カテゴリ:小説もどき
「あ」 僕は急に思い出し、夕方の街の歩道で足を止めた。 人々は首をすぼめて、僕の横を通り過ぎる。 正面から吹く北風が顔に突き刺さる。 11月10日。 今日はリヴィの誕生日だ。 僕は商店街の花屋に寄って、ゼフィランサスという花を買った。 白い花だ。中心には黄色いおしべが集まっている。 僕は花には詳しくないけど、この花は彼女に似合うと思った。 僕は赤ちゃんを抱えるようにして、花束を持って帰った。 花をリヴィに渡すと、彼女ははじめ笑顔になって、 一回泣きそうな顔になって、もう一度笑顔になった。 ありがとう、という言葉を何度も繰り返した。 彼女が花を花瓶に挿して水を入れるまでの間、 僕はずっとその行為を見つめていた。 窓辺に飾られたゼフィランサスは、彼女にとても似合っていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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