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October 15, 2006
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カテゴリ:特撮映画
 「インナーウォーズ(2002)」、原題はANTIBODY、「抗毒素、抗体」という意味です。極微小な核爆弾の起爆装置が、テロリストの体の中に埋め込まれている。テロリストは、銃撃戦の中で瀕死の重傷を負ってしまった。そいつが死ぬと起爆装置が作動してしまうのだ!核爆発を阻止するため、ミクロ化された爆発物処理のエキスパートらが、テロリストの体内に送り込まれた。といったストーリー。
 ミクロ化して体内に入り込むお話は、鉄腕アトムにもウルトラセブンにもある。目に見えぬほど小さくなったウルトラセブンが鼻の穴から飛び込んでいったのは、当時若手女優の松阪慶子だった(第31話「悪魔の住む花」1968)。
 しかし、微小化体内進入の代表作といえば「ミクロの決死圏(1966)」である(原題は「FANTASTIC VOYAGE=幻想的航海」。くらべると、邦題の「ミクロの決死圏」の方がワクワクさせる)。これぞSF映画だ!宇宙や海底を舞台にしたSF映画の場合、ある程度テキトーな場面設定でも許される、誰も行ったことがないわけだから(すばらしい想像力が発揮されることもありうる)。けれど、人体においては、もちろん体内巡りをした人はいないけれど、医学に基づいたリアルな場面設定をしなければいけないじゃないか。じつにサイエンス・フィクションじゃないかと思ったわけですね (公開当時の小学生は、ハードSFを感じたわけです)。
 日本初公開のときには、残念ながら見ていない。住んでいた地方での上映があったかどうかも、記憶にない。少年漫画雑誌の特集記事で、「ミクロの決死圏」について知ったのだった(マンガばかり見ていたのさ)。
 実際に見たのは、中学生になってから。確か「素晴らしきヒコーキ野郎(1965 石原裕次郎が出演していた!)」との黄金のリバイバル2本立てだった。
実際に人体内のセットが丹念に作られ、驚異の人体旅行の売り文句が十分に納得できた。さらに、展開も、近道をするために潜水艇に心臓を逆行させる。そのために、60秒間だけ鼓動を止めて血液が流れないようにする(生き返るのか!?)、内耳を通るときには患者の周囲で音を立てないよう医療チームは微動だにしないのだが、看護婦がはさみを落としてしまい、それが潜水艇には大音響の衝撃になったり、はたまた潜水艇のチームに敵側の人間がいたりと、一難去ってまた一難で目が離せなかった。しかも、タイムリミットの1時間を過ぎると、ミクロ化した人間が元の大きさに戻ってしまう。人間の体をぶち破って人間が出てくるなんて想像しただけで、頭がクラクラした。
なお、ミクロ化体内進入については、鉄腕アトムの方が早く映像化している(1963年)。手塚治虫にとっては、「ジャングル大帝(1965=テレビ版)」によく似た「ライオンキング(1994)」の件もあったしね。
 1987年には、ジョー・ダンテが「インナースペース」で、ミクロ化体内侵入映画を作っている。これは、人体の中で、敵味方に分かれてバトルが繰り広げられる(ややコメディ・タッチ)。「ミクロの決死圏」は体内場面が大変多かったが、「インナースペース」は中だけでなく外でも大騒ぎが起こる。
 さて、「インナーウォーズ」だ。FBI捜査官で爆発物処理のプロ、ゲインズは、爆発物の処理で被害を出し、責任をとってFBIを辞める。犯人の体内には1マイクロメートルの起爆装置があって、生体活動の停止とともに爆弾が破裂する仕組みになっていた。ゲインズは、それを知らず射殺を命じてしまったのだ。この爆発が、つぎの爆発物処理につながり、屈辱を晴らすという展開が生まれたなら、もっとゲインズの行動に感情移入ができたのではないかと思うんだが。
 つぎに、ノーベル賞を受賞した科学者がいるわけだが、テロリストが重体になったとたんに「私の開発した研究がある。分子を圧縮するだけだ。方法さえ分かれば、実現は簡単だ。動物実験もした」。おいおい、日本の特撮怪獣映画並みに、都合のいいときに新発明が出てくるんだな。こんな発明は、超ノーベル賞級だ。片手間の研究でできるものじゃないぞぉ。
さらに、体内をCGで描いたところが、なんとも軽~い印象を与える。「ミクロの決死圏」の時代には、CGがなかった。実際にセットを組むしかなかったのだが、いかに本物らしくみせるかで、時間と手間をかけたのだ。そんなメジャー大作とくらべてはいけないのかもしれない。また、マイナー系が人体進入映画を作ることができるのも、CGのおかげだろう。
 CGは、例えば過去の町並みを再現するときなどは、じつに効果的だ。CGとは思えないからだ。けれど、モロにCGとわかるのはね、気に入らないね。
 白血球とバトルを行うなどして、苦難の末に起爆装置にたどり着く。解除するためには、いくつかの番号のついたピン(端子?)をはずさなければならない。しかし、並び方に規則性がない。どう解除すればいいんだ。息詰まる場面だ。ここでふと思う。どうやってそんなミクロサイズに番号を書いたのだぁ?米に筆で字を書く人はいるけれど、起爆装置は1マイクロメートルですよ。試験管の中に液体とともに入っていても目で確認できるものではない。電子顕微鏡で見て、ようやくわかるのです。もう一発行きます。誰に読ませるために、ごていねいにミクロサイズの番号を書いたのですかぁ?

 今回も楽しませていただきました。
 別に映画に文句を言うのが好きなんじゃない。作る側が面白さを追求していくとき、ともすると視点は偏ってしまいます。偏りを意識せず、あるいは知りながら無視して作られた映画は、一か八かの魅力があふれています。

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Last updated  October 15, 2006 10:02:57 AM
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