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カテゴリ:特撮映画
東宝特撮映画テイスト
見終わって、あれこれブツブツ文句を言いたくなる映画があれば、ご都合主義の展開や台本のあまさにツッコミを入れながらも、堪能できる作品もある。 「緯度0大作戦(1969)」は、東宝特撮映画テイストあふれる、とっても楽しめる映画だよ。 冒頭、「航空機がジェット気流を利用しているように、海流が潜水艦の加速に役立つのではと考えたからだ」と説明がある。この海流調査の理由、何気なく聞き逃してしまいそうだが、ちょっと待て。航空機とは、戦闘機もあれば旅客機もある。ジェット気流の研究が、広く人類の役に立つのは分かる。しかし、潜水艦なんぞは、軍事利用しかないではないか。そのスピードアップが、それほど重要な研究なのだろうか。もちろん研究はあってもいい。だが、調査団は、どう見ても民間人のご一行様で、軍関係者は見あたらないではないか。 宝田明たちメインキャストは、潜水球に乗って海流調査を始める。その途端、突然の海底火山噴火に遭遇し、海底深く沈んでしまう。負傷し、気を失った宝田明たちは、ジョセフコットンら緯度0のメンバーに救出される。つまり海流の調査とは、両者が出会うための大仰な舞台設定なのだ。もう、のっけから東宝特撮テイスト全開である。 アンのファッション、ウフフ・・・ 宝田明たちは、ジョセフコットン扮するマッケンジーの潜水艦α号に収容される。乗組員の一人、アンのファッションがすばらしい。水着のようでもあり、なさそうでもある。背中と胸が大きく開いている。その姿を見て、宝田明たちは驚く。見知らぬ場所で意識が回復したら、目の前に肌もあらわな女性が登場した。これでは、酔っぱらってフーゾクに迷い込んだかと錯覚を起こしかねません。 それはさておき、アンは女医さんなのです。この後宝田明たちは、科学のユートピア「緯度0基地」に案内される。そこで女性は、リゾート感覚で、水着風の装いをしていらっしゃいます。涼しげで、自由なファッションというわけなのかもしれませんが、潜水艦に乗り組んでいる女医さんの仕事着にはふさわしくないんじゃないの。宝田明に同行する新聞記者ロートンの視線は、明らかにアンの胸元に向けられている。セクハラを助長する露出過多の女医さんの衣装は、観客へのサービス以外の何ものでもありません。 「海底軍艦」から「万能潜水艦α号」へ 東宝特撮は、ゴジラなどの怪獣映画がよく知られている。「緯度0大作戦」は、モンスターの出番もあるが、怪獣映画とはちがう。特撮が描くのは、万能潜水艦α号を筆頭にしたメカニック群であり、「空想科学映画」の名称が使われている。東宝特撮の空想科学映画には「宇宙大戦争(1959)」や「妖星ゴラス(1962)」などの宇宙を舞台にしたものがある。いずれも熱く語りたい作品だ。 それ以上に「海底軍艦(1963)」については、機会があれば、たっぷりと思いの丈を打ち明けてみたい。特撮場面としては、海底軍艦の造型、機能、基地やドックなどをミニチュアで細かく作り上げ、迫力ある映像を実現している。 「緯度0大作戦」は、「海底軍艦」の実績を引き継ぎ、ミニチュアを駆使して、α号の航行や敵潜水艦黒鮫号との海底戦や、海底2万メートルの緯度0基地への帰還場面などを丁寧に描いている(途中何カ所かミニチュア・モデルを吊っているピアノ線が見えるのはご愛敬)。円谷英二の撮影するミニチュアは、じつに重量感がある。CGがともすると軽い絵空事になってしまうのとは対照的である。ミニチュアといえども実物だ。CGより自由度が低い。けれど、その不自由さが存在感につながる。ストーリーなどは添え物で、この映画の存在意義は、ミニチュア・ワークを見せるためにあると思うほどだ。 空想科学映画は実写版ドラえもんか? 東宝の空想科学映画は、SF映画とはちょっと異なる趣をもっていると思う。科学の名の下で、なんでもありといってもいいかもしれない。 α号は、武器を装備していない。そのため、黒鮫号から攻撃を受けても、反撃はできない。黒鮫号にレーザー砲で追い詰められたα号、マッケンジー監督は、「投影法」を用いる。これは、α号とそっくりの映像を映し、敵の目をあざむく忍者戦法だ。「いつの間にこんなものを発明していたのだ」と悔しがる悪の帝王マーリック。じつに都合よく新兵器が出てくるよね。「投影法」なんて、潜水艦にとってはほかに使い道もないようだけれど、便利な道具をつくるのはマッケーンジーの趣味なのか。 マッケンジーと宝田明たち(役名と俳優名が混在)は、宿敵マーリックとの最終決戦を行うためにマーリックの待ち構えるブラッドロック島に乗り込む。そのための装備は、免疫体質(免疫風呂に入ると弾丸を跳ね返すなど24時間不死身になる)、金色に輝くスーパースーツとスーパーグローブ(指先からは火やレーザーを噴射)、背中には空飛ぶジェットパック。ここでもおあつらえ向きに便利な道具が。まさにドラえもんの四次元ポケットから出てきたようである。戦闘においては素人の宝田明たちも、映画ののび太たちと同様に、お手軽にスーパーヒーローになれる。地道なトレーニングも、ハードな訓練もいりません。(ドラえもんも東宝映画だ!) インスタント・モンスター、インスタント・メカニック 悪の帝王マーリックも負けていない。緯度0軍団の攻撃に備えて、怪物グリホンをつくる。ライオンにコンドルの羽と人間の頭脳を移植し、拡大血清で3倍の大きさにして、所要時間2時間ほど。ギコギコと羽を切り落としていたかと思ったら(切り口はギザギザじゃないのか)、縫合して、すぐに飛ばせさせちゃった。抜糸まで1週間は安静、とかないのかね。 CGなんぞはない時代だから、グリホンは当然縫いぐるみ(着ぐるみ)を使って撮影している。もとになったライオンやコンドルも縫いぐるみである。だから、なんかかわいいんだよね。それと、四つ足歩行の動物を人間が演じると、どうしても後足が不自然になる。四つ足怪獣もそれが難点だ。怪獣は、撮影の仕方でうまく隠したり、怪獣という非現実的な存在だからという理由で納得したり(できないって?)する。けれど、ライオンなどはね、見慣れているだけに難しい。さすがに、グリホンになってからは、ちょっとカッコよくなる。 インスタントぶりでは、マッケンジーも凄い。前の晩にα号になんか手を加えてるなと思ったら、非行機能を備えさせていたのだ!マーリックのレーザー砲攻撃を逃れて、雄々しく飛翔するα号。(空飛ぶ潜水艦では、先輩格の海底軍艦があります。) こういったお手軽さがいいね。子供って面倒な段取りを踏むとか、先々まで見通しをもって行動するとかが苦手でしょう。ドラえもんが子供たちに人気があるのは、パッパッとタイムリーな道具が出てくるからですね。だから、こだわりにない、開放された心で、東宝特撮テイストのスピーディーな展開を、ご覧くださいませ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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