「酒場の奇人たち」女性バーテンダー奮闘記
2004 文芸春秋 タイ ウェンゼル, Ty Wenzel, 小林 浩子訳 トルコ出身の女性がマンハッタンのマリオンズというバーでのバーテンダー経験をもとに表したのが本書である。 人種も色々なら、セレブな客から浮浪者風の客やら泥酔客、ひつこい口説き客までの深夜に及ぶ対応に肉体も、神経もすり減らしながら11年間も勤めたのだから尋常ではない。 遭遇したハプニングや苦労は数知れず、その奮闘ぶりや、迷惑客への辛らつな批評に本書はあふれている。 とくに、次々訪れるスケベ心の客のあの手この手の手管にはやりきれないほど神経を使っているが、それにしても、バーに来るアメリカ人がいかに色狂いであるかに驚かされる。 彼女は表面でさりげなく接客しながら、多様な客の心理を見透かして、心では相手を痛烈に拒絶することによってしか、精神のバランスが保てなかったことが読み取れる。 また、チップだけがバーデンターの収入だけに客のチップの払いについては、さまざまなケースを挙げながら批評が加えられている。この点は日本では容易に想像できない世界である。 客のタイプや好みの見分け方、あしらい法はさすがであるし、これを読んだ客は唖然とするにちがいない。よくぞイスラム系の女性がここまでの経験を積めたものだと感心するのである。