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June 15, 2008
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カテゴリ:特撮映画
 登場するのは“意思を持つ炎”なんですが、わかりやすくいうと炎の怪獣です。実体は、ピンポン玉くらいの炎で、飛んできて人間の襟の中に隠れることもできます。けれど、巨大化するとビルより大きい燃えるドラゴンの形態になるのです。

 東宝特撮にもファイヤー・ドラゴンが登場します。「怪獣総進撃(1968)」では、地球怪獣連合軍が宇宙怪獣キング・ギドラを倒します。そうしたら、宇宙より“燃える怪獣”が飛来し、迎え撃つラドンと衝突するやラドンの体が火を噴きました。 「燃える怪獣……聞いたことがありませんわ」小笠原怪獣ランドの職員真鍋杏子は叫びます。確かにその通りなんですが、もともと怪獣とは得体の知れない巨大生物であり、突然に人間社会を襲うことを考えると、「聞いたことがない」との言葉は的確でないような。
 このファイヤー・ドラゴン、じつは悪の宇宙人キラアクが最後に放った兵器でした。キラアクの円盤が発火しながら高熱で飛び回り、地球上を焼き尽くそうという魂胆でした。怪獣などではなかったのです。
 
 では、ファントム・ファイアーの“意思を持つ炎”は怪獣といえるのか。獣なのか、生物かどうかも定かではありません。燃え盛る炎が、意思なり思考力なりをもっているとしかいいようがない 。“意思を持つ炎”は、宇宙からやってきました。地球の常識では測れないものです。
 けれど、巨大蛾モスラも怪獣ですね。蛾は昆虫です。本来なら怪虫なのでしょうが、カイチュウと聞いたときには蛔虫をイメージしますからね。そんなこんなで、巨大な姿をして動き回るものはみな怪獣と理解してよいでしょう。

 実体はピンポン玉大だとしても、巨大化すると燃えるドラゴンの姿になる“意志を持つ炎”は、見た目は怪獣です。だから、目もあれば口もあります。口の中には、鋭い歯が生えそろっている、って何のために? 作品の中に“意思を持つ炎”の視点からの赤い映像がありましたので、目は機能しているのでしょう。けれど、“意思を持つ炎”はガソリンを吸収するなどして燃え盛ります。つまり、食物を噛まなければ、歯はいらないのではないか。
 これは、ゴジラやガメラについてもいえます。ゴジラは原子炉から放射能を吸収してエネルギーとしています(ゴジラ1984)。ガメラも、炎のエネルギーや電気エネルギーを常食としています。だから、ゴジラもガメラも、食物を摂取するために歯は必要ないのです。多分、敵と闘うときに、噛みついたり威嚇したりするために、歯や牙がついているのでしょう。

 と、まあ怪獣は得体の知れない巨大生物ですから、科学的な常識が通用する存在ではありません。そして、怪獣映画がSFっぽい装いをもっていても、SF映画とはまではいえません。やっぱり特撮映画、怪獣映画というジャンルです。そのご都合主義的な設定が楽しくもあるのですが、プロレスが構築していた世界とよく似ていて。
 ところが、山本弘著「MM9」は、怪獣をSFとして描いた小説です。この小説では、怪獣を「神話宇宙」の物理法則の世界に存在するものと設定して、我々が現実に生きる「ビッグバン宇宙」の物理法則には従っていないなどと説明しています。とても納得できる仮説でした。さらに、怪獣ファン向けの隠し味も多々ありました。著者自身が怪獣好きであることが、ここまでの充実した作品を書かせたのでしょう。同じ怪獣好きとしては、じつに嬉しい。大変読み応えがありました。

 「ファントム・ファイアー」も、怪獣映画のスタイルを踏襲していて、ファンとしては見応えがありましたよ。

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Last updated  June 15, 2008 07:07:57 PM
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