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テーマ:DVD映画鑑賞(14215)
カテゴリ:特撮映画
スクリーンの中には、まぎれもなくモンスターやクリーチャー(二つとも“怪物”という意味。微妙に語感が異なる)がいる。そのことを教えてくれたのは、東の円谷英二、西のレイ・ハリーハウゼン、特撮映画の巨匠たちだ。
ハリーハウゼンの「アルゴ探検隊の大冒険(1963)」、円谷の「モスラ対ゴジラ(1964)」を立て続けに見ることにより、ボクは幼くして人生における転換点を迎えたのでした。以来、卒業することなく特撮映画を追い続けているのは、その衝撃の大きさを物語ると同時に、精神発達の問題も感じさせますが。 円谷とハリーハウゼン、両者の特撮手法には違いがあります。円谷の怪獣特撮は、俳優が着ぐるみを装着する方法です。一方のハリーハウゼンは、怪物などの人形を一こまずつ動かして撮影するモデル・アニメーションです。 円谷がつくった日本の代表的な怪獣モスラ、ゴジラにしても、「アルゴ探検隊~」に登場する青銅の巨人タロスにしても、現実の世界とはまったく無縁な存在、映画の世界の生き物(クリーチャー)です。しかし、虚構であるはずのスクリーンに映るそれらは、生命観にあふれています。 そればかりではありません。彼らの作品に“怪物が存在する”のいえるのは、ゴジラにしろタロスにしろ、「実物」がいるんです。メイキング写真等を見ると、円谷と着ぐるみゴジラとのツーショットがある。あるいはハリーハウゼンは、映画に登場したクリーチャーの人形を手に捧げ持っています。 円谷もハリーハウゼンも、共にアナログ特撮の可能性に挑戦しました。着ぐるみでも、人形アニメでも、“怪物たち”がいないと映画はできません。 2005年に「キング・コング」がリメイクされました。そのコングは、コンピュータ・グラフィックによって動いています。だから、フィルムやコンピュータの中にはいますが、具体的な存在(造形物)はどこにもありません。 映画に登場した怪獣、怪物については、“フィギア”なるものが商品として売られます。ファンは、映画に登場したのと同じ“フィギア”をほしがります。ことのき、円谷やハリーハウゼンの怪物については、スクリーンに映る怪物、いいかえると着ぐるみや人形を細部まで再現した造型が好まれます。 人間が、粘土やゴムなどの素材で作った造形物の怪物は、完璧ではありません。生物としてみたとき、でこぼこがあってなめらかでなかったり、着ぐるみなどは人間が着るのですから、そのプロポーションがモロに感じられたりします。 「シンドバッド7回目の航海」では、魔法使いによって、侍女が、頭は人間で胴体は蛇の怪物に変身させられます。蛇女が踊り狂う全身映像を人形アニメーションで見せ、ときどき顔のクローズアップが入って、生身の人間が蛇に変えられた雰囲気を出そうとしています。これがCGであれば、生々しい蛇の胴体に、首だけ実写の人間にすげ替えることが簡単にできます。 けれど、人間には想像力がありますからね。リアルさよりも、人形アニメと顔のクローズアップを頭の中でつなげるのが、楽しいのです。 CGは、おそらく“ホンモノそっくりのゴリラ”を表現することが可能なのでしょう。けれど、スクリーンの怪物は、例えリアルさに欠けても、そこに味が出てくるものです。 ホンモノのゴリラがリアルなのではなくて、スクリーンの怪物こそがリアルなのだ。 「シンドバッド7回目の航海」は、ハリーハウゼン初のカラー作品としてつくられました。 ボクがこの作品を見たのは、映画がつくられてから20年ほどたってからです。 映画の存在は早くから知っていましたので、見るまでの間、期待は高まり続けました。それは、なんといっても一つ目の大巨人“サイクロプス”の存在感です。サイクロプスは、少年雑誌のモンスター特集や藤子不二雄の「怪物くん」で見て、かねてからその勇姿に惚れ惚れしていました。 念願叶って実際にスクリーンで動く一つ目大巨人を見ると、凶暴凶悪なだけでなく、なんかマヌケな雰囲気も漂わせていました。その意外性が、また嬉しかったね。 本来サイクロプスは、ギリシャ神話に登場する巨人です。だから、アラビアンナイト(千夜一夜物語)のシンドバッドとは無関係。さらに、ドラゴンまでお出ましになり、サイクロプスと大決闘を演じます。なんという大サービス。涙がちょちょぎれますね(誰のギャグだったっけ?) このシリーズ(「シンドバッド黄金の航海(1973)」「シンドバッド虎の目大冒険(1977)」)には、同じくギリシャ神話のケンタウロスやインド神話のカーリー像などが活躍する。そのへんは、ご愛嬌。それぞれが、特撮画面で持ち味を発揮してくれるのでOK!。もちろん「七回目の航海」には、オリジナルのシンドバッド・ストーリーに登場するロック鳥も出てきますよ。 特撮的には、シンドバッドとガイコツ戦士の剣戟は必見です。 これはちょっと信じられない映像で、ただ単にスクリーン上に巨大怪物を合成するのとは訳が違います。なんと、実写の俳優が演じるシンドバッドと、人形アニメーションのガイコツ戦士がチャンバラをするんですよ! この俳優とアニメーションの複雑な動きの組み合わせをハリーハウゼンは“ダイナメーション”と呼びました。 この作品では一対一の闘いですが、「アルゴ探検隊の大冒険(1963)」では、グンとグレードアップして、アルゴ戦士とガイコツ軍団の集団大乱闘が繰り広げられます。やってくれますよね。 人間とガイコツ戦士の白熱バトル、これをCG、つまりデジタル合成でやったとしても、「コンピュータでつくったのさ」で話は終わります。それだけでは、驚異を感じません。 ですが、アナログの特撮映画は、具体物を使っているがために、どうやって撮影したのだろうと興味が尽きません。やはり、怪物が棲んでいるのです。 人気blogランキングに参加中。クリックしてね。 ご協力、よろしくお願いします。 みんなブルース・リーになりたかった お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
September 24, 2007 05:54:09 AM
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