カテゴリ:医療・看護
忘れないうちに,先週の日曜日にあった,第2回日本保健医療福祉連携教育学会学術集会(←長い)の話を書いておこうと思う。
酒井郁子先生の会長講演では,これまでのIPE(inter professional education :異職種間連携教育)の試みがわかりやすく語られていてとても興味深かった。 また次の僕の教育講演と有機的につながるようにご配慮いただけていたのがよく伝わってきて,とてもありがたかったです。 僕の演題は「異職種間の信念対立克服のための考え方―構造構成主義の視座」。 異職種間連携を行う際に,構造構成主義の視座から有効な方法概念や考え方を提示してきた。 関心相関性による自他の関心の相対化,関心の妥当性自体を問うこと,コトバとは何かを原理的に理解した上で,コトバのズレを解消していく方法などをお話させていただいた。 その後,医学書院の書籍販売コーナーでは『看護研究で迷わないための超入門講座――研究以前のモンダイ』のサイン会?をしたところ,何十人も買ってくれて嬉しかった。 午後は,酒井先生のご要請もあり,学生のIPEの教材として,チーム医療における対立や葛藤に焦点化したビデオ教材とその活用に関する分科会に出ることにした。 非常によくできたビデオだった。その教材を使った指導方法についてはいくつか改善点があるように思ったので,教材をより有効活用できるように,対立を解消するために,構造構成主義の考え方をどのように使えばよいのかをお話してきた。 それは次のような形だ。 医療現場で起きた信念対立をどうやって解消すればよいと思うかを学生に考えさせるのは非常に有効なのだが,単に「考えてみましょう」では,おそらく「柔軟に考えなきゃいけないと思った」とか「あの先生は頭が硬いと思う」といった意見が出るに留まると思う。 異職種間連携の教育をするためには,異職種間連携に実質的に有効な「方法」「技術」が必要となる。信念対立を解消するための視点となる「方法」がなければ,その課題を通して「解消法」を身につけることはできないためだ。 そこでステップ1として,「関心相関性」によって,双方の隠された前提となっている関心はどこにあるのかを洞察することができることを具体的に示してみせた。 ステップ2としては,「本質観取」よって「医療とは何か」を考えたり,関心相関的観点によって「医療の共通目的とは何か」を考える。僕はそこでは「医療の目的とは患者の心身の健康維持,疾患の回復によってQOLを向上させること」としておいた。 ステップ3としては,それに照らして双方の「関心の妥当性それ自体を問う」(これは教育学に構造構成主義を導入する論文において苫野一徳さんが提示した理路だ)ことになる。 この3ステップによって双方の前提となっており明示化されていない関心(信念)と,共通目的を可視化した上で,その目的(本質)に照らして双方の関心の妥当性を問う,ということだ。 こうした方法的視点をもっていれば,DVDで示されていたチーム医療における対立を解消するための糸口を把握することができるし,それによって問題を先に進めることが可能になるだろう。 またそうした演習を通して「方法」を身につけることができたならば,他のケースにも応用していくことができる。 そんな話をさせていただいた。 この学会やこうしたテーマの研究は今後さらに発展していくのは間違いないと思う。僕にとってもとても実りある一日でした。 講演後,京極さんとも異職種間連携についていろいろ話したところ,最近もさらに有効な教育方法を開発されていたので,関心のある方はぜひ京極さんにアクセスされることをお勧めします(京極さんは一事講演などを引き受けないようにしていたようだが,最近はまた引き受けるようにしているみたいで,あちこちで講演をされているようです)。 京極さんのブログ↓ p.s.参考文献を挙げておきます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1)京極 真:構造構成的医療論の構想-次世代医療の原理.構造構成主義研究1, 104-127,2007 09/10/13 23:03 2)京極 真:構造構成的医療論(SCHC)とその実践-構造構成主義で未来の医療はこう変わる.看護学雑誌71(8),698-704,2007 09/10/13 23:03 3)京極 真:職種の「間」の壁の超え方-「立場の違いを超えた連携」とはどういうことか.助産雑誌62(1),20-24,2008 09/10/13 23:08 4)京極 真:「よい医療」とは何か-構造構成主義的見解.看護学雑誌73(4),78-83,2009 09/10/13 23:13 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009/10/16 09:12:36 PM
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