思いのままに書け！

[人生荒波体験中] カテゴリの記事

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• 巣離れ～家を出た日～

  　季節感なく昔の話をするのが私のいいところ。　こんばんワイン、三椏ジュンです。　それでは早速タイムスリップ致しましょう。　　高校生最後のビッグイベント。　そう、それは卒業式。　見事卒業式を終えた私は、　(当日の朝卒業が決定した)　連日連夜、卒業パーティーと称して、　友人たちと飲み明かしていた。　そして卒業式から１週間程経ったある朝。　酒の匂いを体に巻きつけ、帰宅したのだが。　玄関を開けるとそこには、　私の荷物が置いてあった。　ああ、そうか。引越しだ。　母が家を購入したので、引っ越すんだったな…。　何だよ、まとめてくれたのかよ～。　とか何とか思いながら、靴を脱いでいると、　母が玄関先にやってきて、こう言ったのだ。　『出て行け。』　はい？　『前から言っとったよね？　　高校卒業したら家を出なさいって。』　ええ、聞いてましたよ。　母は自分が子供を育てるのは高校卒業までだと、　昔からよく言っていたものだ。　じゃがしかし、である。　　突然の仕打ちに私は必死で追いすがる。　私『住む家も決まってないのに、ちょっと待ってや！！』　母『そんなもん、どうにかなる。』　なるわけないだろう。　あんた、この寒空の中、かわいい長女を放り出すのかい。　しばらく言い争いになったのだが、　問答無用で私は家を出る羽目になったのだ。　親元を離れて、　しっかり自分を鍛えて来い。　と、母は叱咤激励したのだが。　お母さん。　匙を投げたね？　そうして私は。　小さなかばんに夢だけ放り込んで、　(誰の歌だっけ…)　当てもなく街へと消えたのであった。　

  2006年10月05日

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• サザンですわ。

  　　何年か前の誕生日に、　私は配偶者に遠い場所へ連れて行かれた。　私の住む町と同じ県ではあるが、　行った事もないところだった。　何故そんな場所に。　目的はタトゥーである。　私がもうずっと前から『入れたい、入れたい』言うてたので、　誕生日プレゼントにという事で、　配偶者の知人の紹介で　そんなところまで行く事になったのだ。　辿り着いたそこは……　８９３の要塞だった。　え…。　和なの？　和彫りなの？　まあ、電気針だったのだが、　私がジリジリやられてる最中、　訪問客が次々その場所に訪れた。　オール８９３。　しかも、あなた服の上に服着てるの？　みたいな物凄い和彫りの方が、　脅えた目で　『痛い？痛い？』　と、聞いてきた。　　　配偶者からのプレゼントは有り難い。　だが私は他の店でやりたかったのだ…とは言えなかった。　あと、すでにこのプレゼント法は　チャラの旦那がやってんだよって事も……。　なんか得意になってるから言えなかった。　追伸　さっきオレンジだと思って食べたら　グレープフルーツだった。　　酸っぱかった。　　

  2006年06月07日

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• 赤い橋

  　昔、水商売をしていた頃のお話だ。　車で２０分ぐらいのところにある店まで、　勿論、車で通っていたのだが(今じゃ出来ないな。)　分かれ道がある。　どちらからも家に辿り着く。　そして店にも辿り着く。　距離も変わらない。　しいて言うなら込み合うか否かのみ。　なので、その日の気分によって、　今日はこっちから行こう…と、変えていた。　赤い橋。　そこを渡るかどうかでルートは決まる。　そんなある真夜中。　べろんべろんに酔っ払いながらも、　しかも走行しながらドアを開けて吐くという珍技をしつつ、　(良い子は真似…する気もないだろう。)　帰宅している時である。　数十メートル先には赤い橋。　どうしょうかな…。　今日はどっちを通って帰ろうかな…　着てる服は赤なので、橋を渡るかな…。　私以外、車は通っていないがウィンカーを左へ表示する。　ハンドルを切ろうとしたその時である。　『！！！！！！！！』　言い知れぬ危機感に襲われ、私は分かれ道の前で車を止めた。　　え…今確かに何か聞こえた…。　冷や汗がドッと出て来て、体中にまとわりつく。　一気に酔いが醒めた。　『ダメ！！！』　聞いた事もない声が、頭の中に響いたのだ。　バックミラーにトラックのライトが見えた。　私はすぐに車を発進させ、　　赤い橋を渡らない道を選んだ。　チラリと見た赤い橋の向こうは、　霧が出ているわけでもないのに、見えない。　禍々しい何かどす黒い、そんなモヤが見えた。　もしもあの日。　私が忠告を無視して赤い橋を渡っていたら。　　どうなっていたのだろうか……。

  2006年04月19日

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• ガンダーラは何処だ

  　　争いのない世界が何処にあるというのだろう　避けて通れない歴史の糸ならば　私は紡ぐしかないのだろうか　数年前のあの日。　私は大きな争いの渦に巻き込まれようとしていた。　その日は待ちに待ったモトリー・クルーのライブの日。　配偶者は前からこの日の為に休みを取っていた。　だがこの頃の私は仕事がべらぼうに忙しく、　この大切な日も、どうしても昼まで出勤しなければならなかった。　疲れていた。　そう、私は連日の忙しさに疲れ果て、　１分１秒でも寝ていたかった。　午前６時。　ゴソゴソと物音が、遠くで聞こえる。　遠足の日同様に前の晩、　ワクワクしてあまり眠れなかった配偶者が、　着ていく服を選んでいた。　１人でやる分には全然かまわない。　じゃがしかし、配偶者は酔っ払って明け方帰って来て、　眠っている私を起こしてその日の出来事を延々話すような、　そんな迷惑千万な野郎だったのだ。　『ジュンちゃん、この服どう？』　『ねーねー、こっちは？』　眠たくて仕方のない私にお構いなく、　配偶者はファッションショーを繰り広げている。　無駄な戦いはしたくない。　私は無になる事だけに専念し、配偶者を無視し続けた。　結果、配偶者は大人しく隣のリビングへ移動したので、　ようやく私は僅かな安眠を手に入れる事が　出来ないんだよね～。　あのバカ、今度は靴下がないとか騒ぎ始めたのだ。　しかもキレ気味で、寝室のドアを開け、何やらわめいている。　『靴下がない！』　『いつまで寝とるん？』　『今日何の日か分っとるん？』　(……ブチッ)　『…っさいんじゃ、コラ―！！！』　　決戦の火蓋は切って落とされた。　　私は勢いよくベッドから飛び起き、　一瞬ひるんだ配偶者の胸倉を掴んだ。　『オイ、オイ、オイ、オイ！！　　今何時や！あ？今何時か言うてみいや！』　　(訳：おやまあ、ホホホ…今何時か教えてくださる？)　『お前が早く起きんけーじゃ！』　　(訳：あなたが早く起きないからですよ。)　そこからはもう、言葉にならない雄たけびを互いに上げ、　取っ組み合いの格闘にもつれ込み、　私は子供用のパイプ椅子を配偶者に投げたりして、　気が付けば本来の起床時刻になっていた。　私も配偶者も、息を切らせながら、　もう一緒に行かないという旨を伝え合った。　結局、一緒に行く友人が仲裁に入り、　私たちはどうにか仲直りを果たし、　モトリー・クルーのライブを満喫した。　　　今までに、特に若い頃はかなり激しい戦いをしてきたが、　(ゴミ箱を投げたら見事配偶者の額に命中して、　 流血した事もある。)　こんなに息が切れるまで戦ったのは初めてだった。　　そんな三椏家内争勃発の最中、　長男(当時５歳)と次男(当時３歳)はグースカ熟睡していた。　　　今では、　私と配偶者が熱い火花を散らしていると、　　『外でやれ。』　と、次男にたしなめられ、　『どんなに恥ずかしいか見てもらえば？』　　と、長男に戒められる。

  2006年04月08日

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• お告げ

  　彼女は不思議な夢を見る。　母がまだ若かりし頃、　夢に白い大蛇が出てきた。　その大蛇は母のお腹にぐるぐると巻きつき、　すうっと姿を消した。　その数日後、私を腹に宿した事を知った。　それからまた、母は白い大蛇の夢を見た。　それは第２子のご懐妊を告げるものであった。　そして幾ばくかの時を越え、　母は久しく見ていなかった白い大蛇にまた出会った。　大蛇は母をすり抜け、遠くにいる私の腹に絡みつき、　すうっと姿を消した。　その翌日、母から電話がかかってきた。　『あんた、妊娠した？』　『えー？してないよ。』　だが、母の言葉は当たっていた。　その電話の後で、そういえば月のものが来てないなと気付き、　妊娠検査薬で調べたところ、見事ご懐妊していたのだ。　　『絶対女の子よ！』　何故か母はそう言っていた。　　私が第２子・第３子を妊娠する頃にも母は大蛇と夢で会っている。　そのたび、女の子よ！と決め付けた。　全員、男じゃねェか。　三男を産んですぐ、母が私に『妊娠した？』と聞いてきた。　いや、そんなにお盛んではないので…と返しても、　母は絶対妊娠してる！と引かなかった。　数日後、真ん中の妹妊娠発覚。　また母は女の子よ！と決め付けた。　また男だったね。　何で、そんなに女の子だって言うのか、　先日聞いてみた。　『あの蛇、リボン付けてた。』　　　めっさ、嘘くさい。

  2006年02月28日

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• 神話誕生の瞬間

  　同棲……。　世の中には好きな人と一緒にいられるから…と、　憧れる輩も多いであろう。　だが、いざ一緒に暮らしてみると、　見たくなかった部分も見えてくるものだ。　　　　　遥か昔。　　私は母に家を追い出され、住む所がなかったので　配偶者と同棲を始めた。　普通、同棲当初は、何だか気恥ずかしい感じやら、　新婚気分を味わうんであろうが、　私たちはもうすでに、荒波を乗り越えた老夫婦のように、　穏やかなる時を過ごしていた。　(付き合って一年でこれだ。)　　しかし、何もかもをぶち壊す事件が、　同棲して僅か１週間後に、起こってしまったのだ。　私の作る壮絶な創作料理を食べ終えた配偶者が、　トイレへと席を立った。　配偶者がトイレから出て、頃合を見計らい、　今度は私がトイレへと入った。　私は我が目を疑った。　便器にう●こが突き刺さっている。　何センチだ？　５０センチはあるぞ。　流れるべきところに突き刺さって、折れ曲がった部分が　こちらに『こんばんは』と挨拶してらっしゃる…！　後世に語り継がれる逸話が生まれた日であった。　これから同棲する者に告ぐ。　う●こはキチンと流せ。　さもなくば、生き恥を晒し続ける事となる。

  2006年01月25日

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• 流離のコレクター

  　私は漫画以外でこれといって集めているものがない。　　ワンピースのソフビ人形は集めてはいるが、　別に全種揃わなくてもかまわない程度の、　中途半端なコレクターぶりだ。　私の母はバッグと帽子のコレクターで、　実家には数え切れないほどある。　数え切れないならひとつぐらい拝借してもいいだろう…と、　以前こっそり持ち帰ったらバレた。　真ん中の妹はイチローグッズのコレクターで、　かなりなレア物が揃っている。　売れば数十万の品物もあり、こっそり持ち帰ろうとしたが、　寸前でバレてしまった。　収集物を全て網羅している事がコレクターの条件なのだな。　２～３年前に、ある物が私のコレクター魂に火をつけた。　きっかけは配偶者のプレゼントである。　テンガロン・ハットを頂いたのだが、　私は帽子が似合わないので、内心あまり嬉しくなかった。　だが被ってみると意外に似合うではないか…　という勘違いから、帽子を集めることにしたのだ。　友人からハンチングを貰い、　自分で違う色のテンガロンを買い、　当時日焼け用の帽子を被る人に憧れ、ソレを買い、　これで帽子が４つになった。　実家に帰ったとき、妹から聞きつけた母が、　私に帽子をくれると言ってきた。　数ある母の帽子の中で、欲しいものがあった。　豹柄のテンガロンと、真っ赤な麦藁帽子。　２つとも、滅茶苦茶かっこいいのである。　ワクワクしながら母がクローゼットから取り出すのを　正座をしながら待っていた。　『はい、コレあげる。』　目の前に差し出されたのは、訳の分からん色の、　ふざけた帽子だった。　こ…こんなのいらない…　　下克上を叩きつけるわけにもいかず、　私は悲しい気持ちで、その帽子を自宅に持ち帰った。　アレはいつ被る為の帽子なのだろう。　麦藁帽子の種類に属しながらも、形状は該当しない、　何とも奇妙な帽子なのだ。　それ以降、すっかり帽子熱は冷めてしまい、　結局５つしか集めなかった。　次は何を集めようかな…。　　　

  2006年01月18日

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• 梅と口紅

  　人生の先輩の一言は、私の心にいつまでも響く。　　数年前、私が勤務していた薬局に、　一人のご婦人が訪ねて来た。　７０はとうに超えているであろうそのご婦人が、　私に化粧品を選んで欲しいと言ってきた。　一緒に選びながら、雑談を交わしていく中、　ふと、ご婦人はクスクスと小さく笑った。　『……？』　不思議そうな私に、ご婦人はこう言った。　『こんなおばあちゃんが、真剣に化粧品なんか選んで、　　何だかおかしいでしょ？』　『いえ、そんな事は……。』　ある。　化粧なんかもうしなくてもいいんではないかとか、　ファンデーション塗るとシワの箇所が浮いちゃうぞとか、　そんな失礼極まりない事を考えながら、　私はご婦人を接客していたのだ。　『でもねえ。』　ご婦人は派手な色の口紅を、自分の手の甲につけて、　肌の色に合うかどうか、照らし合わせている。　『女はいつまで経っても女なのよ。』　どこかで聞いた事のある言葉だが、　ご婦人が言うからこその真実味があった。　それで思い出したのだが、幼少の頃、　父方の祖父が梅酒のビンの底に溜まっている梅を、　毎日１粒(個？)食べていた。　理由を聞いたところ、こんな答えが返ってきた。　　『キレイになるから。』　幼心に、何故あなたが？と思ったのだが。　キレイになると聞いた翌日から、　私も梅を食べるようになった。　　　　いくつでも、いくつになっても、　キレイでいたいという事なのか。　　そのご婦人は、ちょっと派手かしら…と照れながら、　赤い口紅を買って帰ったのだった。　ちなみに。　　私に梅の効果があったのかどうかは、　神のみぞ知るというヤツである。　　　　

  2005年12月28日

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• 世紀の大戦～ファイナル・カウントダウン～

  　最終決戦の朝、管理人に言われるがまま、　私たち家族は外出する事となった。　立ち会いたいとも思ったが、ひょっとすると例の虫が、　キッチンの床を剥いだ途端にブワーってなって、　ギャー！！とかなるとヤなので、さっさと家を出た。　　☆。・。・★。・。☆・。・★・。☆。・。・★。・。☆・。・★・。 　ここからは、管理人の回想である。　ほんとに…あの三椏の野郎…。　毎回毎回面倒な事に俺を巻き込みやがって……。　(いろいろある…いろいろな。)　業者が床下の殺菌消毒を始めた。　これだけでいくらするんだろうか…。　俺は雇われ管理人だが、俺が心配する事ではないんだが、　気になるのが人ってもんだ、なあ、おっさん。　何…２～３時間かかるって…？　ねえ、それさ…俺いなくてもいんじゃねェ？　え？ダメ？…俺いらないのに？　　何だよ、昼になるのに…。　昼飯はいっつもパチンコ屋んとこのうどんなんだよ。　あそこの看板娘が待ってんだよ、俺を。　人の恋路まで邪魔する気か、三椏の野郎…。　え？あーはいはい。消毒終わった。　今から床を剥がすのね、はいはい、見てるってば。　ベリベリベリ…　　　『うわ！！ひどい！！』　おっさんの声に、俺も身を乗り出した。　うわあああ…何これ…。　何十、何百万匹の虫の死骸が……　昼食べなくて良かった…。　虫たちを排除し、シンク下の排水管を空けると、　この騒動の全ての原因がそこにはあった。　箸。　緩やかなカーブに、箸が４本詰まっていた。　そこにどんどん流れてきた物が溜まり、　ついには破裂したのだ。　普通なら弁償だ。だが、心優しき俺は…　その原因を黙認したのだ。　　☆。・。・★。・。☆・。・★・。☆。・。・★。・。☆・。・★・。 　『あ、終わりました～？』　帰宅後、陽気に管理人に話しかけると、　管理人は苦虫を噛み潰したかのような顔で、　　『…おかえり。』　と、憎々し気に呟いた。　こうして、長きに渡る謎の虫との死闘は、　幕を閉じたのであった。　しかし…。　一体、奴らの名は何だったのか。　未だ解明はされていない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おわり　　　　　

  2005年12月08日

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• 世紀の大戦～水の都～

  　業者はすぐにメンバーを集めてきた。　たった３人で、しかもとうにシルバー世代を迎えた方々。　大丈夫なのか…？　一抹の不安は拭い去れないが、　もう私の手ではどうする事も出来ない。　彼らの手に委ねるしかないのだ…。　設計図を見ていた業者たちが、　床を剥がす作業に取り掛かった。　　え…待って……一箇所じゃないの？　範囲は広くないのだが、　子供部屋の押入れの床を剥がし、　寝室の床を剥がし、テレビの部屋の床を剥がし…　ついでだと洗面台の床も剥がした。　そんなオプションはいらんのだが。　そして、あらわになった床下を見て、　私と業者プロジェクトは、驚きの声を上げた。　　ここはベニスかい？　一面に張られた水面。　地上までは数センチ。　いつか沈みゆく街を思い浮かべ、私は落胆した。　業者も落胆していた。　剥がさなきゃ良かった…　そんな後悔が脳裏を掠めているように見えた。　世のセオリーに従い見て見ぬふりをしたかったろうが、　そんなわけにもいかない。　私が許さん。　とにかくだ。　この水を抜かない事には原因も調べられない。　大掛かりな事になってきたので、　私は赤子と共に友人宅へ非難する事になった。　　……………　　数時間後、帰宅してみると、床の水は全て抜き取られ、　剥がした箇所は応急処置ではあるが塞がれていた。　ここまでの調査では、結局一連の原因は解明されなかった。　残すはキッチン…それしかない。　次の日にシンク下の排水管を調べる事になり、　それと合わせて、水を抜いた床下を乾燥・消毒する。　業者はそう言い、一旦プロジェクトは解散した。　　　翌日、更に数を増した羽根の生えた虫たちは、　前夜のパーティーの疲れを取っていた。　(｀ー´) クククッ……。　もうすぐ、お前らは己の存在価値を見出せぬまま、　地獄に堕ちるのさ……。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく　　

  2005年12月03日

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• 世紀の大戦～６５歳の決断～

  　　　　　　…………………………　　　　前回のあらすじ：前回を読みたまえ。　　　　　　…………………………　羽根の生えた小さな虫は、日に日にその数を増していった。　人間どもが寝静まった深夜、奴らは活動を開始する。　　無数に飛び交う虫たち。　さながらダンスパーティーな気分であろうか。　そして、夜が明けると奴らは休息に入る。　壁やカーテンに張り付いて、疲れた羽根を休めるのだ。　　それを毎朝殺戮していく私たち家族。　恐ろしい事に、殺虫剤をかけても、　目に見えた効果がないのだ。　業者はなかなか来やしねぇし、　虫どもは日毎に増え、夜毎にパーティー三昧だ。　その数ざっと一万匹。　大げさでもなんでもない。　本当に数なのだ。　　奴らは短命なのか、殺さなくても　翌日にはたくさんの死骸が床の隅に落ちている。　だが、それを補うかのように新しい命が芽生える。　　永久に繰り返される、終わる事のない戦い…。　戦いに少し疲れが見え始めた頃、ようやく業者がやって来た。　管理人と連れ立って我が家の玄関を見た業者が、　コンコンと湧き出る水に難色を示した。　『もしかしたら…下を通ってる配水管が破裂してるかも。』　管理人が持って来たマンションの設計図を、　真剣に見つめる業者（推定６５歳）……。　『床を剥がそう。』　　そうして、業者プレゼンツのビッグプロジェクトが始動した。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく　　　

  2005年12月03日

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• 世紀の大戦～ファースト・コンタクト編～

  　　　　　　　　　　…………忠告…………　　　　　　　虫嫌いの方は、読まない方がいいです。　　　　　　　　　　…………………………　　もう春がすぐそこまで来ていた。　とはいえ、まだまだ薄着にもなれない。　そんな時期のお話である。　ピンポーン……　チャイムの音に、私は重い腰を上げ玄関に向かった。　出来ればコタツの中に、その身を預けていたかったのに。　『はーい…』　ドアを開けると、管理人が難しい顔をして立っていた。　　『これ、どうしたん？』　管理人は玄関の床を指差した。　　水を撒いた訳でもないのに、玄関の床が濡れ、　外の廊下にまで染み出ている。　結露の所為だと、大して気にも留めていなかったのだが、　近所からクレームが来たらしい。　そうとなればこのままほっておく訳にもいかない。　私と管理人は調査を開始した。　よくよく見てみると、ドアについた水滴が　床や廊下を濡らしているのではないのが分かった。　玄関の脇のコンクリートの隙間から、　少しずつ水が漏れているのだ。　　ひとまず、その道のプロを近日中に呼ぶ事にして、　私たちは調査を終了した。　次の日。　昨日とは一転して、朝っぱらから空気が暖かい。　重いコートを脱いで、僕の腕の中においでと、　春の陽気が私を誘う。　よし、待ってな。　コートの代わりに体に掛かっている布団を勢い良くめくり、　『寒い寒い』と体を縮める配偶者を放置し、　テレビのある部屋のドアを開けた。　　んなっ………！　私は愕然とした。　部屋の壁に、カーテンに、　見た事もない小さな虫がいる。　飛び交うわけでもなく、ただ張り付いている、　　直径５ミリにも満たない数匹の虫を、　とりあえず皆殺しにして、　気を取り直す為に、私はタバコに火を付けた。　小さな虫には、羽根があった。　蛾のミニバージョンといった感じだ。　と、いう事は…間違いなく奴らは飛ぶ。　確かに、我が家は率先して掃除する者がいないので、　他所様に比べたら『汚い』方だ。　だが、巷で流行っているゴミ屋敷ではない。　　あの、水……。　あれが関係しているのか？　ゴクリと喉が鳴った。　　この家は長男・次男の友人の溜まり場であり、　私と配偶者の友人の溜まり場でもある。　しかも生まれたての赤子がいる。　　『あの家、虫が湧いてるんですって…。』　『おお、嫌だ。もう行かない方がいいわね。』　『ええ、ええ。誰が行くもんですか。』　緊急事態だ！　こうして、我が家と名もなき小さな虫たちとの、　壮絶なる戦いの火蓋は切って落とされたのである。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく　　　

  2005年11月29日

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• 警察沙汰…！

  　数年前、地元近くの小さな町で、　強盗殺人事件が起こった。　老人１名が犠牲となった。　犯人の有力な手掛かりもなく、　不審者も目撃されていない。　そんなある日の事である。　『警察の者ですが。』(本当にこう言う。)　チャイムと同時に聞こえる声。　配偶者は驚いて玄関のドアを開けた。　『いや～、寒いですよね～。』　軽い世間話を始める警官。　そんな事を言いたくてここに来たんじゃないのは、　誰だって理解できるほど不自然な会話。　『あの…何かあったんですか？』　恐る恐る警官に問う配偶者。　　『あのね～、お宅の車２台あるよね～。』　『あ、１台はこないだ廃車して…今１台です。』　『何で廃車したの？』　『何でって…。』　『誰がその車に乗ってたの？』　『…え…？』　私だ。　先に記述した、強盗殺人事件に進展が見られた。　不審な車の目撃証言があったそうだ。　私の乗っていた車と全く同じ。　しかも、その車は廃車している。　配偶者の胸がざわついた。　そういえば最近、金回りがいい……。　警官はフッと笑って、こう言った。　『犯人じゃないのは分かってますから。』　そして警官は帰って行った。　そんなやり取りも知らず眠っていた私は、　その後配偶者に起こされて、滅茶苦茶不機嫌だった。　　そんな私を不審な目で見る配偶者。　『何。』　『今、警察が来た。』　『だから、何。』　『やってないよね？』　話の内容が分からない　＋　寝起きで不機嫌　＝　大爆発　私の車を廃車にしたのは、荒く扱っていた為の寿命であり、　私が金回りが良かったのはギャンブルだ。　人を殺めてまで、金は欲しくない。　人を陥れて金を手にするのは嫌いじゃないが。　ホホホ……嘘、嘘……でも多分、ほんと。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

  2005年11月25日

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• 舌にアレをちょうだい。

  　忘れられない、味がある。　数年前のある日の事。　私と配偶者は、とある一軒の中華料理屋に入った。　腹の空いていた私たちは、　絶対に完食は無理であろう、並々ならぬ量の料理をオーダーした。　一品目の料理が早速運ばれてきて、　私たちは競うように割り箸を割り、　一口目を口に入れた。　不味い………。　互いに顔を見合わせる。　『不味い…よね？』　『うん…不味い…。』　でも腹が減っては戦は出来ぬ。戦う予定もないが。　たまたまだ…たまたま不味かったんだ…と、自分に言い聞かせ、　私たちは少しずつ端を進めた。　そして、また料理が運ばれてくる。　今度こそ……。　はやる気持ちを抑えつつ、２品目に箸を伸ばした。　う～ん…不味い。　コレはどうした事か…。　誰かの陰謀だろうか？　　辺りを見廻してみる。　私たちの他にも、数組の客がいる。　楽しそうに話しながら食べている人もいる。　私たちの舌がどうにかなってしまったのか…？　次から次に運ばれてくる料理たち。　見た目はどれも美味しそうなのに…　　全部、不味い。　お残しは許さない私に…、殆どの料理を残してしまうという、　不覚の事態が発生してしまったのだ。　配偶者もぐったりしている。　　私たちは、店員に皿を下げてもらった。　こんな屈辱は初めてだ。　すると店員は、食後茶を持ってきた。　かわいらしい茶器が、テーブルに置かれ、　そのあまりにイイ匂いにつられ、配偶者がソレを口に含んだ。　『う……美味い……。』　ホントかぁ…？　信じられないが、あまりに幸せな顔をするので、　私も恐る恐る一口飲んでみた。　『あ……あぁ…美味い…。』　あの料理たちは、この茶の旨味を引き立たせる為の、　かませ犬だったのだ。　きっと、そうだ。　今も忘れないそのお茶を求めて、　私はさ迷い続けている。　行き慣れたスーパーの中を。　そりゃ、ないわな。　　　

  2005年11月14日

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• 『…トキメキ隊☆』～セクシー隊員の場合～

  　トキメキ隊、第２弾だ。　数年前のある日、『心の底からトキメキ隊』に、　新たな入部希望者が現れた。とてもキレイな女性だ。　　私はすぐに入隊を許可し、彼女に　『セクシー』の称号を与えた。　文字通り、お色気むんむんだ。　腰まである金髪のエレガンス★パーマネント、　好きな柄は豹柄、　タイトなファッションを見事に着こなし、　おまけにバストはＨカップだ。　セクシー隊員は、当時の私の仕事先の先輩なのだが、　常々トキメキ隊に入隊したいと思っていたそうだ。　『隊長、質問があるのですが。』　おっ、やる気満々だね。　『何だね、セクシー隊員。』　『ときめくなら、何人でもいいのでしょうか。』　『体が持つ限りはいいだろう。だがね、セクシー隊員。』　『はい。』　『トキメキ期限の過ぎた相手のアフター・ケアは、　決して怠ってはならぬぞ。』　『はい。重々承知しております。』　『ならば、行け。そして思う存分トキメクのだ！』　　(ちょっと、嘘。)　その日から、セクシー隊員は精力的に活動を始めた。　よくありがちな、　『月曜は○○クンで～、火曜は☆☆クンで～』　と、数人の彼氏を曜日によって振り分けている体験談があるが、　(今はあるのか知らないが、昔『明星』のおまけにあった小冊子参照。　　イヤラシイ体験談には胸をときめかせたものだった。)　セクシー隊員は、見事にソレをやってのけた。　日曜以外、つまり６人のトキメキ対象を、　うまく操っていた。　『多分、７人目は無理。』　その言葉に嘘はなかった。　６人の中で、１人が対象外になるとソレを削除し、　また新たな対象者をローテーションの中に追加する。　その度に、セクシー隊員は私にネオ彼氏を紹介してくれた。　セクシー隊員の素晴らしいところは、　胸のでかさ　その許容範囲の広さである。　私は残念ながらノーサンキューね！みたいなタイプでも、　慈しみ、愛している。　６人の対象者に、分け隔てない愛を注いでいる。　今もセクシー隊員は、そのローテーションを崩していない。　久しぶりに見ると、メンバー総入れ替えの時もある。　　ひとつ断っておくが、　『心の底からトキメキ隊』は、何も複数の相手にときめけ！　というものではない。　　私はひとりしか無理だ。(多分。いや、２人…？)　だが、何故かこのような隊員が集まってくるのだ。　え？最低？　人生ヒトそれぞれだ。　ケチをつける前に、己を磨くがよろしい。　　　　　　　

  2005年11月10日

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• つぶつぶいちご

  　もう６年も前の話だ。　その日は朝から様子がおかしかった。　体の芯が冷えていて、何をしても温まりそうにない。　(また、熱が出るのかな……。)　幼少の頃より発熱に悩まされていた私は、ほんの少しの体調の変化で　大体どの程度の熱が出るのか、安易に予測出来るようになっていた。　まあ、いつもの事だ。　熱が出始めれば解熱剤を飲もう。　最悪、アレだ。座薬だ。　アレをケツの穴にぶっ込むしかない。　会社は忙しい時期を迎えていた。休むわけにはいかない。　私は解熱剤と座薬をポケットに入れて、家を出た。　朝礼が終わり、皆時間が惜しいとばかりに己のデスクに滑り込む。　デスクの上の山ほどある書類にため息を吐きながら、　私はソレをただひたすら減らしていく作業に没頭していた。　ゾクッ　寒気が、体中の皮膚を下から上へと走る。　(あー、マズイなあ…。座薬入れた方がいいかも。)　私の隣の席に座る上司…角田おじちゃんが、　『顔色悪いよ？』と言ってきた。　『ん…何か寒い。』　『俺の上着着るか？』　『いや、いいですよ。大丈夫。』　心配顔の角田おじちゃんの申し出を断り、　とりあえずこの書類を片付けてから対策を考えようと、　私は更に仕事に没頭した。　しばらくすると、また角田おじちゃんが話し掛けてきた。　『ちょ…顔…』　顔？　私の顔を見る角田おじちゃんは、少し怯えていた。　正面の席の事務のお姉さんに、手鏡を借りて顔を見てみた。　赤い発疹がある。　朝、顔を洗った時にはなかった。　数えるほどの発疹だが、何か不気味な主張をしているように見えた。　『角田おじちゃん、コーヒーに毒盛った？』　『盛るかい、アホ。』　発疹は気になるところだが、とにかくこの書類だけは…。　私は角田おじちゃんが見守る中、書類を次々片付けていった。　１時間ほど過ぎた頃だろうか。　　コピーを取る為立ち上がった瞬間、足元がぐらつき、　私はその場にしゃがみ込んでしまった。　『大丈夫か！』　角田おじちゃんが私を持ち上げ、椅子に座らせた。　体が熱を帯びているのが分かる。　　しかも尋常ではない熱だ。　『お前…鏡見てみ。』　事務のお姉さんも、私の顔を見て驚いている。　おずおずと差し出された鏡に、もう一度自身を映し出してみた。　発疹が増えている。　私は愕然とした。　ソレと同時に力が抜け、デスクに突っ伏した。　よく見ると、手の甲にも無数の赤い発疹が見られた。　『とりあえず、上着着とけ。』　角田おじちゃんが自分の上着を脱ぎ始めた。　『いらん。』　折角の好意を何故、断るのだ。　悲しそうな角田おじちゃんを尻目に、　私はさっさと早退届を書いて課長に提出し、　フラフラになりながら自分で車を運転して総合病院に向かった。　病名は、水疱瘡。　私がこうなる２週間前、次男が水疱瘡になった。　だが、母から　　『あんたは子供の時やったよ。』　　と聞かされていたし、その数ヶ月前に長男が水疱瘡になった時は、　家族の誰も移らなかったので、　まさか自分がなるとは…と、まさに寝耳に水であった。　医者が言うには、水疱瘡の免疫は一生ではないという事だ。　幼い頃に水疱瘡になっても、症状が軽ければ２０年ぐらいで、　免疫が切れると言うのだ。　結局私は４０度の熱と、発疹による強烈な痒みに、　１週間翻弄された。　発疹が潰れると痕になるので、顔だけは死守した。　ようやく容態も回復し、久しぶりに会社に出てみると、　角田おじちゃんが笑顔で出迎えてくれた。　それから何ヶ月か過ぎ、師走の時期が来た。　　元来、薄着の私を心配して、角田おじちゃんが話し掛けてきた。　　『上着着る？』　『いらん。』　角田おじちゃんは悲しい顔で、小さく　『またブツブツになれっ。』　と、呟いていた。　　　　　　

  2005年11月03日

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• 三椏式失恋痛手解消法

  　ポテトチップスがひとつ入った袋を持ち上げた瞬間、　ぎっくり腰になった事のある、三椏です。　グッド・アフタヌ～ン。　今日は失恋の痛手を早急に癒す方法を、お教えしよう。　★☆★……　三椏式失恋痛手解消法　……★☆★　　　　　　１．　失恋した即日もしくは次の日、　　　　　　　友人等、親しい間柄のバンドのライブに行く。　　　　２．　打ち上げに参加する。　　　　３．　拉致される。　★☆★…………o(>< )o ｏ( >

  2005年10月30日

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• 退屈な夜をぶっ飛ばせ！

  　　まだ私が、紙切れ１枚の誓約を果たす前の出来事である。　　当時の恋人であった現配偶者が、その友人たちと　深夜のドライブに出掛けていた時の事。　途中コンビニで飲み物等を購入した際、　仲間内の中で配偶者だけが缶コーヒーを買った。　配偶者は発売されて以来のジョージアファンである。　勿論、手に持っていたのはジョージアだ。　当ても無くドライブを続けている内に、　話す事も無くなったのか、一瞬の静寂が訪れた。　もう帰ろうか……　　そんな退屈な空気を打破すべく、　配偶者は持っていた缶を皆から見えぬように隠し、　こんな言葉を発した。　『ジョージア・ク～イズ！！！』　色めき立つ皆の衆。　クイズ…と言われれば、答えたくなるのが世の常だ。(多分)　『ジョージアの原材料名を答えなさい。』　『分かるか、あほ！』　そんなブーイングが飛び交う中、　運転席の友人がボソリとつぶやいた。　『コーヒー、砂糖、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳……』　……な、何ィィィ？？？　運転席の友人は、原材料名を見事に答えた上に、　続けて缶に記載されている内容量、賞味期限も答え、　『開缶前によく振ってください。』　という、最後の注意書きまで、パーフェクトに回答したのだ。　盛り上がる車内。　皆、何で知ってるのかと運転席の友人に質問攻めだ。　『いつか、クイズで出題されたらいけないから覚えた。』　しねえよ。　配偶者は、そんな昔を思い出し、　『上には上がいるね。』　　と、言っていた。

  2005年10月26日

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• もにもにオッサン事件

  　２夜連続で変態の話をお送りします。　真ん中の妹が留学を間近に控えた高校１年の頃の話である。　　妹は、アイスクリーム屋でアルバイトをしていた。　このアイスクリーム屋、私の所属するバンドのドラムの彼女も　バイトをしている。　夕暮れになると客足も途絶える為、私たちメンバーの　絶好の溜まり場と化していた。　妹がバイトを終える時間から私のバイトがあるので、　(年齢を偽り水商売をしていた。勿論、母には内緒だ。)　ちょうどいい暇つぶしになる。　再々、ドラムの彼女と妹に　『帰れ。』　と怒られながらも、私たちはいそいそと店へ出向いていた。　そんなある日。　　その日は朝から雨が降っていて、夕方にようやく晴れ間が見えてきた。　私は原因不明の熱が出て、何日も学校を休んでいた。　これで静かになるとばかりに、妹は晴れやかな笑顔でバイトに向かった。　　数時間が過ぎ、母が眠っていた私を起こしに来た。　　『あの子、まだ帰って来ないんだけど……。』　時計を見ると、午後１１時だった。　『店は８時までよね？何か聞いとる？』　母の問い掛けに、熱でボウッとする頭を何とか稼動させてみる。　　『いや…、何も聞いてない。』　『そう…。店に電話しても出んし…。』　妹は、門限を破った事が無い。　遅くなる時は必ず家に連絡を入れる。　何の連絡も無いって事は、彼女の身に何かがあったという事なのだ。　一瞬にして、母と私の脳裏には、　最も妹の身に降り掛かって欲しくない出来事が浮かんだ。　　『け、警察に電話……。』　その時である。　ピ～ンポ～ン……　　妹だ！！　雪だるまのような体型の母が、見た事も無い瞬発力で、　玄関へと走っていった。　私も、ふらつきながら玄関へ急いだ。　『警察署の者ですが…。』　うわあ…、ヤバイんじゃないの…。　ドアを開けると、これまた雪だるまのような体型の警察官と、　その横には　泥まみれで衣服が破れ、ボロボロになった妹がいた。　おおお、犯されたのか？　母と私の悪い予感が的中してしまったのか……。　妹の変わり果てた姿に、母の顔色は見る見る青ざめていった。　　　だが。　意外にも、妹の表情はアルバイトに出掛けた時と同様に、　晴れ晴れとしている。　警察官が事の一部始終を教えてくれた。　夜の８時過ぎ。　妹はアルバイトを終え、自転車に乗って帰宅すべく、　夜道を走っていた。　すると暗がりの向こうから、１台の自転車が近付いてきた。　この時、妹の頭の中は夕ごはんの事で一杯だったので、　別段、この人物に対して不信を抱いたりしていなかった。　　しかし、事件は起こった。　向こうから来た自転車とすれ違う瞬間、　　もにっ　『！！！！！！！！！！！！！！』　自転車に乗ったオッサンが、妹の胸を揉んだのだ。　そうして、何事も無かったかのように自転車は走り去ろうとした。　だが、妹は…　ここで泣き寝入りをするような性格ではなかった。　『待て、こるああああぁぁぁぁぁぁ！！！』　妹は勢いよく自転車を反転させ、オッサンを追い掛けた。　怖くなったオッサンはスピードを上げた。　逃すか、逃すものですか！　妹は自転車の後ろに挿していた傘を持ち、　猛スピードで回るオッサンの自転車の車輪にエイヤとばかりに突き刺した。　自転車ごとオッサンは、その年老いた体で頑張った甲斐も虚しく、　水溜りの張られた地面へと、転げ落ちた。　妹は自分の自転車を投げ捨て、　どこか負傷したのか、苦しむオッサンに馬乗りになり(マウントポジション)　物音を聞きつけた付近の住民や警察官が止めに入るまで、　アイスクリーム屋で鍛えられた腕力でもって、　オッサンを殴り続けたという。　後にその警察官から聞いた話だが、　妹の乳を揉んだオッサンは、全治１ヶ月の重傷だったそうだ。　真面目さ故に痴漢行為が許せなかったのだろう。　　　そして一番下の妹はこんな大事件の最中、　当時人気だったニューキッズ・オン・ザ・ブロックの　スクラップブックの作成に夢中だった。　その日以来、私は妹が留学するまで　恐ろしくて、アイスクリーム屋に行っていない。　　　　　　　　　

  2005年10月14日

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• そんなもの、脱いじゃえよ。

  　どうも～。　ＳＥＸは『１回集中型』の三椏です～。　”エッチ”と言うより、”ＳＥＸ”の響きが大好きな三椏で～す。　　　さて……と。　　私が２０歳の頃の話である。　恋人と同棲を始めて数ヶ月が過ぎたある日の事。　私は深夜まで仕事があり、その後同僚たちと飲みに出掛けた。　かなり酔いが回り、自宅に着いたのはもう明け方に近かった。　恋人は勿論、夢の中であろう……。　　そっとドアを開けて、忍び足で中へ入った。　　狭い２畳ほどのスペース。右手に申し訳程度のキッチンがあり、　左手にはユニットバスがある。　そして、正面に部屋に入る為のもう一つのドアがある。　慎重に、慎重にドアを開ける。　　　恋人は上のロフトで眠っているのであろうが、　万が一私の立てた物音で起こしてしまったら、　朝から仕事もあるのに可哀相だ。　私はついにドアを開き切った。　ＮＯ～！！！！！！！！！！！　ななななな、何てこと………！　恋人は、ソファで眠っていた。　スヤスヤと、気持ちよさそうに、　素っ裸で、私の下着を身に纏い…。　酔いは一気に覚め、私は力なくその場にしゃがみ込んだ。　何のつもりだ………。　そのまま恋人の起床時間まで放置しておいたら、　案の定、恋人は風邪を引いた。　何故そのような格好でいるのかという事には、一切触れずに　私の下着を履いたままの恋人は、　　『ジュンちゃんの所為だ。』　と、私を責めた。　　なんとも腑に落ちない１件である。　　時は過ぎ、　　その恋人は…　紆余曲折を経て、私の配偶者となった。　日々欠かさず飽きる事無く、全裸で鏡の前でポージングをしている。　私も、している。　　

  2005年10月12日

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• 薬物中毒体験記～後編～

  　　宿酔いの為、激しい頭痛に襲われた三椏ジュン。　アスピリンと栄養ドリンクを一緒に飲んだ所為で薬物中毒を起こし、　入院する事となった。　　　　　　　…………………　☆　★　☆　……………………　　入院初日の夜は、食事も取れずそのままドロドロに溶けたみたいに　眠った。　そして翌日。私はとんでもない所に収容されていた事に気付いた。　６人部屋のその病室の、６人中５人がお年寄りであった。　朝は５時頃から活動開始。トイレに行く者、ブツブツ独り言を言う者、　個々のテレビはイヤホンを付けなければならないのに、　入院歴は私より長い筈なのに、まだイヤホンに悪戦苦闘している者。　そしてフルボリュームで朝のニュースが流れ、看護師が慌てて飛んできて、　お説教が始まる。　夜は９時の消灯時間前に全員が眠りにつく。　カーテンで仕切られているので、小さなライトを付けて本を読んだり、　テレビを見たりしてもいいのだが、ちょっとでも長く起きていると、　『勉強はほどほどにしなさいよ。』　と、たしなめられる。　(ちょうど、エロ番組を見ていた時だったので、死ぬほど焦った。)　私の状態はというと、ジンマシンは引いたものの、　体中風船みたいにパンパンに腫れ上がっていた。　通常のむくみとは明らかに違うその腫れの所為か体がだるく食欲も出ず、　日がな一日ベッドに横たわっているしかなかった。　　内緒で持ち込んだ携帯には、友達から連絡が欲しいとのメールが入っていたが、　この顔を見られたくないので、親以外誰にも連絡しなかった。　そして何日かすると、５人の老人の内の１人の退院が決まったという、　おめでたいニュースが飛び込んできた。　『よかったですね。』　私が退院の決まった老人と話していると、　『あ～あ、いいよねえ。』　嫉妬と羨望の入り混じった、皮肉が飛んできた。　６人中４人の老人が、固まってこちらを睨んでいる。　正確には、退院の決まった老人を。　それまで、仲良かった…よな。　見舞いの高級菓子(２９８円以上のもの)をみんなで分け合い、　楽しい談笑、時には励まし合い…　全部、嘘だったんだね…　病室内は、一瞬にして負のエネルギーが充満し、　あちこちのベッドから、声が漏れる。　『退院、いつになることやら。』　『死にたい…』　不協和音を奏でていた。　そうして、みんなと２度と仲良くなれないまま、その老人は退院し、　入れ替わりで新たな老人が入ってきた。　２１０号室へようこそ！！　途端に、アメリカのホームドラマのようなウェルカムな雰囲気。　人って何だろうと、考えさせられた夜だった。　その後、私の退院が決まったが、老人同士ではない為か、　妬みを受ける事はなかった。　退院後もしばらくは腫れが引かず、薬物の取り扱いを痛感した。　１年後、疲れていた私はもう大丈夫だろうと、　市販されている中で最もライトな栄養ドリンクを飲んでみた。　しばらくすると、強烈な痒みが体を襲った。　見慣れた発疹が腕を取り巻き始めた。　ぎゃー！ジンマシン…！　　そして再び、私は車を走らせ病院へ向かった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

  2005年09月26日

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• 薬物中毒体験記～前編～

  　５～６年前のことである。　その日は朝から激しい頭痛に襲われていた。　というのも、忘れてしまいたい事でもあったのか、　連日連夜、深酒が続いた為なのである。　当時私は薬局に勤務しており、生意気にも店長をやっていた。　辛うじて出勤したものの、とても仕事のできる状況ではなく、　責任も何も放り投げて、初老の薬剤師に全てを任し、　バックルームで休む事にした。　とにかくこの頭の痛みだけは何とかしなければ…。　私はアスピリンと栄養ドリンクを一緒に飲み、痛みが消えるのを　ただひたすら待っていた。　３０分ほど経った頃だろうか…　急に眼が痒くなり、呼吸が乱れ始めた。　　ゴクリ…　恐る恐る、鏡に自分の顔を映してみた。　眼が真っ赤に充血し、その周りは赤い発疹がまばらに出来ていた。　ヤバイ！アナフィラシキーだか何だかだ！　薬局勤務のこの身には、かなり恥ずかしい！　私は急いで初老の薬剤師に見てもらった。　｢わ…薬疹だよ、救急車呼ぼう！｣　いつも冷静な薬剤師が焦っている。　事の重大さに改めて気付かされた。　だが、総合病院はすぐそこである。わざわざ救急車を呼ぶもんでもない。　私は薬剤師の言う事も聞かず、自分で車を走らせ(すぐそこですよね…)　病院の受付へと滑り込んだ。　私を見た受付のお姉ちゃんの顔が、引きつっている。　嫌な予感…私は手鏡で、そっと自分を映してみた。　イ、イヤアァァァ！わたくしの顔が土偶だあぁぁぁぁ！　袖から伸びた腕は、ジンマシンが密集して真っ赤に腫れ上がり、　息はますます苦しくなり、　意識が遠のいた。　遠くで走り回る音がする。　血圧が上がらないとか言ってる。　自分の事なのか、よく分からない。　また、意識が遠くなった。　ふ…と。　頬に冷たい感触がして、私は眼を開けた。　そこには私の配偶者が、私を見下ろしながら頬を撫でている姿があった。　あぁ、何か悪かったな。心配かけたな…。　そう思う私の耳に、信じられない声が轟いた。　『ギャハハハハハハハハハハハ！』　満面の笑みである。　我が耳を疑う私に、更に笑い声が響いた。　『ＤＯ・ＧＵ・Ｕ・！ＤＯ・ＧＵ・Ｕ！』　　なんと、ラップ調である。　『お～い、は・に・ま・る～！』　バカかお前。はに丸は埴輪じゃ。　こうして私は、アナフィラシキー？アナフィラスキー？　…あー、まあ、アレだ。薬物中毒と診断され、入院する羽目になったのだ。　初老の薬剤師には『情けない…』と嘆かれ、　病院の先生にはアスピリンと栄養ドリンクという無謀な掛け合わせに　『あんた、次は死ぬよ。』と、脅された。　その夜、入院に至った経緯を母に電話で報告すると、　『家に置いてないだろうね。』　と、警察沙汰になる事を懸念していた。　…何のクスリだと思ってんだＹＯ。　しかしその日は一日中、アスピリンのおかげで　頭だけは冴えていた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

  2005年09月25日

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• 美しき薔薇と百合

  何年かに１回のサイクルで、私は同性から熱烈な愛を注がれる。　　　私は同性愛に関しては否定などしていない。　友達にもいるし、私がこれから好きになる人によっては、同性愛になる。　問題なのは、過熱し過ぎる…という点だ。　もちろん、同性愛者の人たちみんながそうだというんじゃない。友達なんかはサバサバしている。　私を好きだと言うマニアな方々が、である。　元来、私は過度な愛情を受けるのがとても嫌いで、それが原因で別れてしまった事も多々ある。　携帯の普及していない時代なんか最悪だった。大体電話に出なかっただの、親に出掛けてると言われただの、どうでもええじゃん。　うんこじゃって言っても信用しない場合、私はどうすりゃええの？　とにかく、信用されていないんだろう。　されない理由もあったりなかったりだがな。　それはいいとして(いいのか？)、　私を好きになる同姓は、さらに輪をかけた束縛ぶりでもって、私を縛る。　一番ひどかったのは、私に関わる全ての者を憎み、罵倒し、私を洗脳しようとした人である。　親さえもだ。　元々、友達で、とても大好きな友達で、でもこのままだと他の大好きな人たちが酷く傷付いてしまう。　何より私がもう駄目だった。　その人を嫌いになってしまった。　そして決別したのだ。　何人の同姓に好かれたかは記載はしないが、大概が後味の悪い別れになる。　同姓だろうが異性だろうが、　いきなり嫉妬丸出ししたり、　束縛したり、　ディープなキスされたり、　寝こみを襲われたり、　盗撮、盗聴、付けまわし、　そんな事されたら嫌いになるってば。　自分が愛してないとダメです。　好みでいえば男性でも女性でも、私はかわいいのがいいな。　ゆうこりん見て「かわいい～」だし、　堂本光一君見て「かわいい～」だし。　あ、私バイセクシャルかもしれん。　そんなバンドいたね、昔。何してんだろうな。　　

  2005年09月10日

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• 殺意は突然に

  　こんな嵐の夜に、身の毛もよだつ話はいかが？　去年のちょうど今ぐらいの話だ。　真夜中、私は尿意をもよおしベッドから身体を起こした。　ちょっと飲み過ぎていたのと、眠い所為もあり、　ふらふらとした足取りでトイレに向かった。　明かりも付けず、真っ暗な中を手探りで進む。　トイレのすぐ前まで来た時、　ヒヤリ…　右足が冷たい何かを踏んだ。　水だと思った。　家族の誰かが手を洗った時にでもこぼしたんだろう…と、　そう……思いたかった。　急に眩しくなるのは厭なので、　トイレの電気を付けた。　そこには…　●キブリ　幸い潰してはいなかった。　奴は一瞬の警戒の後、逃げようと身を構えた。　(わー！わー！わー！わー！)←心の叫び。この間無言である。　奴が一歩足を踏み出した瞬間、　　パ―――ン！！！　床に転がってたスリッパで、思いっきり殺してやった。　次の日、○ルサンよりも効くというホウ酸団子を買いに走る私がいた。　でも、残ってんだ…あの感触。今も右足の裏に。　ちょっと…気持ち良かったんだ。

  2005年09月05日

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