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テーマ:DVD映画鑑賞(14215)
カテゴリ:特撮映画
劇場版超星艦隊セイザーX 戦え!星の戦士たち(2005 東宝)
たとえ子供向きの映画でも 脳天気な若者3人が、地球をデザインしたボールで、バスケットボールに興じている。 「うるさいわよ。ここは静かに星を観測するところ。体育館じゃないわよ」と天堂澪に注意される。天体観測所なのだ。なぜそこにバスケットゴールがあるのかはわからない。 「なんだよ、そっちこそうるさいよ。ここは俺たちの遊び場!」 外見は青年ぽいが、行動、話し方や話す内容は、小学生。やれやれ、最近の若者は、と思ったら、なにぃ、こいつが主役のヒーロー、ライオセイザーだって? 突如、宇宙海賊が地球を攻撃してきた。小学15年生(推定)、安藤拓人(ライオセイザー)は、敵の実態を見極めず、後先を考えないで攻撃をしかける。ところが相手は、攻撃のエネルギーを吸収し、巨大化するのだった。さすが大きな小学生。正義感にはあふれるが、一本気な性格だ。力任せにガンガン攻撃し、襲ってきた敵を叩きのめせば事は解決すると単純に考えたわけだ。 「相手のことを知らないで攻撃するなんて、まったく拓人のやつ、なんてことをしてくれたんだ」拓人の祖父、天才エンジニアといわれる宗二郎が嘆く。ところがこのおじいさん、落ち込む拓人を見ると、「失敗を恐れるな」って、ちょっと待て。この程度の判断力、精神的発達段階の人間に、ライオキャリアー(戦闘鑑)、グレートライオ(巨大ロボ)などを扱わせて、セイザー砲などの破壊兵器をバンバン撃たせていいのか。そのうち市街地を吹っ飛ばされるかもしれないぞ。 子供になめられてはいけない アメリカのスーパーヒーロー、「スパイダーマン(2002)」を見てみよう。スパイダーマン=ピーター・パーカーの素顔は、さえない青年である。勉強はできるが、オタク的でドジ。ピザ屋のバイトも満足に勤められないで、クビになってしまう。 ピーター・パーカーは、スーパーマン=クラーク・ケントやバットマン=ブルース・ウェインのように、完成された人格者ではなく、コンプレックスをもつ若者として設定された。また、強盗犯を見逃したことが遠因となり、同じ犯人にベン叔父さんを殺されてしまう。 人間的に未熟な部分があり、過失もある。安藤拓人とピーター・パーカーは、一見共通しているように見える。ピーターは、弱点をもつことで、スーパーヒーローとして単なるマッチョではなく、人物像に深みや陰影が加わった。それによって観客は、大人も子供も、スパイダーマン=ピーター・パーカーを四十年間支持し続けてきた。 「セイザーX」は、子供(幼児~小学校低学年)を対象とした映画だ。拓人の人物設定は、感情移入をしやすいようにと大人が考えて、安易に子供の姿を投影したものだ。確かに、拓人が優等生の堅物では、おもしろくないだろう。だからといって、元々は純粋で、危険を顧みずに闘い、地球を救うという条件を満たしていれば、どんなアホな人物設定でもいいってもんじゃない。 人々は、ピーター・パーカーに共感を抱く。しかし、安藤拓人は、子供からなめられますよ。 予期せぬ轟天号の登場! 昭和のスーパーヒーローの素顔といえば、仮面ライダー=本郷猛の藤岡弘が代表格だ。質実剛健、男らしいイメージをもっている。最近のスーパーヒーローものは、本来の視聴者である子供たちよりも、その母親をターゲットにしたイケメン路線だそうだ。そんな風潮を反映して、お母さんたちへのサービスなのだろうか、この映画で素顔のヒーローを演じる俳優たちは、ホストクラブからスカウトしてきたように見える。元祖イケメン路線の平成仮面ライダーの方は、学生モデルクラブの面々といった感じですが。 それはさておき、テレビ番組の劇場版は、パワーアップが楽しい。この作品は、超星艦隊シリーズのオールスター戦といった趣で、「超星神グランセイザー」「幻星神ジャスティライザー」も登場する。キャラクターを出せばいいってもんじゃないけれど、子供たちは大喜びだ(ったのだろう。劇場では見ていないので、推測です)。 そんな中で、「海底軍艦(1963)」轟天号のゲスト出演は、嬉しかった。まったく予備知識なしで見ていたので、「神宮司司令」とのセリフには特撮的記憶を刺激された(「海底軍艦」轟天号の艦長は、神宮司大佐である)が、轟天号がその雄姿をスクリーンに現すとは思わなかった。 「ゴジラ・ファイナルウォーズ(2004)」に続いて、3回目の映画出演だ。今回は、伊福部昭作曲のオリジナル・テーマも勇ましく、出陣場面と戦闘場面を見せてくれた。ゴジラにも劣らないVIP待遇である。この作品では、(おそらく)初めて、艦砲射撃を行った。クサっても東宝特撮(失礼)。過去の財産が生きていますね。 「海底軍艦」の思い出 「海底軍艦」は、東宝特撮映画史上、最強の存在である。まず、たった一鑑で、一国を滅ぼしている(単独でムー帝国に攻め入り、短時間で全滅させた)。さらに、あのゴジラと闘い、南極の地に生き埋めにした。怪獣王にも勝っているのだ。 今回は、艦砲射撃のほかにも、敵戦闘ロボと闘いを繰り広げる。こういう活躍場面を見たかったよ。最後は必殺冷戦砲で、キングギドラもどきの超巨大怪獣(マンモス・ボスキート)を凍らせて、地球軍の勝利に貢献している。(ちゃんとキングギドラとして登場させれば、また一つ夢の対決が実現したのに) ただ、今回は、海の場面はまったくなし。だから「海底軍艦」ではない。劇中では、轟天号としか呼ばれていない。もっぱら空中戦を挑んでいる。 さて、オリジナルの「海底軍艦」だが、未だに解けない謎がある。ムー帝国は、深海に築かれている。当時最新鋭のアメリカの原子力潜水艦が、ムーの潜水艦を追跡していったが、あまりの深さに、途中で水圧に潰されてしまった。地上人類に残された手段は、万能潜水艦、轟天号の出撃しかない。 轟天号は、全世界の期待を背負い、地上人類未踏の深海に位置するムー帝国に勇躍到達する。しかし、ムー帝国には、神宮司大佐の娘たちが捕虜になっている。迂闊には攻め込めない。そこへ、捕虜になった人間たちが逃げ出してきて、轟天号に救助された。彼らは、ムー帝国人の潜水服を着て、泳いできた。 アメリカの原艦はグニャグニャに潰されたのに、どうして人間が泳ぐことができたのか!考えられる理由は、ただ一つ。ムー帝国の潜水服は、アメリカの原艦より水圧に強い。(正解か?) 映画「海底軍艦」は、一過性の商品では終わっていない。辻褄の合わない場面も見られるが、轟天号のデザインやキャラクター設定などに魅力があり、今に伝わっているのだ。轟天号の出撃シーンは、当時の子供にとって、衝撃的だった。ミニチュアワークを駆使し、伊福部節に乗って海底から空へと飛び立つ轟天号には、40年以上経過した今でも、鳥肌が立つほどの感動を覚える。幸福な映画体験だった。オリジナルの「海底軍艦」への思い入れがあるからこそ、今回の轟天号の活躍を賛美できたのだと思う。 子供達に、印象深い映画を この作品の監督は大森一樹、特技監督は川北紘一である。平成ゴジラ(VSシリーズ)を作ったコンビだ。力量のある二人によって、映画のテンポや特撮場面など、快調ではあった。けれど、観客の心に深く刻み込まれたものは、あっただろうか。 子供たちは、これから先も大切なお客さんです。そう考えれば、子供向けお正月番組として、そのときだけ客を集めればいいというものではないですね。子供にこそ、充実した映画体験をさせてあげましょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 23, 2006 10:42:55 PM
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