|
テーマ:DVD映画鑑賞(14213)
カテゴリ:特撮映画
ロスト・ワールド 2in1 「ロスト・ワールド」(1925)/「失われた世界」(1950) [DVD] 今年に入ってここまで「ロスト・ワールド」ものに肩まで浸かってきた。 ことの始まりは、年末年始にバローズの小説『時間に忘れられた国』を読んだことだった。 そうすると、「ロスト・ワールド」ものをコンプリートするべく思考が偏向した。 だからつぎにヴェルヌの『地底旅行』を読んだ。 そして、コナン・ドイルの『失われた世界』を読み終わったところだ。 これらの小説は、どれも映画化されている。 『時間に忘れられた国』は、『恐竜の島(1975)』と『続・恐竜の島(1977)』になった。 『地底旅行』は、『地底探検(1959)』『センター・オブ・ジ・アース(2008)』などがある。 それでもって『失われた世界』は、『ロスト・ワールド(1925)』『失われた世界(1960)』などなど。 そもそも「ロスト・ワールド」系の小説に興味を駆り立てられたのは、とりもなおさず「恐竜」が登場するからである。 これまでそれぞれの映画は見てきた。それは「恐竜」が登場する「特撮」映画だからだ。 そして、今回小説を読むのと並行して、あらためて映画の方も見直している。 そんな中で、行き当たったのが『失われた世界(1950)』だった。 この映画は知らなかったなぁ。 小説『失われた世界』を原作とする映画としては、まずもってサイレント映画の『ロスト・ワールド(1925)』がある。特殊効果・技術監督は特撮映画の先駆者ウィリス・オブライエンである。 オブライエンは、ストップモーション・アニメという技法で恐竜を映像化した。そのあと不朽の名作『キングコング(1933)』でも特撮を担当する。オブライエンの功績は特撮映画の巨匠レイ・ハリーハウゼンが引き継ぎ、ダイナメーションとしてさらに発展させた。 我が日本の円谷英二も、『キングコング』の特撮には並並ならぬ衝撃を受けたのだった。円谷も、じつは『ゴジラ(1954)』をストップモーション・アニメ的な手法で撮影したかったのだ。しかし、手間暇の関係で断念したのだった。結果、日本では着ぐるみによる特撮怪獣映画が発展することとなった。 円谷英二が特撮監督を務めた東宝の『キングコングの逆襲(1966)』は、着ぐるみ特撮による「ロスト・ワールド」ものと言えないこともない。また、円谷プロが製作した日米合作の『極底探険船ポーラーボーラ(1977)』は、確実に着ぐるみ特撮による「ロスト・ワールド」ものである。円谷英二没後の映画ではあるのだが。 一方の『失われた世界(1960)』は、本物のトカゲやワニに背びれやトゲなどの装飾を施し、大映しにして恐竜に見せた(通称「トカゲ特撮」)。ちなみに、「トカゲ特撮」は、先の『地底探検(1959)』『失われた世界(1960)』にも登場する。 つまり「ロスト・ワールド」ものの映画は、ストップモーション・アニメ、着ぐるみ、さらにトカゲ特撮と、巨大生物を映像化する特撮の見本市の様相を呈しているのだ。 さてさて、くだんの『失われた世界(1950)』である。 この映画は今回初めて見るわけで、当然のこととしてコナン・ドイル原作の『失われた世界』を映画化したうちの1本だと思っていた。 ところが、メインタイトルが表示された瞬間に「え⁉︎」となってしまった。 まず、タイトルの頭に「TWO」の文字が見えたのだ。 このとき『THE LOST WORLD』の「THE」を「TWO」と見まちがえのかなと思った。けど、あわてて巻き戻して見たら、やっぱり「TWO」だった。 ということは、複数形になるわけだから「WORLDS」と「S」がつくのだろうかと確認したら、タイトルは確かに『TWO LOST WORLDS』だった。 さらに、クレジットタイトルには、原作者であるコナン・ドイルの名前がどこにもなかった。 「なんじゃ、これは?」 結論からいえば、コナン・ドイルの『失われた世界』とはまったく別物だったのである。 ときは19世紀。東インド諸島と西洋社会を帆船が行き交う時代。 ストーリーをはしょると、ヒロインが海賊に連れ去られ、ヒーローは大海原を追撃し、帆船同士で大バトルとなる。帆船は大破し、ヒーロー一行は救命艇で脱出する。たどり着いた孤島では、なんと有史以前の巨大生物が跋扈していたのだった。 この映画の巨大生物は、「トカゲ特撮」である。 背びれをつけたワニとオオトカゲが闘う。 お互いに大きな口、鋭い歯で噛み付きあって、ぐるんぐるん回転しながら争う。 激闘を尽くす中で、よくワニの背びれが取れなかったものだ。 しかし、これらのワニとオオトカゲは、本来闘いたくて闘っているわけではない。 映画撮影のために、人間に闘いを仕向けられているわけだ。 また、島の火山が噴火するシーンでは、ワニとオオトカゲが地割れに落ちたり森林火災に巻き込まれたりする。 このような「トカゲ特撮」のシーンは「動物虐待」として、今の時代はもう撮影不可だ。 かつて当方は、巨大生物を映像化するための三技法(ストップモーション・アニメ、着ぐるみ、トカゲ特撮)の中では、「トカゲ特撮」を最下位にランク付けしていた。 生きているワニやトカゲだから、確かに生物感はある。だが、やっぱりトカゲやワニを恐竜と見るのは無理があるでしょう。 そこらへんのお手軽さが特撮映画を安っぽく見せていると思ったものだ。 でも、CG全盛の今となっては、「トカゲ特撮」を「失われた特撮」の一つの技法として興味深く鑑賞している、「動物虐待」を痛々しく受け止めながらも。 なお、この映画の「トカゲ特撮」は、『紀元前100万年(1940)』の「トカゲ特撮」のフィルムを流用したものだ。このように「トカゲ特撮」は、一回撮影して映画に使ったフィルムを使い回すことが多い。つまり一本の「トカゲ特撮」の映画を見ると、ほかの映画で見た場面がまた出てくるわけだ。そして、映画の数にくらべれば、ワニやトカゲを実際に使った撮影は回数が少ないのである。少しは救いになるかな。 ということで、『失われた世界(1950)』は、コナン・ドイルの小説の映画化ではなかったが、進化に取り残された島が登場する点で、コナン・ドイルの小説のタイトルにあやかったわけだ。 特撮という点では、トカゲ特撮以外のところで、帆船や港のミニチュア・セットが目に楽しかった。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[特撮映画] カテゴリの最新記事
|