プルシェンコの出場資格剥奪が確定
ロイターの記事によるとプルシェンコの競技会への出場資格剥奪が確定したようです。国際スケート連盟(ISU)は24日、・・・エフゲニー・プルシェンコ(ロシア)について、競技会への出場資格はく奪処分が確定したと発表した。プルシェンコは3月と4月に無許可でアイスショーに出演していた。この処分は6月に決まり、プルシェンコは決定から3週間以内に異議申し立てを行う権利を有していたが、申し立てがなかったため処分が確定したという。プルシェンコは2006年トリノ五輪で金メダルを獲得。2002年ソルトレークシティ五輪では銀メダルに輝いていた。・・・2014年に地元ロシアのソチで開催される冬季五輪に出場したいとの意欲を見せていた。(記事より抜粋)異議申し立てをしなかったのはしても決定は覆らないと思ったからでしょう。どうやらこの一件、彼の本当の敵はISUではなく他ならぬロシアだったようです。「無許可でアイスショーに出演した」とISUに報告したのはロシアスケ連だったというのですから。一度は許可が出ていたものを直前にロシアスケ連が無効にして再度許可申請を求めた、しかし再申請をするには日にちが残されていなかったしキャンセルも出来なかったから無許可の状態のままショーに出ざるをえなかったとのこと。詳しい顛末はコメント欄の一番上に書いてあります。プルシェンコはロシアのフィギュアスケート選手がいかに過酷な状況に置かれているか、国からの補助金が選手に全く出ない現状を公の場で明らかにしていました。今回の件はロシアスケ連が、もっと言えばロシアの国家そのものがプルシェンコに対して報復措置をとったと見るのが妥当でしょう。ISUも無許可でアイスショーに出演したぐらいで競技会の出場資格を剥奪するのはやりすぎの感が否めません。しかし競技としてのフィギュアの進化を止める方向に動いているISUにとってそれに対する異議申し立てをするプルシェンコが煙たい存在だったのは間違いないでしょう。まして腐りきったISUにしてみれば彼ほどの実績と影響力のある選手がそのような言動をしている状況では「あんな奴いなくなればいいのに」と考えても不思議はありません。ISUにとっても不都合な存在を抹殺するまたとないチャンス到来と小躍りしたに違いありません。プルシェンコはメドベージェフ大統領に直接「ロシアスケ連の使途不明金が多すぎる。選手には強化費用などが全くまわってこない。調査して欲しい」という趣旨の直訴をオリンピックのメダル獲得祝勝会の席で行ったようです。これがロシア国家の逆鱗に触れたのでしょうね。「スポーツと政治は別」などというきれいごとがまことしやかにスローガンとして掲げられるのが常ですが現実はそんな甘いものじゃない。むしろスポーツは政治そのものであることが少なくありません。これは私が身をもって経験したことがあるのではっきりと断言できます。とある国際大会でスペイン語のボランティアとして参加していた私はある競技のスペインの選手たちと交流する機会がありました。彼らは競技においては世界でも1,2を争うほど強くその大会でも優勝しました。しかし不幸にも彼らは優勝を取り消された上その後の日程の参加資格まで剥奪された。表彰式でスペイン国旗ではなくバスク州旗を掲揚するように主張しそれが認められなかったことで表彰式をボイコットしたからです。その競技はスペインの中でもバスク自治州という一部の地域でのみメジャーな競技です。バスクは独立運動が盛んで「自分たちはスペイン人ではなくバスク人だ」という機運の高い所。だから彼らは国旗掲揚の場面でスペイン国旗を拒否しバスク州旗の掲揚を求めたのです。その大会は以前は表彰式での国旗掲揚はなかったのですがそれではどうも華がないということでちょうど彼らが優勝した会から掲揚が始まりました。そんなことをしたらナショナリズムに利用されるとわからなかったはずはないのに大会をメジャーにしたいがために導入したのです。愚かなことです。私は選手たちと直接交流したから彼らがとても紳士的で陽気で人間としての魅力にあふれた人たちであったことを知っています。日本人が抱く「スペイン人はラテン系だからいい加減」とは程遠い勤勉な気質の人たちでした。バスク州旗の掲揚を求めたことは確かにスポーツの政治利用でしょう。しかし彼らの優勝を取り消し参加資格まで剥奪したのもまた政治的行為とは言えないでしょうか。サッカーを見ていれば「これってスポーツの名を借りた代理戦争だよなあ」と思うことはよくあるのですがこの時ほど「スポーツとは政治そのもの」と思い知らされたことはありません。話が相当それてしまいましたが今回のプルシェンコの件を聞いてこのことを思い出さずにはいられませんでした。それにしても彼がこれまでロシアという国にどれほど貢献してきたか政府もロシアスケ連も忘れているようですね。ロシアの若手が一向に育たないのも選手の置かれている状況と無縁ではないはず。実際ソチでは若手を出すよりプルシェンコを出す方がはるかにメダルの確率が高いと言わざるを得ないような状況です。ソ連が崩壊して以降ロシアのスポーツは本当に弱くなりました。もういっそプルシェンコには国籍変更してもらった方がいいのではとすら思ってしまいますが愛国心の強い彼はそんなことは考えもしないでしょう。旧ソ連システムの黄金の遺産の動画をいくつか貼っておきます。例によってコメントが邪魔な時は右下のボタンをクリックして消してご覧ください。 アイスダンスのグリシュク&プラトフ。リレハンメル、長野の2大会連続五輪金メダリスト。こんなステップ踏めるペアもういない。 長野の金メダリスト、クーリック。氷上の王子様ですね。しかもイーグルから3Aって。 ソルトレイクの金メダリスト、ヤグディン。「ウィンター」「仮面の男」が有名ですが私はこの「革命」が一番好きです。 プルシェンコ、伝説の芸術点オール6.0「ニジンスキー」。この頃が彼の全盛期と思いますが残念なのは永遠のライバルヤクディンが故障で引退していたこと。本人にとってもファンにとっても不幸でした。