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テーマ:DVD映画鑑賞(14213)
カテゴリ:パニック映画
1月5日に放送された『NHKでハリウッド 映像王国の挑戦~スターウォーズとILMの40年~』を見ました。 新作『スターウォーズ フォースの覚醒(2015)』の制作過程の紹介で、「わずか数秒の映像に限界までこだわりぬきました」というアナウンスが入っていました。それほど、ILMは、映像作品において、限りなく高いクオリティを追求していることがよくわかりました。 その対極にあるのが、SyFy×アサイラムのモンスター映画ですね。 なにしろ、手間隙かけず、金かけずの映画づくりですから。 そうした「〜かけず」にこだわりぬく制作方針でつくられる映画は、パクリ、こけ脅し、必要以上に奇抜さを売り物にするという手立てを用いるわけです。つまり「奇をてらう」ってこと。 今回のSyFy×アサイラムも奇をてらって、『トリプルヘッド・ジョーズ』、巨大な三つ頭をもつ鮫が人を襲うという映画です。 この手の映画を見るのは、「ジョーズ」というタイトルや扇情的なキャッチコピーなどを見て、何かまちがえちゃった人とか、人間が正直すぎて真に受けてしまった人とかでしょうか。 [キャッチコピー:「3つの頭を携えた“海の阿修羅”が迫り来る!」「恐怖」「凶暴」「叫声」すべてが3倍!(注:三つ頭だからだね)] あるいは、ある種の映画マニアとか。 × × × × ある島に隣接する形で、生物への産業廃棄物の影響を研究する海底施設がありました。 研究所内では、海の汚染によって突然変異を起こしたと思われる不気味な生き物を見ることができます。 突如、三つ頭の鮫が現れて、水深800mに位置する海底の研究施設を破壊し始める。 話の流れから、この鮫が三つも頭があるのは、海洋汚染による突然変異体なのだろうと推測できるわけだ。 そして、この鮫は、ただ頭が三つあるだけではない。最初、研究所の職員が魚影を見たときには、鯨かと見まちがえたほど巨大なのだ。 巨大な三つ頭鮫に研究施設がぶっ壊されて、身の危険にさらされた研究員たちは、島の方に逃げていって、そこから船で脱出しようとする。 ところが、船(12人乗り)は、ちょっと沖の方に流されてしまった。 だから、そこまで泳いでいかなければならない。 勇気のある男が「オレが行く」ってんで、危険も顧みず泳いでいった。なんとか無事にたどり着いたはいいが、この人は「船を動かせない」人だった。 勇気はあるが、少々思慮が足りなかった。 そして、今度は動かせる男が、決死の覚悟で飛び込む。この男もかろうじて、船まで行きつき。 すると、三つ頭鮫の恐怖に駆られて、待つことができない女が暴走して海に飛び込む。他の研究員が追いかけて引き戻そうとするが、ついに三つ頭鮫が襲ってきて食われてしまう。 女性教授が、上司としての責任を感じて、「私が囮になるから、みんな早く船まで泳いで行って」と自らを犠牲にしたりする。 などと流血淋漓の大騒ぎをして、緊迫感を煽っているのですが、どう見ても、島に残っていた方が安全ですよ。どうがんばっても、鮫は陸上までは襲ってこれないでしょう。 船が動き出したとしても、研究所を破壊するような怪物鮫だったら、12人乗りの船なんか簡単にひっくり返すと推測できるじゃないですか。 確かに研究所が爆発したという描写もあり、そのために船に急ぐという理由づけをしたいようなんですが、その爆発の影響って直接何にもない。 どうして彼らは、泳ぐ仲間が食われても、島を捨てて船を選んだのか?三つ頭鮫の襲撃で、とんでもないパニックに陥ってしまったのでしょう。 さて、命からがら船に乗ったメンバーは無線機で、救援を求めた。 これが、警察とか湾岸警備隊とかではなく、まちがって民間人の釣り船(クルーザー?)につながってしまう。 研究員「メーデーメーデー、助けてくれ!」 釣り船「周波数ちがいだ。おれたちは釣り船だぞ」 研究員「化け物鮫に襲われているんだ。誰でもいいから助けてくれ!」 釣り船側は、「おれたちをかついでいるんじゃないのか?」と言って、怪物鮫に襲われている状況をなかなか信用しなかった。だが、必死の訴えを聞いて、ついに救援に向かう。さらに、釣り船の物入れボックスを開けると、そこにはマシンガンや蛮刀が格納されている。それらを取り出して三つ頭鮫との対決に備える釣り人たち。 って、なんで釣り船にそんな武器が積んであるんだぁ? ここで、落ち着いて気づいてほしかったのは、釣り船から警察なり、湾岸警備隊なりに無線連絡をとればいい!というごく簡単な事実です。 釣り船の3名ほどは、困っている人を助けようという義侠心あふれる人々だったのかもしれません。 しかし、この方々は何のお仕事をされているか知りませんが、自分たちがやっかいな事件に飛び込むより、ここはプロに任せる場面だと思いますが。 きっと、三つ頭鮫の襲撃と聞いて、とんでもないパニックに陥ってしまったのでしょう。 この釣り船の船長格が、『マチェーテ(2010)』などの主演作もある個性派俳優ダニー・トレホなんですよ。 さてさて、研究員たちが、三つ頭鮫から逃れようと船を走らせていると、なんとパーティー船が見えてくる。 若者たちが、船上で飲めや踊れやの乱痴気騒ぎ。 すると気の多い三つ頭鮫は、研究員の船からパーティー船にねらいを変更する。人が多くてたくさん食えるという計算からか。 三つ頭鮫の急襲に、さっきまでお楽しみの真っ最中だったパーティー船は、わけもわからず阿鼻叫喚の地獄絵図に変貌する。 巨大三つ頭鮫に突撃猛攻に、パーティー船は穴を開けられ浸水し、船首から傾きながら水没していく。 斜めになったデッキを人が滑り落ちて、三つ頭鮫の待つ海中へ。 デッキはいよいよ勾配がきつくなり、自分の身の安定もはかれないのに、すべっていく人をつかんで助けようと人もいるなど、『タイタニック(1997)』の様相を呈している。 その中には、叫びながら不必要に自ら海へ飛び込んでいくとしか見えない人もまじっていた。 そんな大騒ぎがあって、つぎのカットでは、なんと船は水平のままで海に浮かんでいるじゃないか。 えー!? いつのまに、水を掻い出して、穴を補修して、もとにもどったんじゃい! あの騒乱、混乱の中で、だれがそんなゆとりがあるというのか。 DVDを戻して、もう一回沈没していくパーティー船を確認しちゃいましたよぉ。 きっとスタッフも、巨大三つ頭鮫の襲撃で、パニックに陥ってしまったのでしょうね。 一方、研究員たちの船は、エンジントラブルが起こり、前に進めなくなってきた。 そして、なんとか環礁まで行って、上陸しようということになった。 だからぁ、最初から島にとどまればよかったのですよ。 そして、船の無線で救援を呼ぶのがいちばん賢いやり方です。 やっぱり頭脳明晰な海洋学者、研究者も、三つ頭鮫の恐怖から、パニックに陥ってしまったわけやね。 そこへくだんの釣り船が、おっとり刀で駆けつけてくる。 三つ頭鮫は釣り船を襲い、乗組員とマシンガンで大決闘となる。 されど、三つ頭鮫強し。マシンガンをものともせず、釣り船のメンバーは、つぎつぎに三つ頭鮫に食われてしまう。 そんな中でも、さすがに「スター」ダニー・トレホは生き残る。 まずは拳銃をぶっ放すトレホだが、弾丸切れになり、それならばと蛮刀を取り出して斬りつける。 そして、トレホは、ついに三つ頭鮫の真ん中の首を切り落としてしまう。 さすが「スター」トレホ、見せ場が用意されていました。 トレホは、ぐったりとなったかつて三つ頭、今は二つ頭の鮫を釣り船(クルーザー)の前側に乗せて環礁に乗りつける。 しかしなあ、鯨と見まごうような大きさの鮫ですよ。 クルーザーの船首側に乗るってことは、ちょっと小さめじゃないか。 だから、もしかしてトレホが首を切ったのは別の三つ頭鮫で、主役の三つ頭鮫は、満を持して再登場するっていう筋書きじゃないのか、と深読みしまったわけです。 ところが、一旦死に体を見せていたその三つ頭鮫は、じつは死んでいなくて、切り口からいくつも頭が生えてきて、いっそう凶暴になって再活動します。 まあ、釣り船に乗せて運ぶ都合で、いったんサイズを縮小したんでしょうね。 当方は、まったく場にそぐわない、不必要な深読みをしてしまいました。 さてさて、「スター」トレホでも倒せなかった三つ頭鮫です。 どうやってこいつを退治して決着をつけるんだろう、と思って見ていました。 よくあるのは、鮫に爆弾を飲み込ませて、体内で爆発させるという手ですが、そんな方法はあまりに安易です。 奇をてらうSyFy×アサイラムなら、それなりのものを見せてほしいものです。 そうしたらですよ、研究所のインターン女性が言いました。「(三つ頭の)鮫は、汚染やゴミが好きだ。ゴミベルトに誘い込めば、大量のエサ(ゴミ)を奪い合って頭同士が共食いをするはず」 おーなんという斬新な、頭同士の共食い作戦! ちょっとフツーじゃ考えつかないよ。 爆弾を飲み込ませるなんていう古くさい手法を疑ってごめんね、SyFy×アサイラム。 頭の数も増えたことだし、きっと強烈に共食いするよね、って。 ちょっと待てぇ。 三つ頭鮫はゴミを好むならばだよ、なんで今の今まで人間を襲って食いまくっていたんだよ!? 大量のエサ(ゴミ)があるのなら、のんびりゴミベルトのゴミ溜まりでゴミを食ってればよかったわけでしょう。 ゴミを主食とする三つ頭(今は五つ頭?六つ頭?)鮫が人間を襲ったのは、口直しのデザートだったのか? それと、「共食い」あるいは「奪い合う」という行為は、食べ物が少量だからそうなっちゃうんとちがいます? 三つ頭鮫は、食べきれないほどの大量のゴミがあっても、それを一つの頭が独り占めしようという欲ばりですか。それって凶暴さよりも、ごうつくばりのマヌケさが漂っています。 同じ頭が三つでも、三つ首竜キング・ギドラの方が、ずーっとずっと行儀がいいぞ。 人気ブログランキングへ 今年もご協力よろしくお願いします お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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