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テーマ:DVD映画鑑賞(14215)
カテゴリ:特撮映画
ホラー、アクション、SFなどは、プロレスに似ていると思う。 プロレスは、ギミックやアングルが刺激となって働き、見るものをその世界に引き込む。ホラー、アクション、SFなどもギミックとアングルがとっても大切だ。 『巨大毒蟲の館』のギミックは、タイトルにもあるように巨大な虫だ。 日本的な特撮怪獣センスからすれば、巨大な虫とは、モスラを代表をとしてクモンガ、カマキラスなどが即座に思い浮かぶ。ヤツラはいずれも身長50mのゴジラと闘うことができる大きさだ。 『ウルトラQ(1966)』にも「クモ男爵」に大タランチュラが登場した。コイツは、大きいといっても体長2.5m。特撮怪獣的にはかなり物足りない。子供心に、この回はガッカリしたのを覚えている。 で、『巨大毒蟲の館』に登場する巨大蟲は、蜘蛛とかクワガタ虫などは、ほぼ中型犬からせいぜい大型犬くらいの大きさなのだ。もちろん、犬みたいに大きな虫が現実に動き回っていたら、それは震え上がるほどにおぞましいだろう。確かに巨大と形容してもいい。しかし、スクリーンの中では、ギミックとしてのモンスター度は低い。東宝特撮怪獣に慣らされた感性から見た場合は。 「巨大毒蟲の館」の中で、唯一カマキリだけは、人間を見下ろすでかさだった。もちろん東宝特撮のカマキラスとは比べるべくもない。せいぜい3mくらいだろう。それでも、他の巨大虫よりモンスター度は高くなった。 これらの巨大虫は、大きさもさることながら、CGがしょぼい。高性能なCGであれば虫の質感などリアルに表現できるのだろうが、塗りが足りない絵といった感じだった。これはギミックとして、感情移入を妨げる そして、アングルとしては、以下のよう。 主人公、女子大学生のカミによると、太古の昔、昆虫は巨大で知能も発達していたそうだ。彼女は、大学の女子寮の自室でたくさんの虫を飼って、その遺伝子を蘇らせる研究をしていた。外見上はふつうの虫と変わりはない。しかし、「知能も戻りつつあったわ」とのこと。 その虫が逃げ出し、パーティ真っ盛りの女子寮をうろつき回る。怒った他の女子大生が、カミの飼っている虫たちに殺虫剤を吹きかけた。実験中の虫たちは、一旦死んだかに見えたが、殺虫剤が反応して巨大化してしまったのだ。 こういう理屈のつけかたは、説得力を与えようと工夫している様子を感じる。巨大虫という常識はずれを、見る人にとって不自然に感じないようにしなければならない。なおかつその仕掛けで、興味をひくようにする必要がある。そこがいい加減だと、その後の展開が非常につまらなくなる。その意味でプロレスのアングルと似ていると思う。 さらに、主人公カミの設定がいい。 カミは虫にしか興味がなく、ブキミちゃんと呼ばれている。他の女子大生が寮の中で男子学生とヨロシクやっていても、彼女は男の誘いに乗らない。 カミの飼っていた虫が巨大化して動き回り始めるのだが、カミしか気付かない。彼女が警告を発しても、他の女子大生は「巨大虫はいないの」と退ける。虫狂のカミの幻影だと決めつけるのだ。しかし、徐々に徐々に巨大虫が忍び寄り、一人また一人と犠牲者が出る。常識的に判断すれば巨大虫など信じられない。まず前提として普通の世界があって、そこに驚異の存在が侵入する。その段取りが、非現実的な世界への橋渡しをしてくれるのだ。 そして、ついに巨大虫が全員の目にふれると、そこから女子大生対巨大虫の一大バトルが展開される。加えて、カミに意地悪した女子大生が、巨大虫の寄生虫によりモンスター化するエピソードもある。この展開は、料理に塩コショウを効かせた感じだね。 クライマックスは、あの虫腐女子カミが女戦士となって奮闘する。虫のことなら任せとけってか。自信満々、勇猛果敢で、男子学生にも自分から働きかけるほどの変貌ぶりだった。 プロレスのギミックやアングルは、やりすぎると観客の目には不自然に映る。逆に地味だとプロレスらしさのアピールが不足する。その判断基準はリアリティでしょう。 同じように、ホラー、SF、アクションなどの映画も、ギミックとアングルの練り具合が、見る側のエモーションに大きく影響する。魅力的なギミックとアングルは、現実から気持ちよく飛ばしてくれる。 もちろん、どんなギミックやアングルを用意しても、それらの非現実的な世界に入り込めない人はいる。モンスターなんてばかばかしいと思ってしまえばそこで終わりだ。ギミックやアングルを楽しむには、見る側もそれなりの想像力を必要とします。 それにしてもこの映画、出演している女子大生が揃ってなかなかカワイ子ちゃんだった。お陰で最後まで楽しく見ることができました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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