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テーマ:徒然日記(23332)
カテゴリ:言葉について
訳 相模の草原の燃えさかる火の中で、私の身を案じて何度も呼ばれたあなたでした。 この歌も有名なので、ご存知の方は多いと思います。 倭建命(やまとたけるのみこと)の后、弟橘媛命(おとたちばなひめのみこと)の辞世の歌です。 書きながら、この健気さに泣けてきます 訳だけを読むと、まるっきり、のろけでしかないのです。 でも、背景を知ると、この歌のものすごさに心が動かされます。 このとき弟橘媛命は、夫君である、倭健命を助けるため、海に身をなげようとしているときなのです。 東国平定のために二人が相模にいたとき、敵に囲まれて火を放たれてしまいます。 その火に囲まれたとき、倭建命は自分の身よりも妻の身を案じて叫んでいたのでしょう。 このとき、危機を脱するのに草を薙ぎ払います。そのときに使った刀の名前が「草薙の剣」となるわけです。 さらに東に向かう途中の走水に、二人が船でいたとき、海が大荒れに荒れてきました。 その嵐を女性が船に乗っているから海神が怒っていると騒がれます。 このとき、夫君の使命を全うさせるために、弟橘媛命は自ら海に身をなげるのです。 そのときの辞世です。 私が犠牲になりますから、あなたの使命を全うしてくださいとも、 犠牲になる私を忘れないでくださいとも歌わずに、 夫君が自分にしてくれたことをひたすら喜び、感謝して亡くなるわけです。 恩着せがましさのかけらもありません。 また、駆け引きも全くありません。 これだけ、無私で透明で潔い歌はなかなかお目にかかれないなぁと思うのです。 激甘な内容なのにすがすがしくかっこいい。 それでいて、女性らしくかわいらしい感性に満ち満ちている。 ひきつけられずにはいられない歌です。 この後、命が「吾が妻よ」と三度泣き叫んだため、 そのあたりが「あずま」となりました。 お絵描きは身を投げる弟橘媛命です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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