父を偲び酌み交わす
広告代理店への就職を目指して東京で講座を受講中に亡くなった父は49歳。やっと届いた訃報で、伊勢湾台風の直後に迂回して三重の実家に帰った時には1週間が過ぎてました。その後、代理店に就職できましたが、父の存命中に知らせたかったと無念でもありました。大阪から最初の夏休みで故郷に帰宅してクラスメイトと初めて大量に酒をあおって起こした不埒な飲酒騒動で父には大変なショックを与え、そのせいもあってその後、ビールをグラスに一杯注いでもらって縁台で飲んだ程度しか思い出はありません。父の血を継いで、特に日本酒を愛飲する私、親孝行できずに50数年を過ごしてきました。父の日と無縁だった子無き余輩、ネット上で長く親交させてもらっている佐賀の名杜氏井上満さんの全国酒類コンクールでの26年度グランプリ受賞の報に接して、父の日を「父を偲ぶ日」として酒を飲み交わすことを思い立ち、受賞の名酒を取り寄せることにしました。グランプリを受賞した「邪馬台国の道」(純米大吟醸)と「雨後の青山」(純米吟醸)です。(各720ml)両酒を仏壇に朝から供えましたが、短冊には「父上様 父を偲ぶ日 父上ありがとうございました」と認めています。夜になって父へお詫びと酌み交わせることの喜びを語りかけました。改めて冷蔵庫で冷やした「邪馬台国の道」を開封してグラスに注ぎ仏壇に供えて、素晴らしい感性の酒を相伴しました。その後、仏壇に供えたグラス酒のおこぼれに預かりました。父は戦中戦後、こんな美酒を賞味したことはなかったはずで、独り善がりの私の行動を笑いながら喜んでくれたような気がします。