が背景」「主人公は敗れる」といういう日本人が好きな要素をたっぷり入れて企画されているドラマだ。NHKでは『ブラタモリ』『歴史ヒストリア』，そしてニュースなども利用して，局をあげての番宣体勢となっているが，さすがに今年は大丈夫だろう。－－－－－－－－－－－－－－主人公の真田幸村（信繁）は堺雅人が演じる。硬軟両方とも演じることが出来る人なので大丈夫だろう。兄・真田信幸は大泉洋が演じるが，こちらの方がやや不安だ。兄弟の父・真田昌幸は草刈正雄が演じる。昌幸は何度も主君を代えた計算高い男と言われており，善人っぽい草刈正雄と合っていないような気もしたが，第1話は大丈夫だった。－－－－－－－－－－－－－－戦国の有名大名たちは，なかなか新しいイメージでキャスティングされている。真田家が現在仕えている武田家の勝頼は平岳大が演じる。勝頼としては，立派過ぎるか？この人が信長を演じる姿を早く見たい。攻めてくる織田信長は吉田鋼太郎が演じる。少し年令が行っているし，信長のスマートさが無いなあ。今後，ラスボスとなってくる徳川家康は内野聖陽が演じる。どんな演技になるんだろう？－－－－－－－－－－－－－－堺雅人と大泉洋が青年を演じている姿には，笑ってしまった。ギリギリ許容範囲だけれど，コントのようだった。三谷脚本なので，コメディ要素も入れてくると思う。これから1年間が楽しみだ。

  2016.01.11

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• 『ラビリンス』を観た

  リドリー・スコットが製作ということが売りのファンタジー映画を観た。○ストーリー南フランスの城塞都市・カルカソンヌで遺跡の発掘作業を手伝っていたアリスは，洞窟で2つの白骨と指輪を発見する。そこで不思議な感覚を覚え意識を失ってしまった彼女が気付くと，指輪の発見は無かったことにされていた。またアリスはそれ以来，中世のカルカソンヌに住む女性・アライスの姿，そして大量虐殺の場面を幻視するようになる。さらに彼女の周辺で，謎の殺人事件が起き始めるのだった。800年の時代をつなぐミステリーの真相とは？－－－－－－－－－－－－明らかに『指輪物語（ロード・オブ・ザ・リング）』っぽさを狙ったキャッチコピーで売ろうとしているが，リドリー・スコットが製作ということで観てみた。上下巻のビデオとなっており，それぞれ100分程度だ。元々は映画ではなく，テレビスペシャルとして製作されたらしい。さて物語は現代の南フランスで始まる。カルカソンヌの家を遺産相続してしまったイギリス人・アリスは，友人の発掘現場を手伝っている。そこで超常現象が起こり，彼女は800年前にタイムスリップしたり・・・しない。現代と800年前は並行した進展し，その2つの世界が交錯するのはあくまでもアリスの幻想の中だけで発生する。800年前のカルカソンヌ周辺では，カタル派（あるいはカタリ派）というキリスト教の分派が主流となっていた。これに対して改宗を迫るカトリックが軍隊を派遣し，多くの民衆を虐殺したとのこと。この物語はその事件を背景にしている。－－－－－－－－－－－－原作は「ダ・ヴィンチ・コード並みの歴史ミステリー」とされているらしいが，映画版を観ている限り，そうした知的な興奮は伝わってこない。カタル派の虐殺の裏に，聖杯を奪おうとする王族たちの策略が働いていた，までは良いのだが，そこから先がよく分からない。登場人物たちが納得しているだけで，観ている方に何も謎解きが分からない。単純に物語が進んでいき，ミステリーらしい”なるほど”が無い。普通，3つくらいそういうパズルの解答があったりするのだけれど・・・－－－－－－－－－－－－800年前の物語の一番の欠点は，美人姉妹が2人とも黒い長髪で，見分けがつかないということだろう。善の妹と悪の姉なのだけれど，もうちょっと区別がつくようにしてもらいたかった。男性陣も長髪でヒゲ面なので見分けが付きづらいし・・・その分，現代の俳優たちは，善人と悪人がひじょうに分かりやすい。ほとんど登場した瞬間にそれが分かる。－－－－－－－－－－－－長い物語を費やして，結局フランスのバカンス先でラブラブで終わるって，なんだかちょっと歴史要素を濃くしたハーレクインロマンス小説のようだった。うーん，オススメできない。

  2016.01.09

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• 『イコライザー』を観た

  デンゼル・ワシントン主演のアクション映画を観た。○ストーリーホームセンター店舗で働くロバートは，同僚思いの中年やもめだ。彼は深夜までダイナーで読書をして過ごし，アリーナと名乗る若いロシア系の娼婦と顔見知りとなる。アリーナがダイナーに姿を見せなくなり，店主から聞いた病院に行ったロバートは，彼女が売春の元締めであるロシアン・マフィアに暴力を加えられ，大怪我をしたことを知る。ロバートは，マフィアの店に行き，彼女を開放するように交渉するが，馬鹿にされてしまう。ロバートはついに，隠された能力を発揮し，それはとんでもない事態を呼んでしまうことになる・・・－－－－－－－－－－－－－冒頭に映った橋の映像から，勝手にサンフランシスコが舞台だと思っていたのだけれど，実際はアメリカでも平和な古都・ボストンが舞台だった。そこで穏やかに暮らす主人公・ロバート，ホームセンターの呑気な人々との，のんびりとした生活を描くのが前半の1/3だ。ロバートが少しだけ変わっているのが，夜遅くにわざわざダイナーに出かけて読書をする，というところだ。その店でのほのかな友情の育成も描かれている。こうした日常が十分に描かれているので，その後の展開が活きてくる。ロバートが取った行動とは？その影響とは？－－－－－－－－－－－－－他の感想で描かれていたけれど，これはアメリカ版『必殺仕事人』だ。僕も知らなかったけれど，1980年代に同名のテレビシリーズが存在していて，この映画はそのリブート作品にあたるらしい。テレビシリーズは，トラブルに巻き込まれた依頼者をロバートが救う，という1話完結パターンで，まさに『仕事人』風だ。それを知っていれば，どこか様式美のような主人公のアクションシーンにも納得が行く。観た時は知らなかったので，「なんで，こんなに強いの？？？」とひたすら驚いた。－－－－－－－－－－－－－この映画が面白いのは，一度『仕事人』としての処理をしてしまった主人公を，逆に追い詰める人物がいるということだ。それはロシアン・マフィアから派遣されてきたニコライ・イチェンコで，高い捜査能力と残酷な暴力によって，徐々に主人公に迫っていく。そしてついに両雄は，ロバートが勤務しているホームセンターで対決することになるのだが，まあ，主人公のホームフィールドで戦う時点で，圧倒的に勝敗が有利になるのは予測できちゃうよね？でも，いろいろな映画で使われているホームセンターって，やはりホラーやアクションとしては，バリエーションが効くので面白い。－－－－－－－－－－－－－ホームセンターの場面までは楽しめたのだけれど，その次からはさすがに「？？？」となってしまった。しかもわずか3日後・・・リアリティどこ？汗。あれだけヒーローアクション映画が大好きなアメリカ人だけれど，アメコミのヒーローの多くは正体を隠して人知れず弱い人を助ける，という設定だ。『仕事人』的なヒーローを求める気持ちが間違いなくここにはある。努力をした者だけが報われる，と公言するアメリカ人も，どこかでそれだけでは救われない人がいるってのを分かっているんだろうなあ。でもそれを言ってしまうと自己否定になるんだろうか？難しいね。アクション映画のリアリティのバランスも難しいけど。

  2016.01.02

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• 『スターウォーズ / フォースの覚醒』を観た

  話題になっている〈スターウォーズ・シリーズ〉の最新作を観た。（ネタバレほとんどなし）○ストーリー砂漠の星・ジャクーで廃品回収をしながら家族の帰りを待っていた女性・レイは，古いドロイドを助ける。だがそのドロイドには，帝国の支配体制を揺るがす地図が記録されていた。一方ストームトルーパーだったフィンは，その仕事に嫌気が差し逃亡する。レイとフィンは，伝説の船長・ハン・ソロに助けられながら，マズ・カナタの酒場のある星までたどり着くが，そこにも帝国が追撃し，レイは・・・－－－－－－－－－－－－－－オリジナルの『スターウォーズ』，ファン的には『エピソードIV』が公開された時は大騒ぎだった。当時の洋画は，日本での公開日が1年後とかざらだったので，前評判が固まったものをありがたがる，というものだった。けれどもSF少年だった僕は，ようやくSFが世間に認められるようになった気がしてうれしかったのを覚えている。今回の日本公開の盛り上げ方は大々的で，どこか当時の雰囲気を思い出した。セブンイレブンで買った前売りチケットに付いてくる〈スターウォーズ新聞〉のチープさも，なんだか懐かしかった。12月18日の公開日は平日だったので当然無理，一方で正月は元々〈映画サービスデー〉なので前売りチケットを買った身としては，年末に行くしかない。休み初日の火曜日は寝ていたので，水曜日に新宿の映画館へ行った。－－－－－－－－－－－－－－さていつものあのセリフからオープニングが始まった。それから2時間半，僕はとても楽しめた。シリーズを代表する，ハン・ソロのハリソン・フォード，レイア将軍のキャリー・フィッシャー，チューバッカ，そしてC-3POとR2-D2のドロイドコンビが再登場するだけで十分うれしい。さらに今回のストーリーは，『エピソードIV』とよく似た展開となる。砂漠の星に住む孤独な若者が，偶然重要なお宝を発見し，密輸船に乗って逃げ，帝国軍と反乱軍の争いに巻き込まれ始める・・・という流れだ。『スターウォーズ』以前にはSF映画ってものは，”地球の危機”や”謎の生命体”が出て来るものだと思っていた。それが児童小説のようにシンプルな冒険物語に，SFガジェットを組み合わせるだけなのに，細かいリアリティがあって楽しめてしまう，という発見。このワクワク感がこのシリーズの魅力だ。今回の作品には，それが戻っている。僕には”アリ”だ。－－－－－－－－－－－－－－姪に感想を話していたら，姪は『エピソードI』で始まる3部作の方が，俳優のルックスがきれいだから好き，ということだ。う，・・・一理ある。けれども僕は，狂言回しのコミカルな異星人というものがあまり好きではない。〈スターウォーズ〉の世界には，ドロイドがいるじゃないか！今回の新ドロイド・BB-8も大活躍で魅力を振りまいていた。僕が30年前に体験した”〈スターウォーズ〉ショック”を，今の少年少女にも体験してもらいたいと思う。

  2015.12.30

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• 『96時間 / レクイエム』を観た

  リーアム・ニーソンのヒットシリーズ〈96時間シリーズ〉の第3作を観た。○ストーリーアメリカの工作員という過去を持つ中年男性・ブライアンは，自宅で元妻・レノーアの刺殺死体を発見する。容疑者として警察に追われつつ，同じように襲われる可能性のある娘・キムを守るために奔走する。やがて徐々に事件の黒幕が見え，ブライアンは決着をつけに行く。－－－－－－－－－－－－－－妻と娘とは別れたものの，いざ彼女たちにトラブルがあれば，それが大西洋の向こう側であっても飛んで行き，あらゆる手を使って救い出す〈最強の父親・ブライアン〉が再登場だ。第1作目はパリで誘拐された娘・キムを救い出す物語。第2作目は旅行先のイスタンブールで，元妻・レノーアを救い出し，キムを守る物語だ。これまでの2作は，旅先でマフィアと渡り合う物語だった。ブライアンは孤立無援だったが，それゆえに容赦なくブルドーザーのように相手を倒しまくった。今回は初めて地元のアメリカ・ロスが舞台で，しかもブライアンを追ってくるのは市警察だ。なので今回のブライアンはちょっと勢いがない。悪い奴はやっつけるが，警察官を殺すことは出来ないので，適度に痛めつけてから逃げる。またストーリー紹介にあるように，前作で頑張って救い出した元妻が殺されてしまう。それだけでテンション下がってしまう。せっかくのシリーズなのに，これまでの流れと異なるストーリーになってしまっていて，ファンの期待を裏切る結果になっている気がした。－－－－－－－－－－－－－－ブライアンを追うのがLA市警なので，アクションがマイルドになっている。その分，主人公は走って逃げ回るのだけれど，60才のリーアム・ニーソンではどうしてもスピード感がない。こちらも心臓麻痺とか飛び降りた時のカカトの骨折とか，余計なことが気になってしまって集中できない。あ，もう追い込まれた，というシーンから奇跡の脱出も何回かあるのだが，どうもそれに説得力が無いのもバツ。終盤は，黒幕が見えてきて，ブライアンも本気で戦うことになる。このシリーズではアクションはリアリティ重視なので，最近の映画で多い，手刀で相手の攻撃を防ぎ合う戦いとなる。パンチやキックよりはずっと本格的なのだろうけれど，あまり見映えは良くないなあ。本当に強いのかよく分からない。－－－－－－－－－－－－－－犯罪者のビルに乗り込むシーンでは，第1作から登場しているブライアンの元同僚たちも協力するので，わくわくする。それにしても戦力差を考えると，どうかなという人員配置だ。まあ主人公補正もあり，ブライアンはマフィアのボスと一騎打ちとなる。このボス，バスローブに白ブリーフで現れて，なかなかキレッキレだ。割といい味だった。そして終盤。ブライアンは元妻や娘を愛してるけれども，あまり賢くなかったということが分かり，またまたもやもやしてしまう。－－－－－－－－－－－－－－味のある黒人俳優・フォレスト・ウィテカーが，ブライアンを追うLA市警のドッツラー警部を演じていた。このシリーズとしては，珍しい立ち位置の役柄だった。でもハイウェイや駐車場で事故起きているし，この事件で多数の死傷者出ているはずなのに，ドッツラー警部どこか朗らか。どうして？－－－－－－－－－－－－－－後味がいろいろ悪いシリーズ第3作目だった。普通はこの雰囲気だともう終わりなんだけれど，リュック・ベッソン製作映画だと，まだどうなるか分からない。

  2015.12.27

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• 『ビッグゲーム　大統領と少年ハンター』を観た

  お手軽そうなアクション映画を借りた。○ストーリーアメリカ大統領専用機〈エアフォース・ワン〉がフィンランド上空で墜落する。大統領はその前に落下傘付きポッドで脱出したが，信号ビーコンが外れ，アメリカ軍の懸命な捜索をしても行方不明となる。フィンランドの山の中で，テロリストに狙われている大統領を救ったのは，13才の少年だった。2人は無事，逃げ切ることが出来るのか？－－－－－－－－－－－－－－他に借りたビデオ作品とのバランスで，軽めのアクション映画を選んだ。それが今回の作品だ。パッケージの説明から想像したのは，サバイバル術に長けた少年ハンターが，大統領を救う作品だ。『ランボー』の第1作の少年版みたいなものを思っていた。大統領を演じるのは，サミュエル・L・ジャクソンなので，一応は一流作品扱いになっている。－－－－－－－－－－－－－－さて物語が始まってみると，大統領は任期満了近くで，弱腰な政策で支持率も下がっているという状況だ。まるで現実のオバマ大統領のようで，現実をよく反映しているあたりは海外の映画作品らしい。一方で少年ハンターは，登場早々に馬脚を現す。成人の儀で，弓を引く場面があるのだが，腕力が不足していて，それが出来ない。あれ？？？少年版『ランボー』じゃないの？？？・・・まあ，勝手に期待していただけなんだけどね。作品はそのまま弱腰大統領とただの少年が，弓だけで山の中をテロリストから逃げ回る流れとなる。テロリスト側は，RPGロケットランチャー，自動小銃，そしてヘリ搭載のマシンガンを装備していて，兵力の差は圧倒的だ。それなのに大統領と少年は，ゴロゴロと逃げ回っているだけで，かすり傷だけで済む。おそらく大統領に髪があれば，ケガももっと少なかったと思う。ハゲは罪だ。－－－－－－－－－－－－－－最後の最後で，テロリストと少年が対峙する場面がある。そこで1日前までは引けなかった弓を，少年は見事に引いて見せ・・・その結果は，観てのお楽しみだ。サミュエル・L・ジャクソンもいろいろな仕事するなあ。

  2015.12.24

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• 『ぼくを探しに』を観た

  カラフルなフランス映画を観た。○ストーリーピアニストのポールは口が利けなくて，2人の伯母と暮らしている。だが公園で出会った謎の女性・マダム・プルーストの協力で，彼は自分の過去を思い出し，両親のことを徐々に思い出す。両親の死の真相とは？自分に欠けていたものとは？ポールは人生の大発見をする。－－－－－－－－－－－－フランス映画らしいジャンルを捉えづらい作品だった。ストーリーを単純に語れば，主人公の過去の記憶が徐々によみがえるというサスペンス映画のようだ。そうした物語の流れとは別に，主人公や伯母たちの淡々としたコミカルな日常描写があり，それはそれで楽しめて，まるでシュールなコメディ映画のようでもある。なるほど，こんな物語なのね，と思わせて，ラストシーンで「えっ？今のはひょっとして？？？」となるのは，監督の剛腕ぶりを感じさせた。ジャンルはよく分からないけれど，楽しめる映画だ。－－－－－－－－－－－－この映画のPRは，『アメリ』のプロデューサーの作品，『イリュージョニスト』の監督の作品，ということだ。だいぶ消極的なことで推薦されていて，宣伝会社の自信の無さが判ってしまう。僕は『アメリ』のジャン・ピエール・ジュネ監督の作品は，『ロスト・チルドレン』『エイリアン4』『アメリ』『ミックマック』と観ている。『イリュージョニスト』のシルヴァン・ショメ監督の作品は，『ベルヴィル・ランデブー』『イリュージョニスト』を観ている。ある意味，この作品をPRしている会社のターゲットの映画ファンなので，易々とその作戦に引っかかって観ることとなった。－－－－－－－－－－－－ビジュアル的にはパリとは思えないほど緑豊かな公園や，不思議な屋内菜園が登場し，『アメリ』的な要素はある。けれどもそれ以上のシュールな空気は，登場人物の行動に限定されており，そこから先は映像の技巧性は抑えられている印象だった。『アメリ』のファンは，僕も好きなウェス・アンダーソン監督の作品を観るといいと思う。ややキッチュな色使い，唐突なナレーション，ちょっとした伏線の使い方など，いろんな意味でよく似ていると思う。今回の作品は，アニメーションの監督が撮影した実写作品ということで，途中から実際の俳優の演技を楽しんで撮っているような部分があった。影の使い方がアニメーションっぽい，という場面はいくつかあったが，ジュネ作品よりも，より伝統的な作品に仕上がっているのには不思議な感慨を覚えた。－－－－－－－－－－－－主演のギヨーム・グイは，主人公でピアニストのポール，父親でプロレスラーのアッティラの2役を演じている。しゃべることが出来なくて，内気なピアニストと，タバコをすぱすぱ吸って，乱暴な父親を演じ分けるって，なかなかのものだと思う。どちらも違和感ないのがちょっと怖い。作品に独特のリズム感を与えているのが，ポールの2人の伯母だ。これを演じるのはベルナデット・ラフォンとエレーヌ・バンサンで，とくにラフォンはベテランの女優だ。2人はいつもおそろいの服を着ていて，似たような行動をとるので，物語のシュールレアリズムな空気を高めている。謎の女性・マダム・プルーストを演じるのはアンヌ・ル・ニという女優だ。『最強のふたり』でも存在感を出していた。リアルなフランス人女性っぽさがある。でも今回はずっと謎の人物だったなあ。－－－－－－－－－－－－別におしゃれな店や料理を描写しなくても，フランス映画って成り立つじゃないの！それを強調するフランス映画って，ひょっとしたら禅を強調する日本映画みたいにいびつなものなのかも知れない。事前情報無しで観たら，かなり楽しめた。ウェス・アンダーソンが好きならば，オススメだ。

  2015.12.20

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• 『花燃ゆ』を観た

  姉と一緒に毎週日曜日の晩に観ているのがNHKの大河ドラマだ。そこそこ文句をいいつつも，途中観ていない時期があっても，昭和の生まれなのでこのドラマ枠にはやはり特別な思い入れがあって，いつしか観てしまう。日曜日も2人で「仁先生！」とか「利助，女性襲うな！」とかぽんぽん批判をしながら『花燃ゆ』を観ていた。「へー，鹿鳴館なんだ」と言っていて，いつも通りの時間が過ぎると〈完〉の文字。最終回だった！まじか？？？－－－－－－－－－－－－－視聴率の低さで批判されていて，主演の井上真央や女性ばかりでかためた脚本陣が問題だとされているが，やはり主人公の選び方，つまり企画の根本に問題があったのだと思う。NHKだけにドラマにも世相を反映しなければ，という使命感があるらしく，〈自立する女性〉〈学ぶ女性〉という設定の大河ドラマが3年に1回くらい放映される。『篤姫』だけは当たったものの，『江』『八重の桜』はとくに後半失速してドラマとして成功しているように思えなかった。－－－－－－－－－－－－－今回も明治になってからの，混迷ぶりが目立った。幕末から明治にかけてだったり，戦前から戦後までという時代設定で女性の活躍を描くドラマとしては，NHKの連続テレビ小説があるのだから，群馬で生糸生産と女性の地位向上に努力する主人公（『花燃ゆ』）と，九州・筑前の炭鉱を経営するために飛び込む主人公（『あさが来た』）が並列してしまうと，もう本当に棲み分けが判らなくなってしまう。・・・新撰組の土方歳三を山本耕史が演じているし。これは禁断のクロスオーバーだろ。－－－－－－－－－－－－－井上真央はオデコが可愛くて好きな女優なので，戦犯扱いされるのは可哀相だ。ぜひ大河ドラマ枠という位置付けを見直して，もっとベタな歴史ドラマを展開してもらいたい。世の中は歴史ブーム，パワースポットブーム，老人の旅行ブームなのだから，変化球で攻める必要は全くないと思う。

  2015.12.14

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• 『リピーテッド』を観た

  ニコール・キッドマン主演のサスペンス映画を観た。○ストーリークリスティーンが目覚めると，彼女は知らない男といた。おびえる彼女を男はゆっくりと諭す，クリスティーンは事故で頭部を負傷した後遺症で，眠ると記憶がリセットされてしまう。そして自分は夫のベンである。壁に貼られた2人の写真や，写真アルバムでクリスティーンは徐々に落ち着きを取り戻す。ベンが会社に出たのちに，電話がかかる。その電話の主は，自分はクリスティーンの記憶障害の治療にあたっているナッシュ医師だった。クリスティーンは彼の指示に従い，戸棚の奥からデジカメを発見する。そこには彼女がこっそりと記した自分へのメッセージが隠れていた。それによりクリスティーンはかすかに記憶がよみがえるようになる。彼女を事故に逢わせ，彼女の過去を奪ったのはいったい？－－－－－－－－－－－－－－－寝てしまって翌朝目覚めると記憶が消えている，という設定の主人公は，ちょうどいまドラマ化されている西尾維新の「掟上今日子の備忘録」と同じだ。けれども「掟上」では，普通の人（？）が主人公で，記憶障害の症状がある人を語るという物語だ。その障害がある人の視点で描かれる物語は，はるかに緊迫感がある。主人公・クリスティーンと一緒に，「この人は誰，私は誰，私の過去は何？」と戸惑う時間は，なかなかサスペンスに満ちている。－－－－－－－－－－－－－－－ナッシュ医師のアドバイスによるデジカメの映像の集積のおかげでもあり，かすかに記憶が戻り始めるクリスティーン。だがその道のりは平坦ではない。ナッシュ医師も怪しく，かつての親友クレアもベンと関係を持っており，実はベンとさえも4年前に離婚をしていた。新しい記憶と手がかりは，新しい謎を呼び，クリスティーンをさらに戸惑わせる。－－－－－－－－－－－－－－－長さ90分の映画で，記憶障害の主人公のサスペンスということで，お手軽だと思って借りたが，なかなか本格的なサスペンスで驚いた。主人公夫婦が，ニコール・キッドマンとコリン・ファースと，中年の演技派男女なので，まるで舞台劇のような緊迫感で物語は進む。なんとなく女性向けっぽい雰囲気のサスペンスだ。いろいろ事件は起きるのだけれど，最後にハッピーエンドっぽくなっていて，その長いラストシーンに個人的にはすっかりと白けてしまった。そりゃ主人公は長いこと苦しんだのだろうけれど，それ以上にまわりの人々も振り回されたよね。それ全部無かったことにして，ハッピーエンドですか？？？いや、待てよ？こいつら本物か？？この流れ，ブラックユーモアじゃないの？うーん，無理。

  2015.12.08

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• 『トゥモローランド』を観た

  ディズニーSF映画としてPRされていたSF作品を観た。○ストーリー星好きで宇宙飛行士になりたい少女・ケイシー・ニュートンは，謎の少女・アテナに不思議なピンバッジを渡される。ケイシーがそれに触ると，異世界〈トゥモローランド〉に飛んでいってしまう。技術が進んだ夢の国のような場所にケイシーは憧れるが，ほどなく戻ってきてしまう。バッジが理由で，怪しい組織に追われるようになったケイシーは，アテナと一緒にフランクという男を訪ねる。フランクは偏屈な男だったが，そこにも組織の男たちが現れ・・・－－－－－－－－－－－－－－－作品の主人公は，NASAでリストラされている父親を持つ17才の少女・ケイシーだが，物語は12才の少年・フランクの視点で始まる。1965年の世界万博でディズニーが出展していたパビリオンが今でも各地のディズニーランドにある〈イッツ・ア・スモール・ワールド〉だ。また理想都市〈トゥモローランド〉と同じデザインのエリアが各地のディズニーランドにある，という作品と現実がタイアップしていて，不思議なリアリティをかもし出している。さらに，発明王エジソン，彼を越える変人テスラ，フランスの建築家エッフェル，SF作家ジュール・ヴェルヌの4人が用意した，〈トゥモローランド〉への移動手段までも登場し，ちょっとした歴史ミステリー風でもある。PRされていたウォルト・ディズニー，そしてディズニーランドとの関連はほとんど無しなので，そのギャップは最後まであった。－－－－－－－－－－－－－－－この映画に関しては，エンタメ系を期待して高い評価をしている人と，都市伝説ミステリー系を期待して低い評価をしている人に分かれているらしい。ウォルト・ディズニーあるいはディズニーランドと関連した秘密が語られると思っていた僕は，第3勢力なのか？とにかく他の人から見るとトンチンカンな期待をしていたみたいだ。まあ，その第3勢力？から言わせると，低い評価だった。鮮烈な未来都市のイメージは素晴らしいし，次々に訪れるピンチとアクションシーンは魅力的だと思う。けれどもハッと正気に戻って，物語の流れやロジックを考えると，「そもそも〈トゥモローランド〉って何？ここの住んでいる人ってどこから来たの？」とか考えて，もやもやしてしまう。ラストの展開は別に物語世界にあっているからいいと思うけれど，その背景世界がなんだか納得できない。そう言うのってダメかな？でも気になるんだよね。－－－－－－－－－－－－－－－実は，この作品がアンチ・ディズニーで，ディズニーワールドでゲリラ撮影されたダークなサスペンス映画『エスケープ・フロム・トゥモロー』へのアンチテーゼだと勝手に思っていた。それを期待している第3勢力からも，なんだか空振り＆期待外れという印象は否めない。うーん・・・

  2015.11.27

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• 『アンダーワールド 覚醒』を観た

  ホラーアクション映画〈アンダーワールドシリーズ〉の第4作を観た。○ストーリー吸血鬼族・人狼族の双方から追われている吸血鬼のセリーンと人狼のマイケル。だが2つの種族の暗躍は人間にも広く知られることとなり，彼らは人間にも追い詰めら捕らえられる。セリーンが目覚めると，12年の時が過ぎており，人間は吸血鬼と人狼をほとんど駆逐し終えていた。逃げる際にセリーンは，人狼に追われていたイヴという少女を救う。彼らは吸血鬼族の隠れ家に転がり込むが，そのためにそこは人狼の群れに襲撃され，イヴは拉致されてしまう。セリーンは彼女を取り戻すために，自分が12年間眠っていた研究所へ乗り込む。そこで明かされた真実とは？－－－－－－－－－－－－－－－〈アンダーワールドシリーズ〉は，吸血鬼族と人狼族が長年にわたり人間の知らないところで争いを続けてきた，という設定になっている。伝統的な怪物の能力に加え，紫外線弾と銀弾での銃撃戦で相手を倒すのが，この作品の新しいところだ。主人公のセリーンは，吸血鬼の女戦士だが，人間の青年マイケルを救う。やがてマイケルは新種の人狼となり，2人は双方の種族から追われるようになる。これが第1作と第2作の内容。第3作は，一転過去編となり，本来同じ血筋から生まれた吸血鬼族と人狼族が，どうして争うようになったかを語る番外編だ。この第4作は，第2作の続編だが，いきなり人間がチカラと知恵を付け一大勢力となり，吸血鬼と人狼を駆逐している状況から始まる。最初の2作では，まったくそんな気配がなくて，人間はほとんどセリフもなかったのに驚きだ。吸血鬼か人狼の中で裏切り者が出て，紫外線弾と銀弾の技術をリークしたのだろうか？これにより，セリーンはまたまた追われる身となる。まあ，この状況を作るための設定なんだろうけど。－－－－－－－－－－－－－－－第1作とマイケルが新種の人狼となり，第2作で吸血鬼のマーカスとセリーンが進化を見せた。マイケルとセリーンは，それぞれの種族で最強のカップルで，2人そろうとかなり安心感が出てしまう。そのためか，この第4作では，まずマイケルが行方不明となっている。次に主人公たちを狙うのは，能力を進化させた人狼だ。この人狼の進化は見た目も分かりやすいし，ラストの戦いに上手く利用されているので，なかなか面白いと思った。－－－－－－－－－－－－－－－だが，それ以外は，人間という第3勢力が唐突に登場して，物語の雰囲気がゴシックホラーから，SFホラーへとがらりと変わってしまうこと，そしてラストの「第5作に続く」という終わり方など，消化不足な部分が目立った。このまま続編が製作されても，マイケルが敵側に操られていて，それと戦う，という流れが予想できてしまって，あまりわくわくしない。もう吸血鬼・人狼という設定を，超能力者・宇宙人などと置き換えても，成立してしまうただのSFだ。セリーン役のケイト・ベッキンセールは相変わらずのクール・ビューティで，最新の映像技術を使ってアクションはよく出来ていると，魅力はあるのだが，シリーズの今後に不安を感じてしまう。4年ぶりに第5作が公開されるらしいが，どうなることやら？？？

  2015.11.22

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• 『アンダーワールド：ビギンズ』を観た

  吸血鬼アクション映画〈アンダーワールド・シリーズ〉の第3作目にして，始まりを語る物語を観た。○ストーリー今からずっと昔，吸血鬼族（ヴァンパイア）は吸血鬼族の長老・ヴィクターの支配のもと，狼男を奴隷として使い，恐怖を用いて人間を支配していた。そんな中で知性を持つ狼男の人狼族（ライカン）・ルシアンが生まれ，青年へと育つ。だがヴィクターの娘・ソーニャはルシアンと恋仲になってしまう。それが明らかになった時，悲劇は訪れ，ルシアンは人狼族と狼男族を率いて反乱を起こす。そして歴史は・・・－－－－－－－－－－－－－－－現代のヨーロッパの暗黒社会の裏で，吸血鬼族と人狼族が争っていた，という設定で始まった『アンダー・ワールド』だったが，2作で敵という敵を倒してしまったので，3作目では過去編となっている。さすがは人気シリーズなので，過去編でも人狼族のリーダー・ルシアンを演じるマイケル・シーン，そして吸血鬼族のリーダー・ヴィクターを演じるビル・ナイはそのまま登場している。中世ヨーロッパに舞台を移したので，小銃や車の代わりに剣と馬が活用される。さらにはチカラが拮抗していた吸血鬼族と人狼族は，その頃は貴族と奴隷とでも言うような関係だ。同じようでありながら，だいぶ設定の異なる世界で物語は展開される。単独の伝奇ファンタジーであれば許せるのだけれど，〈アンダーワールド〉のタイトルを冠している以上はなかなか期待値に届かない部分が目立つ。－－－－－－－－－－－－－－－この映画で落胆するポイントはいくつもあると思う。一番目は，ヒロイン・ソーニャを演じるのがケイト・ベッキンセールではなく，ローナ・ミトラという女優だということだ。この人も美しくて，きちんとアクションもこなすけれど，ソーニャとセリーンは瓜二つという設定は無駄に消費されたワケね。二番目は，”ビギンズ”というサブタイトルなのに，吸血鬼・ヴィクターと狼男・ウィリアムの始まりの物語でもなく，女処刑人・セリーンの始まりの物語でもない。何の始まりなんだろう？〈トワイライト・サーガ〉に対抗して，異種族間のラブロマンスを描く必要があったのか？三番目は，肝心の異種族を越えた2人のラブロマンスが唐突過ぎて，まったく理解出来ないことだ。そりゃ，美男美女だから絵になるのは分かるけど，目を合わせていたシーンの次では，もうラブシーンって・・・月がきれいですね。そのおかげで両方の種族に恐ろしく被害が生じているんだけど，愛は全てを超越する，ですかね？－－－－－－－－－－－－－－－メインシリーズから一部のキャストが登場しているとは言え，この作品はスピンオフとして扱われるべきだろう。せっかくゴシックホラーを現代に復活させたシリーズなのに，わざわざ作品世界を中世に戻してしまっては，作品の個性が失われてしまっている。主人公も不在だけれどね。

  2015.11.09

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• 『イミテーション・ゲーム』を観た

  コンピュータの父・アラン・チューリングの悲劇的な人生を描く伝記映画を観た。○ストーリー戦後の1951年，ケンブリッジの教授・アラン・チューリングの家が空き巣に遭う。その事件を捜査するノック刑事は，チューリングの第2次大戦時代の軍歴が抹消されていることに気付く。彼への尋問を経て明らかになったのは，それまでまったく明かされていなかった，ドイツとイギリスの情報戦，それに人生を賭けた人々，その後の残酷な運命，が明らかになる。すべてを明かされたノック刑事は，チューリングを救おうとするのだが？－－－－－－－－－－－－－－－ドラマ『シャーロック』で，イギリス俳優で最も人気があるベネディクト・カンバーバッチの主演映画だ。『シャーロック』に続き，頭が良過ぎて，他人と上手く付き合うことが出来ない，というキャラクターを，カンバーバッチは演じている。フィクションの世界では，それだけで済んでいたが，実在の人物を描くと伝記ではさすがにそれでは済まない。チューリングは，学校時代はいじめられ，学者としてもあまりにも人付き合いが下手なために敬遠されていた。その彼が，ドイツの暗号機械〈エニグマ〉の解読のために，驚くほどの行動力を見せ，様々な人の協力を得て，〈エニグマ〉の通信メッセージを解読しただけでなく，それを利用していかに最適な反撃をこなすか，という軍事作戦までもこなしてみせる。表面的には内気で状況に巻き込まれた学者だが，実際に行っているのは能動的な軍事作戦だ。この描写のギャップに個人的には戸惑ってしまった。まあ，伝記小説あるいは伝記映画でよくある状況かも知れないけれど。－－－－－－－－－－－－－－－一応エンジニアとして生計を立てているので，〈チューリング・マシン〉とか〈チューリング型人工知能〉は知ってはいた。てっきり華やかで認められた人生を送った人かと思っていたが，戦時中の業績は封印され，冤罪めいた訴訟で犯罪者扱いされるという，不遇の人生を送った人だった。この作品では，チューリングと，天才的な数学センスを持ちつつも女性ということで差別を受けるジョーン・クラークの2人を通じて，自分らしくあることは罪なのか，いかにすれば自分らしく生きられるのか，ということがテーマのように思われる。個人的には女性ゆえの差別や家族からのプレッシャーを受けていたジョーンと，同性愛者ゆえに世間に認められないチューリングのそれはレベルが違うように感じてしまうが，アメリカの〈意識高い系〉からすると同じことなのだろう。－－－－－－－－－－－－－－－そう言ったハリウッド特有のマイノリティー礼賛とは別に，世の中の自分は認められていない，と感じる人々にとって，この主人公はひじょうに理想的に映る。そうした魔法のような魅力がある危険な作品だ。もうちょっと構成に工夫をして，戦後と戦時中のどちらを描くのか，きっちり定めても良かったと思うけどね。

  2015.11.01

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• 『チャッピー』を観た

  『第9地区』のブロムカンプ監督のロボットSF映画を観た。○ストーリー南アフリカのヨハネスブルグ市では，減少が見えない犯罪を抑えるために，ロボットを導入する。拠点制圧タイプの〈ムース〉は攻撃力が高過ぎて失敗したが，兵士タイプの〈スカウト〉は大きな成果をあげる。〈スカウト〉を開発したエンジニアのディオンは，人工知能を開発したが，上司に却下されたため廃棄予定の〈スカウト〉を盗み出しインストールする。だがその帰り道，ディオンはストリートギャングのニンジャとヨランディに襲われ，その〈スカウト〉を奪われてしまう。〈スカウト〉はチャッピーと呼ばれ，ストリートギャングとディオンに育てられるが，あっと言う間に赤子，幼児から少年，青年へと知能を進化させる。ヨランディとディオンはチャッピーに優しい気持ちを教えようとするのだが，ニンジャにそそのかされたチャッピーは，街中で強盗を働いてしまう。それをきっかけにチャッピーは，〈ムース〉から攻撃を受けることになるのだが・・・－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－さてこの作品は，ある意味ヨハネスブルグ版『ロボコップ』だと言える。街の治安のために人型ロボット警官を導入する設定も同じだし，最後に主人公ロボットが軍用ロボットと戦うという流れも同じだ。けれども主人公のロボット警官は，ハイテクでキラキラしている代わりに，あちこち傷だらけで塗装がはがれ，錆なのかオイル漏れなのか汚れている。外面だけでなく内部も異なる。『ロボコップ』はロボット警官が自我を取り戻す物語だったが，この作品ではロボットが自我に目覚め，赤ん坊から育つという物語になっている。－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－チャッピーと名付けられたロボットは，ストリートギャングのニンジャとヨランディに育てられる。またエンジニア・ディオンも彼の成長に関わる。ニンジャとヨランディはパパとママ，ディオンは創造者として，チャッピーに影響を及ぼす。ディオンは元々は人工知能の実験をしたいだけだったのだが，母性に目覚めたヨランディと共に，チャッピーに優しさ，美しさ，愛を教えようとする。一方でギャングのボスに負債があるニンジャは，チャッピーに強盗の技術を教え込もうとする。ディオンは純粋なエンジニアとして，技術的の向上を目指しているが，ニンジャは金が必要だから，ヨランディは可愛いから，という理由でチャッピーを育てる。ヒュー・ジャックマンやシガニー・ウィーバーまで登場しているので，ロボット製作会社の中で物語が進むと思いきや，ストリートや個人の理由で物語は進む。この辺りもこの監督らしい展開だ。－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－エンジニア・ディオンは，『スラムドック$ミリオネア』のデーヴ・パテールが演じている。人が良いというのがにじみ出ているのが魅力だと思う。ニンジャとヨランディは，実際に南アフリカで活躍しているラッパーが実名で出演しているということだ。2人とも『北斗の拳』に出てきそうな格好なのだが，作品世界だけでなく実生活でもワッハーな人だったとは。悪いのにちょっとはいい人，というキャラを2人とも絶妙に演じていて面白い。－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－チャッピーは廃棄予定のロボットに人工知能をインストールされたので，5日しか寿命がない。それなのに驚異的に成長し，幼児，少年，青年，そしてディオンに迫る知性を発揮する。物語の流れは，人間を超えた知能を持ったチャッピーが，すべての問題を解決する・・・と思いきや，意外な展開をする。え？そっちなの？・・・と思いつつ，そう言えばこの監督の他の作品もそういう傾向あったな。いろいろセオリーを破りつつ，けれども映像も物語も魅力がある。なかなかクセモノの監督だ。個人的にはすごい好きなんだけど，一般受けはどうなんだろう？頑張れ！

  2015.10.30

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• 『シン・シティ　復讐の女神』を観た

  フランク・ミラーのダークなハードボイルドコミックを原作とした映画の第2作目を観た。○ストーリードワイトの前に元恋人のエヴァが現れる。彼女は大富豪の夫に虐待をされていると訴える。危険と知りつつもドワイトは彼女の手助けをするのだが？街に若いギャンブラー・ジョニーが現れる。破竹の勢いで勝ち続けるジョニーは，街の夜の支配者・ロアークに挑戦する。勝負には勝ったのに闇討ちをされ，指を折られたジョニーの運命は？街一番のダンサー・ナンシーは，守ってくれていた刑事・ハーティガンを亡くしてから自暴自棄になっていた。彼女は不死身の男・マーヴの助けを借り，支配者・ロアークに復讐を決心するが？－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－ハードボイルドというジャンルが時代遅れになっているのは，本場アメリカでも同じだ。この作品も濃いキャラクターを取り揃えて，ハードボイルド，あるいはノワールの物語を懐古する流れとなっている。それをさらに影絵のようにデザイン化した絵柄で仕上げており，スタイリッシュという点で，アメコミに新風を巻き起こした。映画化も原作のその風合いを活かす方向で，3DCGを取り入れているのに影絵風というこだわりの画面だ。－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－前述した濃いキャラクターは，前作に引き続き，不死身の暴れん坊・マーヴをミッキー・ローク，悲劇のダンサー・ナンシーをジェシカ・アルバ，ハーティガン刑事をブルース・ウィリスが演じている。新しいキャストとして，ドワイトをジョシュ・ブローリン，ロアークをパワーズ・ブースが演じている。また新しいキャラクターは，ジョニーを最近人気のジョゼフ・ゴードン・レヴィットが演じている。言うまでもなく主役級の俳優が惜しげもなく投入されているという状況だ。－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－様式美を重視した作品は語り口がくどい，というセオリーがあるのだが，この作品もまさにそれだ。特定の主人公を持たず，街そのものが主人公，という流れもそれに拍車をかけている。よって物語の流れに強くドライブをかけるキャラクターが存在せず，誰もが運命に身を任せているような態度なのがアメリカ映画としては珍しいところだ。これがハードボイルドマニアが製作する作品のスタイルなんだと思うと興味深い。

  2015.10.18

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• 『アンダーワールド：エボリューション』を観た

  吸血鬼アクション映画〈アンダーワールド・シリーズ〉の第2作を観た。。○ストーリー吸血鬼族（ヴァンパイア）と人狼族（ライカン）が，世界の覇権をかけて闇の世界で争っている世界。ライカンを処刑する凄腕の女性吸血鬼・セリーンは，吸血鬼とライカンのハイブリッドの青年・マイケルを助けるために，吸血鬼の長老・ヴィクターを殺し，逃亡を続ける。だがもう1人の長老・マーカスが復活し，2人を追い詰める。セリーンは，謎の男・アレクサンドルに助けを求めるのだが？？？－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－どちらの種族もヨーロッパのギャング風で，黒っぽい服を着たガラの悪そうな姿をしている。そうした人たちが突然牙をむいて，怪物に変身し，マシンガンで撃ち合いを始める，という展開は，第1作どおりだ。吸血鬼の中でもリーダー，長老がいて，さらに過去のいきさつがあり，一方のライカン側もリーダーが吸血鬼側の一部と通じている，となかなか複雑な設定になっており，単なるホラーアクション映画を超えている。－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－第2作では，吸血鬼族・ライカンの集団としての存在がほとんど希薄になっている。主人公・セリーンたちを追ってくるのは，2人目の長老・マーカスただ1人，という状況だが，これがめったやたらと強い。コウモリ人間のような姿に変身し，背中からある時は翼，ある時はもう1対の腕となる触手を生やし，多彩なアクションを見せる。マーカスが主人公たちを執拗に追うのはある理由がある。やや展開が強引だが，これがミステリーとなっていて，物語を引っ張る。吸血鬼族の内紛を描いていた前作よりも，物語がシンプルになっていて楽しめる。両種族の存在が希薄になったところに，第3勢力となるアレクサンドルの部隊が登場する。最初は強そうなのだけれど，結局何のために来たのかなこの人たち・・・－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－第1作を観たのはほとんど10年前だった。あまりピンと来なかったので，第2作以降はスルーしていた。そろそろ観てもいいかな，と思っていたところ，テレビで4作連続放映があったので録画をした。続けて観てみると，第2作はなかなか良い。ストーリーラインはシンプルになり，アクションは派手になり，主人公も明確に自分の意思で動いている。もともと主演のケイト・ベッキンセイルは魅力的なので，一気にグレードアップした印象だ。残りの第3作，第4作も楽しみだ。

  2015.10.15

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• 『ネギマン』を観た

  鳥取県米子市で開催される映画祭のために製作された特撮映画を観た。○ストーリー米子市の白ネギ畑の中から緑の巨人が現れた。ネギのような，ウル○○マンのような容姿から，それはネギマンと命名された。だが島根県松江の松江城が巨大ロボット・マツエ・ジョーへと変身し，巨人とロボットは2つの県の威信を賭けて激突することになる。これは新しい国譲りの神話なのか？－－－－－－－－－－－－無駄にハイクオリティーという言葉で評されているこの作品だが，本当にそうだろうか？ネギマンのデザインは，ウル○○マンにそっくり，マツエ・ジョーはスーパー戦隊のロボットの劣化版という印象で，あまり魅力を感じない。鳥取対島根の対決も，火薬は使ったけれどビデオ合成は手が届かなかった，という学生映画以下のレベルだ。これは意図的な部分もあると思うのだけれど，チカラの抜き加減が分からないので，単純に本当にレベルが低いようにしか見えないのが問題だ。とにかく全体的に高校の文化祭の映画，というところ。－－－－－－－－－－－－そして一番の残念ポイントは，ヒロインだろう。この手の映画では，演技はまだまだでも魅力的な美少女が登場することが多いが，そうしたセオリーまで覆している。－－－－－－－－－－－－長々とメイキング映像もあるようだったが，観る気にならなかった。ネタ用に観る以外ではオススメするところがない。

  2015.10.14

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• 『鉄血のオルフェンズ』を観た

  10月からSF番組を観始めた。○ストーリー地球の植民地として搾取され，荒廃した火星の〈クリュセ〉で，少年兵たちの部隊が政争に巻き込まれる。火星独立運動の指導者の少女・クーデリアと自分たちを守るため，彼らは過去の大戦で使用されていた機動兵器を再起動させ，地球を目指す。－－－－－－－－－－－－いびつなデザインのメカ，一方でちょっと古くて濃いキャラということで，あまり前評判は高くなかったこの番組だが，始まってみればなかなかのヒットとなっている。少年たちが平気で命を落とすという最近少なかった殺伐とした世界観と，ところどころに見えるSFマインドが，ミリタリー好きに受けているという状況なので，これが幅広い層に受け入れられて大ヒットとなるかどうかは分からない。でもとりあえず僕の周辺では評判が良い。－－－－－－－－－－－－個人的には「やれやれ」という省エネ志向だったり，美形だったりする主人公ではないのも歓迎だ。主人公たちが，部隊の隊長の大人たちにガシガシ殴られていて，それなのに互いにあまりベタベタ馴れ合っていない，という状況だ。最近よく見られた，「さりげなく大人に認められる少年」という主人公像を真っ向から否定している。かなり潔い。－－－－－－－－－－－－一気に今シーズン一番期待する番組になってしまった。オススメだ。

  2015.10.13

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• 『アントマン』を観た

  ヒーローなのにミニサイズというマーベル社の変わったアメコミ映画を観た。○ストーリー会社の不正を告発しようとしたスコットは，不法侵入と窃盗の罪で3年間服役し出所する。だが経歴がばれるとアルバイトもクビになってしまい，娘の養育費も払えなくなり，面会が出来なくなる。困った彼は，窃盗仲間とある屋敷に忍び込むが，そこにあったのは不思議な全身スーツだけだった。スコットは再び捕まってしまい，屋敷のオーナーに取引を持ちかけられる。もしこのスーツを身に付け2代目アントマンとなり，正義のために働くならば，窃盗を訴えず，そして資金援助もしようというのだ。スコットは生活のために，スーパーヒーローとなる。－－－－－－－－－－－－映画化されるようなアメコミのスーパーヒーローたちは，多少の問題を抱えてはいるものの，ハンサムでマッチョで，多くの場合成功しており，正義の味方であることに疑問を持たない人ばかりだ。アメコミの面白さは，キャラクターの多彩さだ。一連のマーベルのアメコミ映画シリーズも，一段落しかかっており，ようやく変わったタイプの主人公が描かれるようになってきた。『ガーディアン・オブ・ギャラクシー』に続き，『アントマン』でもそうしたアメコミの地平線を広げる試みが行われている。さて『ガーディアン』は「これって他の映画と関係あるの？」というほぼ独立したスペースオペラだったが，『アントマン』では，スターク社，〈シールド〉，〈ハイドラ〉，そしてファルコンが登場し，アベンジャーズの世界と明確につながっていることが提示されている。－－－－－－－－－－－－この映画の魅力は，これまでと異なり，生活費を稼ぎ，娘と面会するために戦うヒーローを主人公にすえたことだろう。多くの映画で描かれた負け犬状態から主人公はスタートする。それがいかにしてヒーローになり，そして娘たちから認められる存在になるか，その逆転劇が語られているから，観ていて応援してしまうのだ。主人公を取り巻く状況のスケール感が小さめなだけでなく，ヒーローに変身した後のサイズも小さい。何しろ身長1.5センチで，従えているアリの軍団の手助けで戦うというタイプ。同じ能力を持つイエロージャケットとクライマックスで戦う場面は，なんとスコットの娘の子供部屋だ。2人の1.5センチの超人が激突する大アクションを映した後に，カメラが引いて見せると，そこは積み木や〈きかんしゃトーマス〉の中というギャップで，それがまたこの作品のチカラを抜いた面白さだ。－－－－－－－－－－－－インフレが進むマーベルの映画の中で，逆方向に動いて見せたことは，なかなかの自信の表れで評価したい。ただしどうしても大ヒットにはなっていないようで，もう夜の回にしか上映していなかった。今後，他のヒーローたちとどのように連携していくのか，それも興味深い。

  2015.10.11

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• 『ハングオーバー!!!』を観た

  コメディとサスペンスがうまく融合した〈ハングオーバー・シリーズ〉の第3作映画を観た。○ストーリーフィル・ステュ・ダグの親友3人は，相変わらず問題ばかりを起こしているダグの義弟・アランを心療内科に入院させるために施設へと向かう。だがその車は突然謎の集団に襲撃され，3人組の1人・ダグはギャング・マーシャルの人質となってしまう。マーシャルは，かつて中国人マフィアのチャウに金塊を盗難されており，脱獄したチャウが交流のあるアランたちにコンタクトを取ると推測していたのだった。フィルたちは，ダグの命を救うために，チャウを捜し出すことを決心する。だが彼らが旅の果てにたどり着いたのは？？？－－－－－－－－－－－－このシリーズの魅力は，冒頭に述べたコメディとサスペンスがバランス良く配置された脚本だろう。主人公たちは，ギャングやマフィアに追われる状態にあり，ハラハラさせられるのだが，途中にどうしても笑ってしまう展開が散りばめられている。そのおかげで，ぐいぐいと引っ張られて最後まで観てしまう。フィルたち3人組は勢いに任せて羽目を外すことが多いものの，心配性のステュ，行動力のあるフィル，人質になる（笑）ダグ，とキャラクターにバランスが取れている。だがそこに問題しか起こさない義弟・アランが加わることで，化学反応が起こる。この破壊力抜群のキャラクターが存在することで，ごく普通のシーンがあっても，次にどんなトラブルが待ち受けているかと気が抜けない。実に面白いキャスティングだ。－－－－－－－－－－－－さて第1作と第2作では悪ふざけをしていて，翌朝二日酔いで目覚めたら，記憶がないのにとんでもないトラブルに巻き込まれていた，というパターンだった。二日酔いのだるさを我慢しつつ，記憶を少しずつ取り戻しながらトラブルに対処をする，というのがサスペンスの要素で，このヒネリが特徴だった。けれどもこの第3作では，ストーリーの展開が時系列どおりだし，主人公たちの記憶はずっと正常なままだ。この辺り，いつものキャラクターとその面白さは健在なのだけれど，サスペンスという部分では物足りなさを感じてしまった。－－－－－－－－－－－－『アメリカン・スナイパー』で重厚な演技を見せたブラッドレー・クーパーが，いつもの優男に戻り，3人組のリーダー・フィルを演じている。いい人そうなエド・ヘルムズが，弱気の歯科医師・スチュを演じている。だがやはり圧巻なのはザック・ガリフィアナキスが演じる奇人変人のアランだろう。第1作でステュといい雰囲気になっていたジェイドを再びヘザー・グラハムが演じているのもうれしい。－－－－－－－－－－－－どうやらこれでシリーズ終了のようだが，毎回楽しませてもらえた。

  2015.10.08

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• 『アメリカン・スナイパー』を観た

  イラク戦争で驚異的なキル・スコアを記録した，実在の米軍狙撃手の伝記映画を観た。○ストーリー南部テキサスで育ったクリス・カイルは，世界的規模で起きていた反米テロに危険を感じ，アメリカ海軍の特殊部隊・シールズに志願し，過酷な訓練を耐え抜く。そして911テロの後，クリスは狙撃手としてイラク戦争のただなかに送り込まれる。1度目のイラク派遣で30人近くを狙撃したクリスは，すでに米軍の伝説的なスナイパーとなっていた。帰国し国内勤務となったクリスだが，家族との平和な生活になじめくなってしまう。またイラク側の元オリンピックメダリストの敵狙撃手に戦友を射殺されたことも影響し，4度までイラク派遣を経験する。敵狙撃手との決着をつけ，帰国したクリスは，ゆっくりと家族との絆を取り戻す。そして・・・－－－－－－－－－－－－アメリカでは話題となっていた伝記小説を，クリント・イーストウッド監督で映画化しており，アカデミー賞にもノミネートされる大ヒット映画となった。「国家・自由・仲間を守るために敵を殺す」という狙撃手の生き方が，保守派・リベラル派の間で議論を呼んだようであるが，作品そのものはニュートラルな印象だ。必要以上にドラマティックにせず，構成・演技・音響も抑えているし，戦地への派遣により家族と気持ちが離れてしまう姿も描いている。つまり映画そのものは，伝記をベースにした物語を描いていて，戦争擁護・反対のどちらのメッセージも唱えていない。相変わらず，イーストウッドは，監督として渋い仕事ぶりを見せている。－－－－－－－－－－－－かつての戦争映画というものは，歴史映画のひとつのジャンルで，戦争を通じた主人公たちの成功や成長を描いたものだった。けれども冷戦時代以降，一部のアクション映画を除き，戦争映画はどれも厭世観に満ちている。厭う相手を戦争を行ってしまう国家にすれば反戦映画になるし，戦争を起こしてしまう状況にすれば保守的な映画になる。けれども，戦争という行為が，人間の日常から逸脱していて，そこに長時間身を置くと，普通の日常になじまなくなってしまうことを描くのは，現代の共通した認識だろう。－－－－－－－－－－－－主人公・クリス・カイルを演じるのは，ブラッドリー・クーパーだ。〈ハングオーバー・シリーズ〉と『特攻野郎Aチーム』では，女たらしの優男を上手く演じていた。最近では，マーベルのアメコミ原作映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で宇宙海賊のリーダー・ロケットを演じていた。この作品では，『ガーディアンズ』で登場した時よりさらに筋骨隆々のマッチョになっていて，最初は〈ハングオーバー〉のあの俳優だとは信じられなかった。痩せ型が，ややポチャになっているという驚きだ。これまでの作品では，そのルックスも手伝って，軽い性格のキャラクターを演じていたが，この作品では全く別人だ。体格も重量級，戦地ではサングラスとバンダナで，敵を冷静に狙撃する。実在の人物を描くにはそれだけの覚悟が必要ということなのかも知れない。この作品のおかげでブラッドリー・クーパーは，ぐっと俳優としての格が上がった。－－－－－－－－－－－－きちんとエンターテインメント作品でありながら，考えさせられる映画となっている。クリント・イーストウッド監督作品の特徴でもある。オススメだ。

  2015.09.26

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• 『エージェント・オブ・シールド』シーズン1を観た

  日本テレビで放映されていたマーベル社のテレビドラマの第1シーズンを観た。○ストーリー映画『アベンジャーズ』でロキに刺殺されたエージェント・コールソンは生きていた。彼は自分の精鋭チームを結成し，世界各地で発生する怪事件を未然に解決する。だが一方で〈シールド〉の中で急進的な考えを持つものがチカラを持ち始め，コールソンのチームは孤立することになる。さらに裏切り者が出て・・・－－－－－－－－－－－－『アベンジャーズ』第1作，『キャプテン・アメリカ』第2作あたりを背景にしたテレビドラマだ。マーベル映画の世界をつなぐスーパー・サブキャラだったエージェント・コールソンを主人公に据えていることから分かるように，一連の大作アクション映画と同じ世界に属しているという設定だ。テレビドラマシリーズで人気が出ると映画化される，というパターンはアメリカで始まり，日本でも飽きられつつも続いている現象だが，複数の大作映画を背景にしてテレビシリーズが製作される，というのはあまり聞かないパターンだと思う。実際にこの第1シーズン後半の〈シールド〉崩壊の流れは，『キャプテン・アメリカ／ウィンター・ソルジャー』のストーリーをベースにしているのだけれど，それから2年近く経っている今では驚きは薄くて，逆に”え，またかよ”というトンチンカンな反応をしてしまい，ギャップを感じる。映画の公開，テレビシリーズの放映時期など，各国で異なるので，こうしたタイアップもなかなか難しいものだ。－－－－－－－－－－－－さて奇跡の生還を遂げたエージェント・コールソンのチームは，コールソン自身はアメリカ人で，FBI風なスーツ姿の捜査官だ。彼に次ぐベテランは，中国系のメイ捜査官で，捜査・輸送機のパイロット・工作と何でもこなすクールで無口な女性だ。現場オペレーションのチームリーダーは，アメリカ人のウォードで，チームの危険任務を現場指揮する。機械の修理，分子の分析，超常現象の解明，と科学的なサポートを行うのは，〈シールド・アカデミー〉出身の天才科学者で，イギリス人コンビの男女・フィッツとシモンズだ。そしてコールソンチームの新人は，元は反〈シールド〉組織に属していた天才ハッカーの美少女・スカイだ。－－－－－－－－－－－－なんだか盛り上がらなかったなあ，という回もあるのだけれど，ごくたまーに映画からのゲスト（といってもあまり期待してはいけない）がいたりするし，ちゃんとシリーズを通じた謎がいくつもあるので，軽く観ている分には充分楽しめる。〈シールド〉ってアメリカの政府組織じゃなかったの？とか，じゃあ資金は誰が出しているの？とか，本質的な疑問を抱かずに観る分にはOKだろう。今のところ，地上波で放映するのは第1シーズンのみらしい。待てずに第2シーズンをビデオで借りるか？というとそれほどでもないかなあ？

  2015.09.24

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• 『ジュラシック・ワールド』を観た

  〈ジュラシック・パーク・シリーズ〉の第4作目を観た。○ストーリー事故を起こして閉鎖された〈ジュラシック・パーク〉は，マスラニ社長の元で〈ジュラシック・ワールド〉として再生し，世界的なテーマパークとして人気のスポットとなっている。だが集客力を維持するために，新種の恐竜を定期的に発表する必要があり，とうとう複数の生物の遺伝子を組み込んだデザイン恐竜・インドミナス・レックスを生み出す。そうした状況に悩みつつパークを経営するクレアの元に，甥のザックとグレイが訪れる。パークを楽しんでいる2人だが，その裏でインドミナス・レックスの逃亡という大事故が発生していた。クレアはなんとか2人を助け出そうとするのだが？？？－－－－－－－－－－－－マイケル・クライトンの現実と接点のあるSF作品のファンだったので，原作「ジュラシック・ワールド」の時点からして好きだった。『ジュラシック・パーク』はビデオも持っていて何回も観たし，残りの2作品も楽しんだ。そんな状況なので，15年ぶりの新作を逃すワケにはいかない。－－－－－－－－－－－－さて今回の作品は，『II』『III』には一切触れず，『I』（『ジュラシック・パーク』）の22年後の続編として描かれている。映画の中でも，現実の中でも〈ジュラシック・パーク〉のリブートが行われているワケだ。映画でも，初代の経営者・ハモンドについて語られ，『I』で使われたジープや双眼鏡が登場し，あのラストシーンで使われたホールでアクションが行われたりする。きちんと『I』のファンに配慮していて，正しい続編だった。－－－－－－－－－－－－このシリーズは，リアルSFの形式を用いた恐竜パニック映画だ。シリーズを通じて，子どもが危険な場所に行ってしまう，安全なはずの科学技術が現実に対応できず崩壊する，恐竜が逃げ出して子どもたちを襲う，というパターンを何度も繰り返している。だからパークを訪れたザックとグレイの兄弟が，進入禁止の通路に行ってしまったり，警備スタッフが間抜けだったり，やっぱり恐竜が逃げ出したりしても，怒ってはいけない。この作品世界では，誰もがこの流れに沿うように行動しているのだし，観客も恐竜パニック映画を観に来ているのだから，突然リアル思考になるのは不毛なことだと思う。－－－－－－－－－－－－それでも『I』で表現されていた，”恐竜が生きている，それだけでうれしい”というスピリットが薄まっているのは残念な気がした。予告でも使用され，平和なパークの風景として扱われた水中恐竜・モササウルスも，大きくて肉食の恐竜だった。パーク経営者側が育てているのも，ハイブリッド恐竜・インドミナス・レックス，シリーズで一躍有名となったラプトルという肉食恐竜で，なんだか危険なニオイしかしない。わずかにインドミナス・レックスに襲われた草食恐竜アパトサウルスを看取るシーンに，その空気が少しだけ感じられる。けれどもそんな緊迫した状態の恐竜が見たいんじゃない。のんびりと眺めたい，可能ならば一緒に走り回りたい，という気持ちは，今回の脚本にはなかった。－－－－－－－－－－－－そんなスタンスの作品なので，クライマックスは『サンダ対ガイア』的な，怪獣映画的な描き方だった。ここのパークの人々，次々にルールを破って，一応上手く行ったからいいけど，何の根拠もなく行動しているから怖い。一歩間違えば，スプラッター映画だ。過度な遺伝子操作はダメ，ナチュラルなままが良い。あとは，どんな生き物ととも心を通い合わせることはできる，というのが一応のテーマだろうけれど，作品の中でもどっちも自信がある描かれ方ではなかった。そもそもリスク管理がきちんとしていればパニック映画は成立しない。一度ロジックが破綻した世界で，いかに生き延びるか？・・・というスタンスでもなかったなあ。まあ，子どもは生き残る，ということで（爆）。－－－－－－－－－－－－いろいろ批判をされているし，僕も揶揄しているけれど，好きなシリーズだ。

  2015.09.23

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• 『デスノート』『探偵の探偵』の最終回を観た

  今シーズン観ていたドラマが次々と最終回を迎えた。『デスノート』：デスノートのチカラによりライバル・L（エル）を倒した夜神月（らいと）は，新世界の神となる計画を進めようとしていた。だがLの後継者・ニアの邪魔により，月は妹を誘拐され，父を喪うことになる。ニアの元に向かった月が目にしたことは？・・・夜神月役の窪田正孝，そしてL（エル）役の山崎賢人の2人の主人公のドラマという印象の作品だった。天才と変人の対決，という原作の設定から変えて，普通の大学生と天才の対決とだいぶイロモノ度を抑えているので，2人が親しみやすくなっていた。演技力も意外とあったんだね。放送開始前からネットで大注目だったのも，原作の人気の高さを再認識できた。大コケ必至と予想されていたのに，批判を気にせずグイグイ進んだおかげで大健闘というところだろうか？笑われていても人気者は強い。第3のキラ・魅上検事を，忍成修吾が演じていたのは個人的には良かった。－－－－－－－－－－－－『探偵の探偵』：ついに妹の仇〈死神〉にたどり着いた紗崎玲奈は，峰森琴葉を救うために筋弛緩剤を打たれてしまう。喜び狂う〈死神〉を殴り倒したのは，死んだはずの玲奈だった。再び探偵同士の死のゲームが始まる。そして・・・北川景子が毎回傷だらけになるし，ニコリともしないで愛想が悪いし，という体当たり演技の作品だった。女優としてはかなり挑戦的な内容で，批判もあったけれど，少しも路線を変更しないで突っ走ってしまったのは偉いと思った。原作通りの内容をドラマ化したのも，驚いた。なかなか気骨がある製作陣なのだろう。最後は北川景子だけでなく，川口春奈までも顔を鼻血だらけにしていた。良いのか？Dean Fujiokaという男優と，門脇麦という女優の演技に驚いた。これまで知らなかったけれど，なかなかチカラがありそう。－－－－－－－－－－－－双方とも原作がある作品だけど，トンデモ系とリアル（？）系と全く異なる内容で，それをそのまま踏襲して製作されていた。視聴率的には『デスノート』がはるかに上だったけれど，個人的には日本のドラマにしては珍しく緊張感のあった『探偵の探偵』が好きだった。

  2015.09.21

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• 『プリデスティネーション』を観た

  パズルのように頭を使う作品を観たくて，このSF映画を観た。○ストーリーニューヨークのバーで，若い男がバーテンダーにホラ話を聞かせる。孤児院で育った少女がある政府組織の訓練生として抜擢されるが，暴力沙汰で身分を失う。働きつつ学校に通い始めたが，流れ者の男と恋に落ち妊娠したことで，それもダメになる。娘を出産するが，出血が多く死線をさまよい，命を救うために医者に男性にされる。そしてそれは自分だ，と。途方もない話を聞いたバーテンダーは，逆に青年に尋ねる。もし過去に戻れるならば，いつに戻り，何をするのか？彼が答え，そして行ったこととは？前代未聞のSF物語が始まる。－－－－－－－－－－－－タイムトラベル物というのはSFでも人気のジャンルで多くの小説や映画が製作されている。「あの時代に行けたら」「あの時，ああしていれば」という誰もが空想することが実現されるし，語り口を工夫すればミステリーにも，恋愛小説にも仕上げられるという柔軟性がある。さらに大掛かりな特撮を用いなくても製作できるというメリットもあるだろう。－－－－－－－－－－－－この作品は”時空へ逃げても追い詰める”というコピーが付いていたので，タイムトラベルかつアクションだと思っていた。実際，冒頭のシーンは，爆弾魔を阻止しようとして身を挺して戦う主人公の姿だ。ところが怪我から快復した主人公が就いたのはバーテンダーの仕事だった。そして訪れた若い男と長い長い会話を始める。一体全体ストーリーはどこへ行ってしまうんだろう？もう，完全にぽかーん？？？だった。けれどもずーっとそれに付き合っていると，2人の男の会話が，単なる飲み屋のホラ話ではなく，作品のテーマを関わる物語であることが分かり始める。それが分かった瞬間の衝撃は，なかなか気持ちが良かった。これぞSFの醍醐味，という感じ。－－－－－－－－－－－－物語のコアは，バーでのホラ話なのだと思う。その部分はひじょうに良く出来ていて，いかにも外国の短編小説のようだ。また普通の会話のようで，あちこちに伏線が隠されていて，あとあとニヤリとさせられる。実にお洒落だ。映画のオリジナルは，連続爆弾魔と，それを阻止しようとする主人公の任務という部分らしい。確かにこうしたアクション要素がないと，映画としては盛り上がりに欠ける。さらに物語としてもあまりにも閉鎖的過ぎるだろう。とは言え，ここにも皮肉な結末が待っている。それもきちんと伏線が張ってあるから驚きだ。究極の1人称映画だろう。－－－－－－－－－－－－ネタバレを避けるために，この感想文を読んでも，なかなか何を言いたいのか分からないと思う。でもSF好き，パズル好きならば，この映画を観て後悔することはないと思う。時代性を出すためにややキッチュな画面もあるのだけれど，全体的にはひじょうに丁寧にお洒落に製作してある。気にせず手にしたけれど，大ヒットだった。オススメだ。

  2015.09.19

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• 『グランド・ブダペスト・ホテル』を観た

  アカデミー賞など多くの賞を得たウェス・アンダーソンの映画を観た。○ストーリー東欧のズブロフカ共和国にあるグランド・ブダペスト・ホテルは，最高のサービスを提供するコンシエルジュ・グスタヴで有名だった。だが常連客のマダムDが事故死し，遺産の名画〈林檎を持つ少年〉がグスタヴに遺されたことが明らかになると，長男のドミトリーはグスタヴを殺人者として訴える。名画を持ち出し，ホテルまで戻ったグスタヴだが，逮捕され刑務所に投獄される。だが彼は，ホテルの新人ベルボーイ・ゼロの協力で脱獄し，自分の身の潔白を証明してくれる証人を探してヨーロッパ中を走り回る。その旅の果て，彼らを待っていたのは？－－－－－－－－－－－－以前から一部で話題になっていたウェス・アンダーソンだが，一気に知名度が上がったのがこの作品でアカデミー賞を取ってからだろう。作品としては，いつもどおりのアンダーソンワールドだ。上品な淡い色調，舞台劇のようなアングル，そして感情を抑えた演技，と言ったところ。では，この作品がいつも以上に評価されたのはなぜか？まずは物語の単純さがある。遺産相続をめぐる殺人事件に巻き込まれた主人公が，逃亡しながら身の潔白を晴らそうとする物語。アンダーソン作品には珍しい分かりやすい物語だ。しかしきちんと，その奥に重いテーマが隠れている。1930年代を舞台にして，失われていく上品な時代の象徴である主人公・グスタヴが，台頭するファシズムなど”世の中を損なうものたち”といかに戦ったか，という姿が描かれている。分かりやすさと奥深さ，こうした多層的な物語も評価された理由だろう。－－－－－－－－－－－－多層的と言えば，作品は3つの時代が入れ子構造になっている。まずは現代で，ある女性が『グランド・ブダペスト・ホテル』という小説の作者の記念碑を訪ねる。次にその作者が1960年代のグランド・ブダペスト・ホテルに滞在する姿が描かれる。作者はそこで謎のオーナーと出会い，ホテルがまだ華やかだった頃の思い出を聞く。そして時代は1930年代へとさらにさかのぼり，伝説のコンシエルジュ・ムッシュ・グスタヴがホテルを切り盛りしていた黄金の時代に起きた事件について語り始める。3つの時代で画面の色調が異なるのも面白い。だが，この構造は失われていく時代を描くと言う作品のテーマと密接に関わっている。－－－－－－－－－－－－主人公のグスタヴを演じるのはレイフ・ファインズだ。一番有名なのは〈ハリー・ポッター・シリーズ〉のヴォルデモート役，そして最近では〈007シリーズ〉のマロリー役だろう。とにかく上品で強引なホテルマンを演じ切っている。まさに英国人という感じ。もう1人の主人公，ゼロを演じるのは，トニー・レヴォロリというインド系の青年だ。1960年代の作家を演じるのはジュード・ロウだ。知的なおでこが似合っている。それ以外には多くのアンダーソンファミリーが出演している。エイドリアン・ブロディ，ウィレム・デフォー，ビル・マーレイ，エドワート・ノートン，そしてオーウェン・ウィルソン。多くの名優が短いながら良い役を与えられていて，その部分は〈グランド・ホテル風〉ではある。ストーリーは違うけれど。－－－－－－－－－－－－結局，1930年代にヨーロッパは激動の時代を迎え，世の中は大きく変わってしまった。だから，エンディングはかなり苦いものとなっている。それでもグスタヴがいたグランド・ブダペスト・ホテルは，圧倒的に華やかな印象を最後まで残す。ウェス・アンダーソン監督のものとしては，ひじょうに入りやすい作品に仕上がっている。王道の楽しさでオススメできる。

  2015.09.11

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• 『ナイトミュージアム3 エジプト王の秘密』を観た

  博物館を舞台にしたファミリー向けコメディ映画シリーズの第3作目を観た。○ストーリーラリーが働くニューヨーク自然史博物館では，夜になると展示物が動き出すのが特徴だ。だが，その不思議な現象を起こしているチカラの源である，エジプト王の石盤が輝きを失い始め，展示物は動きがおかしくなる。この現象を解消するために，ラリーは補修の名目で石盤を大英博物館に持ち込み，エジプト王本人に会いに行く。だが展示物たちも勝手に同行し，大英博物館の展示物とトラブルを起こし始め，石盤を奪われてしまう。果たしてラリーたちは期限までに石盤のチカラを復活させることが出来るのか？－－－－－－－－－－－－毎日パーティやってて身体持つのかなあ？・・・まあ蝋人形だから疲れは感じないのか？－－－－－－－－－－－－シリーズ第3作目だが，どうやら最終作ということらしい。第1作目の公開が2006年，第2作目が2009年，そしてこの作品が2014年と，監督，主演，常連の助演を保ったままシリーズが続いた。期待されていなかったファミリー映画から，ここまで愛されるシリーズに化けたことは，本当に幸せなことだと思う。1作目はニューヨークの自然史博物館が舞台，2作目はワシントンのスミソニアン博物館が舞台，そしてこの3作目はロンドンの大英博物館が舞台と，確実にステップアップしている。この流れも好き。自然史博物館の展示物，という設定なので，フン族，ローマ人，開拓者，アメリカ大統領と，なんだか珍妙な役柄のオンパレードなのだが，シリーズを通じて同じ俳優が出演しているのも，この作品のほんわかした雰囲気を表しているようでうれしい。－－－－－－－－－－－－さて，ハリウッド映画はいろいろ批判があっても，あらゆるエリアでプロが製作していることは間違いが無い。この映画でも，失われつつある石盤のチカラをなんとかする，という流れとは別に，父と息子の関係を考えるというサブテーマがある。ファミリー映画の常として，子どもの観客と大人の観客の両方に合わせたツボが用意されていて感心した。親子関係テーマの全部がうまく解決しないのも，脚本のバランスの良さだ。全部ハッピーではないエンディングというのも，作品の味わいのひとつだから。－－－－－－－－－－－－博物館の夜警ラリーを演じるベン・スティラーは，この映画がきっかけで好きになった。『ペントハウス』はどうかと思ったけれど，『Life!』はビデオを買おうか悩むほど好きだ。大統領セオドア・ルーズベルトを演じるロビン・ウィリアムズは，この映画が遺作となったようだ。展示物の仲間のリーダーとしてそこそこの味わいを出している。開拓者ジェでダイア・スミスを演じるオーウェン・ウィルソンは，ウェス・アンダーソン監督の作品で常連となっており，そちらを順番に観ている時に，「あ，この人，前から知ってる」と言えるありがたい存在だった。－－－－－－－－－－－－せっかくの大英博物館なのに，なぜかパワーダウンを感じる第3作目だった。イギリスマーケットを意識して，ランスロット卿のダン・スティーヴンス，アーサー王役のヒュー・ジャックマンを出したのになあ。好きなシリーズなのに，劇場に足を運ばなかったけれど，ビデオで観て，正しかったのだと再認識だ。でも，全体としてはいい雰囲気のシリーズなので，オススメはしたい。

  2015.09.05

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• 『ジャックと天空の巨人』を観た

  ”城壁を攻めてくる人喰い巨人”の映画というナニなPRをされたファンタジー映画を観た。○ストーリー小作の青年ジャックは，馬を売りに行き，換わりに数個の豆をもらって帰り，叱られる。だがその豆には魔法がこめられており，一晩で巨大な木に育ち，天空に浮かぶ謎の大地へとつながる。王国の騎士たちと大地へたどり着いたジャックだが，そこは人喰い巨人族の住む場所だった。一度は地上へと逃げ帰り，豆の木を切り倒した騎士たちだったが，巨人たちはなんとか地上へ降り立ち，王城へと攻め込む。そしてついに城門は破られ・・・－－－－－－－－－－－－誰でも知っている童話「ジャックと豆の木」を題材にしたファンタジー映画だ。絵本やNHKの人形劇で教わった物語なのに，2時間映画にしてしまうとは驚いた。基本はシンプルな物語だが，童話や昔話の常として，地方や時代によりいろんなバージョンが生まれているらしい。だからどこまでが童話の内容で，どこからがこの映画のオリジナル展開なのかが，僕にはよく分からない。覚えている童話の内容では，小作のジャックは，馬を売りに行き，だまされて豆と交換してきて叱られる。捨てた豆から豆の木が育ち，ジャックがそこへ上ると，巨人の住む城がある。ジャックはそこから金銀と魔法のハープを盗み出すが，気付かれて巨人に追われる。一足先に地上に降りたジャックは，豆の木を斧で切り倒し，巨人は落ちて死んでしまう，というものだ。映画は多くのアレンジを加えつつも，前半は童話の内容で物語が進む。だが映画版の巨人は人数も多く，最初の豆の木が切り倒されてもひるまない。なんとか地上に降り立ち，反撃をしてくる。王城にこもる人間たちに対して，巨人たちが攻め込もうとするのは，まるで『ロード・オブ・ザ・リング』や『進撃の巨人』のようだ。前半は童話，後半は大スペクタクルファンタジーという映画だ。－－－－－－－－－－－－巨人たちは身長10mくらいだろうか？森の中から巨人の群れが駆け出してくる瞬間は，なかなかの迫力があった。そして何よりの見所は王城での戦いだ。人間たちも火弓，強弓を用いて応戦，巨人たちは木を投げ込むなど，たった1つの城門を前後にして，迫力の攻防戦が繰り広げられる。この映画が公開された時は，やたらと『進撃の巨人』を意識したPRがされていて，かわいそうな気持ちになった。ただ観終えてみると，ちょっと似過ぎているので，映画の製作陣も『進撃の巨人』を知っていたかも知れないと思った。まあ，個人の感想だけど。－－－－－－－－－－－－主人公・ジャックを演じるのは，ニコラス・ホルトだ。最近では『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の青年・ニュークスが目立つ。アメリカでは人気があるタイプの顔立ちだけど，おバカそうに見えて個人的には好みではない。ヒロインのイザベル姫を演じるのは，エレノア・トムリンソンという女優。せっかく甲冑姿になったのに，あまり活躍しなかったなあ。やせてる。騎士団長・エルモントを演じるのは，ユアン・マクレガーだ。何度見ても惚れ惚れ。この映画では，貧乏くじを引いてばかりなのに，ぶれずに頑張る軍人の役だ。運ばかりで良い思いをしているジャックに反発するんじゃないかと心配したよ。－－－－－－－－－－－－ラストにはちょっとした驚きがあり，にやりとさせられる。こうした終わり方って好きだなあ。

  2015.08.29

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• 『ルパン三世 Green vs Red』を観た

  〈ルパン三世〉の作品の中でもっとも異質と言われる作品を観た。○ストーリー緑のジャケット，赤のジャケット，様々な姿で世界中で犯罪を繰り返すルパン三世。彼らはルパンに憧れる偽者で，とうとうコンビニで万引きをして捕まるルパンまで現れる始末だった。プライベートジェット機の墜落事故から少年を救ったルパンの1人は，これが大事件につながることを知る。少年は民間軍事サービス会社〈ナイトホークス〉の社長代行であり，この会社は日本政府と秘密兵器〈アイスキューブ〉を開発していた。これを狙う緑のジャケットのルパンの前に，赤のジャケットを着た本物のルパンが立ち塞がる。銭形，不二子，五エ門，次元たちは，どちらの味方となるのか？世界をゆるがす物語の決着は？－－－－－－－－－－－－〈ルパン三世〉はいまだに定期的にスペシャルドラマが制作され，実写映画も有名俳優を使って製作されるという人気のシリーズだ。ここまで何回も映像化をされていると，相互にズレや矛盾が出てくるものだが，これまではそれらは時代ごとの解釈の差，パラレルワールドなどとして，無視するのが大人の対応だった。それなのにこの作品では，それぞれの作品やシリーズのルパンは別人で，ズレや矛盾は偽者だったからだ，という解釈をしている。ファンの同人誌ならともかく，本家でそれをやってしまったのか？とびっくりする内容だった。－－－－－－－－－－－－人気キャラクターの長期シリーズ化によって，矛盾が生じてしまうのはマンガも複数の脚本家とアーティストで描かれていて，何十年も連載が続くアメコミなどではよくあることだ。アメコミでは一定周期で作品のリセットが行われていて，時代に合わせた内容でシリーズが最初からまた始まる，というテクニックを使っている。確かに〈ゴジラ〉〈ウルトラマン〉〈仮面ライダー〉〈ガンダム〉と言った人気コンテンツも，途中からリセットされたり，別世界の物語として語られたりとして，延命を達成している。〈ルパン三世〉が1人のピカレスクヒーローとして40年間活躍しているのは，冷静に考えれば確かにおかしい。〈サザエさん〉じゃないんだから。－－－－－－－－－－－－とは言えこの作品が異質なのは，〈緑のルパン〉と〈赤のルパン〉の2人のルパンの対決と見せかけて，何百人ものルパンが登場し，「ルパンの心を持ったのがルパンだ」と言った解説をしていることだ。旧作〈ルパン三世〉でも，街中の人がルパンの変装をしている，というシーンはあったが，あれはあくまでもアルバイトの若者が変装をしているだけだった。この作品では，ルパンになろうと思って変装をして，さらに自分で泥棒を（万引きも）している人たちが何百人もいて，さらに頑張ればその中の誰かが〈？代目のルパン三世〉になれる，というぶっ飛んだメタフィジカルな設定になっていることだ。－－－－－－－－－－－－そうした設定の上に，意図的に観客を混乱させようとしているフシがこの作品にはある。画面できちんと描写されるだけでも〈緑のルパン〉〈赤のルパン〉，さらに〈兄貴ルパンA〉〈子分ルパンK〉がおり，敵の組織にも偽ルパンがいるなど，とにかくルパンだらけで混乱する。さらに〈緑のルパン〉となったヤスオの過去が，時系列をバラバラにして挿入され，彼の妄想までも一緒に表現される。また本家のように見える〈赤のルパン〉の正体が，ある人物であるように描かれているのだが，最後まではっきりとしたことが分からない。画面上の混乱に，脚本上の惑わしもプラスされ，観終えてもモヤモヤが残ってしまう。－－－－－－－－－－－－観終えてからしばらくすると，〈ルパン三世〉の世界を破壊しかねないこの作品のテーマの面白さの方が強く感じられてきた。禁じ手のようでありながら，なかなかクセになりそうな作品だ。一般的にはオススメは出来ないけれど。

  2015.08.23

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• 『エクスペンダブルズ』を観た

  往年のアクションスター大集合，が売りのシリーズ映画の第1弾を観た。○ストーリーバーニー率いる傭兵部隊〈エクスペンダブルズ〉は，メキシコ湾の小さな軍事国家〈ヴィレーナ島〉の独裁者を片付ける任務を請け負う。偵察に向かったバーニーとリーは，軍に発見され逃げ出すが，案内人の女性・サンドラは捕らわれてしまう。バーニーは自分のチームを率いて，島を強襲しようとするが，彼らの前にかつての仲間が立ちはだかるのだった。－－－－－－－－－－－－消耗品を意味する〈エクスペンダブルズ〉という部隊の名称がいい。そのメンバーは，『ロッキー』『ランボー』のスタローン，『トランスポーター』のジェイソン・ステイサム，『リーサル・ウェポン』のジェット・リー，『ロッキー4』『ユニバーサル・ソルジャー』のドルフ・ラングレン，と驚きのアクション俳優たちだ。さらにそれ以外に，ブルース・ウィリス，アーノルド・シュワルツェネガー，ミッキー・ロークまでが出演している。もうこれは『怪獣総進撃』か『大怪獣総攻撃』か，という陣容だ。だったらもう楽しむしかない。－－－－－－－－－－－－夏休みの時間つぶしに借りた映画なので，意図的に内容の無いものを選んだ。無敵のマッチョ傭兵部隊が，囚われた女性を救うために要塞に襲撃をかける。要塞は何百という兵隊に守られているが，10人にも満たない傭兵部隊がそこを殲滅してしまう。突っ込みどころ満載だが，決して『マチェーテ』のようにふざけているワケではない。俳優のキャスティング，それぞれの見所を作るアクションシーン，ふんだんに使われている火薬とガソリンの量，はやたらと豪華だ。「どうやったら観客を楽しませることが出来るか？」を念頭において製作されているので，やたらと勢いだけはある。－－－－－－－－－－－－中南米の軍事国家の独裁者が悪者という懐かしいフォーマットなのだが，さすがにそれではダメだと思ったらしく，その裏にアメリカ人の麻薬シンジケートがいた，という設定になっている。独裁者が家族には甘いとか，不思議なエピソードを混ぜているが，むしろ麻薬シンジケートは実はCIAだった，とかいう展開の方が面白かったのになあ。で，ちょっと物語に奥行きがあるのか？と思わせておいて，実はシンプルでスッカスカだったという，謎の裏切りだ。まあ勢いの映画だから。－－－－－－－－－－－－ジェット・リー vs ドルフ・ラングレンの対決はあって，なかなかそれぞれの特徴を活かしたアクションシーンが展開される。そうしたものをもっと期待していたのだが，それ以外はマシンガンをバラバラ撃つばかり。ブルース・ウィリスとシュワルツェネガーに至っては，いわゆる”顔見世興行”的な出演のみだった。お祭り映画は分かるのだけれど，もうちょっと個性を活かしてもらいたかったなあ。

  2015.08.09

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• 追悼・泉政行　『仮面ライダー555（ファイズ）』を観た

  〈平成仮面ライダーシリーズ〉でも傑作としての評価が高い『仮面ライダー555（ファイズ）』の第1巻を観た。○ストーリー〈ファイズ〉のベルトを受け取った少女・真理は，巧（たくみ）・啓太郎という青年に出会い，一緒に東京を目指す。彼らはベルトを狙う怪人〈オルフェノク〉たちに襲われるが，ベルトを装着して〈ファイズ〉に変身した巧のおかげで危機を乗り切る。一方，交通事故で死んだはずの青年・木場勇治は復活し〈オルフェノク〉となる。彼は同じ境遇の，長田結花・海堂直也とともに暮らし始める。〈オルフェノク〉を利用し，人類を支配しようとする〈スマートブレイン社〉が勢力を伸ばす中，巧たちと木場たちは人類と〈オルフェノク〉の共存を目指そうとする。だが？－－－－－－－－－－－－－－この物語はいろいろと挑戦をしている。まずは言うまでも無く，人類側のトリオ・巧・真理・啓太郎だけでなく，〈オルフェノク〉側のトリオ・木場・結花・海堂をきちんと描いているということだ。それにより物語が両側の視点で語られ，ひじょうに考えさせられるものになった。次にベルトを利用して〈ファイズ〉に変身出来るのは，最初こそ巧だけだが，他の者，また敵にも適合者が存在し，主人公の人物と〈ファイズ〉は必ずしも同一ではない，という設定も斬新だった。また正義の味方〈ファイズ〉に変身できる巧はぶっきらぼうで面倒くさがりで，怪人に変身する木場勇治は優しくて良い人，という設定となっている。これは「イケメンで優しい青年」が主人公という，それまでの〈平成仮面ライダー〉の流れから外してある。－－－－－－－－－－－－－－初期〈平成仮面ライダー〉のフォーマットなので，物語は伏線が多く最後まで謎が分からないという大人向けの展開だった。1年間50話もそれを続けるので，さすがに設定の無理や回収されない伏線もあったが，この頃の脚本は素晴らしく，今思い出しても毎週興奮しながら視聴していた。－－－－－－－－－－－－－－さて，今回，木場勇治役を務めた俳優・泉政行が亡くなったということで，とても驚いている。きりっとした系統の顔立ちで面倒くさがりの主人公を演じた・半田健人との対比で，笑顔の優しい青年を演じていて，間違いなくもう1人の主人公だった。とても残念だ。

  2015.08.05

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• 『ターミネーター：新起動 ジェニシス』を観た

  アーノルド・シュワルツェネガーをスターダムへとのし上げた傑作シリーズ〈ターミネーター〉の新作映画を観た。○ストーリージョン・コナーに率いられた人類の反抗勢力は，圧倒的な技術力・軍事力を持っていた人工知能〈スカイネット〉に勝利した。だがその時，〈スカイネット〉は過去へ〈ターミネーター〉を送り込み，ジョン・コナーの母親・サラ・コナーの殺害を計画する。それを追って過去へと飛んだ反乱軍の若者・カイル・リースを待ち受けていたのは？全く異なる『ターミネーター』第1部の物語が始まる。－－－－－－－－－－－－〈ターミネーター〉は英語が下手なシュワルツェネガーを，倒れても倒れても主人公を追い続ける無口な殺人ロボットと設定したことで，大ヒットとなった。シュワの見た目と〈ターミネーター〉というキャラクターが見事にシンクロして，偉大なるアイコンとして今でも親しまれている。第1部は低予算映画だったが，キャメロン監督は第2部で〈液体金属ターミネーター〉をCGで描写する，という離れ業を行い，これまた大ヒットした。残念ながら〈女性ターミネーター〉を投入した第3部では，物語の後味の悪さも手伝って興行的に振るわず，リブートと言われ，未来を舞台に移した第4部などは，「無かったこと」になっているほどダメだった。ここでシュワルツェネガーの〈ターミネーター〉をきちんと復活させ，『新起動』という大胆なサブタイトルをつけ，この映画が公開された。大ヒットシリーズの続編の公開が続いている今年の洋画の中でも，この映画は注目度が高い。－－－－－－－－－－－－シュワが老けてしまっている，これまでのストーリーと矛盾するなど，いろいろと不安要素が多かった映画だが。観て見れば楽しめた。僕は第1部と第2部はDVDで持っていて，たまに観直すというファンなので，今回のようにこの2つの作品へ敬意を示しつつ，それを改変するという物語には，もう一発でKOされた。『バック・トゥー・ザ・フューチャー』のように，”あの事件の裏で実は・・・”という展開ではなく，完全に物語の流れを変えてしまう，というチカラ技なので，人によっては抵抗があるかも知れない。何しろ，我々が親しんだ第1部・第2部はもう無かったことになってしまうのだ。でもそれよりも，もう枯れたコンテンツと思われたシリーズを，ライブで楽しめるものに直した，という意味で，この改変の意義は大きい。早く，この作品のDVDを家で観て，旧作品との比較をしたいものだ。－－－－－－－－－－－－とは言え，いろいろ批判も多い。そうした中での1つが，この作品で登場する新しい〈ナノマシン型ターミネーター〉だろう。黒い小型パーツが流れていって侵食をするというシーンは『ベイ・マックス』『トランセンデンス』など，最近のSF映画のトレンドだとは言え，もう1つシュワのライバルとしては，キャラクターがはっきりしない。あんまり強そうじゃないし。はっきりしない相手であっても，ゴンゴン殴りつけてやっつけようとする，って流れはご愛嬌だけど。－－－－－－－－－－－－最近のCGのおかげで，20代，40代，60代のシュワルツェネガーが画面に現れる。CG技術の高さにも感心するけれど，画面に出るだけで観客を呼べるという存在感はやはり絶大だ。個人的にはこの作品で満足だけど，まだ続編の計画があるらしい。まあ，死ぬまでやるなら，それに付き合うまでだ。

  2015.08.01

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• 『アップルシード アルファ』を観た

  士郎正宗コミックを荒牧伸志監督が映画化を続けている作品の新作を観た。○ストーリー複数の世界大戦が終わり，人類はなんとか社会を再構築しようとしていた。元SWATの女性・デュナンと，彼女の恋人で全身サイボーグのブレアレオスは，生活のためニューヨークでギャングに雇われて便利屋をしていた。だが仕事の場である男女を救出したことから，彼らは国家をめぐる計画に巻き込まれてしまう。そこで彼らが決意したこととは？－－－－－－－－－－－－士郎正宗は『攻殻機動隊』『Ghost in Shell』が有名だが，そもそもメジャーで注目されることになったのが1985年に発表の『アップルシード』だ。近未来を舞台にした『攻殻』と比べ，もう少し先を舞台にした『アップルシード』はよりSF色が強いが，大きくは同じ世界感を共有していると言われる。独自進化を続ける『攻殻』と比べ，『アップルシード』は原作者・士郎正宗が目指しているモノがよりシンプルに現れている。－－－－－－－－－－－－『攻殻』の公安9課隊長の草薙素子とサポート役の元レンジャー・バトーは，互いに意識している部分はあるもののあくまでも同僚だ。それに比べて『アップルシード』の主人公の女性・デュナンと元SWATのブレアレオスは恋人同士だ。また『攻殻』はチームプレイ，『アップルシード』は基本的にデュナンとブレアレオスがバディということで，物語の雰囲気は大きく異なる。2つの作品に共通することは，暴力の行使が場合によっては正しいという思想，そして機械化が進んだ人間と機械との境界のあいまいさへの考察だ。『アップルシード』が特徴的なのは，更なる大戦後の世界でどうやって人類が生きるべきか，というテーマだ。人間とサイボーグの比較，多脚戦車との戦闘と，表面的に見えてくるモチーフはよく似ている。その思索の流れが人間の意識（Ghost）へ向かったのが『攻殻』，社会体制へと向かったのが『アップルシード』なんだと思う。－－－－－－－－－－－－『アップルシード』のCGアニメ化は，ずっと荒牧監督で行われており，これで3作目だが，今回は大きく絵柄が異なる。これまでの2作はCGなのに日本の伝統的なセルアニメのテイストを意図的に残した画風だったが，今回はキャラクターも背景も3DCGで，最近のゲームで見かけるような実写調の画風だった。主人公・デュナンの見た目が原作から離れているのには抵抗を感じたが，キャラクタのリアリティ，ある程度抑えられた演技，逆光や振動もきちんと表現できている背景など，これまでのシリーズで一番映像としては完成度が高かった。ディズニーやピクサーのCGは世界一だけれど，伝統的なアニメ画風という枠があって，もう1つ訴えてくるものがない。一方で，ゲームのCGキャラは，不自然なマネキン美男美女が多くてげっそりしてしまう。この作品は，CGを使ってどこまでSF表現が出来るか？というチャレンジとしては，とても成功していると思った。登場するキャラの体型がマッチョか，ガリガリか，という二分化には笑ってしまったけど。－－－－－－－－－－－－原作の段階からして模索を続けている『アップルシード』だけれど，これを機に映像作品としてまとめてくれてもいいと思う。リブート案大賛成だ。SFファンにはオススメだ。

  2015.07.26

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• 『チャーリー・モルデカイ』を観た

  ジョニー・デップ主演のサスペンス・コメディ映画を観た。○ストーリーチャーリー・モルデカイはお城のような豪邸に住むイギリスの貴族だが，実は破産寸前で，生活のため裏社会の者に怪しい美術品を売りつけたりしていた。そんな彼をイギリス情報部の警部補・マートランドが訪ね，モルデカイは犯罪履歴の抹消と引き換えに，盗まれた絵画の捜索を請け負う。絵画はゴヤの幻の名画だと判るが，それを探しているのはイギリス情報部だけでなく，アメリカの大富豪，ロシアマフィア，そして国際テロリストだった。芸術的な価値以外に，多くの人々がこの絵画を追い求める秘密とは？－－－－－－－－－－－－『パイレーツ・オブ・カリビアン』で大ヒットスターとなったジョニー・デップだが，ハチャメチャなキャラという役柄が多い。今回も破産寸前で複数の組織に追われているのに，ひょうひょうとコミカルに世界を飛び回る主人公を演じている。ここまで同じような役回りが多いと，ちょっと飽きがくる。『トランセンデンス』も映画としては残念な部分があったが，シリアスなジョニー・デップを観ることが出来たのが収穫だったのかも知れない。－－－－－－－－－－－－だがせっかくイギリス貴族で，執事（兼用心棒，兼運転手）もいるような主人公を扱っているのに，展開するギャグが小学生が喜ぶようなお下品なレベルで，観ていてげっそりしてしまう。どんな状況でもノホホンとし続けるのもイギリス貴族の資質のひとつだが，それを表現しようとしたのだろうか？・・・たぶん違うけど。－－－－－－－－－－－－主人公を支えるキャラクターはなかなか見ごたえがある。とにかくけなげにモルデカイを支える執事・ジョックは，ポール・ベタニーが演じている。この人は『アイアンマン』で人工知能ジャービスの声を演じ続け，『アベンジャーズ2』では人造人間ビジョンを演じた。モルデカイの妻で，策士のジョアンナは，グウィネス・パルトローが演じている。この人も『アイアンマン』のレギュラーで，トニー・スタークのパートナー・ペッツを演じた。イギリス情報部・MI5の警部補・マートランドは，ユアン・マクレガーが演じている。相変わらずハンサムだ。それにしても，イギリス人貴族である主人公夫婦が，2人ともアメリカ人俳優で演じられているって，大丈夫なんだろうか？－－－－－－－－－－－－それなりに乾いたギャグがあったし，全体のストーリーは良いと思うのだけれど，下品なギャグと洗練されていないドタバタ部分で台無しになっている印象だ。

  2015.07.25

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• 『大統領の料理人』を観た

  フランス大統領の料理人だった女性シェフを主人公にした映画を観た。○ストーリー南極のフランス基地を取材している女性記者・メアリーは，基地の女性シェフ・オルタンスが，フランス大統領の料理人だったと聞き驚く。メアリーにインタビューをせがまれるオルタンスは，自分が大統領官邸へと連れて行かれ，嫉妬や反発を乗り越えて，大統領の信頼を得た日々を思い出す。だが大統領の健康管理，そしてコスト管理が厳しくなったために，彼女の最高の素材を用いた素朴な料理という方針に待ったがかけられるようになる。そして・・・メアリーはオルタンスとの別れの前に，真実を聞きだすことができるのか？－－－－－－－－－－－－ちょうどテレビで『天皇の料理番』のリメイクが流れているし，自分の中でちょっとフランス映画を観ようという気持ちがあったので，この映画を借りてみた。結果は，うーん・・・－－－－－－－－－－－－映画の冒頭で観ている人を惹きつける部分はいいと思う。オルタンスが，大統領官邸に連れて行かれて「今日からあなたが大統領のシェフです」と言われてびっくりする部分。同じオルタンスが，よりによって南極基地の料理人になっているという現在を描く部分。いったいぜんたい何があったの？ととても知りたくなる。この2つの状況は交互に唐突に描写され，オルタンスがおしゃれをしているか，防寒着を着ているかで見極めることとなる。けれども大統領官邸での過去のエピソードと比べて，南極基地のそれが圧倒的に弱い。最後には，このパート全く要らなかったんじゃないかと思い始めた。－－－－－－－－－－－－で，ただでさえ，南極パートが邪魔なのに，大統領官邸での過去パートももう1つぱっとしない。30人もスタッフを抱えたメイン厨房チームがいて，こちらは正式な食事の担当をしている。そちらの厨房の食事が凝りすぎなので，プライベートではもっと素朴な田舎料理を食べたい，という大統領の要望に応え，オルタンスが雇われる。メインとプライベートの厨房が対立軸となるのは当たり前なのだけれど，その描き方がはっきりしない。それがこの作品の最大の欠点だと思う。オルタンスの厨房は；　－与えられるスタッフが少なくて経験も未熟だった　－きちんと食材を入手することができなかった　－冷蔵室など設備が使えなかったと，オルタンスが不満を述べる場面があるのだけれど，一方でそれが彼女の思い違いのような描写もある。どっちなの？また後半では，コスト管理と大統領の健康管理のために；　－事前にメニューが栄養士のチェックを受ける　－個人のツテで購入をしていた食材にダメ出しが入るという描写が続くのだけれど，これってわずわらしいけれど，決して突飛な要求ではない。体調が悪くて寝込んでいるオルタンスに無理やりサンドイッチを作らせるのはひどいと思うけれど，それこそスタッフにさせることは出来なかったの？よくわからない。－－－－－－－－－－－－何というか，たまたま大統領とは馬が合ったのだろうけれど，健康やコストまで，そして同僚たちまで配慮が出来ていなかったんじゃないの？ということばかり感じてしまう。まるで辞めさせられたみたいな描写となっているが，単なる能力不足に思える。映画を作っている人たちも客観性を保つためなのか，けっこう主人公・オルタンスを冷たく客観的に描いている部分もあるので，観客として，どこに感情移入をすればいいんだろう？と途方にくれてしまう。－－－－－－－－－－－－パリでほのぼのするつもりが，南極の風に吹かれてしまったというくらいのギャップを感じた映画だった。

  2015.07.22

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• 『うしおととら』と『乱歩奇譚』を観た

  この夏シーズンのアニメーション2作について感想を述べる。－－－－－－－－－－－－－－ストーリー『うしおととら』：実家が古い寺である少年・蒼月ウシオは，寺の地下に眠る妖怪・トラを目覚めさせてしまう。やがて少年と妖怪は，迫り来る敵にチカラを合わせて戦うようになる。『乱歩奇譚 Game of Laplace』:ある殺人事件をきっかけにして中学生のコバヤシは，天才探偵高校生・アケチと出会う。彼らは次々と起こる猟奇犯罪を一緒に捜査することになる。－－－－－－－－－－－－－－ちょうど今シーズンに放映となった2つのアニメーション作品で共通する特徴は，オープニングで歌と連動して，そのセリフが強いインパクトで画面に現れることだ。『うしおととら』では，筋肉少女帯の『混ぜるな危険』が，『乱歩奇譚 Game of Laplace』ではアマザラシの『スピードと摩擦』が歌われる。それぞれのスタッフは意図していなかったとは思うが，結果的には同じシーズンに同じような映像演出が出ることになってしまった。『混ぜるな危険』はパンクの流れを取り入れたロックなのだが，『スピードと摩擦』は耽美的な言葉とハードロックの音楽を融合させた作品になっておりなかなか印象深い。－－－－－－－－－－－－－－いずれにせよ，強いインパクトの音楽とそのセリフが大写しになるというオープニングが，たまたま今シーズンでは2つ重なっている。個人的にはどちらの作品もオープニングも良いと思うので，ぜひ打ち消しあうことなく頑張ってもらいたい。

  2015.07.20

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• 『ムーンライズ・キングダム』を観た

  ウェス・アンダーソンの子供を主人公にした映画を観た。○ストーリー1960年代，ニューイングランドにある小さな島でキャンプをしているボーイスカウト隊から，隊員・サムが消える。隊長のウォードは，サムの捜索を命じる。一方，島の北のはずれに住む家では，娘のスージーがいなくなる。その報せを聞いた島のただ一人の警官・シャープ警部は，2つの事件を結び付け始める。サムとスージーは2人で一緒に逃げ出していたのだった。だがそんな中，大型の台風が島に迫っていた。－－－－－－－－－－－－ウェス・アンダーソンは現在最も気になっている監督だ。以前から知っていたのだけれど，突然『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』を観て，それから順番に作品を追っている。今だから正直に言うと，『テネンバウムズ』の独特の乾いた笑いは気に入ったのだけれど，それ以降の作品は，なんだか微妙な部分があった。『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』は，世界的な公開作品としては1作目なのに，絶妙なチカラの抜きどころがあり，巨匠の片鱗が見えた作品だ。『ライフ・アクアティック』は，日本でもメジャー公開していたが，独特のノリがあり，実際はどのように売り込んだら良いのか苦心していたという記憶がある。『ダージリン急行』は，インドを旅行するという設定だけでも魅力があるので，好きな人も多い作品だ。ただしなんとなく女性向け作品のような気がしている。『ファンタスティック Mr. Fox』は，個人的に好きなコマ撮りアニメなのだが，家族持ちとなっても変わらぬ主人公の無鉄砲振りについて行けなかった。けれども，この『ムーンライズ・キングダム』には，がつんと衝撃を受けた。まるでこれまでのアンダーソン作品の良いところをすべて凝縮したような作風で，公開順に作品を追ってきたファンへのご褒美なのではないか，とも思ってしまった。－－－－－－－－－－－－この作品のテーマは，相も変わらずバラバラになってしまった関係の修復だ。主人公の1人・サムは孤児で，里親にも家に戻るなと言われている。もう1人・スージーは，厳格な方針の家庭と合わず，自分の居所を探している。物語はこの2人が偶然出会い，運命的に惹かれて行き，そして駆け落ちを実行するところから始まる。この作品は少年少女を主人公にしていて，ジュブナイル風の展開なのだが，主人公以外の大人たちの物語もきちんと語られているのが，これまでのアンダーソン作品とは少し異なるところだ。サムを預かっていたボーイスカウト隊の隊長・ウォードは，決断力のない自分を克服するべく悩んでいた。一方で，島のシャープ警部は，ふがいない自分とサムの一途さを比べて思うところがある。家族というコアが無い分，サムとスージーという仮想的な家族を中心に，周りの人々が「自分にとって一番大事なのは誰か？何か？」ということを考え，さらに次のステップへと行動するのがこの作品の魅力だ。－－－－－－－－－－－－アングル，色彩，明るさ，演技，音声，すべて計算し尽くされた画面から，新しい物語が語られる。まるで洪水神話を語り直そうとするような物語は，これまでも映画とも舞台とも小説とも異なる，新しい伝説を作っているような気がする。－－－－－－－－－－－－個人的にはこれまでのアンダーソン作品の最高傑作で，DVDを買おうとまで思っている。すべてを赦せる気持ちになる作品だと思う。オススメだ。

  2015.07.19

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• 『The Last Cop / ラストコップ』を観た

  唐沢寿明主演のスペシャルドラマを観た。○ストーリー凶悪犯の自爆に巻き込まれ，30年間昏睡状態だった刑事・京極が意識を取り戻し，現役刑事に返り咲く。だが昭和の熱血デカは，現代の規則に縛られた捜査方法と，IT技術の使い方を知らず浮きまくる。また彼の妻は再婚し，幼かった娘は別の人物を父と呼んでいた。時代遅れの刑事は，徐々に硬直した組織を打ち破り，真実に迫るのだが？？？－－－－－－－－－－－－－－刑事モノのスペシャルドラマ，ということで単純に録画をしておいた。観始めれば，唐沢寿明が古臭い熱血ぶりを発揮して，家族や若手の同僚からドン引きされる物語だった。ちょうど少し前に観た唐沢寿明の『イン・ザ・ヒーロー』と良く重なる。元妻を演じるのも同じ和久井映見だし。個人的には好きな俳優だけれど，良くも悪くも昭和のイメージが付きまとうキャラクターらしい。－－－－－－－－－－－－－－今回面白かったのが，唐沢演じる京極のバディとなる望月亮太刑事を窪田正孝が演じていることだ。この俳優を知ったのは『平清盛』の重盛や，『花子とアン』の朝市だったが，一番印象に残っていたのは『ST 警視庁科学特捜班』の黒崎役だった。この黒崎，ほとんどしゃべらないし，しゃべったとしてもささやく程度なのだ。そして今シーズン『デスノート』の夜神ライト役ということで大注目されているが，この役もあまり活発な演技をしていない。そうした彼が，このドラマでは自然な若者をコミカルに演じていて，なかなか新鮮だった。なんだ，普通の演技出来るじゃないの？・・・予想以上に下手だけど。－－－－－－－－－－－－－－さて，2時間ドラマのパターンを踏んで終わる，と思っていたら，なんとネット配信のドラマの第1話だった。そんなのありかよ？？？これで夢中にさせて，次の話を観たくてたまらなくさせる方法か？！でも，そのワリには安っぽい手抜きが目立っていて，お金を払うほどの価値はないよね，というところが日本のドラマの限界で悲しい。マーケティングとしては面白いけれど，WowWowのような本気度が足りないよなあ。

  2015.07.13

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• 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を観た

  世界的ヒットとなった〈マッドマックス・シリーズ〉の30年ぶりの新作となる4作目映画を観た。○ストーリー世界文明が崩壊し，暴力が支配する世界で，マックスは独裁者〈イモータン・ジョー〉の手下に捕らえられ，輸血用人間として拘束して生かされ続ける。やがてマックスはフュリオサたち女性たちの逃走事件に巻き込まれ，彼女たちを助けることにする。だが砂漠と沼地を越えた先で見たものは？そこでマックスとフュリオサは再び荒野を目指す！！－－－－－－－－－－－－「ヒャッハー！！」の世界だった。〈マッドマックス〉，とくに『マッドマックス2』は世界的な大ヒットとなった。アメフトのプロテクターと革ジャンを着た登場人物たち，彼らに襲い掛かってくるモヒカン頭と身体にチェーンを巻いている暴走族。その世界観は他の映画，マンガ，アニメなどに幅広く影響を与えた。その中で最も有名なのが『北斗の拳』だろう。始まった頃の主役・ケンシロウは，服装だけでなく顔までマックスにそっくりだ。この映画が始まって，マックスが〈イモータン・ジョー〉の手下に追われて捕まるまでの展開は，実際に「ヒャッハー！」という声が上がっていて，まさにリアル版『北斗の拳』という印象だった。無条件にバカで暴力的な悪役たち，久しぶりに観た気がした。懐かしい。－－－－－－－－－－－－ほどなく女戦士フュリオサの裏切りが発覚し，砂漠と荒野のカーチェイスが始まる。本当の砂漠で撮影しているので日差しが強い。CGをほとんど使わずに実際にアクションを演じているのでピリピリする緊張感がある。狂ったアートのような改造車両が現れ，車の上でドラムを叩き，ギターを演奏する者も現れ，その無駄なエネルギーに圧倒される。始まってみれば，間違いなく〈マッドマックス〉だった。逃げる，追われる，戦う。30年ぶりのこの感覚！実に良い。－－－－－－－－－－－－30年間で映画の映像と音響の技術は大きく進歩をしたけれど，圧倒的なドライブ感で主人公たちと一緒に行動しているような体験が出来るというのは久しぶりの経験だった。これは技術よりも映像手法や物語のチカラによるものだ。舞台は文明崩壊後の未来だし，移動に使われているのはガソリンで動く車だけれど，もっと根源的な物語の強さを感じさせる作品だった。唯一の欠点はなんだか古臭いB級のような邦題かな？〈マッドマックス〉は神話の領域に達した。オススメだ。

  2015.07.11

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• 『ANNIE / アニー』を観た

  日本でもロングランを続けるミュージカルの現代版アレンジ映画を観た。○ストーリーニューヨークでマダム・バニガンが経営する孤児院に住む10才の少女・アニーは，車に轢かれそうなところをスタックスという男性に助けられる。実業家のスタックスはニューヨーク市長選に出馬するものの苦戦中だったが，アニーを救ったことで支持率がアップする。そのことに目を付けたスタックスのブレーンは，彼にアニーを引き取らせる。子供嫌いで不本意ながらアニーと暮らし始めたスタックスだったが，彼女の純真な姿に徐々に心がほぐれ始める。しかしマダム・バニガンと選挙ブレーンたちは，さらなる話題づくりのために，アニーの両親を捏造しようとする。その結果・・・－－－－－－－－－－－－ウィル・スミスが自分の娘を主演させるために製作した映画だ。残念ながら脚本の年単位の遅れのせいで，スミスの娘が成長してしまったために，クヮヴェンジャネ・ウォレスが主演することになった。とんでもないけれども，ハリウッドスターのとてつもない資金力と集客力を感じさせる逸話で，あきれてしまうけれど，どこか憎めない。個人的にウィル・スミスが好きってのもあるけれど。－－－－－－－－－－－－90年前の物語なので，舞台としてはロングランヒットを続けているが，映画版では舞台設定を現代に置き換え，赤毛の女の子を黒人のチリチリヘアーの女の子に置き換えている。ちょっと気になるのは，アニー役のQ・ウォレス，スタックス役のジェイミー・フォックス，マダム・バニガン役のキャメロン・ディアス，そして秘書・グレース役のローズ・バーンと，メインキャストが誰1人もミュージカル俳優ではないことだ。現代のミュージカルでは，ぴったり揃った歌や振り付けよりも，フラッシュモブ風の実写からの自然な流れを重視するのだろうか？バニガン孤児院のいかにもいかにものナンバー以外は，それほど難易度が高そうな歌と踊りはなかったように思う。もちろんメインキャストの歌も踊りもきちんと練習していて見事だけれど，それでも「この道のプロだな」と感心させるレベルではなかった。うーん，確かにミュージカルは作品によっては”作りこみ過ぎ”感はあるんだけれど，このバランスは難しいね。－－－－－－－－－－－－現代の作品だし，バニガン孤児院の子供たち1人1人が描かれるのかな，と思ったけど，あっさりとアニーだけが幸せになっておしまいだった。そういうのはテレビドラマ版でじっくりと語られるべき内容なのかも？・・・『明日、ママがいない』とかで？？あ，そう言えばQ・ウォレスが来日した時に，同い年だからとかで，無理やり芦田愛菜と対談をさせていて，互いに気まずそうだったなあ。－－－－－－－－－－－－久々にミュージカルに，時代を感じてしまった。

  2015.07.06

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