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テーマ:本日の1冊(3697)
カテゴリ:は行 男性
評価:★★★★☆
長編。 --- 梗概 ------------- 成瀬純一は、偶然訪れた不動産屋で強盗事件に巻き込まれる。その際に、逃げだそうとして犯人に撃たれそうになった少女を自分の身を挺して助けた。銃弾は成瀬の頭を直撃し、彼は死んだかに思われた。しかし、彼は脳移植手術を受け見事に生還。世界初の脳移植成功に、世界中が乱舞した。成瀬は無事に社会復帰を果たし、今までの生活が戻ってきたかに見えた。しかし、日に日に自分が自分でなくなっていくような感覚が芽生え始める。事件前は愛しくてしかたなかった恋人への愛がさめ始め、趣味であった絵もかけなくなってくる。その一方で、以前は惹かれなかったであろうタイプの女性を好きになり、それまでは全く不得手だった音楽の分野で才能を発揮し始める。この変化の原因は脳のドナーの記憶によるものなのか?しだいに元の自分を失っていく成瀬の行きつく先は・・・? ---------------------- ミステリーではないです。テーマは『脳移植』。 主人公は脳の一部を移植され、しだいに自分を失っていきます。そのかわりに、以前の脳の持ち主が彼を支配し始めるのです。 おもしろいです。示唆に富む作品ですね。人間の心とは?とか、脳移植をされた人間は、果たして元の人間と同一であると言えるのか?とか、様々なテーマが盛り込まれてます。 いや~素晴らしい。主人公の元々の人格が、以前の持ち主の人格に蚕食されていく過程の描写が絶妙です。めちゃくちゃ上手い。すっかりお話に引き込まれてしまってました。 そして、色々と考えさせられますね。人間の心ってどこなんだろう?もしそれが脳そのものなのだとすれば、他人の脳を例え一部分でも移植してしまえばそれはもう元の人間と完全に同一であるとは言えないのではないか? 現時点では脳移植は行われていないし、また、行う技術があるのかどうかは知りません。でも、肝臓や腎臓、肺、心臓等を移植された人の中には、移植前の自分ではない他の誰かの記憶がふと甦ったり、性格が変わってしまったりといった症状を訴える方も少なくないとか。 ん・・・もし実際に脳移植をできるようになり、それが行われたとき、外見はAさんでも、脳はBさんということになるわけですよね?そうすると、その人物はAさんなのか、Bさんなのか・・・、それとももはやどちらでもないのか? ( ̄~ ̄;) ウーン 難しい問題ですね。 この作品、読んでてとても惹き付けられましたし、話にのめりこめました。それに、めちゃくちゃ脳味噌フル回転で人間とは?心とは?と、哲学的なことにまで思考が及び、読み終えた後は思索に耽っちゃいましたねーー(;^ω^A ラストはバッドエンディングと言えるかもしれませんが、読後感が悪いというわけではないのでご安心を♪(私はバッドエンディングは後味悪くて好きじゃないですが、これは別格!!) === 215冊目 読了 === お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年07月10日 10時09分28秒
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