<番外>獣の奏者 外伝 刹那
獣の奏者(外伝)価格:1,575円(税込、送料別) 100万部突破の人気シリーズ「外伝」登場 エリンとイアルの同棲時代、師エサルの若き日の苦い恋、息子ジェシのあどけない一瞬……。 本編では明かされなかった空白の11年間にはこんな時が流れていた! ずっと心の中にあったエリンとイアル、エサルの人生ーー彼女らが人として生きてきた日々を書き残したいという思いに突き動かされて書いた物語集です。「刹那」はイアルの語り、「秘め事」はエサルの語りという、私にとっては珍しい書き方を試みました。楽しんでいただければ幸いです。上橋菜穂子 エリンとイアルの恋愛&結婚に焦点をあてた 「刹那」、エサル師の過去と人生に焦点をあてた「秘め事」、エリンの息子ジェシの幼い時代のひとこま「はじめての…」が収録されていました。「刹那」2人とも、とことん真面目、とことん誠実なんでしょうね、生きる姿勢が真摯です。 二人ともふつうなら背負いきれない重いものをずっとずっと抱えてきて、だからこそそれに巻き込みたくない、まして生まれてくる子にそんなに重い枷を負わせられないとなかなか距離を縮められなくて・・・。本編ではこの部分が語られていなかったので、2巻と3巻の間の11年で、2人がどうやってお互いの距離を縮めて家族になっていったのかとおもいましたが、やっぱり不器用に(そして事情をしる数少ない周囲をかなりやきもきさせながら)、でもある部分では本能的に結ばれていたんですねぇ。その後を知っているので、読んでいて限りなく切なかったですが、短くても幸せな時間を読めてよかったです。本編では獣医師として生きるという面からスポットがあたっていましたが、今回は私人としてのエリンにスポットが当たった気がします。読者のかたにはティーンの方も多くいらっしゃるようですが、今回の作品は内容的に大人向けかなと感じました。意識的にも、無意識にも、大小の選択をたくさんしながら人は生きているわけですが、この作品では人生の大きな選択の場面を描き出されていて、ひょっとしたら、それぞれの人生を振り返って、過去の選択を省みられている方もいらっしゃるかもしれません。でもこれから大きな選択をする上で、(これほど過酷な過去を持っている人も現実には珍しいかもしれませんが)ひとつのアンテナや指針のようなものにする方もいるかも。物語とはいえ、決断の重みを感じました。いろんな人生を追体験できるのが読書のよいところだと、こういう作品に出会うたびに思います。(本編がなければこの作品もないわけですが、本編は哀しすぎる部分もあるので)こちらの作品のほうが読み返しやすいかも。