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August 10, 2008
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カテゴリ:特撮映画
 新装された映画館で「ギララの逆襲」を見ました。この映画館は、二年前に一旦取り壊されました。その直前に見た映画が「小さき勇者たち~ガメラ~(2006)」。そして建て直されて、新しくオープンしてから見たのが「ギララ」なのです。新旧の映画館を特撮怪獣映画でつなぐなんて、なんという因縁でしょう。あるいは、己が怪獣映画好きであることの業の深さをあらためて知ってしまいました。

 この新しい建物は、シネマコンプレックスとして10の映画館が、とても高いビルの中にまとめられています。そのことに気を回さず、うっかり上映開始ぎりぎりに行ってしまいました。そうしたら、チケットを買ってから、エスカレーターに乗って上っても上っても、目的とする映画館にたどりつきません。チケット売り場は3階なのに、上映館は最上階の11階です。8階分も上らねばならず、「映画が始まってしまう」と焦ってしまいました。

 松竹が怪獣ブームの1967年に放ったのが「宇宙大怪獣ギララ」です。長く“松竹唯一の怪獣映画”といわれてきたギララですが、今回は41年のときを経ての逆襲、まさに伝説の怪獣が復活したといえます。要するに、一作目を知らないのが当たり前。知っているのは、怪獣映画好きだけ。
 第一作が公開された当時は、小学生でした。リアルタイムでギララを見ているのです。これは、自慢したい気分ですね。だれも羨ましがらないでしょうが。
 そのころ、友達の兄ちゃんなんかが『大怪獣バラン(1958)』の映画について話をしてくれると、尊敬の念を禁じ得ませんでした。ビデオなどない時代だから、過去の怪獣映画を見たくても見られません。各種の資料も出回っていない。だから、人づてに話を聞くしかなかったのに加え、怪獣映画について語ってくれる人だってほとんどいません。欲しい情報が手に入らない飢餓感が、怪獣映画に対する価値を高めていったといえるでしょう。
 それと、公開時に、映画館で見ている体験が貴重だと思います。ビデオ等では、あとでいくらでも見られますが、映画の封切りは一度しかありません。だから「ギララを封切りで見た」といえるのは、「ビートルズの日本公演を生で見た」ことに匹敵すると感じています。とはいっても、マイナーな怪獣映画についての体験など、世間一般から見れば、価値の低いことでしょう。

 41年を経てギララの第二作がつくられたのは、まさに快挙です、怪獣映画好きにしてみれば。東宝のゴジラ、大映のガメラに続いて、松竹もギララをシリーズ化してくれたらいいな、そんな豊かな怪獣映画状況を望んでいたのは、怪獣映画好きだけでしょう。夢はきっと叶う、そんな甘言をこれまで切り捨ててきましたが、今回は信じてみてもいいような気持ちになりました(って大袈裟な)。
 この映画を監督した河崎実氏は、同年配であり、同じように怪獣に強いカルチャーショックを受けたのだと思います。だからギララのことを覚えていのでしょう。そして「ギララの逆襲」には、特撮怪獣映画についての思い入れをたっぷり込めてあることがとても嬉しい。普通の人は、年齢とともに怪獣やプロレスなどといったものから自然と離れていきます。しかし、一部には、年齢を重ねても卒業できない人もいるのです。

 映画に込めた思い入れで、まず凄いのは、特撮関係の役者さんを次々と登場させているところです。「宇宙大怪獣ドゴラ(1964)」「三大怪獣地球最大の決戦(1964)」等東宝特撮映画で主役を演じた夏木陽介、「ウルトラマン(1966~1967)」のハヤタ隊員、東宝特撮映画にも出演作の多い黒部進、このお二方は分かりやすい配役といえます。このほかに、「ウルトラマン」のスーツアクター(中に入っていた人)で、ウルトラセブンのアマギ隊員だった古谷敏、「ウルトラセブン(1967~1968)」「帰ってきたウルトラマン(1971~1972)」でセブンや帰マンのスーツアクターだったきくち英一、「キャプテン・ウルトラ(1967)」のタイトルロールを演じた中田博久といったマニアックな配役には、特撮好きが驚喜しました。さらに「宇宙大怪獣ギララ」に主演した和崎俊哉も顔を見せていました。まさに特撮ファンの心をくすぐる豪華ラインナップといえるでしょう。皆さん、とても楽しそうに演じていらっしゃいました。それぞれの特撮体験を思い出していたのでしょうか。

 このほかにも、特撮ファンを喜ばせる仕掛けが数々ありました。例えば、ギララを倒すためにミサイル「はげわし」が発射されます。この名前を聞いたとたんに、観客席の一部は大いに受けて笑いと拍手が起きました。なんとなれば、「ウルトラマン」でバルタン星人を攻撃したのが核ミサイル「はげたか」だったからです。
 個人的には、「宇宙大怪獣ギララ」に登場した宇宙船アストロボートを今回も見ることができてよかったです。ギララとアストロボートはセットになっているもの。映画公開時には、アストロボートのプラモデルをもっていました。残念ながら、「宇宙大怪獣ギララ」のようにアストロボートの活躍を見ることはできませんでした。しかし、アストロボートの設定が中国の宇宙船に変わっていても、ドックに停泊しているだけでも、結構。さすが河崎監督は、はずしませんね。

 さて、特撮ファンが映画をつくっているという印象の河崎監督ですが、その持ち味はコメディタッチ、パロディにも発揮されます。
 じつのところ、怪獣映画はまじめにつくってもらいたい。だから、金子修介監督のリアルなガメラ・シリーズが好きです。
 かつて「キングコング対ゴジラ(1962)」で、有島一郎演じるところの多胡部長が笑わせる役を演じていましたが、子供心にいやでした。怪獣映画は、きわものと見られるので、笑いの場面を入れることで、よけい軽く扱われてしまうのではないかと危惧しました。大人になってからは、有島一郎の演技力の素晴らしさがわかり、エンターテインメントとして笑いも含めた楽しい怪獣映画について理解することができました、頭では。しかし、心情的に、好みはハード怪獣路線です。
 よくプロレスをネタにしたマンガやドラマでは、あからさまに八百長を強調したギャグを展開します。それらは、プロレスをおちょくっていると感じます。プロレスは、必殺技や凶器、覆面などのギミックで、確かに一般社会ではありえない設定や試合展開をします。ある意味、それを前提としなくては、プロレスは楽しめません。怪獣も、光線を出したり、兵器が通用しなかったりして、生き物なのかロボットなのか判然としない場合があります。物理学や生物学を超えた存在が怪獣なのですが、そこを笑いでごまかさないで、どこまでもシリアスに迫って欲しいという望みがあります。
 「ギララの逆襲」を見る前に、一番危ないと思っていたのがタケ魔人です。もしかして「オレたちひょうきん族」のタケちゃんマンみたいにはなっちゃたら、ギララは笑いものだ、と。そして、クライマックス、タケ魔人が出てきてギララに挑みます。タケ魔人は、大魔神のパロディです。登場までにも、村人がネチコマ踊りを踊ってとても危ない雰囲気がありました。しかし、ビートたけしのスーパーヒーロー、タケ魔人は、ギャグをいいながらも、ギララとの対決を盛り上げ、最後は大魔神というよりウルトラマンのパロディながらも、ビシッと技を決めてくれました。この映画は、ナンセンスな笑いをふりまきながらも、怪獣映画、ヒーロー映画の基本をしっかり押さえてあると思いました。
 
 河崎実監督は、日本のメル・ブルックスといってもいいでしょう。ぜひ、今度は「大巨獣ガッパ(1967)」を復活させていただきたい。

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Last updated  August 10, 2008 07:41:53 AM
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