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シングル母のアメリカ暮らし

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2004.06.20
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カテゴリ:楽しい出会い
来週の引っ越しに備えて、家の中のいらない家具を処分するために、
今日も懲りずにガレージセールをやった。
すっかり病みつきになっている。


今日の目玉は、ソファ(大・小)とコーヒーテーブルの3点セット。
今、お申し込みいただくと、もれなく黄ばんだランプがついてきます。


というわけで、大物である。

その他、サイドテーブル、本棚、手動芝刈り機、バーベキューグリル(炭火用)、ベビーベッド、パティオテーブル&チェア(パラソル付き)そして前回の売れ残りの雑貨類である。

これらがなくなったらどれだけスッキリするだろう。
とほくそ笑みながら、人の手助けも受けて、ドライブウェイに並べた。


はっきりいって、オンボロ家具ばかりである。
あげたところで惜しくも何ともないようなものばかり。
それでなにがしかのお金がいただけ、視界から消えてくれるのだから、
ガレージセールさまさま、である。



一番乗りの客が来た。
みんな、細かいものばかり見ていく。
そんなちっちゃいものは、どーでもいいから、この辺の家具を見てよ。
ねえ、お願い皆さん。


ところが、そこに並べられているソファを「屋外応接室」と勘違いしたのか、
本がたくさん入っている箱を、テーブルの上にならべ、
ソファにふんぞり返って読みながら物色している奴もいる。


頼むからそこでくつろぐなよ。


開店して1時間半、誰も家具には興味をしめさない。


そこへ大きなお腹の妊婦さんが、足取りもよちよちとやってきた。
いきなりソファの上に、はねるように座っている。
何度か座り心地を確かめるかのように、尻ではねている。


「いくら?」


「3点セットで100ドル。」
決して高くはない筈だ。


別に驚きもしない様子で、今度は小さい方のソファに腰掛ける。
「これいいね。」


そうでしょう、そうでしょう。
買うと言って。



「50ドル。」


うーん、そうきたか。


いくら何でも、と言いかけて、
<でもこれがもし売れ残ったら>という不安が頭によぎった私は
うっかり二つ返事で「オーケー」と言ってしまった。


すっごく嬉しそうな顔をして、私に10ドルの手付けを渡し、
後でとりに来るから残りはそのとき払う、と言い残して帰って行った。



不思議なもので、彼女が買う事に決まった途端、
次から次へと「このソファはいくらだ」とか
「えっ、もう決まっちゃったの。これ欲しかったなあ」などと
悔しげに帰る人が後を絶たなかった。
ちっ、こんなことなら、いきなり半額なんかに下げるんじゃなかったよ。
あー失敗した。



その後、他の家具類もあらかた片付いた頃、
車が止まって、またよちよちと彼女が現れた。


「これ、残りの40ドル。トラックで来るのは夕方になる。
お金ないから、他のものはいらない。」といいながら、
いくらか残ってた、赤ちゃんの服を見ていた。


他のお客さんの相手をしながら、ふと気づくと、
コーヒーテーブルをずるずる引きずる音がする。


ちょっと、何やってんのよ!



相手は妊婦である。



英語のあまり得意ではない彼女は
「いや、これだけ車に入りそうだから、入れようかなと思って。」
というようなことを笑って言った。


結局、私と一緒にセールをやった友人とで、この怪傑妊婦の車に入れた。


「で、いつ産まれるの?」と聞いた私に


「んー、今日かな。明日かもしんない。」




何だって?


予定日にのこのこガレージセールに来るやつがあるか。


しかも、自分でコーヒーテーブルなんか運ぼうとして。



「はじめての赤ちゃんだから、ダンナは楽しみね。
でもお金がない。リビングもからっぽ。
赤ちゃんくるから、家らしくしたかった。
今日は何か買えるといいなと思った。
このソファ、買えて本当にハッピーよ。」


とブロークンな英語でいいながら、またうれしそうに尻ではねていた。


うん、50ドルでもいいや。


夕方、目尻に笑い皺を刻ませた、日焼けしたダンナさんと一緒に
大きいトラックに乗ってやってきた。

彼とその友人がソファを運び入れている間、売れ残りで申し訳ないが、赤ちゃんの服とベビー用品のお古を全部あげた。

ニコニコしながら、「サンキュー、アミーゴ。」と言って、
大きなお腹を押し付けながら、私にハグをした。
そんなに押したら、赤ちゃんでちゃうよ。


手を振って帰る彼らを見ながら、
ソファに座って赤ちゃんを抱いている彼女を想像したら
なんだかとってもうれしくなった。



本日の夕食:
売上金を握りしめ、サラダ系食べ放題レストランで、大盤振る舞い。





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Last updated  2004.06.20 23:27:38
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