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July 21, 2008
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カテゴリ:カーアクション
 やはりアメリカにコンプレックスがあるのでしょうか、日本のアニメである「マッハGoGoGo(1967~1968)」がハリウッドで映画化されただけでとても嬉しい。しかも、あの「マトリックス(1999)」のウォシャウスキー兄弟の手によって。別に「マトリックス」が特別好きなわけではありません。とにかく、有名監督の手によって、日本のアニメが映画になったことが快挙と思うのです。
 
 じつのところ「マッハGoGoGo」についても、当時熱中して見ていて、思い入れがたっぷりあるというものでもありません。見ることは見ていましたが、カーレースあり、犯罪あり、アクションありで、ちょっとジャンルの判別がしにくいアニメでした。そのため、十分感情移入ができなかったのです。そうであっても、あの時代に登場した日本のアニメが実写映画化されることが、とても誇りに思えるのです。自分の作品でもないのに。

 けれど、メジャー系が日本のアニメを実写化するといった場合に、心配もありました。これまでにも日本のテレビゲームがいくつかハリウッドで実写化されました。そうしたとき、某ストリートファイターとか某スーパーマリオブラザーズなどは、登場人物の名前だけは同じでも、中味がまったくちがっていたのです。子供達は「スーパーマリオブラザーズの映画を見に行ったはずなのに、変な映画を見せられた」と戸惑っていました。
 これにはガッカリでした。映画を売るために名前だけは借りるが、中味的には使えないということですよね。内容を変えて面白ければいいのですが、そうではなかったし。スポーツの国際試合で日本チームが惨敗したときのような気分を味わいました。

 だから、「スピード・レーサー」も、一流どころが映画にするだけに、好き勝手に変えられて、別物になっていたらいやだなあと危惧していました。
 ところが、これは素晴らしかった!

 この映画、じつに原色が美しい。ある映画評論家が、古い日本のモノクロ映画について、色がないことによって「映画だけの異世界をつくりだしている」と表現していました。「スピード・レーサー」の場合は、極彩色の異世界といっていいでしょう。まさにアニメを実写化したのにふさわしい色づかいです。

 設定は、オリジナルにそっていました。「マッハGoGoGo」の主人公三船剛が、「スピード・レーサー」ではスピード・レーサーになり(これが映画のタイトルだけではなく、主人公の名前だったのです)、主人公をとりまく家族や、そして、覆面レーサーもレーサーXとして登場しました。ほぼオリジナルに忠実な設定だったことで、安心感が深まりました。

 それから、音楽ですね。音楽というのは、映画のなかでとても感情を刺激する作用をもっています。ゴジラ等の特撮映画では、あの伊福部昭の音楽が、巨大生物の迫力を増進させます。例え画面がショボクても、ストーリー展開がたるくても、音楽で怪獣の重厚な雰囲気が味わえ、退屈しのぎになることさえあります。
 「スピード・レーサー」を見ていると、ところどころにオリジナルアニメのテーマソングのさわりを感じさせる曲が流れてきました。おや、今のは「風もふるえる~」の部分かな?あれ「マッハ、ゴーゴー」の旋律じゃないか?と。小出しにされると「もっと聞きたい!」と魂が揺すぶられます。部分的にオリジナルにリスペクトを払っている様子がにくいですね。「もっと、もっとオリジナルを感じさせて」という気分が高まります。 
 登場人物の設定だけでなく、音楽もオリジナルを使っているとなると、いっそう嬉しかった。ラストは、一気にテーマソングが流れます。それも、日本語と英語の掛け合いまであるのです。すぐにCDが欲しくなりましたが、さがしてもなぜかお店にありません。
 
 ウォシャウスキー兄弟は日本のアニメが大好きで、「マトリックス」にもその影響が出ているとか。そのせいでしょうか、「マッハGoGoGo」のタイトルバックに出てくる三船剛の“決めのポーズ”も、映画の中の重要な場面でスピード・レーサーにやらせてくれました。ウォシャウスキー兄弟が、オリジナルの「マッハGoGoGo」に対する思い入れが伝わってきました。オリジナルがそれだけ魅力ある作品だったと思うと、目頭が熱くなりました。

 「マッハGoGoGo」で三船剛が乗る車は“マッハ号”です。普段も、レースでも、マッハ号が活躍します。けれど「スピード・レーサー」では、“マッハ号”である“マッハ5”とレースに出る“マッハ6”が使い分けられていました。ここはリアルでいいですね。
 “マッハ5”は、トラックレースには出場しませんが、クロスカントリー・ラリーを走り、ちゃんと活躍するところを見せてくれます。このとき、“マッハ5”はアメリカ中央捜査局によって改造がされ、危険な敵と渡り合うために、秘密の武器が装備されます。この改造の過程も、説得力があります。
 レースカーなのに、ボンドカー並みの秘密の武器を搭載している。これが “マッハ号”の特徴です。ステアリングパッドにあるAからGまでの七つのボタンで操作するところもオリジナルに忠実でした。
 Aのボタンでは、エアロジャッキで“マッハ号”が大きくジャンプします。これは、“マッハ号”ならではの装備であり、得意技でもあります。これをやらなきゃ“マッハ号”とはいえません。映画の中でも、“マッハ5”は軽快にジャンプし、効果音もオリジナルと同じでした。
 この映画で一番見たかったのは “マッハ号”のジャンプだったので、懐かしい効果音と共に“マッハ5”が跳躍したときには、快哉を叫び、安堵のあまりとろけそうになりました。

 CGの効果的な使用により、レースの場面は大迫力。ストーリーもスピード感あふれる展開。マンガやアニメの楽しい絵空事が、充実した実写映画として見られるのは理想とするところ。一つの夢が叶ったといっても過言ではありません。
 なによりも借り物ではないオリジナルを尊重した設定が喜ばしい。日本から発した、アニメという子供文化、しかも40年前の作品が、こうしてスクリーンを彩ったのです。見終わって、爽快感と満足感を味わいました。スポーツの国際試合に勝ったときのように誇らしい気分でした。

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Last updated  July 21, 2008 06:30:39 AM
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