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December 17, 2006
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カテゴリ:特撮映画
 親友の吉田君とは、映画とマンガの話ばかりしていた。東宝特撮映画や007、「8マン」から「鋼鉄シグマ」という鉄腕アトム類似品マニアック作品まで。吉田君は、豪邸に住む社長の息子。こちらはしがない借家住まい。マンガは、よく吉田君に貸してもらった。
 冬休みに、「SF最後の海底巨獣」「マックイーンの絶対の危機(1958)」の超絶モンスター映画二本立てを見た。これは吉田君も見ていないだろう。こんな凄い映画を見たんだぞ、借家住まいでも映画だけは負けていないぞ、と自慢げに話をした。絶対に吉田君は羨ましがるはずだった。ところが、なんと吉田君もしっかり見ていた。さすがわが親友。
 そして、特撮映画小僧二人は、見てきた二本立てのド迫力場面などについて、熱く語り合った。勝ち負けよりも、羨ましがらせることよりも、共通の話題で盛り上がることが楽しかった。
 まだ、「ウルトラマン」どころか、ウルトラ・シリーズ第1弾の「ウルトラQ」が始まる1年前の話である。その時代に、10歳にも満たない子供が、こんなコーフン映画二本立ての洗礼を受けたら、もう生涯は、特撮モンスター映画漬けになること間違いない。
 吉田君も、まだ特撮モンスター映画を見ているだろうか・・・・。人間には二種類ある。卒業できる奴とできない奴だ。

 1987年に、レンタルビデオ屋で奇異なタイトルを見つけた。「ダサイナザウルス」!ダイナザウルスではありません。手にとって写真や説明を見ると、なんと「SF最後の海底巨獣」のことなのだ。この作品は断じてダサくないぞぉ。
 今見ると、恐竜の造形や動きなど、確かに難がある。この作品の難は、「チープ」ということだ。けれど、資金不足は、必ずしも制作者の責任ではない。制作費が少なくたって、映画で客を楽しませようという心意気が大事だぜ。安っぽさが、必ずしも手抜きとは限らない。それどころか、この作品は、とっても「リアル」な恐竜映画といえるのだ。

 南海の小島で開発工事の真っ只中、船が入れるようにしようと入江に発破をかけたところ、海底に埋没する凍結状態の恐竜を発見、しかも2頭(2種類=肉食恐竜ティラノサウルス、草食恐竜ブロントサウルス)。ついでに原始人まで。恐竜が砂浜に引き上げられるシーン。ティラノサウルスが、ぐいっぐいっと綱で引っ張られると、それに合わせて砂がずずずっ、ずずずっという感じで一緒に動くのだ。なんて芸が細かい。
 その夜、激しい嵐が島を通過。雷が荒れ狂い恐竜及び原始人を直撃、2頭と一人は、死にも等しい長き眠りから蘇る。
 ジュラシック・パークでは、化石中の琥珀に入っていた古代の蚊から恐竜の血液を抽出し、そこにあるDNAを使いクローンとして恐竜を甦らせた。バイオテクノロジーにのっとり、説得力のある方法かもしれない。しかし、フランケンシュタインの怪物は、雷による電気ショックで生命活動を開始した。さらに、Fの怪物は、何度も死んだと思われながら、そのじつ、氷漬けになって生きながらえていった。「13日の金曜日シリーズ(1980~)」ジェイソンだって、落雷で復活した。最後の海底巨獣たちは、モンスター映画の正しい伝統を踏まえる、中興の祖とも言うべき天晴れな存在だ。
 え、どこか「リアル恐竜映画」なのかって?原始人が一緒に出てくるのはおかしい?確かに、恐竜の生息していた時代から何億年も経過して人類が発生している。恐竜と原始人が同じ時代に生きていないことはみんな知っています。長~い地球の歴史を考えれば、恐竜が2頭揃って氷詰めになることも、それからずぅっと後に同じ場所で人類が氷詰めになることだって、あったら楽しいでしょ。

 そういったツッコミどころよりも、恐竜のプロポーションを見てみよう。日本の特撮怪獣映画は、着ぐるみ式だから、シルエットや動きに人間臭さが出てしまう。特に、東宝特撮のアンギラス、バランの4足歩行怪獣は、人が四つ這いになって動作していることがよくわかる。ところが、人形アニメ方式(後になって知った)で作られた「海底巨獣」の2頭は、図鑑やプラモデルで見た恐竜と同じ形をしていた。4足歩行のブロントサウルスなど、日本の着ぐるみ方式では、見ることができない本物志向のスタイルを感じました。
 「海底巨獣」公開当時は、時代(社会)的にも年齢(個人)的にも、怪獣も恐竜もあんまりきっちりと区別されないで、あいまいさが許容されていた。「ゴジラ(1954)」では、「海底に潜んでいたジュラ紀の生物」(山根博士談)と説明がある。ところが、身長は50mもあるし、ミサイルがあたっても平気だし、放射能火炎は吐くし。ゴジラは、恐竜が被爆して、突然変異を起こしたという設定だから地球上の生き物の範疇を超えた存在なんだけど、同作品では山根博士が先の言葉に続けて「度重なる水爆実験で住みかを追われて」というだけだ。
 当時の特撮映画小僧は、「海底巨獣」を見て、恐竜と超自然的な怪獣はちがうものだと初めて気づいた。動物としての恐竜の雰囲気がわかったのだった。「海底巨獣」に登場するのは、ピュアな、清純派の恐竜だ。放射能は浴びたりして、怪獣にはなっていない。身長は並で、もちろん特殊な能力はない。
 正直言って、映画を見ているときには、恐竜が火を吐いたり、光線を発したりことを期待していた。途中、ティラノサウルスが人間の攻撃を受けて、口に火炎瓶を放り込まれる。それを吐き出すときに、火を吹いているように見えた。それが嬉しかった。(吉田君も、「(ティラが)火を吐いたように見えたよな!」とエキサイトしながら語った。同意見だったのだ。さすが親友)ティラノサウルスとブロントサウルスは、お約束通りにバトルを見せるのだが、心優しい草食恐竜であるブロちゃんが人間の味方となって、悪の肉食ティラ野郎を倒す話しではない。これは捕食者と被食者の関係で、現在で言えばライオンとシマウマに置き換えて考えられる。
 さらに、東宝特撮映画では、強すぎる怪獣に対抗するために、新兵器や超兵器が登場する。しかし、「海底巨獣」には、戦車もレーザー光線砲も姿を現さない。無線機さえ破壊されて孤立無援となった小島で、人間が凶獣ティラノサウルスと渡り合う。武器は、なんとショベルカーだ。主人公の現場監督バートが乗り込み、島民の避難場所に襲い来たティラノザウルスにアームをぶちかまし、崖から海へと突き落とした。
 子供の頃の印象では、もっとパワフルにガンガンと、何度も何度もアームを叩きつけて、ド迫力場面が演じられたように思ったが、今見ると、意外に早く勝負がつく。いずれにしても、身近にある重機で恐竜に立ち向かうという展開に、現実世界の中に超自然現象が交わる手応えを味わった。リアルに感じたわけさ。
 注:日本の特撮怪獣映画より「海底巨獣」が作品的に優れているという話ではありません。双方   に異なる風味がありますので。

 この作品の内容は、恐竜パニックだけではない。原始人が食べ物を探しに民家の様子を窺っていると、おばさん登場。なんと顔面パック中。窓をはさんで原始人とおばさんパックが遭遇。ギャーと双方叫び声を上げる。この場面など、原始人だけを異端者扱いせず、原始人から見れば、現代人も大変おかしく見えるという対比がおもしろい。(他にも、シリアスな展開の中に、フッと笑えるシーンが挿入される)
 また、怪獣映画などではおなじみの人々が避難するシーンがやはり見られる。カメラが固定してあるので、右往左往する人々がスクリーンを出たり入ったりする。この場面、日本の映画監督加藤泰が、殺陣シーンにおいて、カメラを動かしてアクションを追うことをせず、あえてフレームを固定して、人々が画面に飛び込んだり飛び出たりする様子で、ダイナミックさを表現した手法を思い出させた。
 ね、たとえチープでも、観客を楽しませようとがんばっているでしょ。



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Last updated  December 17, 2006 06:27:18 AM
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