淀風庵の酒詩歌日記

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• 森繁追悼特集「花のれん」と「夫婦善哉」

  　九条のシネ・ヌーヴォで森繁久弥追悼映画特集の『花のれん』（昭和３３年）と『夫婦善哉』（昭和３０年）を連チャンで観た。 　原作は、吉本興業を創業した女主人（せい）を描いた前者が山崎豊子、後者が織田作之助と大阪の作家によるもの。 　豊田四郎監督、八住利雄脚本で、森繁と淡島千景が主演。森繁のダメ男ぶりもさることながら、淡島がこれほど全身ぶっつけて勝気な役を熱演をするとは思っていなかった。豊田監督の厳しい演技指導で開眼したのかなぁ。 　脇役には浪花千栄子、乙羽信子、山茶花究、飯田蝶子、アチャコなどの芸達者が彩る。これほど大阪弁が炸裂すると痛快だ。寄席の番頭ガマ口役のアチャコは好演で準主役だ。　今の監督や役者では所作など真似しようと考えても難しいだろう。昔の時代の雑然とした諸々の小道具の配置などの考証も難しかろう。 　 　両映画とも舞台が戦前の大阪は船場や難波であり、法善寺と横丁が象徴的に描かれる。お参りテーマパークのような法善寺のオープンセットには驚く。「花のれん」の寄席の花月や金沢亭はこの界隈にあったが、これらはすべて空襲で焼かれて、不動尊だけが焼け残っている姿が最後の場面であった。 　以下の日本映画劇場というホームページにあった豊田への評価のように、見知らぬ登場者や群像の扱いは、ぐんぐん観る者を引っ張り込んでゆく。 　「豊田監督の上手いところは、主人公のみに焦点を当てる事はせず、周囲の人物もしっかりと描いているところだ。群像劇が多いのも、それ故の事であろう。例えば、スクリーン全体をひとつの絵として捉えた場合、正面に主人公を配置しつつ横からスーッと登場した第三者が、いきなり主人公の演技をかっさらってしまう。まるで、寄せ木細工のように人物が入れ替わるものだから、目が離せない」 　「花のれん」の空襲時の逃げ惑う群集のすごさ、これは圧巻。終戦記念の夏に相応しい映画でもあった。 　 　帰りしなに懐かしい松島界隈を歩き、九条商店街を西に突き抜けて安治川の地下道を初めて通って西九条駅から梅田へ。この松島にも吉本の経営する寄席が戦前はあった。 　ところで、一昨夜ＮＨＫで戦中吉本慰問団の「あらわし隊」と漫才師ミスワカナのことを放送していたが、これは昭和１３年のことでワカナも吉本興業に所属していたのだ。 写真：「花のれん」より（息子の出征壮行場面）

  2010年08月12日

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• 大阪歴史博物館の鴻池コレクション展へ

  　大阪ＮＨＫと並び建つ歴史博物館へ。 　今回は２度目だが、８世紀の難波宮の大極殿を再現したフロア、ここでは多くの発掘物が目を引く。写真のような食器の形が興味を引く。 　中近世のフロアは信長に挑んだ石山本願寺の模型もあったが、天下の台所として栄えた江戸時代の水都物語。 　そして大正、昭和の大大阪時代の商業や生活ぶりのフロアに辿り着く。観光客や転入者だけでなく、大阪人は歴史を認識するためには一度は当館を観ておきたいものだ。 　それにしても、大阪文学歴史館もぜひ造ってほしいもんだ。今の知事では理解ないだろうが。 　特別展の「華やぎの装い・鴻池コレクション展」では豪華な小袖が圧巻。伊丹で酒造業を興して成功し、大阪で金融業を始めて豪商と成った鴻池家（三和銀行の前身）だけに、紋入りの調度品、食器類や化粧道具などは高尚で、めったに目にすることはできない代物だ。 　帰りにマクドでアイスコーヒー、阪神百貨店の地下食堂街でおろし豚かつ定食を食べ、地元のスーパーでお盆の供物用に生の瓢箪（１２０円）ほか食品を買う、貧乏を辞さんぶり、笑いすごそう、あした元気にな～れ。

  2010年08月08日

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• あっけない淀川花火大会

  　淀川花火に出かけたのは２回目。１時間ほど西中島近くの淀川堤防で場所をとり待ったが、その間、蟻の行列のように人が次々堤防から河川敷へと歩いてゆく、恐ろしいほどの群集？ 明石事故があったので警備員は多いが。　屋台がぎっしり目の前だけで５０軒ほど、簡易トイレも２０基ほど見える。 　 　８時からの打上げ花火を見た。打上げ場所は一駅離れた十三なので、遠すぎて迫力に欠けた。以前、神戸港で見た間近な花火の迫力とは違う。帰りが込まないうちにと、２０分ほど見て退散。 　近くにある会社の１８階からこの淀川花火大会を眺めたこともあるが、下のほうでポンポンと上がっており、これも味気なく、ビールを飲んでるうちにいつの間にか終わっていたという感じ。

  2010年08月08日

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• 織田作、八住＆五所『蛍火』

   昨日の第３回オダサクＣＩＮＥＭＡさろんは、織田作原作（『蛍』）、八住利雄脚本、五所平之助監督の『蛍火』が取り上げられた。この放映から４年後、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』の新聞連載が始るから、『蛍火』はなんらかの影響があった？　昨今、ＮＨＫ『龍馬伝』の人気が坂本龍馬ブームを起こしているが、昭和３３年上映の『蛍火』の舞台は龍馬が襲われ逃げた伏見の寺田屋である。 　３０石舟の発着地であるこの旅籠に嫁ぎ姑や夫（伴淳三郎）に苦労しながら、養女のお良（若尾文子）を育て、ついには龍馬（森美樹）を巡って恋敵ともなるお登勢（淡島千景）。 　 　この龍馬の件は原作には描かれていないが、そこが脚本の八住の感性、構想力だろうか、女心と母心の確執、揺れや陰翳の濃い作品に仕立て上げられているようだ。　また、儚い蛍が、タイトルのごとく一筋のシンボルとなってあえかな光を放つが、これは織田作を陰で支えてくれ、執筆中（昭和１９年）には病床にあった一枝夫人への想いを見立てたものであろう。 　お良が、宿泊中の龍馬の執筆の脇で墨を磨って差し出す場面があるが、これは八住や五所が織田作と一枝のことをよく認識した上での演出か。 　なお、龍馬役の森は調べてみると、数々の時代劇に出演しているが、『蛍火』の２年後に２６歳でガス中毒死しているから残念なことだ。 　ところで大正１３年生まれの淡島千景による『蛍火』の舞台が、８月２１日に堺市の北野田フェスティバルで演じられる。ぜひお会いしたものである。 写真：坂本龍馬 

  2010年07月18日

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• 祇園祭宵々山へ

  　夏の疫病退散を願う祇園祭の山鉾巡行を２日後に控え、各町内に留め置かれた山鉾、そして飾り物の展示を昼間に見て回った。 　時おり激しく振ったり雷鳴がとどろいたりもあったが、お陰でそんなに日照りが強くなく、年々歩行は遅くなるとはいえ、テクテク歩いた。 　夕方には山鉾の提灯にも明かりが点き、仕事を終えての人出が増える中、月鉾では祇園囃子を奏でており祭の情緒がさらに高まった。 　祇園祭といえば、川端康成の『古都』を思い浮かべる。織物問屋と北山杉の樵家とに別れて引き取られ育った双子の姉妹が、祇園祭の宵山最中に再会して姉妹であることを認め合う物語である。 　ストーリー全体のの盛り上がりには欠けるが、夜の祇園囃子や提灯が二人の運命の出会いの陰翳になっている点は印象的であった。 　 　京といえば、龍馬伝の影響で観光客が増えている。先日、東山三条あたりで、お龍と祝言を挙げた場所をたまたま歩いていて発見した。ここには観光客はあまり来ていないように思われる。 　さて、明後日土曜日には「第３回オダサクＣＩＮＥＭＡさろん」で、織田作原作で五所平之助監督がメガホン取り、淡島千景の寺田屋お登勢が、伴淳の伊助や若尾文子のおりょうらと共演する『蛍火』（昭和３３年、松竹配給）を取り上げる。 　場所は天神橋６丁目近くのブックカフェ「ワイルドバンチ」さんで１時から。飛び入り歓迎、ドリンク・資料代１，２００円。

  2010年07月15日

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• 旧同僚によるドキュメンタリー映画鑑賞

  　パソコンのモニターが写らなくなり、中古をソフマップで買って、再開できた。新しいマウスを取り付けてしばらくして照明が途絶えたもので、モニターの寿命だったんだろうか。 　今年は身体やら愛器やらなんだかんだと、トラブルが起こるもんだ。 　昨日は、元広告会社の同部門の後輩女性が監督・撮影・編集・ナレーションした『空とコムローイ』なるタイの北方に住む山岳民族を対象としたドキュメンタリー映画を京都シネマで観た。 　初日で監督のティーチインもあったが、生き生きした彼女をまぶしく見た。今週金曜日まで毎朝１０時半からの１回上映。 　７年間単身で通って８０時間の１６ｍｍフィルムから編集したという気の遠くなるような労作である。カソリック教会のイタリア人神父が山地の子どもたちを預かって教育を施すことの意義を問うものであり、ハンディカメラで随時・臨機に撮影しているので情景がよく自然に収められている。 　都会の便利な環境で学習競争を強いられて育つ子どもや養育する親から見れば、信じられない「協育」の世界といえよう。 　費用を切り詰めて忍耐強く作品を完成させた三浦淳子監督そして京都に移転してきた元同僚のI君とともに、鴨川の見下ろせる先斗町の出雲やでおばんざい昼食、そして円山公園内の長楽館で喫茶して、１０数年ぶりの交歓。 　彼女は５０歳、まだまだ道半ばとはいえ、自分のやりたいことを実現してるだけに、苦労も吹っ飛んだ爽やかさであった。 　パンフの編集ほかＰＲ活動には広告代理店時代に学んだことや人脈が生かされているようでグーだ。パリの日本文化会館でも上映されている。 　http://www.tristellofilms.com/scom.html

  2010年06月27日

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• ルノワール展と少女趣味

  　画家の知人からチケットも貰った。ときには高尚な芸術の鑑賞も良いもんだ。 　大阪中之島に出来た国立国際美術館（自然光を取り入れた地下１～３階からなる）にて８５点が展示されていた。 　肉感的な浴女の絵よりも、「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)」「団扇を持つ少女」のよな少女や、「アンリオ夫人」のような貴婦人の肖像画は優しいタッチで気品があり、時を忘れて癒されるナ。そよ風のメヌエットのような感触。髪の毛も生き生き重ねて描かれており触れたくなるほど。 　それと、タテ長の「ブージヴァルのダンス」（ボストン美術館蔵）の清純な色気はグー。男性としなやかに踊っている１８歳のモデルの女性は後にユトリロ（画家）の母となるのだから、ルノワールも目の付け所が違う？ 　これらの絵葉書３枚を買ったが、喫茶ルノアールは知っていても芸術論の分からない親父、少女趣味になってしまった。 http://www.renoir2010.com/work.html

  2010年06月23日

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• 富田林時代の織田作と石上露子

  　昨日はオダサク倶楽部の富田林歩く読書会。昭和２０年頃に織田作が住んだ姉・竹中タツ宅があったところに近い近鉄線、富田林西口に２５名が集合。 　織田作が懇意だった元煙草屋の小路宅、今は駐車場になっている竹中宅跡、そして浄土真宗・興正寺別院を中心とした寺内町にある旧杉山家(重要文化財）で織田作の遺品（万年筆、硯・毛筆と「土曜夫人」草稿３枚）と杉山家当主となった明星歌人石上露子の手紙や琴ほか遺品を観覧して、富田林駅近くの本町公園に建立された織田作と露子の石碑に至る３時間ほどの町歩きであった。 　ガイドはオダサク倶楽部の井村主宰、地元文化研究会「千鳥会」の北沢紀味子代表、そして当町づくりリーダーの有川さんであった。みなさんの解説は細部に亘り、異論、反論交えた討議も沸騰するほど思い入れや熱気に溢れたものであった。 　雨には遭わずにすみ、最後はカフェばー「ナロード」で食事し盃を交わした。 　美人としても名高かった石上露子の存在を知ったのが収穫であったが、昭和３４年まで生きておられたとは。 　日露戦争時における彼女の反戦歌は与謝野晶子より早く詠われている。 　　みいくさにこよひ誰が死ぬさびしみと髪ふく風の行方見まもる　 　なお、杉山家は南河内を代表する蔵元であったが、同じ寺内町の石田家の銘酒「千里春」も今はない。吉田松陰が滞在した仲村家もあった。　

  2010年05月23日

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• 葵祭りやら祇園恋しやら

  ３回目の葵祭り、今回は北大路から加茂川沿いの道に入ったところで、見物。順路は御所、下鴨神社、上賀茂神社の８ｋｍだが、見物地点は下鴨と上賀茂の中間にあたる。皐月の爽やかな風のなか時代絵巻は通り過ぎていった。　祇園裏道を歩いていたら、有楽神社という茶屋に挟まれた小さな祠を発見。水を撒いていた方が自治会長で、ここは織田信長の弟、有楽斉の屋敷があったところであると教えてくれた。　　彼は祇園の国防婦人達に見送られて、伏見砲兵廠からルソンに送られたが、奇跡的に帰還でき、８７歳になる現在まで、この神社を守護されてきたそうだ。　祇園乙部は歌人・吉井勇が愛した街で「かにかくに 祇園はこひし寝(ぬ)るときも 枕のしたを水のながるる」の歌碑がある。　また、近くの井筒屋は高杉晋作が芸妓と遊び飲み詠った茶屋であり、辞世の句「おもしろき こともなき世を おもしろく 住みなすものは こころなりけり」に彼の奔走した人生が偲ばれる。　酒色宜為楽　　人生五十年 　置心高妙処　　天地皆茫然 （こちらも晋作）　夜は先斗町の「いずもや」で夜景を眺めながら、モンドセレクションで「最高金賞」を受賞した月桂冠の鳳麟(ほうりん) 純米大吟醸」を一献（グラス７５０円）、めったにないこと。

  2010年05月15日

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• 大阪の生んだ宇崎純一の画展へ

  　関西の夢二といわれた宇崎純一（スミカズ）の展覧会＆トークイベントが大阪市立中央図書館で行なわれた。明治、大正、昭和と活躍したが、いまは忘れられている大阪出身の画家を見直そうと有志が立ち上げた企画展である。　後援しているオダサク倶楽部メンバーは別府からの参加者を含めて大挙して参加。それでなくても、トークフォーラムのほうだけで２００人ほどの聴衆で盛大。大正のモダンな風俗や風景が観察者の目で書きとめられている点が夢二とは違う、そしてタッチは軽やかである、とは詩人の瀧克則氏の評。画家の瀬島氏は風俗の浮世絵師であるとまで語っておられた。　とくに純一の絵葉書シリーズや「絵画の手本」（イラスト集のような）は人気があったし、女性や子どもなどの雑誌の表紙を飾っていた。　純一は明治２２年兵庫県小野市生まれ、親が大阪に移り、難波の波屋書房の長男として育つ。この書房は現在も引き継がれているが、戦前には藤沢桓夫らの同人誌『辻馬車』をこの書房（弟の祥二が経営）が刊行援助しており、大阪の作家の育成に寄与している。昭和２９年逝去。本日は息子さんも来られて挨拶をされていた。

  2010年05月05日

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• 大阪あそ歩「大坂海軍塾跡」へ

  　５月４日　今日は１０５コースある「大坂あそ歩」というまち歩きのなかの「勝海舟・西郷隆盛の邂逅・大坂海軍塾」に参加。２時間以上かけて北浜の五代友厚像がある証券取引所から緒形洪庵の適塾を経て北御堂前まで歩く。 　現在も建物が残っているのは適塾ぐらいで、海軍塾にしても、新撰組に借財を強要された鴻池本宅など豪商邸や月照生誕地にしてもビルが建っていて面影はない。勝が私塾として開いた大坂海軍塾は海軍士官の養成を意図したもので塾生には龍馬ほか各藩の俊英がいた。勝と西郷が初めて会見（１８６４年）した場所でもある。まもなく、神戸海軍操練所の準備がなされこの私塾も神戸の勝邸に移される。 　ところで、適塾に学んだ福沢諭吉が大阪にも慶応義塾を設立していたことを知った。その跡地に「独立自学」という碑が造られていた。また、塾生には手塚治虫の曽祖父にあたる手塚良仙がいて、諭吉とのいざこざもあったというエピソードも聞いた。 　 　２人のインストラクターはよく歴史を調べており、話は熱意が溢れていた。昨年は磯さんを誘って織田作之助の上町コースを歩いたが、このような企画者や説明者の努力があって、大阪にいながら知らなかった歴史を学びながら歩くという春・秋のコース参加者は確実に増えているようだ。今日の参加者２０名のうち３０代以下は４,５名で中高年が多いのが特徴である。 　写真：適塾の横で、側に洪庵像がある。

  2010年05月04日

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• 志賀直哉旧宅と新薬師寺へ

  　平城京の賑わいを尻目に、奈良の新薬師寺で久しぶりに国宝の薬師如来と十二神将にお懐かしく再会。２０年ほど前、奈良国宝展だったかのおりに磯城さんに案内してもらって以来である。 　それから、新薬師寺の手前にあった志賀直哉旧宅には初めて訪問。ここには昭和４年～１３年の９年間直哉は住み、『暗夜行路』後編を仕上げている。　この春日大社の近くの風光明媚な地に自らの設計で建てたもので、戦後は進駐軍の高官が住むなどして元の形が損なわれていたが、昨年５月に本格的な調査にもとづく復元工事が終了し、建築当初の邸宅が蘇ったのだ。 　１３０坪ほどの建坪で、台所なんかは流し台や冷蔵庫ほか合理的に作られており、ハイカラなサンルームや広い洋風食堂、北向き書斎（夏場使用洋室）に南向き書斎（冬場使用和室）、茶室もあるなど、子ども６人に夫婦、女中が住んでいたとはいえ、部屋数は多い。庭も広く、庭木の種類が多い。子供用プールもある。 　 　文壇のボス的存在だった志賀の邸には多くの作家が集っており、小林多喜二も思想を離れて歓待している。多喜二が拷問死するのはその２年後の昭和８年２月だったが、志賀の日記には「実に不愉快、一度きり会わぬが自分は小林よりよき印象をうけ好きなり、アンタンたる気持ちになる」と認められている。 　夕方には、映画「殯の森」で主役を演じた宇多さん経営の古書喫茶「ちちろ」にて喫茶し話す。間もなく封切られる２つの映画に脇役で出演されてる。（河瀬直美監督「狛」と中国人の監督による作品ときく） 　写真：志賀直哉旧宅のサンルーム

  2010年05月01日

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• 連休の見所イベント

  　連休およびその前後で興味がある催し。 　古書、音楽、絵画、歴史、酒…、とても全部回りきれない。 　・四天王寺春の大古本祭り（４月２７日～５月２日） 　・京都市勧業館、春の古書大即売会（５月１日～５日） 　・たにまち（大阪）古書即売会（５月７日～９日） 　・高槻ジャズストリート（５月４,５日） 　・大正ロマンの画家・宇崎純一展（大阪市立図書館にて４月２３日～５月５日、５日にフォーラム「宇崎純一と大阪ミナミ」） 　・長谷川等伯展（京都国立博物館にて～５月９日） 　・平城遷都１３００年祭 　・大阪あそ歩「大坂海軍塾跡をゆく」（船場界隈、５月４日） 　・上方日本酒ワールド（大阪天満宮にて５月９日）

  2010年04月27日

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• 通り抜けサヨナラダケガ人生

  　造幣局の通り抜け、土曜と好天が重なってすごい人出だった。ただ、ここ４年１週間で５０～８０万人台の観桜者だったのに対して、今年は天候不順で少なめだろう。 　 　５６０ｍの通りに関山、普賢象、松月、紅手毬、芝山、楊貴妃など約１２０品種、約３５０本を数えるが、これらは大半が遅咲きの八重桜で、満開時の美しさはたとえようもなく花盛りとはこのこと。 　今年も逢えた楊貴妃、気品があって愛しく癒されるなあ。 　（楊貴妃：昔、奈良地方にあった桜で、つぼみは濃紅色であるが、開花時には淡紅色となり、花色も優れ豊満なので、中国の楊貴妃を連想して世人が名付けた。花弁数は、２０枚程） 　明日はオダサク倶楽部主催のＣＩＮＥＭＡさろんで織田作の盟友・川島雄三監督の「貸間あり」を取り上げるが、そのラストシーンで、桂小金治に丘の上から町に向かって立ち小便をさせながら、言わせた言葉とは。 　 そう、唐の詩人・于武陵の漢詩「勧酒」の一節“人生足別離”を井伏鱒二が意訳した「サヨナラダケガ人生ダ」。監督本人が好んだ言葉であると同時に川島雄三監督の人生を見事に表現した言葉にもなっているとはイムイムさんの解説。 　織田作も花を咲かせて、あっという間に通り抜けていった、サヨナラダケが人生であったが、戦前にこの造幣局の通り抜けに行ってるだろうか。

  2010年04月17日

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• ハナ高きがゆえに尊からず御室桜

  　遅咲きの御室桜が咲き誇る京の仁和寺へ。気温は１０度ほどだったが、分厚いジャンパー着て出かけた。 　ソメイヨシノだとどうしても花を見上げることになるが、御室桜は丈が低く根から枝が伸びているので、目線が自然と落ち着き和むのだ。 白っぽい花びらもふっくら馥郁としているので気持ちもほっくりする。 　嵐山電車の駅には、こんな看板も掲出されていた。「桜とお多福ははなが低いのが好かれる―御室桜　満開」 　腰痛も和らいでいる、このまま快復とゆきたい。

  2010年04月15日

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• 大阪城の桜桃

  　木曜日、晴天につきビジネスパーク近くの大阪城堀端へ。 　ここには桜並木と桃園があり、桃桜ともに花盛りであった。　平日なのでゆったりと散策できるのが最高。 　まだ、京阪では遅桜を楽しめる。１４日からの大阪造幣局通り抜けと、京・仁和寺の御室桜も週半ばに満開の予想だ。あとは天候と腰痛の具合次第で満喫できるかどうかだ。写真：クリスタルタワーを背景に桜を撮影

  2010年04月11日

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• 今東光和尚の「お吟さま」

  　宗教と文学のからみでいえば、昭和５年３３歳で出家、天台宗の僧侶となり、最後は大阪・河内の寺院の住職に収まった今東光が想い起こされる。 　 　学生時代は豊岡中学や関西学院中学部を追放される不良ぶりで、中学中退の学歴しかないが、贋学生として東大で学ぶなどの経歴をもつ。 　川端の支援をえて、昭和４年に「文芸時代」の同人となり、横光、中河与一、片岡鉄兵、稲垣足穂などとともに新感覚派作家として名を連ねる。 　 　比叡山の僧侶時代も宗教、歴史や文学の研鑽を積み「僧兵」「伝教大師記」など、仏教や僧侶物などの小説を上梓している。 　そして、昭和３２年、直木賞受賞の「お吟さま」で文壇に再デビューしたのだ。その後は「悪名」「こつまなんきん」「河内カルメン」など映画化もなされる、河内を中心とした大衆小説を次々発表。 　さて、読んだのは「お吟さま」「弱法師」のみだが、前者は千利休の養女の高山右近への愛を貫く、時の権力者、秀吉の命に背く物語だ。堺が舞台で、語り部は吟の側に仕えた河内女である。お吟のような一途で気品のある女性が東光の永遠の理想だったようだ。 　「弱法師」は残酷極まりない源平の乱に関わったばかりに、人生を翻弄されて、最後は隠棲する学識僧の翩々を描いた歴史小説である。 　それにつけても、今東光についての研究者の存在は寡聞で知らないが、熱血で生くさい異端作家なりに研究論があってよさそうだが、弟子の瀬戸内寂聴もそこまでは至っていないようだ。　

  2010年03月28日

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• オダサクＣＩＮＥＭＡさろん

  オダサク倶楽部主催「オダサクＣＩＮＥＭＡさろん」ご案内 　第一回　シネマトークライブ『貸間あり』 　　 織田作と日本軽佻派を名乗った盟友の川島雄三監督の傑作「貸間あり」（1959年・宝塚映画）についてのトークスペシャルです。スピーカーは中野護（別府オダサク倶楽部）と井村身恒（オダサク倶楽部主宰）です。 みんなでワイワイがやがや語り合いましょう。 監督：川島雄三（織田作の原作・脚本の「還って来た男」や「わが町」の監督でもある） 原作：井伏鱒二　脚本：藤本義一　 出演：フランキー堺、淡島千景、浪花千栄子、桂小金治、乙羽信子、小沢昭一 　　　　　　　　2010年４月18日（日） 　　　　　　　 １時30分～４時 (１時開場 ) 　　　　　　会場：ワイルドバンチ（ブックカフェ） 　　　　　　１ドリンク付　会員1,000円／一般1,200円 　　　　　　（４時～交流会・別途料金）1,000円程度 主催 オダサク倶楽部 　　大阪府堺市東区西野９１－６　井村方 　T/F 072-236-6465 協力 ワイルドバンチ 　　大阪市北区長柄中１－４－７公ビル１Ｆ　T/F 06-4800-4900 　　阪急／地下鉄の天神橋筋6丁目駅２番出口

  2010年03月27日

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• 夫婦善哉７０年

  　私のことではありません。金婚式も迎えてませんから。 　織田作之助が結婚後居を構えた堺市北野田の２階建長屋で『夫婦善哉』を書いて、昭和１５年４月に同人誌「海風」に発表してから７０年、その記事が産経夕刊に掲載された。 　オダサク倶楽部のイムイムさんは「大阪の魅力を再発見し、姉夫婦の愛憎劇を描こうと考えた」としたものと語っている。 　『夫婦善哉』に出てくる、法善寺横丁のぜんざい店「夫婦善哉」や関東煮「正弁丹吾亭」、そして「たこ梅」、カレーライス「自由軒」は行ったことがあるが、他に登場する店はどんどんなくなっているから、寂しくなる。 　さて、ぜんざいに「善哉」の文字を充てたのは、この店が最初だったのだろうか、またいつ頃からなのか。久しぶりに食べにゆくとしようか。 　なお、街歩き推進の「おおさかあそ歩」では５月２日に「夫婦善哉」読み歩き＆食べ歩き？まち遊びの企画を発表している。 http://www.osaka-asobo.jp/machiasobi/10sp_106.html

  2010年03月06日

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• 野坂昭如文壇の酒場交友記

  　野坂昭如『文壇』（古本２５０円）には１９６０年代の文壇酒場華やかな頃の作家や編集者の交流が独特の助詞抜きの長たらしい文体で書きなぐられているが、泉鏡花文学賞受賞作品（２００２年）である。　『エロ事師』（大阪舞台）でのデビュー前から『火垂るの墓』（神戸・西宮舞台）での直木賞受賞後に至るまでに交流した大御所、中堅、新進の作家の名前が銀座や新宿の酒場を舞台に次々、さらに繰り返し登場し、当時のメモが残されていたからこそ記せたのであろう。　特に、同年輩や年下の作家を強く意識しており、その才能や生態を飲みつつ観察している。「自虐と自負と韜晦をこきまぜ」というのは編集者として野坂に関わってきた阿部達二氏の言葉である。　プレイボーイを装い、ピエロ的な振る舞いも演じた野坂、にとくに好意的に交わってくれたのが丸谷才一、吉行淳之介、三島由紀夫であったことが分かるが、ちょっと不思議な混じり合いの感もする。　『火垂るの墓』の妹の歳や養父母の生死は事実とは変えているところに良心の呵責があったことが伺えるが、この作品が流行作家としての地歩をもたらしたのだ。　さて、本書で野坂は織田作については４箇所でちらっと触れているに過ぎないが、注目される記述としては、「昭和２１年、御堂筋を歩く織田作之助、中学４年だったが、織田作は、流行作家よりさらに大阪の英雄だった」「太宰、安吾は世間の認める作品にそっぽを向き、織田作に耽溺」とある。やはり、織田作の影響力はかなりのものだ。　今日、古本で入手した『ひょうごの近・現代文学名作を歩く』にも『おおさか名作の泉』同様に野坂の『火垂るの墓』が紹介されている。　神戸を中心とする兵庫のほうが、７２作品（作家）と大阪で４４作品より断然多いのには驚くが、やはり兵庫の方が文学風土は豊饒なのだろうか。　ところで現在、酒やホステスを媒介としたあからさまでテンションの上がる文壇の複合的な付き合いはあるのだろうか。

  2010年02月13日

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• おおさか名作の泉

  　元産経新聞の社会部長、副社長、大阪新聞社長となった永田照海氏が自ら執筆連載したものの単行本『おおさか名作の泉』（昭和６０年刊）を古本で入手。 　東秀三『大阪文学地図』の前身となる書といえよう。 　永田氏は旧制住吉中学時代には伊東静雄に庄野潤三とともに学び大阪高校では石浜恒夫とクラスメイトであった、生粋の大阪人。 　４４人の関西出身や関西にゆかり作家の主として大阪を舞台とした小説を１作ずつ紹介するもので、その地を歩いてその時代の社会的背景に言及しているところが元社会部記者らしい。 　藤島桓夫「深雪」、織田作之助「青春の逆説」、小松左京「アパッチ族」にはじまり、井上靖、谷崎、林芙美子、水上瀧太郎、田辺、山崎、今、宮本輝、庄野、野間、川端、佐藤春夫、黒岩、横光、武田麟、藤本義一、野上、開高、梶井、阪田、水上勉、菊池寛、高浜、野坂、上司、芥川、陳、有吉、宇野浩二、三島、石浜、松本清張、長沖、大谷晃一などが続き、司馬遼太郎で終わる錚々たるメンバーである。大阪とは馴染みがなかったかと思っていた作家や名を知らなかった作家は有明夏夫、岡田誠三、佐藤愛子、源氏鶏太、石丸梧平。 　それにしても大阪近代文学館はいつできることやら…。

  2010年02月11日

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• 雪ふる節分の奈良へ

  　義母の命日間近で奈良へ墓参り、雪がちらついたり晴れたりの天気。 　帰りに古書喫茶「ちちろ」で紅茶を飲みながら宇多さんと久しぶりに会う。 　中国人監督による映画の撮影が進んでいて、宇多さんも出演されており、年末に臨時休業だったのも撮影のためだった。 　この映画は８月の「なら国際映画祭」で放映されるとのこと。タイトルは伺うのを忘れていた。 　昨年、ＮＨＫドラマ「万葉ラブストーリー」に出演された演技は地味ながら存在感があったし、『殯の森』同様の好演を期待できそう。 　また宇多さんは、中谷栄一追悼号の「文学雑誌」最新号を見せてくれた。中谷氏は織田作とは「海風」同人であり、１４年前に書かれた織田作の思い出の一文も掲載されていた。軍医であった中谷氏をモデルにした小説を織田作は書いている。（書名失念） 　それと磯田敏夫さんに場所を確認して中谷氏が富田林の織田作の碑を訪れたことなども書かれていた。

  2010年02月03日

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• 善哉忌の新聞記事

  　今朝の産経に掲載された善哉忌の記事、織田作同級生の田尻住職の読経の様子が写されている。 　織田作は中学時代から自由人的な振る舞いが多かったことが、住職の話でも分かった。学生服で毎日のように道頓堀とか百貨店をうろついたりしている。このような好奇心と行動によって街や商売の状況には敏感で、感受性が高まったことであろう。 　たしか以前名刺を交換した女性記者が取材に来ていた。

  2010年01月11日

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• 淀川燎原の火

  　昼過ぎ、消防車の鐘の音が鳴り響いた。団地の目の前の淀川の葦原に火の手が上がっていた。消防車６台、海上保安庁？の船１艘が出動。 　強風にあおられて火勢が強く、３０分ほどで消されたが３００ｍほどに亘って焼け跡が広がっている。青テントへの類焼がかろうじて避けられた。 　そういえば、国交省淀川河川事務所の担当者が以前話していたが、焚き火などが原因で火事はいくつも発生するらしい。 　ボランティアとして淀川さくらネットワークに所属しているが、焼け跡に桜を植樹できないだろうかと考えてしまった

  2010年01月07日

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• 唯川恵「肩ごしの恋人」

  　古本でたまたま買って読んだ。２００２年、４７歳のときに直木賞を受賞している作品だ。 　それにしては、フリーセックス、ブランド、美食、バー、エステ、海外旅行、そして結婚、離婚を繰り返す女性（るり子）を描いている。 　その女友達（萌）は、家出して飛び込んだ高校１年生の男（崇）の子供を作ってしまう始末。 　新宿２丁目のゲイの世界を絡めての奔放な女性の生き方には圧倒されるな。セックスを武器にして打算で男漁りをする女は怖い、どうでもしてくれ。

  2009年12月15日

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• 岩阪恵子「淀川にちかい町から」

  　岩阪さん昭和２１年、大阪旭区大宮出身、千林商店街はときどき行くし、淀川をはさんで、当家と対面にある。 　関学出身で、作詩の師にあたる清岡卓行氏と結婚して、東京に移住して、小説の執筆も本格化する。野間文芸新人賞の『ミモザの林を』の後、『画家小出楢重の肖像』という評伝を彼の随筆集に触発されえて書く。これが契機に、大阪、大阪弁への望郷心？で、若い頃の家族や地域の庶民の生活を描いたのが芸術選奨・紫式部文学賞を得た『淀川に近い町から』だ。 　親は洋服の仕立業だったが、家族をはじめ市井の人々の質朴な生活ぶりが細やかに描かれている、ただそれだけの短編作品集であるが、素朴な身辺の足跡がほのぼのと心を暖めてくれる。ほろ苦い人の世の機微が伝わるからだが、それにしても作者の観察力と記憶力はすごい。 　 　淀川の堤や城北公園を父親が散策する様子も描かれていることも近しいものを感じる。

  2009年12月11日

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• 堺市ゆかりの織田作、晶子、ミュシャ

  　堺市ゆかりの３人の文化に触れた。 　織田作之助の住んだ北野田の長屋が改築中で、すでに１階表側は惣菜屋さんがオープンしていた。工事中の２階にカメラマンのTさんが上がって、しきりにシャッターを押されてた。 　オダサク倶楽部主宰の井村さん、堺の図書館員しょうわさんとTさんの４人で堺市立文化館を訪れ、学芸員のMさんに与謝野晶子が『白揚』という文学誌（明治４４年）に載せた短歌のことをしょうわさんが紹介、さらに追求したい興味深い事柄など話の発展をみた。 　Mさんの案内で同館内での「ジャーナリスト与謝野晶子」展を拝観。 　晶子の政治への鋭い批判と女性の権利への情熱を知ることができた。彼女のアフォリズム集の栞も配られていたが、男もかなわぬ鉄の女だったんだ。 　 　次いで、別のフロアでの「画家ミュシャの眼と手」展へ。カメラの故・土居社長が寄贈したミュシャの絵は５００点にも及び、チェコの文化相もびっくりの同館だが、今回は１００点が展示されていた。写真を撮って、描くという手法も用いていたのだ。世紀末の名女優サラ・ベルナールの大ポスター（リトグラフ）は圧巻だ。

  2009年12月05日

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• 織田作之助の旧宅全面リフォーム

  オダサク倶楽部主宰の井村んのお誘いで、この土曜日に堺市の北野田にある織田作が戦前に新婚生活を送り、『夫婦善哉』を執筆した旧宅を訪れることにした。昭和１４年当時、家賃２３円の新築２階建長屋であった。　というのも、その家に現在住まわれている力餅食堂経営者が改築工事を進めているとのこと、４年前に一度、織田作の一番弟子を称するアルサロ支配人、磯田敏夫さんの追悼映画会のおりにその住居を案内されて見ていたが、今回、最後に目に留めおきたいと思って赴く。　しかし、オダサク倶楽部のしょうわさんが撮られた工事中の写真を拝見すると、完全改築のようで、織田作が深夜に煙草を吹かしながら執筆して、煙もうもうの中、妻の一枝さんが辞書をもって付き添った２階部屋なんか、面影もなくなっていそうで、さびしい思いがする。

  2009年12月04日

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• 大阪あそ歩「オダサク・ロマン」へ

  　昨日は「大阪あそ歩」という町歩きの企画のひとつ、「オダサクロマン」コースにたまたま福岡から奈良に帰郷していた磯さんと一緒に参加した。おりしも、織田作の誕生日の前日であった。　主催者のムツさん、解説者のイムイムさんを含めて２０名の参加で、オダサク倶楽部の仲間も７人含まれていた。　生玉さん、高津神社、梶井基次郎の墓を経て、初めて近松と西鶴の墓を拝し、終着地である織田作の菩提寺（リョウ厳寺）で墓参したが、イムイムさんの熱のこもった解説に参加者も熱心に聞き入っていた。　同寺の本堂では、織田作の好きだった「旅への誘い」「ラ・クンパルシータ」を織田草之助さんによる解説があり蓄音器で鑑賞、最後に高津中学で織田作と同級生だった住職による思い出話に耳を傾けた。　妻の一枝さんの葬儀も同寺で営まれたが、そのとき織田作は妻は自分が苦労かけて殺したと涙していたそうだ、こちらもホロリとさせられる話であった。住職は在学中に手術をして留年したとのことだが、同級生の葬儀を数人営むなど、９５歳とは思えぬ元気さだ。　３時間のあそ歩を散会後、法善寺横町の正弁丹吾で倶楽部メンバーと磯さんの７名で飲み歓談したが、最後まで織田作ゆかりで、善い哉。

  2009年10月26日

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• 浪速作家の浪速物語

  　最近、主として大阪出身の作家や大阪に在住した作家が描いた大阪を舞台にした小説、エッセイ、いわゆる大阪文学を最近いくつか読んでいる。 　織田作之助：「夫婦善哉」「わが町」「木の都」「世相」ほか 　宇野浩二：「木のない都」「枯れ木のある風景」 　武田麟太郎：「釜ｹ崎」 　藤沢桓夫：「大阪自叙伝」 　庄野潤三：「プールサイド小景」 　増井　英：「通天閣の赤ちゃん」 　山崎豊子：「花のれん」「しぶちん」 　藤本義一：「元禄流行作家」 　田辺聖子：「道頓堀の雨に濡れて以来なり」 　林芙美子：「めし」 　東野圭吾：「浪速少年探偵団」 　黒岩重吾：「西成十字架通り」 　難波利三：「てんのじ村」 　野坂昭如：「エロ事師たち」 　直木三十五：「大阪を歩く」 　谷崎潤一郎：「春琴抄」「卍」 　川端康成：「十六歳の日記」 　水上瀧太郎：「大阪の宿」　上司小剣：「鱧の皮」　宮本　輝：「泥の河」　岡部伊都子：「美を求める心」　わかぎえふ：「大阪人の掟」　

  2009年10月21日

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• 有秋会日本画展へ

  　天高く美術の秋。第６７回有秋会日本画展を観に天王寺の市立美術館へ。 　過去２年、最優秀賞に輝いた同僚のＳ顧問、今回は「献燈」と題して春日大社の朱の社殿と深緑の釣り灯籠を描いた色彩鮮やかで、浮かび上がるような立体感のある秀逸の作品だ。 　ところが、「無鑑査作品」との表示があるだけで、どうしたんだろうと思っていたら、本人にばったり出くわし、その点を確かめたところ、もう会員の上の師範格となったため、賞の対象外を意味しているとの説明を受けて納得。 　また、直江兼続が娘の名で奉納した釣り灯籠が春日大社にあることを、かねてから発見していたＳ顧問、その漢文の文字を刻んだ灯籠も絵に配していたが、これが灯籠に変化を与えていたのは芸が細かい。 　家人はこの絵に自然に手を合わせていたほどで、霊験あらたかなるものを感じさせたようだ。 　ほかに、大阪府知事賞の「緑陰」という画は、黒いレトルリバー犬が大きな葉の陰でこちらを見上げている構成のビビッドな感覚で印象的だった。　最近報じられた直江の釣り灯籠　　　http://www.asahi.com/showbiz/tv_radio/OSK200904230082.html　　

  2009年10月18日

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• 太宰の愛人の娘と斜陽

  　生誕１００年記念として、太宰治の代表作、『斜陽』『ヴィヨンの妻』『パンドラの匣』が映画化されている。まだ、どれも観ていない。 　『斜陽』の元となったのが、愛人の太田静子の日記であった。文学少女であった静子は太宰を慕い、津軽から神奈川県下にわざわざやって来た太宰についに日記を提供、子（治子）も孕む。 　この日記を書いた静子と母弟を主人公に戦後の没落華族を描くのであるが、無頼の作家上原が、かずこ（静子）と関係を結ぶ場面も出てくるから、小説の筋書きにここまでよくぞ利用したもんだ。 　そして、かずこに、「マリアが、たとい夫の子でない子を産んでも、マリアに輝く誇りがあったら、それは聖母子になるのでございます」と作者は言わしめている。ここにも太宰の聖母、母性への思慕が現れているといってよいのか、半可通の余輩がここで解釈することではない。 　本書はヒットするが、翌２３年にはさっさと別の女性と入水自殺と相成ってますね。 　津島佑子さんとは同年の異母姉妹にあたる、この私生児の治子さんは、表に出ることなく静かに生きてきたが、このたびＮＨＫの番組に登場し、母のこと、日記のこと、父太宰のことを語っていた。彼女を認知した文書も紹介されていた。 　母の生き方を認め、また父を慕う気持ちが溢れており、初めて父の実家（現・太宰治記念館）を訪ねて感無量の様子が写っていた。とくに襖の漢書の中の「斜陽」の文字には心打たれていた。

  2009年10月13日

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• 日蓮と法華の名宝展へ

  　明日は日蓮上人の祥月命日だが、昨日は京都国立博物館で標題の展覧会に行く。 　「立正安国論」を認め、ときの鎌倉北条執権に法華の法をもって国家を安んじろと奉じたが、これがもとで流罪など苦難の道を歩むが、これが宗派の確立の礎になっている。このときから７５０年を記念して京都ほか各地の寺院からゆかりの名宝を集めての展覧会、すごい点数だ。 　「華ひらく京都町衆文化」との副題があるように、京都では室町時代に町衆での法華信仰は広がり、ついに比叡山との対立が激化、２１本山が焼き討ちにあってしまった。 　その後、復活するが、近世の京都の町衆文化を創った芸術家の多くが法華信者であったので、その遺作が寺院にも遺されていて、今回の展覧会を華やかにしていた。 　狩野元信、長谷川等伯、本阿弥光悦、尾形光琳、尾形乾山、俵谷宗達などだ。日蓮の直筆「立正安国論」や光悦の「舟橋絵巻硯箱」は国宝であり、重要文化財多数。 　天下国家を論じて先鋭的になりがちの日蓮宗派、足利幕府をも諌めようとした高僧が投獄されたり、信長の前での宗教論争で浄土宗に敗れて鼻と耳を削がれるなど世間を騒がせており、当宗派からみればいわゆる法難が多い。 　日蓮系では創価学会、立正佼成会、霊友会など信者数でベスト１０に入る新興宗教団体がある。 　日蓮系の熱烈な信者として知られる有名人では宮沢賢治、坂田三吉、石原莞爾、土光敏光が浮んでくる。　

  2009年10月12日

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• 奈良大学に初の社会調査学科誕生

  　紀伊国屋書店で本を買ったら、カバーに奈良大学の広告が刷り込まれていた。 　なんと、来年４月には日本初の「社会調査学科」が社会学部の中に誕生するのだ。広報学科やマーケティング学科は既に存在するが、大学の競争が厳しい中、このようなセグメントもあったんだ。　調査は広告代理店で日記式の視聴率調査で家庭を訪問したときのマスサーベイに始まり、調査会社でのグループインタビュー、出版社での取材調査と様々な調査に携わってきたこともあって、こういう専門科が出来たことにはちょっと驚く。 　調査、統計を理解して、世の中の事象を正しく、深く、また面白く分析してくれる人材が増えれば、いいことだ。 　前夜は満月、くっきりと観れた。純米冷酒が美味かった。２０歳のときに縁側で月見しながら、父が初めてビールを注いでくれたのを思い出す。　　　帰省子に父が注ぎし月見酒

  2009年10月06日

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• 万葉ラブストーリーで宇多滋樹さん好演

  　ＮＨＫ奈良放送局制作の「万葉ラブストーリー春」を視た。 　万葉集の歌に題材をとって、ストーリー化（公募）して、奈良を舞台に撮影したものだ。 　古書喫茶ちちろの主人で「殯の森」で主演して好評だった宇多滋樹さん、このドラマでは第一部の「恋はももいろ」に墨職人の師匠役。やや表情が緊張気味だったが、自然な演技で好演だった。 　 ・春の苑　紅におう桃の花　したでる道に出で立つ乙女 ・我ぎ妹子が 植ゑし梅の木 見るごと心むせつつ涙し流る

  2009年09月23日

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• 道修町に春琴抄の碑

  　昨日、３０年以上ぶりに道修町を歩く。 　武田薬品や田辺製薬の中層ビルは前からあったが、両側に中高層のビルが立ち並び、かつての面影がなくなっていた。昼間の人通り、車の通行も少ない。元小西儀助商店の古い商家だけが重要文化財とししてタイムカプセルのように異様に佇んでいた。 　田辺三菱製薬や大日本住友製薬などのビル標識を見て、合併の嵐がこの町にも無縁ではなかったことを改めて思った。 　当地が舞台となった谷崎潤一郎『春琴抄』（昭和８年発表）の文学碑を堺筋を西に入った神農さん神社の参道入口に発見した。 　同じ道修町生れで四天王寺国際仏教大の三島佑一教授の尽力により、平成１２年に建てられたものだ。 　谷崎の自筆原稿複製、三島先生の説明文、地歌筝曲の人間国宝、菊池初子さん（当時１０１歳）による碑の揮毫からなる陶板を掲げた石の記念碑である。 　三島先生の説明によれば、春琴のモデルは後に妻となる船場の根津家の長女、松子であり、『春琴抄』は彼女への思慕を佐助に託して書いた「愛の書」ということだ。 　それにしても、佐助のこれほどまでの春琴への献身、嗜虐的なマゾヒズム、法悦の世界をよくぞ描き、発表できたものだ。 　同じ敷地の神社ビル内にある「くすりの道修町資料館」に立ち寄り、展示物を見ながら薬種中買仲間によって築かれてきた道修町の歴史を知ることができた。

  2009年09月17日

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• 水都天神祭の企画イベント

  　天六にある大阪くらしの今昔館での「天神祭と大川」という企画展を観る。 　祭りでは人のサイズの１．５倍ほどの人形を載せたお迎え船が大川に繰り出すが、その飾り人形が展示されていた。坂田金時、木津勘助、八幡太郎義家、秀吉、胡蝶の舞の５躯であり、曰く因縁で病除けなどの功徳がありそうな人物が選ばれているようだ。歌舞伎に登場する人物もあって、見得を切るような仕草が印象的だ。かつては５０点ほどあったが、現存は１０数躯。 　常設館のほうには、かつて祭りに曳き出された船形山車「天神丸」の実物も展示されていたが、大阪人の細工の意気込みと凝りようが伺える。 　常設館の床に大正１３年の大大阪時代の周囲５ｍはあるパノラマ地図が敷いてあるが、じっと見ていると興味が尽きない。 　まだ、御堂筋が造られていないが、川のように市電網が縦横にめぐらされているのと、歩兵第八連隊などの兵営や工廠の敷地が大きいのが見て取れる。 　先日、読書会で宇野浩二の『木のない都』が取り上げられたが、そのなかに紹介されていた宇野が１９歳まで住んだ１０軒長屋路地のあったと想われる宗右衛門町の東端の一角を見つけた。（写真の道頓堀表示の北、日本橋表示の東） 　道頓堀には角座や朝日座が、千日前には楽天地のビルがあるが、大阪劇場はまだない。 　この光床の地図を見ながら、松島遊郭はここかとか、口縄坂の脇に夕陽丘女学校があるとか、港のほうにはＧＭの工場があったとか、同年配のおっちゃん等と話が弾んだのであった。　

  2009年07月05日

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• 今が花の盛り城北公園

  　江戸系、肥後系、伊勢系とは？　紅唇、猿踊、青い月夜、辻ケ花、小桜姫、初紫、舞妓、徒然草、葵の上などの花名、これらは何の花でしょうか。 　城北公園花菖蒲縁に行った。やや見頃すぎとの表示があったが、約２５０品種、１３，０００株が植えられている。 淡いブルーの筋紋様の東鏡（肥後系）に淡い想いを抱いた。小桜姫も紅紫で可愛い。酒中花は名前が気に入った。 　アヤメは乾燥地に咲く小さ目の花径の紫、カキツバタ（杜若）は湿地または浅水池に咲く葉が黄味をおびており花は青紫が中心。これに対して花菖蒲は湿地と乾地に咲き、花径が１５ｃｍ内外と大きく色も様々。 　この鑑賞の日は毎年、淀川堤にも上がって桜街道ネットワークの植樹した桜の成長を見るが、丈が５メートル以上に伸びていた。ただ、数本は葉が付かず枯れたような感じだ。 　　さらに昭和２０年の６月７日の米軍機による大阪への３回目の無差別爆撃で数万人が死んだが、うち千人以上の死体を３日３晩かけて荼毘に付したのがこの辺りの川原で、骨が地中に埋葬されている。　　その千人塚に今年も黙祷。この河川敷に逃れた市民を米機が機銃掃射してさらに悲惨な状況だったそうで、火葬は生き延びた市民の奉仕協力で行なわれたのだ。　花菖蒲はこの犠牲者の魂への手向けとして同じ頃に咲くのであろうか、今日はふと思った。　今が花菖蒲手向けん慰霊塚 写真の花菖蒲は「東鏡」

  2009年06月12日

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• 織田作と競馬、秋深き

  　昨秋、封切られた『秋深き』を井村身恒さんに借りたＤＶＤで観た。原作は織田作の名作『競馬』および『秋深き』だが、主として前者の筋をベースに現代に置き換えられいた。池田敏春監督、八嶋智人、佐藤江梨子主演の東宝作品。　　生玉さんや空堀商店街など上町が主な舞台だが、後半は園田競馬場での場面があり（原作では淀競馬場と小倉競馬場）、オダサク倶楽部の会員も観客としてエキストラ出演しており、製作協力者として倶楽部の名前が映画の終幕に掲出されていた。　　乳がんで亡くなる妻の名前（一代）に引っかけて１－４の連勝単式馬券を買い続ける、最終レースで大穴を当てる、ありうる話ではあるが、もう少し早く倶楽部に関わっておれば、往年の競馬フアンの余輩も熱狂参加させてもらったのにとちょっと残念。　映画自体は、ちょっと暗さを引きずり、大分昔の物語のように感じられたし、現代人を惹きつける魅力には欠けたように思う。　ところで、藤澤桓夫の『大阪自叙伝』に織田作の競馬の様子が語られている。戦前、藤澤は自分で馬を持つぐらい競馬に凝っていたようだが、淀や阪神の馬場に織田作等を誘って行くのが常で、現地では長沖一や秋田実と落ち合っている。　「今度は大穴や。えらい馬券こうたった」と言う織田作だが、実は２，３番人気を買っていることが多かったそうだ。しかも、当たるとゴールまでバンザイと叫んでいるのが織田作で、まるで子どものような天真爛漫さだったのだ。　まあ、こんな体験があって、あの臨場感のある『競馬』の場面が描けたのだ。

  2009年06月10日

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• 上町巡り一心寺

  四天王寺の西にある一心寺を初訪問。ここの前住職、高口さんは建築家でもあって、モダンな仁王門や巨大な仏画の仏堂、シアター一心倶楽（２８０席）などを造っている。インドの女像が門の両壁に彫られていたが、胸と腰をさわると人生の幸運がいただけるとか。乳房なんかよく出来ている。なにかとエンターテイメント・サービスのあるお寺だ。当寺が作った夕陽丘むかし話マップをもらったが、織田作の木の都（口縄坂）の紹介はなかったのは残念。このマップを標に当寺と茶臼山の間の一心寺坂を上り下りする。人の通行のほとんどない静かな木が茂った坂である。一心寺北側の逢坂は車がはげしく往き来するので情緒はない。来る前にナンバ古書センターに初めて行き、１０冊文庫本買っていたのでやや足腰に応えた。　青葉の香下りまひょうか一心寺坂

  2009年05月10日

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• 故市川準監督と織田作「六白金星」

  　産経紙の新関西笑談シリーズでシネ・ヌーヴォ支配人景山理さんが登場していたが、景山さんによれば『大阪物語』の故市川準監督が織田作のフアンで、この『六白金星』を撮りたがっており、見たかったなと話していた。 　織田作の短編『六白金星』は、医師の妾の子として生れた兄弟が、母を侮蔑し飛び出して女関係を含めて奔放に生きてゆく歪んだ姿を描いたもの。 　「六白金星」は早発性痴呆症とされる次男の「交際上円満を欠き…親兄弟との縁薄く…大器晩成す」という運勢暦に因む書名。 　市川監督がこの小説のどこに惹かれ、大阪ならびに香枦園が舞台となるどんな映画を作っていたのか興味が募る。

  2009年04月21日

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• 京都花見第一弾

  　天候に恵まれて円山公園から清水寺へと桜散策。家人の歩調に合わせるのでとにかくスローウォークであるが、よくぞ舞台まで上り来れたものだ。 　公園の枝垂れ桜は、かの佐野藤左衛門さんの桜守のおかげか、まだ妖気を存分に放っていた。 　公園奥にの枝垂れも地面に垂れ下がるほど立派で、その頭越しに竜馬と慎太郎の銅像が京の町を見下ろしている。 　清水さんに至る道すがら、土産や和雑貨の店が多く、案の定、家人は１，０５０円の安バッグなど２点ほど衝動買いしていた。 　清水舞台から眼下の桜の眺めはもう一つ物足りず、山々の紅葉の方が見目よろしい。 　家人は手足が不自由であり、観音像を撫でたり、地蔵を拝んだり神仏頼みに余念がない。 　舞台の裏手のさらに上段に地主神社なるものがあり、「えんむすび」「開運」「厄除け」「一願」「芸事」１１もの小さな祠、社、石の類がましまして、若い男女や中国系など外国人がたむろしていた。まさに、ご利益のテーマパークである。 　昼食はマックで２５０円、夕食は高瀬川沿いの珍竹林で湯豆腐定職１，３００円と燗酒５５０円。 　西行の「願はくは花のしたにて春死なむそのきさらぎの望月のころ」という歌があり、それを受けるかのように梶井基次郎は「桜の樹の下には死体が埋まっている」と散文を記しているが、桜がなぜこのように美しく咲くのか、余輩は桜の木の下には妖精が宿っているからだと想う。 　しかし結局、いまのところ余輩は花の一句も詠めずにいる。

  2009年04月05日

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• 桜花の前に桃花

  　大阪城の濠に沿った一角に桃園がある。ビジネスパークからすぐ近くで、今年も観桃した。　花の趣は、大きく枝を伸ばしている木が少なく、桜に比べてこじんまりしている。色は白、ピンク、赤とコントラストが鮮やかだ。　まあ、人工的な園であり、とても桃源郷とまではとても言えないし、黒沢明監督の『夢』のなかの桃並木（雛人形）の華やかさはない。　印象に残るのは、同じ木に白とピンクの花が咲く源平という種で、外側が白、中がピンクと色の混合した花びらもあって、いとおかしだ。　艶やかに源平競い枝垂れ桃　城よりもタワーに冴える桃満開

  2009年03月28日

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• 織田作歩く読書会

  　昨日は、織田作の随想風小説『木の都』にちなんだ上町台地から道頓堀までのウォーキングを楽しんだ。井村身恒さんが主宰のオダサク倶楽部が主催したもの。 　案内役は同年輩の松村基さん、集合地の生国魂神社や西鶴銅像の話に始まり、服部良一の歌碑、高津神社、檸檬忌を明日に控えた梶井基次郎の墓、二つ井戸、法善寺まで裏表の解説を交えての名調子には感服した。 　雨男の織田作の悪戯か、途中で強雨に見舞われたが、参加１０名は４時間を完走したのであった。 そういえば、生国魂さんと高津さんに桜が咲いており、梶井の『桜の木の下で』を思い出した。　老舗喫茶・丸福本店で歓談、さらにお好み焼き屋で飲み会となり、大いなる耳学問で締めくくった。

  2009年03月23日

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• 直木三十五記念館へ

  　文学サークルがらみで谷六の空堀界隈にある直木三十五記念館を初めて訪れる。 　ここは直木の生家の直ぐ近くで、木造３階建ての建物のなかに古書雑貨サロンなども入居している。記念館は８坪ほどのこじんまりした黒を基調にしたスペースで５年前に開設された。小上がり畳間があって、いろいろな催しにも貸している。事務局長の小平さんにも会っていろいろ作家にまつわる話などを聞かせていただく。 　通路にも直木賞を獲得した作品がすべて陳列されているが、情けないことに読んだことのあるのは、出久根達郎『佃島ふたり書房』ぐらいで恥ずかしい。今年の受賞作、山本兼一『利休にたずねよ』を勧められたので読んでみよう。 　近くの階段坂に直木の『南国太平記』の一文を刻んだ石碑がひっそり建っていた。 　商店街の南側にある明治時代に造られた長屋に入った古書カフェ「ＬＯＷ」で珈琲を飲む。売り本はほんの少しで「大阪人」に紹介はされていたが、とても古書カフェには値しないが、３卓だけのゆったりした空間でくつろげた。 　このような町屋を利用した店の集積地は中崎町や福島に見たが、この空堀ももっと発展して欲しいもんだ。

  2009年02月28日

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• ＮＨＫ番組でカルチャー学習

  　年末年始はＮＨＫやＥＴＶの特番に執心、今さらながらであるが、歴史や文学、経済の勉強になったが、もう内容はかなり忘れている。１）ＥＴＶ特集「私の源氏物語」（１１月１６日）　　与謝野晶子、谷崎潤一郎、瀬戸内寂聴、田辺聖子、橋本治などの源氏物語の現代訳にみられる特徴。余白の美。藤壺の第一夜の巻があったはずとか。２）プロフェショナル「武豊・知られざる闘い」（１２月２日）　　馬の顔にも、きつい、おっとりなどの性格が出ているそうだ。馬の意志を大事に乗る。果てなき挑戦を続ける者にゴールはない。３）ルソンの壺スペシャル「関西パワーで世界制覇」（１２月２１日）　　イシダ（はかり）、大門酒造、山本化学、太陽テント、ファミリー、ハッピー、ＴＴＮ、くら寿司など１０人の経営者がその商売の発想と成功体験を語った。４）ＮＨＫスペシャル「激論２００９、世界はどこへそして日本は」（１月１日）　　竹中平蔵ＶＳ金子勝の市場経済主義派と反対派に分かれての激論。米国金融の破綻状況があって、竹中が不利に。５）知るを楽しむ「瀬戸内寂聴が語る源氏物語の男君たち」（１月２日）　　３時間２０分にわたる総集編で、物語の全体が俯瞰でき、寂聴さんの細やかな解釈が踊る。　　 ６）済州島４．３事件（１月３日）　　昭和２３年南北分断に際して、済州島での反政府運動の悲劇的事件が起こったが、現在になって政府の謝罪があった。金範石（作家）や李鳳宇（パッチョギ監督）が出演。以前、鶴橋でこちらが道を尋ねた老婦人も被害者として登場したのに驚く。７）ＥＴＶ特集「吉本隆明語る」（１月４日）　　６０年安保で全学連を支持した詩人が８３歳にして３時間その思想の体系を、車椅子に座り、手振りしながら語りまくった。芸術言語論など初めて知った。８）ＥＴＶ５０「爆笑問題の教育テレビの逆襲」（１月６日）　　昭和２０年代から平成まで年代ごとに代表する湯川、三島、大江、開高、黒沢、裕次郎、志ん生、手塚、矢沢、司馬、赤塚、寺山、公房、埴谷、水木、ＹＭＯ、オノ・ヨーコ、ダライ・ラマなど社会に影響力のある著名人の発言をＮＨＫのビデオライブラリーで紹介しながら、現在の視点で立花隆、糸井重里、モー娘がばっさばっさと論議するもの。

  2009年01月07日

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• 花のガーデン終幕

  　倉本聡脚本の富良野三部作・最終章という『花のガーデン』（フジＴＶ）を見終わった。 　地元で巡回医をする父（緒形拳）、末期がんの麻酔科医（中井貴一）、花の栽培をする娘（黒木メイサ）、知的障害の息子（神木隆之介）の３世代の親子関係と老病死を縦横に描くものだ。 　撮影後にガンで亡くなった緒形の身体を振り絞っての演技、わざとらしさがなく好演の中井と黒木、見入ってしまった。２年かけて造成した花のガーデンは３００種以上の花が咲き誇り、まさに楽園。 こんなところで挙式したり、死を迎えるのも素晴らしいことだ。 　平原綾香て、初めて認識したが、彼女が歌う「ノクターン」や、ノクターンの曲に作詩した「カンパニュラの恋」も情感があり、迫るものがあったなあ。

  2008年12月18日

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  大阪城の紅葉と黄葉

  　大阪城近くのビジネスパークの高層階から大阪城を見下ろす。紅葉に彩られた城が華やいでいた。 　少し大阪城の堀端を歩くと、イチョウの黄葉が鮮やかであった。 　昼食はマックポークと紅茶で２２０円也、この安さが低所得の余輩にはありがたい。 　紅葉や城は栄華をとりもどし 　黄葉のイチョウの梢の黒さ哉 　葦紅葉織りなす川辺シンフォニー 　黄葉や高層ビルの空にぬけ　　写真：ビジネスパークのクリスタルタワー

  2008年11月20日

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• 葦と紅葉のシンフォニー

  　昨夜は木枯らしに震えながら帰宅した。　淀川辺りの白い葦穂がそよぎ、木々の紅葉とが織りなす光景は、深秋を感じさせる。　淀川の青も濃さを増しているが、上流から流れ着いた緑の藻が大量に岸辺に留まっている。　　　写真の背景は大阪梅田の高層ビル。

  2008年11月19日

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• コリアタウン＆珍名店

  　明日は大阪生野のコリアタウンで祭りがあるが、先立つ先週日曜日に初めて訪れた。 　鶴橋駅高架下周辺の狭い路地のコリア？商店街の賑わいはすごかったが、コリアタウンはそこから２０分ほど歩いて辿り着いた。一本の商店街であり、朝鮮食材・日用品を売る店が並んでいるのが特色。通りに天満宮の広い社が構えていたのが奇異でもあった。 　韓流ブームで外来客も増えたそうだが、帰った後に女優のチェジュさんがこの商店街に来ていたと知ってびっくり。 　 　まあ、往復ＪＲ鶴橋との間をとぼとぼと歩き疲れた、もう二度と来ないだろうが、途中と駅前で珍名店を見つけたのは成果であった。（ＪＲ桃谷駅からのほうが近かったようだ） 　それはそれとして、５００年前の朝鮮王朝中期に彗星のごとく現れた美貌と詩才をもつ名妓生（キーセン）の「ファン・ジニ」を描いたドラマが今夜も楽しみだ。詩も一度読んでみたい。 コリアタウンの歴史： 　もともと古代からこの地は渡来人が多数住みついており、旧地名である「猪飼野」の起源となっている。１９１０年の日韓併合を経て、１９２３年に済州島と大阪をつなぐ直行便「君が代丸」の就航をきっかけに、多くの朝鮮人が労働のために日本へ渡航し、当時工業地化しつつあった猪飼野周辺に集まってきた。こうして自然と朝鮮市場が誕生し、それを核に商店街としてスタートしたのもこの頃である。 　日本の敗戦後、国に帰る韓国・朝鮮人、新たにやってくる韓国・朝鮮人と入れ替わりはあるが、この市場を中心に生活し日本最大の在日韓国・朝鮮人の集住地になった。現在も大阪市生野区の総人口の四分の一は外国人である。「コリアタウン」にくれば韓国・朝鮮人にとって必要なものが揃う「地域に密着した商店街」として発展した。（ウィキペディアより）

  2008年11月08日

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