|
カテゴリ:美術
またぞろコロナV感染が拡大し始めたところですが、亭主共は(金曜日を年休にして1日早めた)この週末、甲府方面へと例によって「ワイナリー巡り+温泉」の一泊旅行を敢行。今回は参加者全員が「飲める」ようにと電車でJR勝沼ぶどう郷駅に集合し、目的地の間は電車と徒歩(+タクシー)で移動することに。ワイナリー巡りの後は石和(いさわ)温泉に一泊、翌日甲府まで足を伸ばし、山梨県立美術館でお題の絵を眺めて来ました。
勝沼ぶどう郷駅に到着するや、まずはそのホームからの素晴らしい眺めに圧倒されることしばし。晴天にも恵まれ、秋の青空の下で紅葉した葡萄畑が見渡す限りに広がる景色が何とも印象的です。もちろん当地は言わずと知れた日本ワイン発祥の地の一つ。メルシャン、マンズ、サントリーなどの大手醸造メーカー直営から個人経営のものまで数十ものワイナリーが点在し、訪問先はよりどりみどりです。とはいえ、主に徒歩での移動のため、駅に近いということでシャトー勝沼、メルシャン勝沼ワイナリー、そしてグレイスワインのブランド名で知られる中央葡萄酒のワイナリーを訪問。それぞれでテイスティングをさせてもらい、日本ワインの多様さを大いに満喫。 なかでも圧巻だったのがシャトー・メルシャン、勝沼ワイナリーです。そのルーツは日本のワイン作りのパイオニアの一人と数えられる宮崎光太郎が開いた「大黒葡萄酒」に発するとのことで、ワイナリーの一角は当時の醸造施設「宮光園」が資料館としてほぼそっくり保存され、「日本遺産」(文化庁)、「近代化産業遺産」(経産省)として登録されています。宮光園の設備を眺めていると、茨城県牛久市にあるシャトー・カミヤのそれが思い出されましたが、それもそのはず、牛久シャトーの創業者である神谷伝兵衛も宮崎と同時代人。ほぼ時を同じくして大規模なワイン生産を始めたことで知られています。資料館ではこの2つのワイナリーの歴史を詳細に記したパンフレットを手にし、ページをめくりながら140年にわたる先駆者達の労苦に思いを馳せました。 さて、ワインのテイスティングは楽しいものの、味覚の鮮度も含め1日3箇所ぐらいが限界です。3箇所目を退散したところで温泉宿へ。山梨県の温泉はあまり多くはありませんが、石和温泉は勝沼にほど近く、昔から知られた温泉郷です。温泉街そのものが駅に近いので車なしのアクセスも便利。ただし、調べてみると2週間前には既にどこも土日は満杯。予定を1日早めたことで何とか「源泉掛け流し」の宿を確保しました。泉質は単純アルカリ泉で、自家源泉の豊富な湯量を堪能。 翌日の予定は白紙だったものの、ネットで調べてみると電車で2駅行った甲府に県立美術館があることを知り、ミレーの「種まく人」で有名な美術館だったことを思い出しました。「ついで」の目的地としてはうってつけ、ということで早速訪問することに。(甲府駅からはバスで15分ほどとまあまあの立地です。)同館では、ちょうどこの日から「米倉壽仁展」を開催しており、ついでの「ついで」でこちらも見参。 ところで、亭主と近い世代の読者は、かれこれ半世紀ほど前(1970年代)に、山梨県が公費でお題の絵を購入したというニュースが日本中を駆け巡り、これをめぐって賛否両論が巻き起こったことを覚えておられる方もあるかと思います。この一件で山梨県立美術館は「種まく人」の美術館として有名になりましたが、亭主の関心もそこで途絶えていました。ところが今回の訪問で、同美術館はその後もフランス・バルビゾン派を中心に絵画を増やし、今ではミレーの作品だけでも十数点を保有する充実したコレクションを持つまでになっていたことを知り大いに感心。しかも、半世紀来名にし負う名画「種まく人」の実物と対面する機会を得て、我ながらその奇遇に大いに感動することに。 そして何よりも驚いたのは、「種まく人」の画面が何とも暗いことです。描かれた時間帯はまさに日没まもないたそかれ時、画面中央右側にある残光が逆光となって種をまく農夫を浮かび上がらせる効果はミレー独特の視点であることがわかります。(このような画面、実物でなければ決してその表情を知ることはできまいと感じられます。) ミレーの絵を見ていると、絵画鑑賞もまさに一期一会、と思い知らされます。歴史的文脈から切り離された「絶対音楽」というものが幻想に過ぎないのと同じく、この世に「絶対絵画」などというものもない、という思いがひしひしと湧いて来ました。 なお、「米倉壽仁展」についてはまた別の機会に。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
November 21, 2022 07:39:34 AM
コメント(0) | コメントを書く |