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January 10, 2016
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カテゴリ:パニック映画

 『シャークネード』も、第一作目、続編の『シャークネード カテゴリー2』と来て、この『シャークネード エクストリーム・ミッション』で3作目ですよ。
 この『シャークネード・シリーズ』は、究極のご都合主義です。
 常識的な論理性を無視して、いたずらに見せ場に走ろうとしていますね。

 巨匠ヒッチコック監督は、つぎのように述べています。
 「ストーリーの辻褄を合わせることばかりを考えて<らしさ>などにこだわる批評家というのは想像力を欠いた鈍感なやつだと思うね」(『定本 映画術』 ヒッチコック/トリュフォー共著 (山田宏一・蓮實重彦訳、晶文社、1990年)

 この考え方には、とても共感いたします。
 しかし、ヒッチコックは、こうも言っています。
 『映画とは、観ている人の感情移入をコントロールするもの』

 ヒッチコックは、ハラハラ、ドキドキで、観客を映画の世界に感情移入させてしまいますから、辻褄が合わないことを凌駕する勢いがあります。

 一方『シャークネード』(を制作したアサイラム社のほかの映画も)は、感情移入を妨げるような辻褄の合わなさがあるのです。
 それは、確信犯的でもありますし、いい加減さ丸出しの手抜きでもあると思いますね。

 今回の『エクストリーム・ミッション』では、映画が始まるや否や、主人公フィンが疾走します。
 全力で走るフィンを、シークレットサービスの車が猛スピードでやってきて、あわてて乗せて行きます。ものすっごい急いでいますね。
 そして、フィンのセリフは、「国立気象局は来ているか?」です。
 さらにアナウンサーの声が聞こえます。「気象局は大型の嵐がワシントンを直撃すると予想」「NASA気象衛星センターは市民に避難するように呼びかけています」

 これは、ついにシャークネードが、アメリカの首都ワシントンを襲ってくるのだ、だからフィンやシークレットサービスは大慌てなんだ、と思うじゃないですか。

 そして、フィンが一刻を争う勢いでホワイトハウスに飛び込むと、そこは大統領自由勲章の授与式だったのです。
 フィンは、シャークネードからロスとニューヨークを救ったということで、最高に栄誉のある勲章をもらっちゃったんですね。
 満面の笑みで、大統領から勲章を授かるフィン。
 そいでもって、受賞パーティーなんかをやったりしている。

 嵐はどうなんとるんじゃい!
 大型の嵐が迫り、NASAから避難勧告まで出ていたら、パーティーなんかやってる場合じゃなかとでしょう。
 と思わず福岡弁になってしまいましたがな。

 案の定、シークレットサービスが「嵐が近いぞ」「大統領をシェルターへ」と駆け込んできました。
 だから言わんこっちゃない。
 しかし、華やかな受賞パーティー会場からシェルターへというこの展開、落差がありすぎるでぇ。

 そうこうするうちに、シャークネードがホワイトハウスを襲ってきて、天井のステンドグラスを突き抜けてパーティー会場に鮫が降ってくる。
 もう、タキシードを着た紳士やドレス姿の淑女が鮫に食われて阿鼻叫喚の地獄図だ。

 シークレットサービスは、大統領とVIPのフィンをガードしながらシェルターに導く。
 「ここは地球上で最も安全な場所だ」と、シークレットサービスが扉を開けたとたん、そこから鮫が飛び出して、襲ってきた。

 ふざけんなー!シェルターに鮫が浸入しているって、ホワイトハウスのセキュリティはいったいどうなっちゃっているんだよー。
 どこが、地球上で最も安全な場所、なんじゃい!

 しかし、タフガイ・ヒーロー、フィンは、降り注ぐ鮫を蹴散らして大統領を救出する。

 その後、フィンは家族を救うために、オーランドへ向かう。
 ロスとニューヨークを救って最高勲章をもらったフィンが、ワシントンD.C.は見捨てていくのか?
 カーラジオからは「ワシントンの街はシャークネードで壊滅状態だ」と叫んでいます。

 フィンは、なんとか車でオーランドの家族のもとへ向かおうとするが、シャークネードの影響で進めない。
 するとフィンは、空軍の基地に出向き、知り合いの大将にジェット戦闘機を借りたいと願い出る。
 大将は「よし最後の一機を貸そう」と快諾する。

 さすが、ヒーローはちがう。
 家族のもとへ急ぐからという理由で、民間人のフィンが、軍の戦闘機を貸してもらえちゃうのですから。
 なんせ、大統領自由勲章もらっちゃったからねぇ。
 あの大統領を救ったフィン(でも、ワシントンは見捨てた)ですから。
 って、これは究極の公私混同でしょ!

 しかも、対応に出てきた軍曹に「操縦はできますか?」と聞かれると、「少しはね。息子に習った」と答えるフィン。「超音速ですよ」とツッこむ軍曹だが、それ以上に、未曾有の鮫嵐の中を飛ぶんですよ。
 タフガイ・ヒーローは、怖いもの知らずでなんでもできちゃいますぅ。

 家族と合流したフィンは、シャークネードを破壊するために、元宇宙飛行士の父に協力を依頼しにいきました。
 フィンと父ギルバートが話し合っているところに、仲間のノヴァ(フィンの元カノ)が入ってきます。
 ノヴァは、外で迫り来る雷雲を見て、驚愕の表情を浮かべたのです。
 そして、フィンに「時間がない、急ぎましょ。嵐が近づいている」と促します。
 ところが、父は「ギルバート・シェパードだ。大佐と呼んでくれ」と自己紹介し、「まあ座りなさい」と椅子をすすめる。
 それに対してノヴァも「はじめまして」と礼儀正しくあいさつし、「NASAで仕事を?」と応じる。
 誰も、全然急いでいません。
 ノヴァも、落ち着いて話に加わります。
 この緊迫感と緩和のバランスをどう受け止めていいのかぁ。

 フィンの父ギルバートを演じているのが、かつてテレビの『ナイトライダー(1982〜1986)』に、マイケル・ナイト役で出演していたデビッド・ハッセルホフだ。

 いよいよクライマックス、フィンとギルバートは、スペースシャトルに乗り込み、宇宙からシャークネードを壊滅させる作戦に打って出ます。
 ところが、シャトルの打ち上げを妨害するかのように、シャークネードが発射台に襲来します。鮫の大群が雨霰と降り注ぎ、ロケットを直撃するのです。
 NASAの打ち上げ要員たちが叫びました。
 「鮫が降ってくる!」
 「州兵にシャトルを守らせる」
 「何としてもシャトルを守れ!」
 「州兵が到着した!」
 そうして、州軍の車両が勇ましげにスクリーンに登場します。
 だが、なぜなのか、鮫を攻撃する州兵は、どうみても数名。
 しかもヘルメットさえかぶっていない。
 あの軍車両に乗ってきた人たちはどこへ行ってしまったのでしょうか。
 そんな中で、機関銃をぶっ放す2〜3人。
 「サメをシャトルに近づけるな!」と怒鳴っている人は、拳銃を撃ってますよ。 
 あれあれ、鮫に食われてしまいました。
 こんなんでシャトルを守れるのでしょうか。

 ついにフィンの娘とボーイフレンドが、見かねて出てきて、機関銃を乱射します。
 彼「きみ、機関銃、うますぎる」
 娘「遺伝よ!」
 才能がすべてのご都合主義の世界でございます。

 さて、無事にシャトルは飛んで、シャークネードは消滅するのでしょうか。
 しないわけがない。
 このあとのぶっ飛び映像は、お楽しみということで。

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Last updated  January 10, 2016 09:01:35 PM
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