製品と原料の一部から検出されたとする「未知の成分」については、会社側は「構造までは見えてきた」としつつ、成分の特定には至っていないと説明した。
ところが、会見途中、同社が28日に厚生労働省に対し、「未知の成分」は青カビから発生する「プベルル酸」の可能性が高いと報告していたことが、厚労省の発表で明らかになった。会見ではこの点に質問が集中。同社は「プベルル酸が直接的に腎障害、腎疾患を引き起こしているという仮説もまだ立てていない。毒性のメカニズムすら検証ができていない状態で、混乱させたくなかった」と弁明に追われている。
以上朝日新聞デジタルから引用ーーーーーーーーーーーー
私もこのプベルル酸と言うのは初めて聞いたので検索してみたが、ほとんど引っかかるのは今日のニュースばかり。構造式がわかったが、生物学的特性についての記述はほぼなかった。50年前に手に入れた化学大辞典にも記載はあったが、物理化学的特性のみの記述だった。炭素7つが環状になり、メチル基や水酸基がいくつかついているので、若干の水溶性はあるかも知れないが、あまり溶けなさそうな感じである。着色料として使うなら水溶部分だけとっているから、量的にも少ないしあまり影響はないだろうと考える。しかし菌体を摂取するときには否応なく体内に入るので、何らかの影響があるかも知れない。毒性のデータ待ちというところか。
いち技術屋としては、この朝日新聞の記述はやや酷だと思った。報道としては隠したような解釈をするかも知れないが、生物に対する影響が曖昧なままで物質名を発表する方がよほど問題である。高速液クロからマススペクトルを得て成分の特定をするのはさほど難しいとは思われないし、仮にも製薬会社のことだ。物質名が出たらそれが一人歩きしてしまうのは目に見えている。むしろ厚生労働省の発表の方が軽率と感じる。
プベルル酸は青カビが産生するものだが、これが仮に汚染によるものだとすれば、微生物を扱う工場としてはかなり恥ずかしいことだ。「麹」は作っているものにとっては結構汚い。埃のような胞子が飛んでいるから、呼吸して痰として吐き出すくらいのもので、鼻水も同じだが、真っ黄である。あまり「麹は体に良さそう」などと思わない方がいいし、黄麹菌だといってもアスペルギルス・フラバスは、猛毒かつ発がん性もあるアフラトキシンを作る。有用なものが多いアスペルギルス属だが、油断してはいけない。
今回の「紅麹」は、モナスカス属なので黄麹菌と混同するようなネーミングにも問題があるかも知れない。