カテゴリ:小説もどき
ぼくは学校が終わったあと、いつもある公園に行く。
最初はヒマだったから立ち寄っただけなんだけど、 最近はぼくを待ってくれてるヤツがいるので、 ほぼ毎日通ってるんだ。 その公園でぼくを待ってくれてるヤツは、 茶色くて、汚くて、やせてて、いつもお腹をすかせていて、かわいい。 ぼくが公園に行くと、ニャーニャー鳴きながら近づいてくるんだ。 ぼくはいつもそいつに、給食の残りのパンをあげてる。 公園には看板があって、 『ネコにエサを与えないでください』 って書いてあるけど、ぼくは毎日パンをあげてる。 むしゃむしゃとうまそうにパンにかぶりつくこいつを見るのが楽しかったから。 それは、ぼくがマズそうにパンを食うよりよっぽどいいことのように思えた。 ある日、ぼくはパンを持たずに公園に寄った。 なぜパンを持っていかなかったのかというと、 その日の給食はぼくの大好きな揚げパンで、 残すことなんて考えるヒマもなく、全部食べちゃったんだ。 公園に着くと、いつものようにあいつが近づいてきた。 ニャーニャー。 「ごめんな。今日はパンないんだよ」 ニャーニャー。 あきらめの悪いやつ。今日は持ってないんだって。 でもそいつは一向に鳴くのをやめない。 あまりにうるさいので、ぼくは少しイライラしてきた。 「今日はないって言ってるだろ。じゃあな」 ぼくはまだニャーニャー鳴いてるそいつを背に、公園を後にした。 そいつは付いて来なかった。 次の日、ぼくはいつもよりパンを多めに持って、公園に行った。 昨日はちょっとかわいそうなことしちゃったな、と思ったから。 これで仲直りしようと思った。 だけど、あいつは公園にはいなかった。 仕方ないのでベンチで一人でパンを食べながら待っていたけど、 ついに5時まで来なかったので、ぼくは仕方なく家に帰った。 その次の日も、あいつはいなかった。 その次の次の日も、 その次の次の次の日も、 そいつは公園にいなかった。 そしていつしか、ぼくは公園に行くのをやめてしまった。 あいつが公園からいなくなってから、 ぼくはパンを毎日残さず食べている。 あいつの分までお腹いっぱいになってやろうと思ったから。 だけど、給食に揚げパンが出てきたときには、 半分だけ残して、公園で食べることにしてるんだ。 あいつがやってくるのを待ちながら。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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